著者
渡部 章郎 進士 五十八 山部 能宜 Akio Watanabe Shinji Isoya Yamabe Nobuyoshi
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.299-306,

景観法の公布(2004年)により「景観」は法律用語になったが,明確な定義はなされていない。景観は様々な分野で使用されているが,「景観」の語の導入経緯と用法は異なっている。本報では景観用語と概念の変遷について,造園学および工学分野における場合を辿ってみた。本考で得られた結論は,次の3点にまとめられる。(1) 造園学および工学における景観概念は,「景観」を計画,創出,管理していこうという立場からのものであり,実務的で行政との関係が深い。いずれも景観概念は環境と景観を結びつけた,いわば「環境の総合的なながめ」とされている。(2) 両分野における景観概念や技術は,法制度に組み込まれた風致・美観を実現するための理論からスタートした。景観は,自然景観と文化景観に大別されるが,造園学ではより自然の視点に,一方工学では文化(人工)の視点に比重をおいたアプローチが多い。(3) 両分野での景観概念は,視覚的環境が中心となっており,外観が重要視されている。「環境全体の良好な姿」を構築する方向での景観概念の展開がまたれる。
著者
渡部 章郎 進士 五十八 山部 能宜 Akio WATANABE SHINJI Isoya YAMABE Nobuyoshi
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.20-27,

2004年には景観法が公布・施行され「景観」は法律用語になった。しかしそれ以前から,「景観」は様々な分野で使用された。それら異なった分野では,「景観」の語は導入の経緯や使い方も異なっている。本研究は景観用語と概念の変遷を専門分野別にたどり,明らかにしようとするもので,本報では特に地理学系分野について考察した。本稿で得られた結論は,次の3点にまとめられる。(1) 地理学系の景観概念は,ドイツLandschaft論の影響を強く受け展開されるが,ドイツでも概念規定が不明確で,地理学の本質論に関係する問題でもあるため,日本でも激しい議論がなされてきた。(2) 景観概念は「地域」か「風景」か,という問題で常に議論されてきた。景観概念の不明確さは,ドイツのLandschaftが地域と風景という,別のルーツを持つ2つの意味を持つ言葉であったことに由来する。また,類義語であるLandscapeや風景には地域の意味が存在しない点が大きい。(3) 近年は,自然地理学では,生態学と結びついた「地域」の研究,また人文地理学は,英語圏のLandscapeの解釈から「風景」といった人間を主体としたイメージや認識論からのアプローチによる概念研究がなされている。
著者
足立 規子
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.433-440, 1994-05-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20

肺の日和見感染症を疑った免疫不全患者41例から得られた気管支肺胞洗浄 (BAL) 液より, Polymerase chain reaction (PCR) 法を用いてニューモシスチス・カリニ (PC) 及びサイトメガロウイルス (CMV) DNAの検出を試みた. 41例中19例にPC-DNAの増幅を, 3例にCMV-DNAの増幅を認めた. このうち9例は従来の方法では診断できない症例だったが, 未治療の一例を除き, 全例でPC及びCMVに対する治療が奏効した. また, PC虫体を認めた検体については, 全例でPC-DNAの増幅を認めた. 免疫能が正常と考えられる患者16例から得られたBAL液を用いて同様の検討を行ったところ, PC及びCMV-DNAとも増幅を認めなかった. 以上より, PCR法はBAL液中のPC及びCMV-DNAの検出に極めて鋭敏であり, PC及びCMV肺炎の診断に対するBALの有用性を高めるものと思われた.
著者
竹田 大将 近藤 鯛貴 佐藤 裕幸 杉野 栄二
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC) (ISSN:21888841)
巻号頁・発行日
vol.2019-HPC-172, no.3, pp.1-7, 2019-12-11

