著者
宮脇 慎吾
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

ハダカデバネズミ(naked mole-rat, NMR)は、マウスと同等の大きさながら、異例の長寿動物(平均生存期間31年)であり、未だ腫瘍形成が確認されていない癌化耐性齧歯類である。申請者は、NMR、ヒト、マウスおよびラットの4動物種での組織別遺伝子発現比較で同定した、心臓においてNMRで特異的に高発現するgene Xの解析を行った。報告のある動物種のなかで、gene Xが心臓で高発現しているのはNMRのみであった。gene Xは通常肝臓で発現して血中に分泌され、アリルエステラーゼおよびパラオキソゲナーゼとしての酵素活性を有する抗酸化酵素である。しかしながら、NMRの血清におけるgene Xの酵素活性を測定した結果、酵素活性は測定限界値以下であった。gene Xはカルシウム依存性の酵素活性を有するが、NMRの血中カルシウム濃度は検出限界値以下であったことから、NMRでは、他種とは異なるカルシウム非依存的な様式を有する可能性が考えられた。申請者は次に、細胞の癌化や個体の老化との関係が報告されている癌抑制遺伝子INK4aとARFのクローニングと機能解析を行った。NMRにおいては、INK4aとARFに種特異的な配列変化が存在することが知られている。この遺伝子の種特異的な機能・個体の癌化・老化耐性との関係を解析するために、抗体作製等の解析基盤を確立し、発現様式と遺伝子機能に関して解析を行った。結果として、マウスやヒトと同様に、細胞老化ストレス時の発現上昇、細胞周期を停止させる機能は保存されていることが明らかとなった。さらに、NMRからiPS細胞を作成して造腫瘍性の検証を行ったところ、NMR-iPS細胞はARF遺伝子の種特異的な発現制御により腫瘍化耐性であることを見いだしている。今後、これらの遺伝子の詳細な機能差、個体の癌化・老化耐性への寄与についての解明をさらに進めていく。
著者
Elham A. HASSAN Marwa H. HASSAN Faisal A. TORAD
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.17-0518, (Released:2018-03-29)
被引用文献数
12

The aim of the study was to correlate the clinical severity of pectus excavatum with its type and degree based on objective radiographic evaluation. Twelve brachycephalic dogs were included. Grading of the clinical severity was done based on a 6-point grading score. Thoracic radiographs were used to calculate the frontosagittal and vertebral indices at the tenth thoracic vertebra and the vertebra overlying the excavatum. Correlation between the clinical severity score and frontosagittal and vertebral indices was evaluated using Pearson’s correlation coefficient. Typical pectus excavatum was recorded in the caudal sternum in seven dogs, with a mean clinical severity score of 1.7 ± 1.4, whereas in five dogs, atypical mid-sternal deviation was recorded with a mean clinical severity score of 3.8 ± 0.7. A strong correlation (r=0.7) was recorded between the clinical severity score and vertebral index in the atypical form, whereas a weak correlation (r=0.02) was recorded in the typical form (P<0.05). The clinical severity and degree of pectus excavatum was poorly correlated (r=0.3) in the typical form of pectus excavatum, whereas it was strongly correlated (r=0.9) in the atypical form. Pectus excavatum in dogs is associated with compressive cardiopulmonary dysfunction, which depends mainly on the site/type of deviation rather than the degree of deviation.

1 0 0 0 OA [地錦抄 20巻]

著者
伊藤伊兵衛 撰
出版者
須原屋茂兵衞
巻号頁・発行日
vol.[5], 1733
著者
石橋 源次 山形 知広 力武 史郎 滝口 靖憲
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.107-111, 2002-09-30 (Released:2011-01-31)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

鶏の鶏冠から抽出されたムコ多糖類のピアルロン酸を用いて, in vitroとin vivoにおける消化性および腸内細菌叢について検討した.1. ピアルロン酸は, 消化管内の消化酵素で消化されず, また, ラットに経口投与した場合, 糞中に排泄されなかった.これは, ピアルロン酸が内在する腸内細菌により発酵を受けると思われた.2. ピアルロン酸を摂取すると盲腸内のLactobacillusやBifidobacteriumが増加することが分かった.
著者
仲宗根 勇
出版者
JAPAN SECTION OF THE REGIONAL SCIENCE ASSOCIATION INTERNATIONAL
雑誌
地域学研究 (ISSN:02876256)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.203-211, 1978-10-30 (Released:2008-10-10)

It was the construction of military bases that had put the biggest impact on post-war Okinawan society. Construction and maintenance of bases for the U. S. Forces were to give signfiicant and overall changes in social, cultural, and economic conditions, as well as natural conditions, and resulted in the formation of present regional structures of population, land use, cities, and industries.The purpose of this paper is to point out some problematic ecnomic aspects of military bases in Okinawa and give suggestion for regional economic development.
著者
東田 有加 大橋 一友
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.153-159, 2014-04

