著者
武井 圭一 杉本 諭 桒原 慶太 恩幣 伸子 潮見 泰蔵
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B0094, 2006 (Released:2006-04-29)

【目的】脳卒中患者は、運動機能障害や高次脳機能障害などの後遺症により、ADL自立度が低下することが多い。脳卒中患者にとって、「ベッドと車椅子間の移乗」を早期に獲得することはADLの自立度を高めるために重要であり、理学療法分野においても移乗動作の介助量軽減を目標とした介入を展開する必要があると考えられる。そこで、本研究では脳卒中患者を対象に機能障害および移乗動作を構成する各要素的動作に着目し、これらのどのような因子が移乗動作にどの程度影響しているかについて分析した。【方法】対象は、病院および老人保健施設にてリハビリテーションを受けている脳卒中者で、本研究に同意が得られた58名(平均年齢72.7±8.7歳)である。尚、両側片麻痺者と現在下肢に骨関節疾患を有する者は対象から除外した。移乗動作能力は、車椅子とプラットフォームベッド間の遂行能力により自立、介助に分けた。車椅子の操作、準備は評価に含まなかった。測定項目は、機能障害要因として麻痺側運動機能、筋緊張、感覚、関節可動域、疼痛、体幹機能、半側空間失認、言語機能(SIAS)、認知機能(MMSE)、非麻痺側筋力(握力、膝伸展筋力)。構成要素動作の要因として起き上がり、座位保持、立ち上がり(MAS)、立位保持、立位方向転換(FMS)とした。これらの評価結果をもとに、対象者を移乗動作能力により自立群、介助群の2群に分類し、各測定項目について単変量的に分析した。次に単変量分析で有意差のみられた項目を独立変数、移乗動作能力を従属変数とし、機能障害および構成要素動作要因のそれぞれについてstep wise法による判別分析を行った。尚、多重共線性を避けるため独立変数の内部相関をあらかじめ確認した。統計解析にはSPSS ver11.5を用い、危険率5%で分析した。【結果および考察】単変量解析の結果、機能障害要因では下肢近位麻痺(股)、下肢遠位麻痺(膝)、腹筋力、体幹垂直性、認知機能において自立群が介助群よりも有意に良好であった。また、構成要素動作要因では全5項目において自立群が有意に良好であった。内部相関分析より、下肢近位麻痺と遠位麻痺の間で強い相関を認めたため後者を除外して判別分析を行った。その結果、機能障害要因では「腹筋力」のみが最終選択され、判別率は79.3%であった。このことから、運動麻痺や認知障害が重度であっても体幹の動的機能がある程度残存していれば移乗動作が自力で遂行できる可能性が示唆された。構成要素動作要因では、「立ち上がり」、「立位方向転換」、「起き上がり」が最終選択され、判別率は91.4%であった。また最終選択された項目のうち、標準正準判別関数係数が高かったのは「立ち上がり」、「立位方向転換」であった。このことから、移乗動作能力の改善には、姿勢保持の影響は少なく、その一連の動作を構成する課題の獲得が重要であると考えられた。
著者
太田 浩子
雑誌
東京女子大學附屬比較文化研究所紀要
巻号頁・発行日
vol.47, pp.95-104, 1986

Tatsu no ko Taro [Taro the Dragon Boy] is an lengthy imaginative children's story written by MATSUTANI Miyoko. Into this story the author has woven legends on Koizumi Kotaro who controls water, transmitted in Shinshu [Nagano Prefecture], as well as a number of legends and folk tales of other parts of Japan. It is a representative work of postwar Japanese juvenile literature which has been continuously finding new readers among the Japanese children since its first publication in 1960. Taro, the hero of the story, is a spirited boy, born of a mother who had been transformed into a dragon. He wrestles with animals. He expels ogres who have been tormenting people. He cultivates the paddy field and harvests rice. Through these and other experiences, he grows and comes to entertain an aspiration that, by draining a lake, he can create a vast track of new arable land for people of poor mountain villages. With the help of his dragon mother, he manages to realize this dream by demolishing mountains to let the water of the lake escape into the sea. A central thread of this story of growth is the hero's tenderness. Folk tales and legends which are transmitted orally tend to become fragmentary, and their characters are often stereotyped. MATSUTANI Miyoko, the author, came across the legends of Koizumi Kotaro in Shinshu during her journey to search and record folk tales. On the basis of them but with a hope to "make the Taro [i.e. Kotaro] of Shinshu into a Taro of entire Japan, " she lavished her imaginative power on the creation of the hero, Taro, the dragon boy with a great success. The plot and the growth of the hero are closely knit in this story, and the cheerful optimistic hero is given a unique credible personality. Aiming at creating a new literary work which is at the same time anchored firmly in tradition, the author has managed to create in this story an attractive hero who strikes a responsive chord in the hearts of all children. She also has taken great pains to devise a suitable "narrative" style in order to
著者
末松 和子 黒田 千晴 水松 巳奈 尾中 夏美 北出 慶子 高橋 美能 米澤 由香子 秋庭 裕子 島崎 薫
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

