著者
鈴木 崇史 影浦 峡
雑誌
じんもんこん2006論文集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.145-152, 2006-12-14

本研究では、1945年から2006年にかけての総理大臣国会演説の、時代による文体的変化を検討した。一文の長さ、延べ語に対する助詞の比率、助動詞の比率を時系列に観察すると、それぞれにトレンドが観察された。全ての助詞・助動詞の相対頻度を用いた主成分分析・クラスター分析によって、三木以外の総理演説が分類されることから、総理演説の助詞・助動詞使用に、もっとも大きな影響を与えている要因は時代であることが示された。分類に寄与の大きい助詞・助動詞の増加・減少傾向は、現代雑誌とほぼ対応していることから、総理演説の助詞・助動詞使用の変化は、主に日本語の変化に対応したものであると考えられる。
著者
西堀 正洋
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.151, no.1, pp.4-8, 2018 (Released:2018-01-10)
参考文献数
19
被引用文献数
6

20世紀末にエンドトキシン血症の致死性メディエーターとして同定されたhigh mobility group box-1(HMGB1)は,その後約15年間の研究で種々の炎症性疾患における病態の形成に重要な働きをすることが明らかにされてきた.現在では,組織損傷に応じて細胞外へ放出され,起炎性の作用を発揮するdamage-associated molecular patterns(DAMPs)の代表と考えられるようになった.本稿では,筆者らが取り組んできたHMGB1の中和活性を有するラット抗HMGB1単クローン抗体の作製をまず紹介する.次いで,本抗体を用いた神経系疾患,具体的には脳卒中(脳梗塞,脳出血),脳外傷,てんかん,神経因性疼痛モデルでの治療効果の解析結果を報告する.これら一見多様な疾患モデルにおいて,障害局所の神経細胞核からHMGB1が細胞質を経て細胞外へ放出されるのが,障害急性期に共通するイベントとして観察された.細胞外へ放出されたHMGB1は,血液脳関門(BBB)の破綻と炎症関連分子群の誘導に働き,脳内炎症を加速させた.末梢投与された抗HMGB1抗体は,いずれの病態モデルにおいてもHMGB1のトランスロケーション,BBBの破綻,炎症関連分子群の発現のすべてを強く抑制し,障害に随伴する神経症状を軽減した.これらの結果は,HMGB1が脳組織障害に際し極めて鋭敏かつ迅速に動員される因子であることを物語るとともに,BBB破綻や炎症性因子の誘導の最上流付近に位置する因子であることを示唆している.従ってHMGB1は,これらの疾患治療の極めて優れた標的であるということができ,HMGB1を標的とする抗体療法は,これまでにない新しい治療法となる可能性がある.
著者
牧 勝弘 赤木 正人
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.55-64, 2011-02-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
15

聴神経の発火頻度は,音の立ち上がりに対して高く,その後急速に低下する(順応)。この順応は音圧レベルの影響を強く受け,その特性は個々の聴神経で大きく異なっている。従来のモデルは,順応の音圧レベル依存の性質を模擬できず,複数の聴神経の順応特性を模擬することができなかった。本研究では,内有毛細胞の受容器電位の生成機構について新しい機能モデルを提案し,従来の内有毛細胞モデルとパルス列を出力する聴神経モデルを組み合わせることで聴覚モデルを構築した。モデルの出力を生理データと比較することでモデルの評価を行い,本モデルが,複数の聴神経の順応特性を,音圧レベル依存の性質まで含めて定量的に模擬できることを示す。
著者
山田 真徳 Kim Heecheol 三好 康祐 山川 宏
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

ラベルなしの系列データからDisentangleされた表現を抽出するモデルであるtime convolutional variational ladder autoencoder (TCVLAE)を提案する. シンプルな2次元のデータで提案手法は時系列の意味の分離が可能なことを実験的に示した.
著者
中野 達也 倉成 真也 田渕 基嗣
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.83, no.744, pp.321-331, 2018 (Released:2018-02-28)
参考文献数
12
被引用文献数
2

In this study, beam-end connections of a steel structure using a pre-built-up H-shaped beams by submerged arc welding (SAW) are targeted, the structural characteristics is evaluated, the design and construction methods to prevent early brittle fracture are investigated. In this paper, first the influence of the welding construction conditions to the toughness of SAW metal was investigated, next the influence of the toughness of SAW metal to the structural characteristics of the beam-end connection were investigated by the full-scale cyclic loading test. The influence of the welding construction conditions to the toughness of SAW metal was investigated for two kinds of weld metals. One is a fillet weld metal by one-pass of tandem electrodes SAW, the other is a weld metal by multi-layer and multi-pass of single electrode SAW conforming to JIS. The test results showed that the toughness of the fillet weld metal was lower than that of the JIS weld metal. The toughness of SAW metal depended on a flux, was less affected by a steel material and a welding wire. The Charpy absorbed energy at 0°C (vE0) increased with the increase of the basicity of the flux. The fracture situation and the structural characteristics of the beam-end connection were investigated by the full-scale cyclic loading test in which the parameter is the toughness of SAW metal. Three specimens were provided, vE0 of SAW metal is 15J, 48J and 59J. In all the specimens, vE0 of the base metal of beam flange was 165J and the non-welding part remained in the fillet weld by SAW. In test result of all specimens, the point of crack initiation was the bottom of weld access hole and the brittle fracture occurred at the beam-end flange joint. The conversion position from ductile fracture to brittle fracture is inside SAW metal in case that vE0 of SAW metal is 15J, near SAW bond line in case that vE0 of SAW metal is 48J and 59J. As for the structural characteristics of the beam-end connection, it became clear that the maximum bending strength and the plastic deformation capacity of the beam-end connection increased with the increase of the toughness of the SAW metal in the range where the toughness is low. In case that vE0 of SAW metal is 15J, the plastic deformation capacity was about 40% of the required performance. On the other hand, in cases that vE0 is 48J and 59J, the required performance was satisfied. From the above results, it is considered that the influence of the toughness of SAW metal to the plastic deformation capacity of the beam-end connection using pre-built-up H-shaped beam is serious. It is certain that early brittle fracture occurred in case that SAW metal had low toughness, even though the base metal of beam flange had high toughness. On the other hand, it became clear that the plastic deformation capacity exceeding the required performance can be obtained by ensuring the toughness of SAW metal, even if the brittle failure occurred. If the weld access hole are provided at the beam-end connection using pre-built-up H-shaped beam, it is necessary to ensure the toughness of SAW metal by paying attention to the selection of the wire and the flux used for SAW.
著者
吉木 健悟 田沼 昭次 梶 誠兒
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101165, 2013