我々は低コスト・省電力・省スペース化を目指し Raspberry Pi 上の GPGPU により,高負荷計算実現が可能か研究を行っている.今回はその Raspberry Pi GPGPU の 1 応用として,超解像処理システムを構築することを検討した.超解像技術は様々な手法が提案されているが,中でも Total Variation (TV) 正則化分離を用いた手法は最も有望なもののひとつと考えられる.TV 正則化分離は,入力画像を低周波成分とエッジ成分から構成される骨格成分,高周波成分とノイズから構成されるテクスチャ成分に分離する処理である.本稿では安価でありながら理論性能 24GFLOPS の GPU (VideoCore IV) が搭載されている特徴を持つ Raspberry Pi にて超解像処理の主要計算部のひとつである TV 正則化分離の GPGPU 化について評価を行った.その結果,CPU のみで演算を行う実装に比べて約 12 倍の高速化に成功し,汎用的な PC と比較しても Raspberry Pi GPU の価格性能比は圧倒的に高いことが確認できた.
著者
水野 直樹 佐々木 康夫 中島 敏光 東倉 萃 岡 義春
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1049-1051, 1996-09-25

抄録:分娩時の生理的恥骨結合離開は10mm以上の離開をきたすことは稀である.われわれは,吸引分娩により40mmの恥骨結合離開をきたし,保存的治療では改善しなかった症例に対して,創外固定を行い良好な結果を得たので報告する.症例は40歳(妊娠5,出産2),37週0日,胎位は第2前方後頭位,吸引分娩にて4574gの女児を出産した.出産後より恥骨付近の疼痛が著明で,腰を動かせず,体交も困難.理学的所見では股関節屈曲困難で,恥骨結合上に圧痛があった.単純X線写真にて40mm恥骨結合離開が認められ,CTでは,恥骨結合左側に小骨片が認められた.同日よりキャンバス牽引を開始し,10日目には離開13mmと改善傾向がみられたが,牽引部分の皮膚に水疱形成が認められたため,11日目に牽引を中止した.16日目には離開が25mmと再度拡大したため,保存的治療ではこれ以上は無理と判断し,受傷から22日目にAce創外固定器にて整復固定術を施行し,離開は6mmと改善した.
著者
根占 献一
出版者
19世紀学学会
雑誌
19世紀学研究 (ISSN:18827578)
巻号頁・発行日
no.8, pp.59-73, 2014-03

Availing myself of the opportunity of my lecture, I explained the origins and development of the idea of Renaissance and Humanism, principally in Italy and Germany of the 19th and 20th centuries. Semper and Burckhardt wrote the important books about the style and culture of the Renaissance. In those times Italy was seeking for the unity of country called the Risorgimento. Besides these scholars, Reumont, Gregorovius and Temple Leader of the same 19th century individually wrote many books about the history of Rome, the story of the Medici, and Englishmen active in Renaissance Italy. Interestingly enough, The Risorgimento had the same meaning as the Renaissance. Therefore Bettinelli published Del Risorgimento d' Italia negli studi, nelle arti e nei costumi dopo il Mille in 1775. The use of the term Risorgimento continued until the second half of the 19th century. About the middle of this century Voigt published Die Wiederbelebung des classischen Alterthums oder das erste Jahrhundert des Humanismus, very important study, that would be translated Il Risorgimento dell'Antichità classica ovvero il primo secolo dell'Umanesimo in Italian. And now the age of the Risorgimento, that is to say, the Renaissance signified the times of Humanismus (humanism, humanisme, umanesimo). Half years ago before this publication Niethammer de facto coined the term of Humanism related to the classical languages of Greek and Latin. But the Renaissance gave birth to the term of humanist, the teacher of these languages. The term of the Humanism had never existed in the Renaissance when there had been instead the term of studia humanitatis (humanities). In Germany the concept of Humanism was not a little complicated according to its ages. Especially there were two kinds of it in the 20th century, the third (der dritte) Humanismus after both the (first) Renaissance Humanism and the (second) Neuhumanismus at the times of Niethammer, and the Bürgerhumanismus. The latter is more important than the former, because, using the Bürgerhumanismus, Civic Humanism in English, Baron, American historian born in Berlin, emphasized the publican liberty of Florentine citizens against the tyranny of Milan, and gave the great contribution to the political and social interpretation, not cultural, of the Florentine Renaissance in the early years of the 15th century, the Quattrocento.