著者
藤井 幸泰 正垣 孝晴 宮川 真国 渡邉 邦夫
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.595-602, 2015 (Released:2015-12-31)
参考文献数
18
被引用文献数
1

旧横須賀製鉄所の第1号ドライドックは,開渠後140余年を経過している。土丹層と呼ばれる更新世の泥岩で構成された白仙山を掘削して建設され,石材に安山岩を利用しているこの構造物は関東大震災にも耐えてきた。現在も使用されているドックであるが,一部の石材表面は風化によって侵食されている。石造文化財としての記録を目的とし,デジタル写真測量を用いたドック全域の記録活動を実施した。また同じく写真測量を侵食の進んでいる石材表面にも適用し,侵食量の測定を試みた。従来の侵食量測定は,野外において物差し等を用いて測定するのが一般である。写真測量等の三次元測定を実施することにより,物差しでは測定できない侵食量,すなわち体積も測定が可能である。侵食量の異なる石材表面を比較することにより,風化による石材表面の侵食過程を明らかにすることが出来た。
著者
山口 絢子 猪又 直子 広門 未知子 嶋倉 邦嘉 塩見 一雄 池澤 善郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.49-53, 2007
参考文献数
12

20歳女性.乳児期よりアトピー性皮膚炎.幼少時より生魚を接触した際に〓痒を認めたが経口摂取は可能であった.2年前に回転寿司屋でアルバイトを開始してから,数滴の魚液に接触しただけで手の腫脹が出現した.1年前からはシタビラメやサンマ,アジ,サケ,ホッケ,ブリを加熱調理して摂取時に口唇〓痒や腫脹,アナゴ摂取時に喉頭閉塞感や嗄声,エビやカニを摂取時に口唇腫脹,アワビに似た貝を摂取時に喘鳴や嗄声,呼吸困難,全身性蕁麻疹が出現した.特異IgE抗体やプリックテストでは硬骨魚綱,甲殻鋼,軟体動物等多種で陽性.焼シタビラメによる口含み試験では口唇違和感が出現し,経口負荷試験では口唇腫脹や喉頭閉塞感,嚥下困難感,腹痛が出現した.パルブアルブミンとコラーゲンに対する血清特異IgE抗体は,ELISA法にて検出.以上よりシーフードによる職業性の接触蕁麻疹と口腔アレルギー症候群と診断した.
著者
成田 聖子
出版者
日本地理教育学会
雑誌
新地理 (ISSN:05598362)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.24-34, 1972-09-25 (Released:2010-02-26)
参考文献数
3

Kumano, 20 kirometer from Hiroshima City, is an agrarian village surrounded by mountains and dependent on small scale paddy fields. Village people had to work away from home for housekeeping out of seasen of farming in the late Edo era, before brush manufacturing was introduced in 1846.In recent days the manufacturing is an important side job of the village farmers, especially women. They produce about 80% of the national amount. After the Meiji Restoration the manufacturing has been managed under the control of the wholesale merchants. The handicraft of painting brush is the principal occupation for some villagers, though they are a few. The production mainly still depends on farmers leisure season and much amount of product are sold for a new year or the begining of school semester.Although the materials of manufacturing all are brought from other districts, the handicraft develops and demand and supply of products keep balance.
著者
上原 義子
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.164-169, 2011 (Released:2013-03-02)
参考文献数
15

近年の多くの研究では,付加価値戦略としてブランド付与や経験価値,物語性の付与を行う重要性が説かれている。だが,例えば,伝統的商品である椿油にはこうした戦略が見られない。本稿では,こうした商品に対する消費者の視点に接近することで,新たなマーケティングの方向性を探索している。具体的には,近年になって改めて注目されている伝統的商品に着目し,それに関する消費者の着眼点への接近を試みた。調査では,インターネット口コミサイトに集められている椿油の感想に対してテキストマイニングを実施した。
著者
大東和 武司
出版者
国際ビジネス研究学会
雑誌
国際ビジネス研究 (ISSN:18835074)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.3-13, 2015 (Released:2015-10-20)
参考文献数
18

