著者
坂本 邦暢
出版者
東洋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

研究計画にそって、16世紀から17世紀にかけての、プロテスタント圏での形而上学・神学の展開を、幾人かの著述家の著作の分析を通して追跡した。まず年度前半には、プロテスタント圏での哲学・神学教育をおおきく決定づけたフィリップ・メランヒトンの著作を分析し、彼が哲学を、神の存在を証明するための重要な集団として位置づけていたことを確認した。次世代のルター派哲学者のヤーコプ・シェキウスも、哲学が神学に寄与できると考えていたが、寄与の内実については、メランヒトンと異なる想定をしていた。シェキウスにとって対処せねばならなかったのは、三位一体論を否定する「異端」の存在であった。この異端を論駁するためには、哲学が不可欠だとシェキウスは説いたのだった。以上の成果は、「聖と俗のあいだのアリストテレス スコラ学、文芸復興、宗教改革」(『Nyx』第4号)として発表した。年度後半は、シェキウスがターゲットとした反三位一体論側の著作を検討した。ファウスト・ソッツィーニは、聖書解釈上の権威を教会がもつことを否定し、理性と文献学にのっとって聖書を読む必要を唱えた。その結果、三位一体と自然神学を否定する学説に到達したのだった。調査の結果、彼の神学は、やがてアルミニウス派の教説の一部と合流し、デカルトの新哲学が現れるにあたっての背景を形成するにいたったことが、明らかとなった。以上の成果は、「デカルトに知られざる神 新哲学とアレオパゴス説教」(『白山哲学』第52号)として発表した。
著者
山本 真由美 瀬部 あゆみ 島 治伸
出版者
徳島大学
雑誌
徳島大学総合科学部人間科学研究 (ISSN:09199810)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.109-128, 2009

As a part of the special needs education,there is a cooperative action withthe Education Committee of Tokushima on the project of dispatching studentvolunteers to the elementary and junior high schools for learning support.In order to know the desires and expectations of the teachers of thoseschools who sent students volunteers,a questionnaire survey was made.98 % of the student volunteers were recognized in elementary schools and100% within junior high schools. The results of the survey show four items inwhich the elementary and junior high schools coincide. They are as follows :"Individual support to the pupils with difficulties in learning","support to thepupils who cou1d not concentrate in the class nor in the study","appropriatesupport to the pupils when they need guidance","tell the teacher the situationof pupils". More specifically,as the individual differences among pupils growwider, guidance for everyone becomes difficult. Moreover, because theexpectations of this support for the students must be achieved within a limitedspan of time,s ome people believe that only some support can be realized but notall.Although the existence of students volunteers is known by theteachers, there are differences among the teachers as to which type ofsupport can be expected from the students. Therefore, from now on, itbecomes necessary to consider which type of support the students have toglve.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1227, pp.104-106, 2004-02-02

「TSUTAYA」ブランドで店を展開する業界首位のカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を追撃し、現在500弱の店舗網をできるだけ早く2倍にすると株式上場後に宣言したのが、ゲオをここまで育て上げた創業社長の遠藤結城である。「仙台の牛タン」の仕掛け人 遠藤の人生を語るうえで、「魚」というキーワードを外すことはできない。
著者
山崎 清巳
出版者
久留米工業大学
雑誌
久留米工業大学研究報告 (ISSN:03896897)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.71-75, 1997-12-20

This paper will investigate whether or not the important English terminologies of "species" and "genus" are translated correctly into Japanese. If we don't possess proper Japanese words for these terminologies, then our Japanese-language contributions to related fields will remain severely limited. "Species" and "genus" are very important terminologies in the fields of philosophy and logic. "Species" is included within "genus" according to Aristotlian logic. "Species" comes from "eidos" and "genus" from "genos" of ancient Greek. "Eidos" has "to see" and "genos" has "born and to produce" as etymological meanings. "Eidos" is fitted to "SHU (種)" and "genos" to "RUI (類)" in Japanese. But "SHU" means "seed"; "RUI" means "similar and hard to distinguish between". Therefore, "genos" should be fitted to "ZOKU (属)" in Japanese, because "ZOKU" means "born and blood relation". If we refit "eidos" to "RUI" and "genos" to "ZOKU", then many problems are overcome. For example, "RUI" and "ZOKU" become the verbs "RUIsuru" and "ZOKUsuru", respectively, while "the human species" closely corresponds to "JIN-RUI" etc. And we can find many cases in which "eidos" better corresponds with "RUI" and "genos" with "ZOKU". If we refit "SHU" to "RUI" and "RUI" to "ZOKU", then we can more easily understand "Categories" and "Metaphysics" by Aristotle, or Japanese books such as "ZO WA HANA GA NAGAI" by Mikami, A.
著者
三浦 綾希子
出版者
中京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

