著者
真嶋 修慈 和田 悌司 池田 貢
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理學雜誌 = Folia pharmacologica Japonica (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.140, no.6, pp.295-302, 2012-12-01

デノスマブ(ランマーク<sup>®</sup>)は,特異的かつ高い親和性でヒトreceptor activator of nuclear factor <I>κ</I>B ligand(RANKL)に結合するヒト型抗RANKL抗体であり,2012年1月に「多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変」の適応で承認された.骨転移はしばしば生活に支障を来す骨関連合併症を引き起こすことが知られている.骨病変は,骨内に侵入したがん細胞が骨芽細胞等のRANKL発現を促し,それにより破骨細胞による骨吸収が亢進し,骨吸収により生じた増殖因子等ががん細胞のさらなる増殖を促すという悪循環により進行する.デノスマブはRANKLを阻害し,この悪循環を断ち切ることで骨病変の進展を抑制する.非臨床試験では,各種がん骨転移マウスモデルにおいて,RANKLの阻害により溶骨性骨病変の進行が抑制された.3つの無作為化二重盲検比較第III相試験は,種々の悪性腫瘍患者を対象に,ゾレドロン酸を対照薬とし,同一の試験デザイン,評価項目,統計手法を用い,デノスマブの有効性と安全性を評価した.その結果,デノスマブは悪性腫瘍の種類を問わず一貫した骨関連事象(skeletal-related event:SRE)抑制効果を示した.3つの第III相試験の併合解析では,デノスマブはゾレドロン酸と比較し,初回SRE発現リスクを17%(優越性:<I>P</I><0.0001),初回および初回以降のSRE発現リスクを18%(優越性:<I>P</I><0.0001)低下させた.抗悪性腫瘍薬の進歩により生存期間が延長しつつある中,QOLを著しく低下させるSREの制御は臨床的に重要である.デノスマブの副作用として,低カルシウム血症およびosteonecrosis of the jaw(ONJ)が認められた.低カルシウム血症についてはゾレドロン酸よりも発現頻度が高かった.デノスマブは簡便な皮下投与であり,腎機能障害による用量調節の必要はないものの,腎機能障害患者では低カルシウム血症を起こしやすいことから慎重な投与が必要である.ONJについては口腔内を清潔に保つなどして予防することが重要である.以上を踏まえ,本剤が多発性骨髄腫による骨病変および固形がん骨転移による骨病変の治療に貢献することを期待する.
著者
太田 伸一郎 橋本 邦久 仲田 祐 佐藤 博俊 斎藤 泰紀 薄田 勝男 菅間 敬治 佐川 元保 佐藤 雅美 永元 則義 今井 督 須田 秀一
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.122-130, 1986
被引用文献数
9

自験例13, 222件の気管支造影像で発見された気管支分岐異常71例, 85件について検討した。分岐異常は, 中枢気道に関係する区域支までの異常に限定し, 右B^7の欠如・左B^7の存在・左右Bは分岐異常にいれなかった。分岐異常の出現頻度は0.64%であり, 右上葉の異常が全体の75.3%を占めていた。転位気管支の頻度は過剰気管支の7.2倍であり, 気管気管支が全体の31.8%を占め最も多かった。中支から上葉区域支が分岐していたものが10例あり, そのうち8例は, 残る上葉区域支も気管気管支で異常分岐であった。極めて稀な分岐異常としてdouble right tracheal bronchusの1例を経験した。気管支分岐異常に合併した奇形(ASD, 頸肋, 肋骨欠如)を検討し, これら奇形の発症時期と気管支の発生時期とが符合していたことから, 胎生5週初めから6週末までの子宮内環境が気管支分岐異常の発生誘因になりうると考えられた。
著者
鈴木 健嗣
出版者
神戸大学大学院経営学研究科
雑誌
神戸大学経営学研究科 Discussion paper
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013-07

