著者
福井 淳
出版者
慶應義塾福澤研究センター
雑誌
近代日本研究 (ISSN:09114181)
巻号頁・発行日
no.22, pp.103-131, 2005

特集・交詢社創立百二十五年交詢社は「互二知識ヲ交換シ世務ヲ諮詢スル」ことを目的として、一八八○ (明治一三)年一月二五日に結成された日本初の社交クラブである。しかし、折しも自由民権運動の高揚期であり、結成直後に『朝野新聞』が「府下にて政談を為す嚶鳴社交詢社…」(二月七日付雑報)と報じたように、当初から自由民権運動の一翼を担うとの世評があった。実際、三田演説会などを生んだ福沢諭吉が最高位の役員たる常議員議長に就いて陣頭指揮し、常議員にも藤田茂吉・矢野文雄・箕浦勝人ら民権家として鐸々たる門下生たちが並ぶ姿は、福沢的民権諭を実践する運動体とみなされてもいたしかたがない側面があった。福沢は、結成間もない二月九日の芝青松寺の小会で、政談が盛んなこの時期ゆえ交詢社を「政談会社ト思フモノモアラン」とか、= 種ノ政党ト誤認スルモ計リ難シ」と危惧する演説を行い(『交詢雑誌』第四号、八○年三月五日付、「小会記事」)、その後八二年四月二二日の明治会堂での第三回交詢大会でも「政党ハ政党ナリ交詢社ハ交詢社ナリ」とその違いを強調する演説を行って、世評を強く否定している(『交詢雑誌』第八二号、八二年五月五日付、「福沢諭吉君演説ノ記」)。ただし、そうはいっても、福沢も「筍モ社員タル人物ニシテ政治ノ思想ナキモノアランヤ」として、社外での「時ト処ト法トヲ誤ルナキ」関与は当然のこととして奨励した(『交詢雑誌』第三七号、八一年二月五日付、紀年会「演説」)。事実、交詢社副規則は、毎年の大会、年四回の小会において「政事二関スル問題ヲ議決スルコトヲ得ズ」と公的な会合での政談を禁じる(第二章第一九款) 一方で、交詢社社則は、「重要ノ時事二付疑問アル社員」による「演説討論」の催しを常議員長の許可によって認める(第五条第八節)こと、すなわち政治的な「演説討論ノ私会」(第五条第九節)の開催を許したのである。さらに「知識ヲ交換シ世務ヲ諮詢スル」回路として機関誌『交詢雑誌』を発刊し、「各社員本誌発出ノ旨趣ヲ了シ文学、法律、政治、経済、商買、工芸、農業、其他何事二限ラス其聞見スル所其講明スル所ヲ記シテ本局二送」るよう、政治も含めての情報や質問を全国の社員たちに促し(『交詢雑誌』第一号、八○ 年二月五日付、「緒言」)、また同誌に政論を掲げた。このように、交詢社はもちろん公然たる政治結社ではなかったが、社公認の私的会合で政談を許し、全国の政治的情報等は求め、発信する、いわば政治を内包する社交クラブ、というべきものであった。この複雑な構造が、結成当時から交詢社と自由民権運動の関係を分かりにくくさせてきた原因であったといえよう。さて、交詢社と民権運動の関係について言及した研究は「私擬憲法案」を扱ったものを中心に決して少なくないが、まとまった研究としては、発展する愛国社路線に「悼さすため」に創立され、その方向で全国的組織活動を進めたとする後藤靖氏の研究や民権期「交詢社員名簿」の作成があるにすぎない。また、交詢社編集・発行の『交詢社百年史』(一九八三年) は数少ない史料を駆使した労作ではあるが、通史である限界から民権運動に関する掘り下げは十分ではない。このように、交詢社と自由民権運動の関係についての研究はきわめて乏しいといわざるをえない。そこで本稿は、交詢社と民権運動の関係についての多くの明らかにすべき課題から、今後の研究の基礎となる問題をいくつか選択し、それらを努めて実証的に検討することを目的とする。史料としては『交詢雑誌』を中心に、時期と地域は結成された一八八○ 年から八二年にかけての草創期の東京での活動に絞り、当該テーマに迫ろうというものである。

1 0 0 0 OA 駿河記

著者
桑原藤泰 著
出版者
加藤弘造
巻号頁・発行日
vol.上巻, 1932

1 0 0 0 OA お知らせ

著者
遠藤 一佳 広報委員会 福村 知昭
出版者
東京大学大学院理学系研究科・理学部
雑誌
東京大学理学系研究科・理学部ニュース
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.14-15, 2013-07

速水格先生のご逝去を悼んで/東京大学大学院理学系研究科・博士学位取得者一覧/人事異動報告/東京大学理学部オープンキャンパス2013は2日間開催/あとがき
著者
杉浦 義典
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.191-198, 1999-06-30

心配には問題解決のために能動的に制御された側面(問題解決志向性)と制御困難性という2つの側面が存在している。本研究では両者の関連を因果分析によって検討した。心配のプロセスをとらえる質問紙を大学生359名に実施したデータを, 共分散構造分析によって分析したところ, 問題解決志向性は制御困難性を抑制する効果とともに, 問題が解決されないという感覚(未解決感)を強めることを通じて, 制御困難性を促進する効果ももっていることが見出された。問題解決志向性から制御困難性へのこのような正負の効果が相殺しあって, 両変数はほぼ無相関であった。さらに, 心配の問題解決志向性は普段一般の積極的な問題解決スタイルを反映していること, 問題解決の自信の低さや完全主義という性格特性が未解決感を強めることが見いだされた。問題解決にかかわる変数から構成されるモデルが, 心配の制御困難性の分散の約31%を説明していたことから, 問題解決に着目した理論化および臨床的介入が有効であることが示唆された。
著者
杉浦 義典
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.271-282, 2002
被引用文献数
7