本稿では、成長・発展につなげている「地域企業」がそれぞれに独自の発想を活かして経営活動を行い、どのようにして事業転換・事業拡大につなげていったのかについて検討する。とりわけ、そのベースとしての「ルーチン」、そしてその地域企業がもっている伝統、ないし伝統技術をいかに創造的に「翻訳」したのかについて着目し、新市場の獲得・普及への途を探ることとする。企業が存続していくためには、少なくとも何らかの変革(イノベーション)が求められる。つまり、変革への創造が求められる。伝統は、いわば新しく創りあげられたものの積み重ねである。逆説的に言えば、伝統のなかに革新、創造のシーズがある。ここでは、伝統的な中小企業、いわば地場企業である広島・熊野の化粧筆・白鳳堂を事例として取り上げて検討する。
著者
根本 俊和 青木 秀夫 池 愛子 小林 節雄
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.22, no.10, pp.635-639,659, 1973
被引用文献数
5

本邦においてはゴキブリを起因抗原とする気管支喘息はまだ報告されていない.ゴキブリ(クロゴキブリ)の虫体成分から作製された抽出液を用い, 39例の喘息例に皮内反応を行ったところ, 4例(10%)のものが即時型陽性であった.皮内反応陽性のもの3例に吸入誘発試験を行ったところ, 1例のものにゴキブリ抽出液(16PNU 1ml)の吸入呼吸困難と乾性ラ音が出現した.症例:36才, 主婦症例は1961年以来呼吸困難発作を起こし, 最近ゴキブリの臭いをかぐと息苦しくなるのに気づいている.26種類の抗原抽出液で皮内反応を行ったところ, 室内塵, ゴキブリ, ブロンカスマベルナの3抽出液に陽性であった.Prausniz-Kustner反応を室内塵とゴキブリについて行い, 両者とも陽性であったが, 熱処理血清で陰性であった.中和試験を行い, ゴキブリと室内塵とは互いに交叉しないことが証明された.ゴキブリ抽出液の吸入により, FEV_<1.0>は1620mlから1160mlと28%の減少をきたした.
著者
森上 亜城洋 西田 裕介 三谷 美歩 中村 昌樹
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.1027-1031, 2014

〔目的〕排泄行為と下腿最大周径,身体組成および栄養状態の間の関係性ならびに影響度から排泄行為能力に与える要因を把握することとした.〔対象〕後期高齢入院患者66名.〔方法〕排泄行為(バーサルインデックス)と,下腿長を100%とする腓骨頭下端から26%の部位での下腿最大周径,身体組成(予測身長,体重,BMI,筋肉量),および医科健診での栄養状態(血清アルブミン)との間の関係性を,相関および回帰分析により調べた.〔結果〕排泄行為は下腿最大周径と身体組成と栄養状態との間に有意な相関関係を示した.重回帰モデルにおいて排泄行為に影響する要因として下腿最大周径とAlbが選択された.〔結語〕下腿最大周径とAlbにより排泄行為能力を予測できる. <br>
著者
樋口 達郎
出版者
求真会
雑誌
求真 (ISSN:18837123)
巻号頁・発行日
no.20, pp.15-34, 2015-03
著者
内山 恵典 森上 亜城洋 西田 裕介
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.A0042-A0042, 2008