近年,第三者割当増資が急増した背景には,さまざまなタイプの投資家の引受けや中小規模企業による発行の増加がある.本稿は,こうした背景に注目し,発表時の株式市場の反応,引受投資家の要求するディスカウント率,発行後の長期パフォーマンス,引受先の売却行動について検証した.本稿の主な結果から,①ディスカウント率は正であるが,経営者や関連企業,銀行が引受ける場合はより低く,ヘッジファンドが引受ける場合にはより高いこと.また,ヘッジファンドの割当比率と逆U字関係にあること.②発表時の株価リターンは正であるが,ヘッジファンド,株式持合い先が引受ける場合は低く,事業関連会社が引受ける場合はより高いこと.また,ヘッジファンドの割当比率とU字関係にあること,③長期パフォーマンスについては,ヘッジファンドが引受先の場合には有意に負であるのに対し,経営者,既存株主,取引先,事業関連企業,株式持合い,銀行が引受ける場合には有意な株価下落はみられないこと,また,ヘッジファンドのパフォーマンスは役員派遣が行われ割当比率が高い時には負の長期パフォーマンスはみられなかった.④割当後の株式売却について,ヘッジファンドが最も多く売却していることがわかった.これらの結果から,ヘッジファンドは,過大評価された株価のときに第三者割当増資を引き受け,高いディスカウントを要求し,発表時の株価リターンの正の反応は弱く,過大な株価のうちに売却するというラストリゾート仮説及び,多くの割当を引受けたのち役員を派遣し企業価値を上げるモニタリング仮説が支持している.また,部分的にではあるが経営陣や事業関連企業,銀行における保証仮説や持合いによるエントレンチメント仮説が支持された.
著者
長岡 芳 鍵小野 美和 藤田 紀乃 和田 昭彦 松井 寛 大橋 儒郁 飯田 忠行
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.539-546, 2011 (Released:2012-03-27)
参考文献数
37

目的:メタボリックシンドローム(以下,MSとする)の診断基準について,腹部CTにおける内臓脂肪面積を至適基準として腹囲判定および腹囲判定後の診断基準の妥当性を検討した.対象と方法:男性194名を対象とした.検査項目は,年齢(歳),身長(cm),体重(kg),BMI,腹囲(cm),最高血圧(mmHg),最低血圧(mmHg),HDLコレステロール(mg/dL),トリグリセリド(mg/dL),空腹時血糖(mg/dL),内臓脂肪面積(cm2),皮下脂肪面積(cm2)とした.内臓脂肪面積を至適基準として腹囲判定の感度・特異度・陽性尤度比を計算し,妥当性を検討した.また,腹囲が異常でかつMS診断基準のうち2つ以上の異常値について,内臓脂肪面積を至適基準としてMS診断基準の感度・特異度・陽性尤度比を計算し,妥当性を検討した.結果:腹囲判定は見落とし率が低く,感度は高値であった.MS診断基準と内臓脂肪面積との関連は見出されなかった.結論:内臓脂肪面積とMS診断基準の関連において,腹囲判定は見落とし率が低く,感度からも有用と考えられる.腹囲判定後の診断基準については検討の必要性が示唆された.
著者
幸田 泰則
出版者
北海道大学
雑誌
北海道大学農学部邦文紀要 (ISSN:03675726)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.82-128, 1988-03-31
著者
谷内江 昭宏
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.11-21, 2007 (Released:2007-03-02)
参考文献数
54
被引用文献数
7 8

ヘムオキシゲナーゼ(heme oxygenase ; HO)はヘム代謝に関わる酵素であると同時に,細胞を酸化ストレスによる傷害から守る細胞保護蛋白である.HOの内,誘導酵素であるHO-1を欠損する症例の病態解析により,このようなHOの働きが特定の細胞の保護にとどまらず,多様な組織や臓器における細胞保護に関与していることが示された.また,腎組織や腎由来細胞株を用いた検討では,HO-1蛋白が特定の細胞に局在していること,それらの細胞ではHO-1産生が特に重要な意味を持つことが示唆された.さらに末梢血単球を用いた解析では,特定の単球亜群で恒常的にHO-1蛋白が発現していること,これらの単球が急性炎症疾患で増加することが示され,単球/マクロファージによるHO-1産生が炎症制御に重要な役割を果たすことが明らかとされた.一方で,HO-1遺伝子導入により過剰にHO-1蛋白を発現させた場合には,むしろ細胞傷害を促進する可能性があることも示され,生体内ではHO-1産生の局在や量が巧妙に制御されていることが示唆された.最近の報告では,HO-1蛋白が制御性T細胞による免疫制御に深く関わっている可能性も示されており,HO-1産生の誘導を標的とした介入が多様な炎症性疾患に対する新たな治療戦略の一つとして期待される.
著者
能見 公一
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1622, pp.62-65, 2012-12-26