心配は, 制御困難な思考であると同時に, 困難な問題を解決しようとする動機を反映している。先行研究では, 問題を解決するための方略 (問題焦点型対処方略) の使用が, 思考の制御困難性を強める場合力あることが見いだされている。本研究では, 問題焦点型対処方略と思考の制御困難性との関連を規定する要因として, 問題解決過程を評価, 制御する思考 (内的陳述) に着目して検討した。大学生177名を対雰とした質問紙調査の結果, 問題解決への積極性や粘り強さをしめす自己教示 (考え続ける義務感) と問題解決過程に対する否定的な評価 (未解決感) が, 問題焦点型対処方略と思考の制御困難性の関連を媒介していた。考え続ける義務感と未解決感は, いずれも思考を持続させるような内容の変数である。これらの結果から, 動機的な要因による思考の持続が, 思考の制御困難性の重要な規定要因であることが示唆された。
著者
杉浦 義典
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.186-197, 2001-06-30
被引用文献数
1

心配は, 制御困難な思考であると同時に, ストレスへの対処方略でもある。本研究では, 心配がどのような性質の対処方略なのかを調べるために, 情報回避, 情報収集, 解決策産出という3つの対処方略とストレスに関する思考の制御困難性との関連を検討した。成人134名を対象とした質問紙調査の結果, 情報回避, 情報収集, 解決策産出のいずれもが思考の制御困難性を増強し得ることが示された。さらに, この関連はそれぞれの対処方略のもつストレス低減効果とは独立であった。また, 性格特性によって, 対処方略の使用が思考の制御困難性に及ぼす影響が異なることが分かった。結果を, 心配のメカニズムのモデルに照らして考察し, 問題焦点型対処に分類される情報収集と解決策産出については, 動機的な要因による思考の持続が思考の制御困難性を規定するのに重要である可能性を示唆した。
著者
新小田 春美 姜 旻廷 松本 一弥 野口 ゆかり
出版者
九州大学
雑誌
九州大学医療技術短期大学部紀要 (ISSN:02862484)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.97-108, 2002-03
被引用文献数
2

本研究は, 産前7週から産後15週間にわたって連続した26名の母親と出生から14週齢の乳児12名および年齢・産歴をマッチングした12名の非妊産婦(対照群)の睡眠日誌の解析から, 産後の母親の睡眠・覚醒行動の変化や夜間における母親と乳児の覚醒行動の同期性および母親の夜間覚醒と疲労感との関連性などについて検討した。母親の夜間中途覚醒は, 乳児の授乳・排泄などの世話に殆どが費やされていた。出産後の早い週ほど夜間睡眠の乱れが大きく, 乳児の睡眠・覚醒リズムの発達に伴って母親の中途覚醒時間も暫時減少した。母親の頻回の中途覚醒は, 産後9週ないし10週頃まで持続するが, 産後14週に至っても対照群に比し有意に増大していた。入眠状態, 熟眠感, および起床気分の不調の訴え率は, 妊娠末期から産後7週ないし8週頃まで有意に高かった。疲労感の訴え率は, 産後10週頃まで高いレベルを維持しその後やや減少したが, 産後15週にいたっても対照群に比して有意に高かった。「頭が重い」, 「眠い」, 「目が疲れる」, 「肩がこる」の訴えスコアーは, 産後どの週にあっても有意に高かった。以上の結果から, 母親の夜間陸眠の乱れは, 産後の早い週ほど大きく, 乳児の睡眠・覚醒リズムの発達にともなって, 暫時改善されていくとは言え, 疲労は産後15週に至っても残存するものと推測された。
著者
大滝 由一 長谷川 博
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:08272997)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.522-523, 2004-01-20

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
著者
花岡 利昌
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.29, no.8, pp.493-503, 1978-12-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
21
著者
岡田 威海
出版者
近畿大学大学院
巻号頁・発行日
2006-09-14

報告番号: 乙16598 ; 学位授与年月日: 2006-09-14 ; 学位の種別: 論文博士 ; 学位の種類: 博士(工学) ; 学位記番号: 第16598号 ; 研究科・専攻: 工学系研究科建築学専攻
著者
阿部 隆一
出版者
慶應義塾大学附属研究所斯道文庫
雑誌
斯道文庫論集 (ISSN:05597927)
巻号頁・発行日
no.14, pp.p347-351, 1977

森武之助先生退職記念論集
著者
魚津市史編纂委員会編
出版者
魚津市
巻号頁・発行日
1972
著者
岡田正二著
出版者
北日本新聞社出版部
巻号頁・発行日
1977
著者
大石真人編
出版者
東京堂出版
巻号頁・発行日
1981
著者
片田 敏孝 廣畠 康裕 青島 縮次郎
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.419, pp.105-114, 1990-07-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
22
被引用文献数
3

Rural depopulation problems in Japan are caused by excess of out-migration from rural areas. The out/in-migration of a person from a rural area is based on the evaluation of his/her life environment. Its process is dynamic and different from each other according to his/her life cycle stage and individual attributes. The effects of countermeasures for rural depopulation problems should be estimated by amount of out/in-migration through such decision making process. Standing on these viewpoints, we have developed a Dynamic Out/In Migration Model by using Dimension-Nested and Time-Nested Logit Model.