【はじめに】理学療法の対象となる高齢者の栄養問題の1つに蛋白質・エネルギー低栄養状態(PEM)が挙げられる。PEMは創傷治癒の遅延を招くだけでなく、入院期間の延長や死亡率にまで関係するとされている。これまでの研究で、日常生活動作(ADL)と血清データやBody Mass Index(BMI)との間に関係性は確認されている。一方、高齢者は脊柱の変形などの身体特性から身長を正確に測定することが困難であることが多い。また、ADL状況による栄養状態の変化は、対象者の生活の質にも大きく関わってくると考えられる。そこで本研究では、身長の予測式を用いてBMIと血清アルブミン値との関係性について、ADLの指標であるBarthel Index (BI)を用いて重症群と軽症群に分類し、比較検討した。<BR><BR>【対象と方法】対象は、65歳以上の磐田市立総合病院および公立森町病院における入院患者24名(男性10名・女性14名、平均年齢80.7±6.6歳)とした。対象者(家族含む)には本研究の同意を文書及び口頭で得た。また、本研究は、それぞれの病院に設けられた倫理委員会により承認を得て実施した。主な測定項目は、栄養状態の把握に血清アルブミン値(Alb)をカルテより調査した。また、栄養状態を反映する身体組成の評価として予測身長を用いたBMIを算出した。予測身長は、久保らによる回帰式「身長=2.1×(前腕長+下腿長)+37.0」を用いた。前腕長は、肘90度屈曲位で肘頭部近位部から尺骨茎状突起遠位部を計測し、下腿長は、腓骨頭近位部から外果遠位部までを測定した。データの比較には、対象者をADLの状態からBIが60点未満の者を重症群、60点以上の者を軽症群の2群に分類し、それぞれの群においてAlb、BMIの関係性をピアソンの積率相関を用いて分析した。また、各測定項目の群間の比較には、対応のないt検定を用いて比較した。有意水準はともに5%未満とした。<BR><BR>【結果とまとめ】BIの平均は、全体で60.6±33.4点、重症群で27.0±19.0点、軽症群で84.6±15.4点であった。Alb値の平均値と標準偏差は、全体で3.3±0.53g/dl、重症群で3.09±0.50g/dl、軽症群で3.57±0.47g/dlであった。BMIの平均値と標準偏差は、全体で20.8±3.4、重症群で20.1±3.0、軽症群で21.2±3.6であった。群間の比較では、BIが重症群で有意に低くなった以外は、全ての項目で有意差は認められなかった。一方、AlbとBMIとの関係性ついては、軽症群で、r=0.47と有意な関係性が認められ(p<0.05)、全体と重症群での関係性は、それぞれr=0.2、r=0.36と有意性は認められなかった。以上のことから、栄養状態を評価する際、予測身長を用いたBMIは軽症例に対して応用することが可能であると考えられる。
著者
森上 亜城洋 内山 恵典 西田 裕介
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20

【はじめに】理学療法評価での栄養評価は、対象者の全身状態を把握すると共に、活動度の把握やプログラムの作成において重要となる。また、理学療法評価の中で広く応用されている栄養評価に Body Mass Index(BMI)がある。しかし、高齢者では脊柱の変形や活動度の低下により適切な身長を計測することは困難なことが多い。そこで本研究では、予測身長を用いてBMIを算出し、身体組成における栄養指標の1つである下腿周径との関係を検討した。さらに、下腿周径は活動度と関連することが知られていることから、Barthel Index(BI)との関係性についても検討した。<BR><BR>【対象と方法】対象は、65歳以上の入院患者24名(男性10名・女性14名、平均年齢80.7±6.6歳)である。対象者(家族含む)に研究内容と倫理的配慮について文書及び口頭にて説明し、研究参加の同意を得た。また、本研究は各施設の倫理委員会の承認を得て実施した。予測身長は、久保らによる回帰式「2.1×(前腕長+下腿長合計)+37.0」を用いた。前腕長は、肘90度屈曲位で肘頭から尺骨茎状突起遠位部までを計測し、下腿長は、膝90度屈曲位で腓骨頭近位部から外果遠位部までを測定した。体重は立位もしくは車椅子対応型体重計にて測定し、予測身長と合わせてBMIを算出した。下腿周径は、腓骨頭から外果中央部の腓骨頭から26%の膨隆部位を測定した。日常生活活動ならびに障害の程度を把握するためBIを用いた。統計的手法にはピアソンの相関係数の検定を行い、5%未満を有意と判定した。<BR><BR>【結果】各項目の平均値を示す。前腕長は22.5±1.8cm、下腿長は29.5±2.2cm、予測身長は146.5±8.1cmであった。BWは45.0±9.8kgであり、BMIは20.8±3.4(男性54±31.4、女性65±35.1)であった。26%下腿周径は28.4±3.8cmであった。相関係数ではBMIと26%下腿周径下腿最大周径はr=0.9であり、男性の26%下腿周径とBIはr=0.64と有意な関係を認めた(ともにp<0.05)。<BR><BR>【まとめ】本研究の結果より、栄養評価であるBMIと26%下腿周径との間には有意な関係性が認められた。このことは、脊柱の変形や活動度の低下等により身長の測定が困難な対象者においても、予測身長を用いることで栄養評価が可能になることがわかる。また、下腿周径は、体重やADLとの相関が高いことが報告されている。本研究においても、男性では26%下腿周径と身体活動状況を反映しているBIとの間に相関関係が認められた。以上のことより、予測身長を用いたBMIは栄養状態を反映し、男性においては26%下腿周径と身体活動状況との間に関係性があることから、26%下腿周径は栄養状態に加え、身体活動状況も反映する指標として、有効な理学療法評価指標になると考えられる。
著者
水上 知行
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本で初めての天然ダイヤモンドの実態を理解するため、産地の地殻やマントル由来の捕獲岩を用いて、起源マグマと熱・物質構造の観点から岩石学的な研究を行った。その結果、(1)多量のマグマ生成によるマントルの枯渇と上方へのマグマ供給、(2)シリカに富む流体もしくはメルトによるマントルメタソマティズム、(3)深部由来のアルカリ火山岩マグマとマントルの反応を通じた斑れいノーライトの形成、という複数のマグマ活動が認識でき、西南日本のリソスフェアの構成が大きく変化してきた事実が明らかとなった。(3)は、西南日本全域のアルカリ玄武岩活動と関連づけられる。このマグマの起源深度の解明が日本の天然ダイヤモンドの成因への制約となるだろう。
著者
高 継芬
出版者
九州看護福祉大学
雑誌
九州看護福祉大学紀要 = The journal of Kyushu University of Nursing and Social Welfare (ISSN:13447505)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.3-13, 2014-03