2012年春、ソニー・東芝・日立製作所の中小型液晶パネル事業を統合した新会社、ジャパンディスプレイが発足する。3社の再編を主導し、新会社に2000億円の資金を出すのが、2009年に発足した官民ファンドの産業革新機構だ。海外勢に押されている事業で、国際競争力の回復を狙う。 ただ、拠出する資金は政府の債務保証がついており、失敗すれば損失は国民が負担することになる。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ニューメディア (ISSN:02885026)
巻号頁・発行日
no.1451, 2015-02-02

地デジの日本方式「ISDB-T」を世界に広めたことは、総務省の国際競争戦略において常に成功物語として紹介される。今回の官民ファンドも地デジ日本方式普及作戦の二匹目の泥鰌を狙うようである。では、地デジ日本方式普及作戦はそもそも成功だったのだろうか。
著者
向坂 太郎 日下 照英 浅田 隼人 岡野 信保
出版者
プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会研究発表大会予稿集 2014年度春季
巻号頁・発行日
pp.196-200, 2014-03-13 (Released:2017-06-08)

日立では,システム開発プロジェクトを効率的に進めてお客様に高品質なITサービスを提供するために,システム開発方法論HIPACEを整備している.HIPACEはIT戦略からITサービスの評価までのエンタープライズITサービスのライフサイクルにおける標準的なプロセスを定義しているだけでなく,プロセスの実施方法や成果物の作成方法も説明している.近年,筆者らはHIPACEのサポート範囲をグローバルに拡大している.オフショア開発などのグローバルプロジェクトでは,成果物の品質確保のために開発プロセスやルールの合意が国内プロジェクトに比べより重要である.筆者らは,価値観や文化的背景の異なる開発者にソフトウェアテストの重要性を説明するために,日立システム開発方法論で定義されているテストプロセスの詳細なルールや暗黙知を明確にし,各開発者のテスト作法を統一した.それをプロジェクトに適用した結果,開発効率および成果物の品質が向上した.
著者
Kanae Sasaki Ryota Komori Mai Taniguchi Akie Shimaoka Sachiko Midori Mayu Yamamoto Chiho Okuda Ryuya Tanaka Miyu Sakamoto Sadao Wakabayashi Hiderou Yoshida
出版者
Japan Society for Cell Biology
雑誌
Cell Structure and Function (ISSN:03867196)
巻号頁・発行日
pp.18031, (Released:2018-11-28)
被引用文献数
15

The Golgi stress response is a homeostatic mechanism that augments the functional capacity of the Golgi apparatus when Golgi function becomes insufficient (Golgi stress). Three response pathways of the Golgi stress response have been identified in mammalian cells, the TFE3, HSP47 and CREB3 pathways, which augment the capacity of specific Golgi functions such as N-glycosylation, anti-apoptotic activity and pro-apoptotic activity, respectively. On the contrary, glycosylation of proteoglycans (PGs) is another important function of the Golgi, although the response pathway upregulating expression of glycosylation enzymes for PGs in response to Golgi stress remains unknown. Here, we found that expression of glycosylation enzymes for PGs was induced upon insufficiency of PG glycosylation capacity in the Golgi (PG-Golgi stress), and that transcriptional induction of genes encoding glycosylation enzymes for PGs was independent of the known Golgi stress response pathways and ER stress response. Promoter analyses of genes encoding these glycosylation enzymes revealed the novel enhancer elements PGSE-A and PGSE-B (the consensus sequences are CCGGGGCGGGGCG and TTTTACAATTGGTC, respectively), which regulates their transcriptional induction upon PG-Golgi stress. From these observations, the response pathway we discovered is a novel Golgi stress response pathway, which we have named the PG pathway. Key words: Golgi stress, proteoglycan, ER stress, organelle zone, organelle autoregulation
著者
鹿島 一紀
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.68(2000-CSEC-010), pp.121-127, 2000-07-25

IDとパスワードに代わる本人認証システムとしては、指紋などを利用するバイオメトリックス認証の実用化が進んでいる。これは個体特有の特徴をシステムで認証することで、別人がなりすますことをほぼ完全に防御できるという期待感からと考えられる。しかしバイオメトリックス認証には、普及しづらい本質的な5つの課題がある。そこで従来のIDとパスワードの課題を再考し、これらの課題にも対応できるソリューションが必要と考え、画像の位置情報を利用した新しい本人認証方式を開発した。本稿は、その開発背景、認証方式、およびその有用性についで報告するものである。

1 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1932年05月24日, 1932-05-24

1 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1904年11月02日, 1904-11-02

1 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1929年08月02日, 1929-08-02