フィリピン系ニューカマー第2世代とその母親たちに対するインタビュー調査を行った。対象者たちには2010年より断続的にインタビュー調査を行っており、今回の調査もその延長上にある。青年期へ突入した対象者たちのインタビューからは、フィリピン人母との関係性が成長するにつれて変化していることが分かった。特に、男女交際等について母親から干渉されることが多くなっており、それに対して反発する者もいれば、うまく交渉しつつやり過ごしている者もおり、その対応の仕方にはバリエーションが見られた。しかし、いずれの場合も母親と娘たちは親密な親子関係を築いており、フィリピン社会の特徴とされる「家族中心主義」が維持されている様相が見て取れた。また、コミュニティ内の人間関係が母親たちの娘への干渉を強める動機にもなっていることも明らかとなった。母親たちはコミュニティ内で早期に妊娠した者たちのことを念頭におき、娘たちが同様のことをしないよう、厳しく管理する。一方で娘たちは、コミュニティ内のメンバーと自らをうまく差異化することによって母親からの干渉にうまく対応しようとしていた。思春期以降、特に女性たちは親から性行動に対する干渉を受けることが海外の先行研究でも明らかにされているが、類似の傾向が日本でも見て取れた。ただし、日本の場合、両親というよりも母親からの干渉が強いことが特徴的であり、国際結婚家庭が多い日本の状況を反映したものであるといえそうである。
著者
臼田 信光 深澤 元晶 森山 陽介 厚沢 季美江 橋本 隆 山口 清次 深尾 敏幸 田中 雅嗣 下村 敦司
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

高脂血症による引き起こされる動脈硬化と脂肪肝は、虚血心疾患や肝硬変などの重篤な生活習慣病のリスクファクターとなる。細胞内における脂質代謝の改善により、高脂血症の予防と治療が行える可能性がある。ミトコンドリア脂肪酸β酸化系は全ての脂肪酸を異化し、エネルギー産生で中心的な役割を演ずるが、未解明の部分が多い。全身臓器・培養細胞を材料として、分布とPPARを介する代謝制御について調べ、生理的な意義を研究した。

1 0 0 0 OA 七福神辰年圖

著者
暁翠 [画]
出版者
武川卯之吉
巻号頁・発行日
1891
著者
石黒 澄衞
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

花粉の飛散をコントロールすることは、遺伝子組換え植物の花粉が環境に放出されるのを防ぐために必須の技術であるとともに、現代病ともいえる花粉症を防ぐためにも欠かせない技術である。本研究では次の3つの研究を行い、それぞれ成果を挙げた。1.葯の裂開に異常を示し、花粉の飛散が起きないようなシロイヌナズナの突然変異体をスクリーニングし、15個の突然変異体を単離することができた。そのうち6個について原因遺伝子を同定した。原因遺伝子はDAD1,AOS, OPR3,COI1で、いずれもジャスモン酸の生合成・シグナル伝達に関与する既知の遺伝子座であったが、異なるエコタイプをバックグラウンドに持つアリルを手に入れることができた。これらのアリルは、今後サプレッサー変異等のスクリーニングを行うのに有用なツールである。2.dad1突然変異体と野生型の蕾を用い、蕾の成熟に伴ってDAD1依存的に発現が上昇する遺伝子の検索をDNAマイクロアレイを用いて行った。91個の遺伝子を同定した。3.ジャスモン酸は、リパーゼの働きで生成したリノレン酸を出発物質として生合成される。シロイヌナズナの蕾ではDAD1がリパーゼとして働いて満の裂開に必要なジャスモン酸を供給するが、ジャスモン酸の傷害誘導に関与するリパーゼは未同定である。これを同定することを目的として、DAD1類似遺伝子の解析を行った。その結果、DAD1自身が、DAL6とともに傷害誘導時のジャスモン酸生成にも大きく寄与しているらしいことがわかった。一方、DAL2,DAL3,DAL4の関与も疑われ、この点に関してはさらに解析が必要である。
著者
鈴木 孝憲 沢康 中夫 黒沢 功 神保 進
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.605-608, 1987-04

A 29-year-old man noted a wart around the external urethral orifice. The lesion was diagnosed as condyloma acuminata and he had the tumor excised and circumcision on September 10, 1985. He complained of urethral bleeding on December 21, 1985. Physical and endoscopic examination revealed papillo-granular condyloma acuminata at the distal urethra. He received transurethral fulguration on January 17, 1986 and intraurethral instillation of 5-fluorouracil cream weekly. The lesions were successfully treated.
著者
井谷 昌功 半田 修弘 小林 秀匡 谷 茂
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.265-269,a2, 2000

「ため池防災データベース」は, 溜池の防災に資する基本的なデータの集積を図ることを目的として, 平成7年度, 全国の45自治体, 7農政局および北海道開発局の委託により整備を実施した。その後, 溜池防災関連情報の蓄積が継続的に行われ, 現在, 登録されている溜池数は8万件以上に達している。本データベースの震央検索を利用して, 96年6月以降に震度4以上の地震があった山口県や岩手県などにおいて, 迅速な点検作業に有効利用されたという実績を得ている。<BR>平成10年度にバージョンアップした内容および緊急時の活用事例について説明し, たあ池防災データベースの今後の展開について報告した。
著者
土方 洋一
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.30-37, 2007

伊勢の斎宮寮において在原業平と斎宮とが密通したという伝承は、もともと創作された話であり、フィクションであることを前提として記憶されていたと考えられるが、時代が下ると、一部においてこの出来事が事実として取りなされ、二人の間に産まれた男子が高階氏の嗣子となったという伝承を派生させることになる。高階氏の血筋に関わるこの伝承は、従来藤原行成の日記『権記』に初出すると考えられていたが、『権記』の問題の記事は後時に加筆されたものであり、この風聞自体はおそらく白河院政期頃に発生したものではないかと考える。この高階氏にまつわる伝承は、一つの伝承から新たな風聞が派生することの例として、また成立の事情と年代が異なる伝承が、文献の上では平準化され、その地層の違いが見えにくくなる例として、風聞の発生とその伝承の過程を考える上で興味深い問題を提示している。