本稿が取り上げた夏目漱石は、日本明治時代の文豪である。漱石は幼少期から漢詩漢文を精読し、教養を深めていた。漢文学を修得した彼は、そこからどのような影響を受けたか、漢文学にどのような影響されたのか、彼の作品及び彼の思想両面から論じていくこととする。 漱石はイギリス留学経験を持ち、西洋文明にも影響されたが、日本文学、西洋文学よりも漢文学を終始愛し続けていた。漢文学だけではなく漢文学の背景にある思想、すなわち儒教の思想にひときわ感化されていた。 漢文学では、政治、倫理道徳観念がもっとも重視されている。漱石の作品を貫いている思想は、漢思想と適するものがある。漱石は日本の文明批判家でもあり、社会批判家でもあり、明治社会に対する批判が漱石の重要なテーマであるといえる。 中国の読者が漱石の作品に親近感が湧きやすい理由は、作品の中に親しみやすい中国の漢詩や漢文の表現が多く見て取れることだけではなく、作品の行間から読み取れる彼の思想すなわち漢文学にある儒教思想と同じ思想が流れているからであり、漢文学は漱石の精神的創作の礎ともいえる。We discuss how Soseki was influenced by Chinese literature, at which he was excellent. His view point is from his work and thought. Although Soseki made a stay while studying in Britain and was influenced by Western civilization, he always continued to love Chinese literature rather than Japanese or Western literature. He was touched by not only Chinese literature, but also the thought of Chinese literature, i.e., the thought of Confucianism. Chinese literature places a great emphasis on politics and a sense of ethic and morality. The thought running through Soseki's work is the same as the one in Chinese literature. The thought which has pierced through Soseki's work is the same as Chinese literature thought. He quotes Chinese writings and Chinese poetry in his works. Soseki was a critic of Japanese civilization and society. His many works criticize the civilized society of Meiji and strongly are criticizing war. To criticize Meiji society is his important theme. Soseki also has a civilization criticism house in Japan. It is also a social criticism house. Chinese literature is the foundation of Soseki's spiritual creation. Furthermore, The reason why the Chinese readers easily feel an affinity with his work is that they can not only see the familiar expression of Chinese poetry and literature in his work, but also notice that his idea is the same as the thought of Confucianism, which runs through the Chinese literature by reading between thelines of his work. It can be said that the Chinese literature is the foundation of Soseki's spiritual creation.