著者
松本 敏治 崎原 秀樹 菊地 一文 佐藤 和之
出版者
The Japanese Association of Special Education
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.263-274, 2014

本研究では、自閉症スペクトラム児(ASD)・知的障害児(ID)・定型発達児(TD)の方言使用について、国立特別支援総合研究所の研修受講者、および近畿・四国・九州の特別支援教育関係教員を対象にアンケート調査を実施した。さらに、高知市内の特別支援学校(知的障害)の教員に、担当する個別の児童生徒の土佐弁語彙と、対応する共通語語彙の使用程度の評定を求めた。また、調査1の回答者に対してASD・ID・TDへの自身の方言使用程度についてアンケート調査を行った。結果は、1)すべての調査地域でASDの方言使用はID・TDにくらべ少ないと評定された。2)高知においてASDの方言語彙使用は非ASDに比べ顕著に少なかった。3)教師による方言は私的な場面でのTDへの話しかけで多用され、学校場面でのASDおよびIDへの話しかけにおいては減少していた。これらの結果について、方言の社会的機能の側面から考察を加えた。
著者
陳 仲奇
出版者
島根県立大学
雑誌
総合政策論叢 (ISSN:13463829)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.149-170, 2001-03-31

The aim of this paper is to explain the complex mental structure of Shenxian theory (神仙節) in Taoism (道教) using spiritual historical analysis. Originally the primitive cult of immortality was seen in inland beliefs such as the Kunlun myth(崑崙神話). However, after f the Warring States Period in the middle of 4th century B. C., Haixian belief(海仙信仰) (e.g. the Legend of Penglai 蓬莱伝説) originated from countries in coastal areas, such as Qi (斉) and Chu(楚), and those beliefs became assimilated. Later, the Shenxian theory was supported by alchemy which was the high technology at that time and absorbed ancient Chinese folk beliefs, the Taoist school (道家) metaphysical views of nature alchemists' delusion of grandeur in the universe, tradition of techniques to attain Yangshenshu (養生術) since the Qin'Han(秦漢) dynasties, and outcomes of folk medicine. Then the eminent scholar GeHong (葛洪) in Eastern Jin(東晋) systematized and established the Shenxian theory. The Shenxian theory established by GeHong has theoretical and rationalistic tendencies. Especially the empirical and realistic thonght (that Shenxian is not innate but attained through trainings) and mundane spirit (seen in Dixian theory (地仙説) that Shenxian does not ascend heaven but stayed in this world for a long time) reflect the rationalistic and utilitarian values of traditional Chinese culture. From this perspective cultural characteristics of Taoism can be understood. The Shenxian belief(神仙信仰) for immortals was just a fantasy, but in that approach we see the Chinese active attitude toward nature. The theoretical foundation of Shenxian theory formed by GeHong was influenced by this anti-fatalistic natural philosophy. Compared with the Confucian (儒家) tradition, which is characterized by neglect of technology, awe of Heaven's will, respect for the teachings of ancestors and primary emphasis on texts the Shenxian theory in Taoism is unique.
著者
安藤英由樹 渡邊 淳司 杉本 麻樹 前田 太郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.1326-1335, 2007-03-15
被引用文献数
9

人間の平衡感覚(重力感覚や加速度感覚)に人工的に影響を与える方法として前庭電気刺激が知られている.前庭電気刺激は耳の後ろ(頭部乳様突起部)に装着された小型電極から微小電流を流すだけで,装着者に物理的な加速度を与えることなく平衡感覚に対して影響を与えることが可能であり,小型軽量インタフェースとして実装が可能である.本論文では,インタフェースを実装するうえでの設計指針を記すとともに,インタフェースとしての応用について,装着者への情報支援,前庭感覚付与による没入感・臨場感の向上,前庭感覚を含めたコミュニケーション,という3 つの視点から実現例を含めて示す.Galvanic Vestibular Stimulation (GVS) is known as a method of giving influence on sense of equilibrium. The vestibular system is stimulated by a weak current through an electrode placed on the mastoid behind the ear. Using GVS, we can realize a small and concise interface for affecting vestibular sensation. In this paper, we describe design theory of proposed GVS interface and novel applications from the following point of views, firstly information support, secondly improvement of sense of presence, thirdly communication media.
著者
角田 太作
出版者
国立国語研究所
雑誌
国立国語研究所論集 (ISSN:2186134X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.53-75, 2011-05

日本語には,(1)の構造を持った文がある。その例文は(2)から(4)である。(1) 体言締め文または人魚構文 [節]名詞 だ。(2) [太郎は名古屋に行く]予定だ。(3) [太郎は今本を読んでいる]ところだ。(4) [外では雨が降っている]模様だ。この種の文は奇妙である。意味の面では,例えば,(2)について言うと,太郎は人間である。予定ではない。統語の面でも奇妙である。[節]の部分は,(2)から(4)では,動詞述語文と同じ構造を持っている。しかし,文は「名詞 だ」で終わる。(よって,「体言締め文」と名付けた。)すなわち,前半は動詞述語文と同じ構造を持ち,後半は名詞述語文と同じ構造を持っている。(人魚に似ている。よって,人魚構文とも名付けた。)先行研究の中には,[節]の部分を連体修飾節とみるものがある。しかし,統語的な振る舞いを見ると,[節]の部分は連体修飾節とは違い,動詞述語文と同じである。(1)の構造の「名詞」の位置に現れる名詞は,意味・形態・統語の面で,文法化の過程を進んでいる。意味の面では,人魚構文の外で使う場合と意味が違うことが多い。形態の面でも,統語の面でも,名詞らしさを失っている場合がある。「自立語 → 後接語 → 接尾辞」の変化を遂げたと思われるものもある。
著者
栗原 久
出版者
東京福祉大学・大学院
雑誌
東京福祉大学・大学院紀要 = Bulletin of Tokyo University and Graduate School of Social Welfare (ISSN:18837565)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.109-125, 2016-03