【はじめに、目的】Bickerstaff型脳幹脳炎(以下BBE)は脳幹を首座とした炎症性自己免疫疾患であるが、詳細は不明である。意識障害、眼筋麻痺、小脳性運動失調を伴うことが特徴的で、4週間以内に極期に達し、一過性の経過を示す。ほとんど後遺症を残さず寛解する一方で、複視、歩行障害などの後遺症を残すこともあり、合併症により致死的となることもある。また、本疾患に対するリハビリテーションに関連した報告は非常に少ない。今回BBEと診断され、経過中に状態変化、挿管し、その後歩行困難となったが、約2ヵ月で寛解した症例を経験したので報告する。【症例紹介】特筆すべき既往のない22歳男性の大学生。約1週間の発熱の先行の後、間四肢末梢に筋力低下、しびれが出現し、当院入院。入院当初、脳画像上に特筆すべき異常は認められず、血清抗GT1a-IgM陽性であった。神経所見としては眼球運動障害、意識障害、全身の小脳性運動失調を認めた。入院日を1病日とし、3病日BBEと診断。3病日よりIVIg療法開始し、4病日理学療法処方。入院後徐々に四肢筋緊張、腱反射の亢進が出現。6病日、胸部CTで左肺底部湿潤影を認め、肺炎疑いで抗生剤治療開始。7病日IVIg療法終了。同日痙攣、発熱、呼吸状態の変容から気管挿管。【倫理的配慮、説明と同意】報告の趣旨を本人に報告し同意を得た。【経過】5病日理学療法初診時JCSⅢ桁であり、肺炎疑いで発熱が見られ、全身状態不良。四肢は除皮質硬直肢位を呈し、反射亢進し、著明な痙性が認められた。病態の予後予測が困難であり、臥床が長期に渡る可能性も考慮し、四肢関節拘縮、呼吸器合併症予防を目的に介入開始。5病日以降、発熱は改善したが、痙攣と意識障害が持続していた。16病日から意識状態の改善が見られ始め、JCSⅡ桁となった。18病日より離床開始し、意識状態に合わせて四肢体幹筋力強化練習、協調動作練習、深部感覚練習を開始した。21病日、意識はJCSI-1に改善。呼吸状態も安定し抜管。検査所見に特筆すべき異常は無かった。神経所見としては眼球運動障害、四肢腱反射亢進、上肢筋緊張軽度亢進、四肢深部感覚障害が認められた。筋力は四肢体幹MMT2~3、さらに四肢体幹の協調運動障害あり。これにより動作時の動揺が強く、起居動作に重介助を要した。26病日から平行棒内歩行練習開始し、31病日には筋力はほぼ回復したが、動揺の為立位保持は困難であった。また、歩行はサークル型歩行車使用し軽介助、その他日常生活動作が見守り以上で可能となった。その後、残存している深部感覚障害、協調動作障害に重点的に介入した結果、動揺軽減し37病日屋内無杖歩行自立、院内日常生活動作全自立し、39病日に退院となる。退院時の神経学的所見としては眼球運動障害軽度残存、四肢腱反射軽度亢進、四肢筋緊張正常であり、四肢体幹の協調運動障害は軽度残存した。しかし72病日には上記症状はほぼ寛解し、ランニング動作を再獲得するまでに至った。【考察】症例は極期には高度の意識障害、呼吸障害を呈し、離床開始後も協調運動障害により重介助を要する状態であったが、39病日にはADL動作が全て自立しての退院となった。BBEの予後として、約半数以上が6ヵ月以内に後遺症なく寛解するとの報告があるが、約4割は後遺症として歩行障害を認めるとの報告がある。さらに呼吸管理が必要となる症例は約2割との報告もある。本症例では極期に呼吸管理に加え、肺炎を合併し、予断を許さない時期もあった。しかし最終的に約2ヵ月で後遺症無く寛解し、報告と比較して標準的な期間での退院、寛解となった。理学療法介入としては、極期の医学的管理を主体とした治療の中で、全身状態の維持、改善、合併症の予防に貢献できたと考える。また、意識障害改善後、協調運動障害により動作に介助を要する状態であったが、約2週間でADL動作が全て自立となるまで回復した。この間、眼球運動障害等の神経症状の回復も見られた。これに加えて深部感覚練習、協調動作練習により介入前後で即時的に改善が見られ、これら理学療法の関わりが、動作能力向上を円滑にしたと考える。【理学療法学研究としての意義】BBEに対する急性期からの積極的理学療法介入が、回復を円滑化する事が示唆された。また、理学療法に関する報告の少ない本疾患に対する理学療法介入の有意性が示唆された。
著者
広田 朝光 玉利 真由美
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.25-31, 2016 (Released:2016-02-29)
参考文献数
38
被引用文献数
1