著者
齊藤 充弘
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1395-1402, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
13
被引用文献数
1

本研究は,原発立地地域である福島県浜通り地域を対象として,原発事故前後の地域構造の特徴を明らかにすることを目的とする。そのうえで,原発事故からの復旧・復興の特徴と課題を提示しようとするものである。原発立地後からの地域構造の変化について,人口や事業所の集積にみる社会構造と道路体系や市街地の形成にみる空間構造より捉えて調査・分析した。社会構造をみると,人口増加や就業構造の変化など原発とその関連事業所の立地による影響を受けていることがわかった。また,そのことは面的な道路体系や市街地の形成・拡大みる空間構造にも影響していることがわかった。復興計画書を分析すると,事故前の地域構造を復旧・復興させるための取り組みと,事故後の復興にむけた新たな取り組みがあることがわかった。そのことは,農地・未利用地を宅地化して,住宅や工業・商業施設などの誘導を通して新たに市街地を整備する形となっている。復旧・復興が進む広野町の実態をみると,新たな場所に新たな人口を受け入れる形となっていることより,事故前の社会構造と空間構造をふまえて,新たな復興への取り組みによる地域構造の変化との関係を構築していくことが求められる。
著者
越後 宏紀 小林 稔
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.90-99, 2021-01-15

高齢者の独り身世帯や単身赴任,一人暮らしの学生など家族が離れ離れに暮らすことが増えている.日々の生活が家族内で共有できないことで,生活のずれによる孤独感や不安,心配をかかえてしまう.この問題を解決するために,我々は,足音を用いて離れて生活する家族があたかも近くで生活しているような感覚を得られるシステムの実現を目指している.本論文では,マイクロホンで録音した足音を単純に再生する方法ではアウェアネスを適切に伝達できない場合があるという問題を解決するために,足踏みの音源を位置計測で得られたユーザの位置情報によって変換して再生することで足音の移動を表現する手法を提案した.比較実験を行い,提案手法が適切な足音の移動を伝達することに対して有効であることを確認したとともに,位置計測のデータから自動で表現できることを確認した.
著者
小林 朋子 櫻田 智子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.430-442, 2012 (Released:2013-06-04)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本研究の目的は, 災害を体験した中学生が災害直後から1ヶ月の間にどのようなことを感じ, 考えていたのかを明らかにし, その心理的な変化のモデルを生成することである。2004年の新潟県中越地震を経験した中学生の震災後の作文を, 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した結果, 56個の概念, そして32個のカテゴリー, さらに5個のカテゴリー・グループが抽出された。災害後に, 家族や友人の安否がわかることで安心感が生まれ, 特に学校で友人に会えたことによって不安が解消されていったことがわかったことから, 学校再開がこころのケアにおいて非常に重要であると考えられた。また, 周囲の状況を冷静に捉え, 「自分の方がまだましだ」と考え対処しようとしたり, 自分だけではなく地域全体が早く復興できるよう願うなど, 自分だけの視点に捉われずに状況を把握していた。そして支援を受けるだけではなく, 「みんなの役に立ちたい」という思いを持っていたことが示された。
著者
堀 雄紀
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.359-371, 2018-03-30

本稿の目的は、言葉によっては説明し尽くされ得ない「暗黙の知」をあえて言語化しようとする営みに、どのような意義を見出すことができるのか、身体技法の伝承場面における観察・分析を通じて明らかにすることである。そのために、M. ポランニーの<暗黙知>に着目し、「私たちの『知』を支える、暗黙裡に進行する過程」という定義に立ち戻った上で、G. ベイトソンのコミュニケーション理論を導入することで、「<暗黙知>によって構築される自己修正的システムの階層構造」という新たな理論枠組みを提示した。それに基づいて見出された「語り」の意義は、いずれも<暗黙知>の制御による学習者支援であった。ひとつは、言語の表示作用によって<暗黙知>が取りこぼした差異(情報)に注意を向け、既存のシステムの再構築を促すことである。もうひとつは、比喩的言語表現によって<暗黙知>を起動し、より高次の包括的統合を実現することである。
著者
米澤 昌子 Masako Yonezawa
出版者
同志社大学大学院日本語学研究会
雑誌
同志社日本語研究 = Doshisha studies in Japanese linguistics (ISSN:21885656)
巻号頁・発行日
no.19, pp.46-58, 2015-09-30

本稿では、『朝日新聞』に掲載された記事を対象とし、「てほしい」と「てもらいたい」の使用実態を明らかにした。両者の使用総数、文体別の使用数、動作主の明示と助詞の使用、動作と聞き手の関係等の観点から分析を行った。その結果、新聞では「てほしい」が圧倒的に多く使用されていた。その使用は、動作主が聞き手ではなく、特定多数であり、明示されないといった形が最も一般的な使用場面であったことを指摘する。
著者
浅見 鉄男
出版者
日本良導絡自律神経学会
雑誌
日本良導絡自律神経雑誌 (ISSN:05575729)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.68-71, 1983-03-15 (Released:2011-10-18)

The author reports a case that a patient of psychosomatic disorder and neurosis being treated by Seiketsu-Shiraku Therapy (micropuncture on finger tip points), which can regulate the unusual exasperation of autonomic nerves. The author takes a view that psychosomatic disorder is mainly caused by stress, but it is due partly to other cause which is not recovering from illness, and neurosis is added psychiatric cause more than psychosomatic disorder. Appeared symptoms are, either way, caused from the unusual exasperation of autonomic nerves, and Seiketsu-Shiraku Therapy will obtain good results.
著者
川上 哲司 都築 正史 藤田 宏人 高山 賢一 大河内 則昌 馬場 雅渡 杉村 正仁
出版者
The Japanese Society for Temporomandibular Joint
雑誌
日本顎関節学会雑誌 (ISSN:09153004)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.554-561, 1997

