著者
川喜田 敦子
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.321-342, 2019-09-30

冷戦下,朝鮮戦争後の南北朝鮮の復興にあたり,東西両陣営は競い合うかのように援助を投下した。東側陣営においては,ソ連を中心として東側諸国がそれぞれに北朝鮮の復興を支援した。本論文は,東側諸国による北朝鮮支援がどのような国際政治上の文脈にあったのかについて,第二次世界大戦後の東側陣営の戦争賠償枠組の変容との関係において検討するものである。主として旧東ドイツの文書館史料に依拠しつつ,東側諸国の北朝鮮支援の実態を明らかにするとともに,旧東ドイツの文書に当時の北朝鮮のどのような姿が映し出されているかについても確認したい。東ドイツの北朝鮮支援は,1950~60年代初頭にかけて,民間レベル,国家レベルの二つのルートを通じて行われた。とくに注目すべきは,咸興・興南という二つの重要都市の復興への協力である。この支援がその後の東ドイツと第三世界との関係構築のモデルとなるものであったことについても論じたい。
著者
公平 珠躬
出版者
名古屋工業大学外国語教室
雑誌
Litteratura (ISSN:03893197)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.85-102, 1993-10-15
著者
中田 達也
出版者
日本比較法研究所
雑誌
比較法雑誌 (ISSN:00104116)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.187-216, 2014-12-30

2014年8月現在,日本,中国および韓国は,いずれも水中文化遺産保護条約の締約国になっていない。アジアでは,カンボジアが2007年11月に同条約を批准したのみである。しかし,筆者がアジア太平洋水中文化遺産会議に初回(2011年11月8~12日,マニラ),第2回(2014年5月12~16日,ハワイ)と参加・発表したときに感じたのは,この条約の批准の可否とは別に,アジアの多くの国で相当程度に水中文化遺産を対象とする国内行政が進んでいるということであった。国連海洋法条約が設定したいわゆる主権的権利は生物資源と非生物資源に特化された権利(むろんその背後にそれに伴う義務もあるが)であるが,水中文化遺産を対象とする広範な沿岸国管轄権(刑事管轄権を含む)を新たに設定した立法条約たる水中文化遺産保護条約は,向かい合う大陸棚の線引きの問題に加え島嶼や水中文化遺産の存在をめぐる海洋権益の問題など,優れて現代的な海洋法の問題も内包しているがゆえに,条約の批准状況だけを見ていたのでは,条約の普遍性を判断できない(水中文化遺産条約は一切の留保が認められない)。そこで,本稿では,一衣帯水の距離にある日中韓の水中文化遺産行政を比較検討しながら,日本の行政の特徴を浮き彫りにし,その課題を展望する。具体的には,中国,韓国および日本の順に,水中文化遺産をめぐる国内法制がどのような経緯で出来て,それがどのようにして現在に至っているのかを関連法を参照しつつ明示し,それらを比較するという手法を採る。その際,上述したアジアの国際会議に参加したときのプロシーディングズやその過程で出逢った方々の貴重なコメントや資料に基づいて本稿を作成した。本稿の最大の特徴は,日中韓の水中文化遺産行政の最前線を示している点と,日本の最大の特色である文化財保護法にいう「周知の埋蔵文化財包蔵地」という文言が,水中文化遺産とどのように関連しているのかを掘り下げた点である。
著者
南 はるつ
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
vol.25, pp.145-162, 2001-12-20
著者
小野 厚夫
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.347-351, 2005-04-15

今日のキーワードとなっている情報という言葉は,日本で造られた言葉で,1976年出版の訳書「仏国歩兵陣中要務実地演習軌典」に最初の用例がある.原語はフランス語のrenseignementで,敵の「情状の報知」の意味で使われた.初期には情報と状報が併用されたが,情報に統一された.兵語として用いられていたが,次第に一般化し,日露戦争後には国語事典に収録されるようになった.戦後情報理論の導入に伴い,英語のinformationの日本語訳として用いられるようになった.これら130年に及ぶ情報という言葉の歴史について調べた内容を,用例を示しながた辿ってみた.
著者
越後 宏紀 呉 健朗 新井 貴紘
雑誌
グループウェアとネットワークサービスワークショップ2021(GN Workshop 2021) 論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.17-24, 2021-11-12

YouTube をはじめとした動画共有サイトでは様々なカテゴリがある.また,CG 技術の発達により,配信者は顔出しをせずに 2D CG または 3D CG のアバタを利用して配信を行うことが可能となっている.アバタを利用した配信者,すなわち VTuber は CG 技術の発達とともに活動の幅が広がっており,顔を出して配信している YouTuber と遜色がなくなってきている.配信者はアバタを利用するかどうかを自由に選択することができる一方で,動画カテゴリ別においてアバタを用いた配信が視聴者にとって印象が良いのかどうかについてはこれまでほとんど調査されてきていない.そこで本論文では,アバタを利用した動画と利用していない顔出しの動画を用意し,視聴者にとってどれほど影響があるのかを調査した.比較実験を行い,動画カテゴリによってアバタを利用しないほうが視聴者にとって印象が良いものもあれば,特に印象に差が無いものもあることを確認した.