- 著者
-
竹下 毅
- 出版者
- 日本霊長類学会
- 雑誌
- 霊長類研究 Supplement 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
- 巻号頁・発行日
- pp.228, 2013 (Released:2014-02-14)
日本各地で野生動物による農林業被害や生活被害が発生し,野生動物と人間との軋轢が社会問題となっている.これまで多くの地方自治体は野生動物問題の対応を地元猟友会に頼ってきたが,猟友会員の高齢化・会員数減少により猟友会員の負担は年々増加しており,従来行われてきた「猟友会に頼った野生鳥獣問題対策」が成り立たない地域や地方自治体も現れてきている.長野県小諸市も例に漏れず,平成 19年に 95人いた猟友会員数は平成 24年には 57人(年齢平均値 62歳,中央値 65歳)にまで減少・高齢化し,今後も減少していくことが予想される.このため,猟友会の負担を減らしつつ被害も減少させる「新たな野生鳥獣問題対策」を構築する必要があった. このような状況の中,長野県小諸市では野生動物問題を専門職とするガバメントハンター(鳥獣専門員)を地方上級公務員として正規雇用すると共に,行政職員に狩猟免許を取得させ,ガバメントハンターをリーダーとする有害鳥獣対策実施隊(以下,実施隊)を結成した. 銃器を必要とする大型獣(クマ・イノシシ)は猟友会員から構成される小諸市有害鳥獣駆除班(以下,駆除班)が主に対策を行い,小・中型獣は実施隊が主に対策を行うという分業体制を敷いた.この取り組みによって駆除班の負担を減少させると共に,被害を減少させることに成功した. 現在のガバメントハンターの活動内容は,1)有害鳥獣の捕獲・駆除,2)ニホンジカの個体数管理のための捕獲,3)野生鳥獣のモニタリング,3)猟友会と行政との連絡,4)市民への野生動物問題の普及啓発,5)捕獲動物の科学的利用である. 本発表では,小諸市にガバメントハンターが正規雇用される経緯と活動内容について報告するとともに,今後の課題について議論したい.