カフェインはメチルキサンチン類に分類され、アデノシン受容体のブロックを介して、中枢神経系や末梢神経系に作用する。カフェインは単独ではなく、いわゆるエナジードリンク(energy drink)や鎮咳去痰薬の配合成分としたり、あるいはアルコール、交感神経刺激薬などと同時摂取されたりする機会が多い。本総説は、日常生活の中での嗜好品として、あるいは医薬品中の成分として摂取されているカフェインについて、その効果を報告した論文を総括し、過剰摂取による有害効果をもたらすことなく、安全に使用するための注意点を考察する。健常人では、1回摂取量が200 mg以内、1日摂取量が500 mg以内、激しい運動を行う場合はその2時間以上前にカフェイン単回摂取量が約200 mgまでであれば、安全性の問題は生じていない。エネルギー飲料(典型例では、2,000 mLボトル中に、カフェイン300~320 mg、タウリン4,000 mg、グルクロン酪酸2,400 mg含有)、あるいはカフェイン 200 mg未満+アルコール摂取量が0.65 g/kg (2単位)未満の摂取なら、カフェインの有害作用はほとんど認められていない。これら複数のデータの総括から、より安全性を考慮すると、成人での1日摂取量を300 mg (5 mg/kg)以内にとどめて摂取することが、カフェイン関連問題を生じることなく、その有益効果を受けることができるといえよう。
著者
高久 嶺之介 タカク レイノスケ Takaku Reinosuke
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.51-77, 2019-02-28

論説(Article)本稿は、第3代京都府知事北垣国道がその身を置いた鳥取人脈がどのようなものであったかを明らかにするものである。北垣は、もともとは但馬の豪農であったが、幕末の生野の変、そして幕末・維新の諸運動を通じて鳥取藩の人びととの接触を強め、後に鳥取藩士となる。本稿では、第1に松田道之との関係、第2には原六郎との関係、第3に河田景福との関係、第4に「鳥取池田家」との関係を通じてそのことを明らかにする。
著者
渡辺 恒夫
出版者
国際生命情報科学会
雑誌
Journal of International Society of Life Information Science (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.159-165, 2003-03-01

明晰夢(夢の中で夢であることを気付く夢)が実際に生じることが、実験的に検証された。4名の被験者が、夢見ていると気付いた時に夢の中で特定の行動をとることにより、ポリグラフ上に観察しうる合図を送り出すことに成功したのだった。うち2名はレム睡眠中に、他の2名は段階1中に合図を送信した。次に、明晰夢の起こる心理的条件を発見するために、明晰夢に関する質問紙を作成し、「アイゼンク人格目録」および「菅原の自意識尺度」と共に大学生を対象として調査を実施した。その結果、明晰夢経験頻度と人格特徴の間にはいかなる有意な関係も見出されなかったが、自意識尺度中の「私的自意識」の得点との間には、有意な正の相関が見出された。この結果は、多くの人々が、その人格特徴のちがいにかかわらず、私的自意識を日常生活の中で強化するような訓練を積むことによって明晰夢を見る能力を高めうるということを、示唆するものと思われる。
著者
永野 伸一
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌/ 日本頭頸部癌学会 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.475-479, 2004-10-25
参考文献数
5
被引用文献数
1

日本人の長い歴史性・文化性を無視し欧米から輸入された医療上の進言, 特に告知におけるマスメディア挙げての一つの図式的な世論誘導に, 医療の現場では混乱を起こしていると思う。インフォームド・コンセントを尊重するという事は, 患者さんが「死にたい」と発した時, 我々は患者さんを殺さなければならなくなる。しかしその患者さんの言葉は「本音」ではなく医師にもっと心配して欲しいという意思表示であり, 日本人特有の甘えによる屈折した表現なのである。その様な言葉を使う日本人の背景には仏教・神道を始めとする独特の宗教観があり, それは欧米のキリスト教圏の民族とは理解しえない面がある。マスコミの主導する医療上の進言は全て個人主義を目指したキリスト教圏の出来事であるが, 家族主義的ムラ社会を構築してきた日本民族は個人の確立を求めていない。死の淵に立った時, 求めるのはむしろ他者との関係であると私は考える。
著者
秋山 光和
出版者
国華社
雑誌
国華 (ISSN:00232785)
巻号頁・発行日
no.1011, pp.p3-26, 1978-05
著者
山田 哲哉 安部 隆士
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 = Journal of plasma and fusion research (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.82, no.6, pp.368-374, 2006-06-25
参考文献数
12
被引用文献数
10

「はやぶさ」ミッションの最終フェーズでは,小惑星のサンプルを搭載した小型カプセルが地球大気への高速再突入を行う.過酷な空力加熱環境を通過し減速された後,高度約10kmでパラシュートを開傘・緩降下し,地上にて回収される予定である.約12km/sの高速で地球再突入するカプセルが曝される空力加熱環境は非常に過酷で,カプセルは内部の小惑星サンプル,搭載機器を保護しつつ地上に到達せねばならない.空力加熱環境の把握と,それから内部を保護する熱防御システムの開発は,「はやぶさ」カプセルのキーテクノロジーの1つである.本稿は,「はやぶさ」カプセルの大気圏再突入をプラズマ現象の観点から整理し,関連の話題として,空力加熱の予測技術,加熱から機体を保護する熱防御技術,およびその試験方法等を紹介するものである.