上関節腔への顎関節鏡視下剥離授動術の臨床的評価を行った。手術に際して, 生体に侵襲性の少ないホルミウム・ヤグ (Holmium: YAG) レーザーを応用した。対象症例は, 保存療法に抵抗性の慢性クローズドロック症例または有痛性間欠的クローズドロック症例32症例・37関節に施行した。剥離授動・前外側関節包靱帯および関節形成に際して, ホルミウム・ヤグ (Holmium: YAG) レーザー (コヒーレント社製バーサパルス・セレクト22) およびパワーシェーバー (ストライカー社製マイクロデブリッダー・スモールジョイント・アースロプラスティーシステム) を使用した。これらに加え, われわれが考案した顎関節洗浄システムを併用し, より効果的で, 洗浄効果が増強された。すべての症例において, 最大開口度は, 40mm以上, 前方・側方運動量は, 10mm以上となり, 外科療法後の奏功率は, 96.9%であった。咀噛感も改善され, 術後の合併症もなかった。
著者
太田 喜郎 今村 孝 山岡 宏太郎 桑原 寛 花田 基典
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1316-1323, 1967-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
10

臨床上,チアノーゼをきたす病的状態がいくつか知られているが,なかでも非常にまれなスルフヘモグロビン血症によるチアノーゼの1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.患者は40才の女で,チアノーゼ,頭痛,便秘を主訴に入院した, 2才の時,脳膜炎にかかり水頭症をきたし,持続する頭痛のために5, 6年来「ノーシン」を連用するうちに,チアノーゼが出現した.家族歴に同様のチアノーゼを有するものはいない現症では,頭囲の拡大,顔および可視粘膜のチアノーゼを認めるが,心,肺に異常を認めない検査成績では,肝機能は正常で,脳室撮影,脳血管造影等により著明な脳室拡大(水頭症)を認めたが,髄液は,圧,その他,正常範囲にあつた.溶血液の分光学的検査で, 618~620mμに特有な吸収極大を有する病的hemoglobinを含んでいることがわかつた. CNを加えても変化せず, methemoglobinとは異なつている.その他の試薬に対する態度から,この病的誘導体がsulfhemoglobinであることがわかつた. Evelyn & Malloy法による定量で2.35g/dl(全Hbの16%)を含んでいた. Hbの電気泳動では異常Hb (Hb-M)は検出されなかつた.網赤血球,赤血球抵抗, Heinz body形成試験等は正常で,血清黄疸指数などからも溶血亢進を思わせる所見はない赤血球のDPNH diaphorase活性は正常であつたが, glutathione (reduced form)は14mg/dlと高値を示した.「ノーシン」の内服を中止し,便通を整えて経過を観察する間に, sulfbemoglobinは入院後2ヵ月目には0.5g/dlと減少し,次第にチアノーゼも消失した.
著者
高清水 康博 岡 孝雄
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.Supplement, pp.S65-S79, 2007 (Released:2009-01-27)
参考文献数
92

この見学旅行では,褐炭層を挟む地層で特徴づけられる十勝平野の下部更新統を観察する.とりわけ,芽登凝灰岩を鍵層としてその上下の堆積物の層相変化を観察する.ここで観察する地層は堆積学的解析から,後背湿地,潮汐干潟,内湾,バリアー,海浜-外浜環境で形成されたものである.露頭から不攪乱試料を採取し,室内透水試験を行った結果,堆積相と透水性に関連性があることが分かってきた.これらのことを合わせて十勝平野の下部更新統の堆積相と地下水帯水層として見た場合の評価を考える.

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1915年09月11日, 1915-09-11
著者
Shota Hamada Hideto Takahashi Nobuo Sakata Boyoung Jeon Takahiro Mori Katsuya Iijima Satoru Yoshie Tatsuro Ishizaki Nanako Tamiya
出版者
Japan Epidemiological Association
雑誌
Journal of Epidemiology (ISSN:09175040)
巻号頁・発行日
vol.29, no.10, pp.377-383, 2019-10-05 (Released:2019-10-05)
参考文献数
29
被引用文献数
8 30

Background: This study aimed to determine whether there are disparities in healthcare services utilization according to household income among people aged 75 years or older in Japan.Methods: We used data on medical and long-term care (LTC) insurance claims and on LTC insurance premiums and needs levels for people aged 75 years or older in a suburban city. Data on people receiving public welfare were not available. Participants were categorized according to household income level using LTC insurance premiums data. The associations of low income with physician visit frequency, length of hospital stay (LOS), and medical and LTC expenditures were evaluated and adjusted for 5-year age groups and LTC needs level.Results: The study analyzed 12,852 men and 18,020 women, among which 13.3% and 41.5%, respectively, were categorized as low income. Participants with low income for both genders were more likely to be functionally dependent. In the adjusted analyses, lower income was associated with fewer physician visits (incidence rate ratio [IRR] 0.90; 95% confidence interval [CI], 0.87–0.92 for men and IRR 0.97; 95% CI, 0.95–0.99 for women), longer LOS (IRR 1.98; 95% CI, 1.54–2.56 and IRR 1.42; 95% CI, 1.20–1.67, respectively), and higher total expenditures (exp(β) 1.09; 95% CI, 1.01–1.18 and exp(β) 1.09; 95% CI, 1.05–1.14, respectively).Conclusions: This study suggests that older people with lower income had fewer consultations with physicians but an increased use of inpatient services. The income categorization used in this study may be an appropriate proxy of socioeconomic status.