欧米豪で進む高等教育の「内なる国際化」とりわけ留学生と国内学生の正課内外国際共修に着目し、国内の実態調査、海外施策・実践比較研究、日本をはじめとする非英語圏の高等教育現場に適した国際共修教授法の開発、また国際共修の効果検証を通して日本やアジアに特化した国際共修や「内なる国際化」の在り方を明らかにするという本研究の目的に沿って、日本における国際共修の実践実態の把握、「内なる国際化」が進む海外主要国の施策および実践比較研究を通して理論構築を行い、日本やアジア独自の国際共修を考察するための基礎研究を進めた。また、発展的・包括的な国際共修カリキュラムおよび教授法を開発し、国際共修の効果検証を正課外にも拡大することで海外留学の準備や代替としての国際共修を「内なる国際化」の枠組みで捉え、その有効性の明示と政策提言を行うための準備として、論文・学会発表で基礎研究の結果をタイムリーに発信した。具体的には、文献調査やペダゴジー研究を中心とした基礎研究の成果を国内外の学会で報告し、ワークショップでは、国際共修を実践する上での授業やシラバスのデザイン、教育実践者に求められるファシリテーション・コンピテンシー、課題及びその対処法、評価、について有益な議論を展開することが出来た。ワークショップの運営についても国際共修の研究者、教育実践者より建設的なフィードバックを得ることが出来、今後の研究の発展に資する知識基盤の形成につながった。また、国内における国際共修実態調査を実施するためのパイロット事例調査も実施した。日本の高等教育機関における国際共修の実践状況と課題を明らかにするために実態調査を計画しているがその準備にも着手し、来年度の発展研究に向けた下地作りを行うとともに、本年度実施したワークショップの発展版を国内外で実施するための申請作業を集中的に実施した。
著者
小澤 由嗣 城本 修 石崎 文子 長谷川 純 西村 英 綿森 淑子
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.119-130, 2003-04-20
被引用文献数
1

構音位置, 構音方法などの音声学的対立に基づき構音障害患者の構音の誤りを分析する機能を備えた単語明瞭度検査を作成し, 検査の信頼性, 妥当性などを検討した.本検査をdysarthria患者10例に適用し, 録音した音声を大学生50名に聴取させた結果, 聴取者間の成績のばらつきは小さく, 再検査法による聴取者内の一致度も高かった.また既存の単語明瞭度検査との相関も有意に高いことから, 本検査の明瞭度測定の信頼性, 妥当性は高いと考えられた.本検査で設定した音声学的対立を用いて, 聴取結果を分析することで, 個々の症例の明瞭度を低下させている要因を推定する手掛かりが得られる可能性が示唆され, 本検査は構音障害のリハビリテーションを進めるうえで有用な情報を提供しうると考えられた.
著者
横山 彰仁
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.12, pp.2539-2546, 2015-12-10 (Released:2016-12-10)
参考文献数
5
被引用文献数
3 5

2017年から開始予定の新専門医制度は,内科領域に大きな影響を与え,認定内科医や総合内科専門医の新たな認定が廃止されるなど大きな改編が行われる.新専門医は第三者機関である日本専門医機構(以下,「機構」)によって認定されたプログラムに従って複数施設で研修を行い,学会ではなく機構によって認定される.新制度は医師ではなく国民のためのものであり,国民目線で作成され,実現可能性を勘案し定められたものであることを理解しておく必要がある.
著者
鈴木,三郎
出版者
日本ヤスパース協会
雑誌
コムニカチオン
巻号頁・発行日
vol.9, no.9, 1997-03-31
著者
鈴木 三郎
出版者
日本ヤスパース協会
雑誌
コムニカチオン
巻号頁・発行日
vol.9, no.9, pp.367-368, 1997
著者
中川 国利
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1049, 2020-09-20

同じ施設で長らく仕事をしていると,他施設への異動話が持ち込まれることがある.その時はどう対応したらよいであろうか.私のささやかな経験を交えて対応策をお伝えする. 現在の職場で思い通りに仕事ができ,将来の展望もあるなら,異動話は即断る.
著者
山元 龍三郎 藤谷 徳之助
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.555-556, 1999-08-31
著者
倉田 博
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.i-ii, 2007-06-01
著者
江川 義忠
出版者
立正大学文学部
雑誌
立正大学文学部論叢 (ISSN:0485215X)
巻号頁・発行日
no.81, pp.5-10, 1985-03-20
著者
高橋 美樹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.p49-60, 1992-12

本稿では取引コスト・モデル(経済学)を応用して,「ネットワーク型産業組織・企業間関係」の下での「中小企業問題」を論じる。中小企業による「戦略的提携」あるいは,その全体像としての「ネットワーク型産業組織・企業間関係」というときには,中小企業全般の研究開発力・マーケティング力・経営管理力の向上や,新しい企業間関係が積極的に評価される。しかしながら,「ネットワーク型産業組織・企業間関係」の下での「中小企業問題」の解明は,十分になされているとはいえない。そこで,ここでは,上に述べたような「積極評価」と「問題性」との双方を視野にいれた新しい分析を試みる。そして,中小企業分野を中心に,「技術の専有可能性」(技術の模倣されにくさ)と「補完資産」(開発技術・製品から利益を得るために必要な,補完的製造技術,販売網など)という2つの概念を用いて,イノベーションと企業間関係の関連を分析し,結論として,「ネットワーク型産業組織・企業間関係」の下でも「問題」が無くなったわけではなく,「新しい」問題,すなわち「技術取り引き」に関わる問題が生じうることを示し,今後,予想される傾向として,次の諸点を示す。(1)中小企業経営戦略の一貫として,「技術の専有可能性」を高める戦略,すなわち他企業の追随を許さないような「ダントツ技術」の開発戦略や知的財産権・特許管理戦略がますます重要になる。(2)中小企業分野でも,「技術取引の適正化」という(独占禁止政策上の)課題の重要性が高まる。(3)「ネットワーク型産業組織・企業間関係」の下での「企業規模間格差」問題というときも,「企業規模」の基準は単なる従業員や資本金の大きさではない。従業員や資本金の大きさは,本稿で考察してきた「技術の専有可能性」向上や「補完資産」獲得の上での有利・不利を左右して初めて意味を持つ。