本研究では周囲からのタバコ煙の曝露を受ける非喫煙妊婦(受動喫煙妊婦)の実態と原因喫煙者を検討した。5ヵ所の産婦人科クリニックを受診した823名の妊婦を対象とし,喫煙状況を自記式質問紙調査した。受動喫煙妊婦は妊娠初期54.7%,中期54.3%,末期56.5%であった。原因喫煙者は夫が最も多く,妊娠初期79.4%,中期75.2%,末期76.2%であった。試験紙による尿中コチニン濃度を用いてタバコ煙への曝露レベルを半定量的に評価し,高濃度曝露群と低濃度曝露群に分類した。受動喫煙妊婦の高濃度曝露のリスクを高める原因喫煙者について多重ロジスティック回帰分析で検討した。高濃度曝露率は妊娠時期による差はなかったが,高濃度曝露のリスクを高める原因喫煙者は中期では夫(OR 11.8, 95% CI 1.4〜100.5),末期では夫以外の家族(OR 4.6, 95% CI 1.3〜15.8)であった。職場の喫煙はどの時期でもリスク要因ではなかった。妊婦の受動喫煙,とくに高濃度曝露の予防のためには,妊娠時期に応じた原因喫煙者を妊婦に伝え,家庭内での完全禁煙をめざす指導を行うことが重要である。
著者
松浦竹四郎 著
出版者
巻号頁・発行日
vol.[28], 1860
著者
安東 恭一郎 結城 孝雄 村上 尚徳 鈴木 幹雄 福本 謹一 山口 喜雄 天形 健
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013

2015年度は、美術デジタル教科書活用の実施に向けて、デジタル教材の開発とその活用の為の理論構築、実践に向けての環境整備を行った。まず、デジタル教材を活用した学習モデルの構築として、デジタル教材として利用できるコンテンツの選定をおこない、美術教育の「鑑賞」領域に焦点を当てたデジタル教材開発を行った。同時並行に、これを裏付ける理論構築と実践に関する共同研究として、間テクスト性概念に基づいた学習活動の筋道を明らかにした。これらの研究成果を3学会で6本の発表を行い、そのうち2学会に4本の論文投稿を行った。
著者
一條 彰子 寺島 洋子 室屋 泰三 東良 雅人 奥村 高明
出版者
独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、国内外で行われている最新の美術鑑賞教育の理論と方法を整理したうえで、国内各地の美術館の所蔵作品を用いて、探求的な鑑賞プログラムを開発することである。研究初年度となる平成28年度は、国外(オランダ)美術館の先進的な取り組みを視察し、学校教育との関わりついて調査することができた。具体的には次のとおり。国外調査:オランダの主要な5つの美術館(アムステルダム市立美術館、ゴッホ美術館、アムステルダム国立美術館、ユトレヒト中央博物館、マウリッツハイス美術館)を訪問し、教育担当学芸員から次の点について説明を受け、ギャラリートークを視察した。1.鑑賞教育の理論と教授法、プログラムの種類、2.所蔵作品の特徴をどのように活用しているか、3.教育スタンダードをどのように反映させているか、4.学校連携のしくみや教員研修について、5.教育部の組織とスタッフ、6.課題と目標。さらにオランダで近年注目されているギャラリートーク理論「I ASK」について、発行元であるユダヤ歴史博物館よりハンドブックを入手し、オランダ語から翻訳を行った。これらのことから、オランダの美術館ではそれぞれのコレクションに明快に関連付けられた教育ミッションに基づき、ギャラリーでの鑑賞授業を、オンライン教材を用いた学校での事前学習や、美術館アトリエでの事後制作と組み合わせて展開していることが明らかになった。年度後半には、これらの調査成果を分析し、2年目以降に制作する鑑賞教材にどのように活かせるかを検討した。
著者
大森 馨子 五十嵐 由夏 和氣 洋美 厳島 行雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.432, pp.7-10, 2012-02-02
参考文献数
6

痴漢場面で触られることの多い身体背面部に提示された触覚情報の判断とその回答に対する確信度について,手のひらに提示された場合との比較検討を行った。さらに,触覚情報の動きの有無によって触判断や確信度が異なるのか検討した。その結果,手のひらで触判断を行う場合にくらべ,身体背面部における触判断の正確性および確信度は低下することが明らかとなり,触覚情報のみで判別することは難しい可能性が示唆された。また,動きの有無によって正答率に差は見られないが,確信度については動きがある場合に高まることから,動けばそれが何であるか分るはずだといった思い込みによって,誤認が増加している可能性が示唆された。