著者
木下 恒雄
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.59-63, 1984

症例は昭和52年12月13日当院初診の顔面の熱 (ほてり) 感を主訴とする43才の男性である。52年12月16日よりTocopherol nicotinateを用い, 血圧のコントロールはほぼ良好であったが, 初診以前からある顔面の熱感が持続するので, 53年11月6日より黄連解毒湯を併用したところ, 12月下旬よりこの症状は次第に軽減し, 54年1月には消失した。初診前にみられた狭心症様発作は現在まで出現せず, しばしばみられた最低血圧の上昇も殆んどみられず, 良好なコントロールが得られた。56年11月28日からは証の変化により黄連解毒湯を中止し, 釣藤散に転方したが, その後も順調な経過を辿っている。<BR>本治験を通じ, 熱にも種々のパターンがあり鑑別が重要であること, 西洋薬との併用が有意義な場合があること, 慢性疾患であっても経過中の証の変化に注意すべきこと, 個の医学の重要性等の教訓を得た。
著者
稲田 利徳
出版者
岡山大学教育学部
雑誌
岡山大学教育学部研究集録 (ISSN:04714008)
巻号頁・発行日
no.83, pp.p1-11, 1990-03

貞享五年(一六八八)三月、伊賀上野を出発した芭蕉は、万菊丸と童子の名に替えた杜国とともに、吉野山の花見にでかけようとして、「彌生なかば過ぐるほど、そぞろに浮き立つ心の花の、われをみちびく枝折となりて、吉野の花に思ひ立たんとするに」(笈の小文)と、その心境を吐露している。中村俊定氏は、この「心の花」が、吉野の花へ導く「枝折」となると記した芭蕉の脳裡には、西行の、よしの山こぞのしをりのみちかへてまだ見ぬかたの花をたづねん(新古今集・春上・八六」の歌が想起されていたのではないかとされた。
著者
鈴木 雅洋 上平 員丈
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.242, pp.63-66, 2007-09-27

ビームスプリッタの透過と反射とを用いた複合現実感における奥行き知覚に関して,実対象と仮想対象との相対的な奥行きの知覚を検討した.その結果,(a)知覚した奥行きは両眼非対応によって模擬した奥行きと定性的には合致したが,定量的には合致せず,個人差も大きいこと,(b)知覚した奥行きは遮蔽の制約を満たさない条件において弱まること,(c)知覚した奥行きには仮想対象を表示するスクリーンまでの距離が影響することが明らかとなった.
著者
高柳 俊祐 中山 敬太 石川 勉
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.25, 2011

知識獲得や推論などの知識処理機能を有する、ペット型ロボットを想定した雑談型自由対話システムを開発している。本システムは、ユーザの発話から獲得した知識を利用して質問応答を行う機能、発話から常識知識を獲得し利用する機能、物忘れに対する補助システムである備忘録機能などを持つ。また、特定の話題に対してシステムが主導権を取り対話を進める機能や、ユーザの発話の吉凶を判断し適切な相槌を打つ機能なども有する。
著者
藤 義幸
出版者
私学経営研究会
雑誌
私学経営
巻号頁・発行日
no.445, pp.15-22, 2012-03
著者
嶋崎 譲
出版者
九州大学法政学会
雑誌
法政研究 (ISSN:03872882)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.89-106, 1955-03
著者
石原 盛衞
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.137-144, 1950

熊本県産及び高知県産褐毛和種の被毛皮膚及び舌の色を黒毛和種のそれと対照しつつ比較研究した。その結果の概要を摘録すれば次の如くである。<br>1 熊本県産褐牛はその一般毛色が褐色で黒毛の毛を含まなく,鼻鏡は淡紅色,角,蹄は濃赤褐色を呈し,虹彩は濃褐色である。一方高知県産褐牛の一般毛色は褐色であるが,牡に於ける頸側,上膊,前膊,眼の周囲,頬の上部,蹄冠縁,尾房,陰嚢下半等の被毛は暗褐色ないし褐黒色を呈している。牝に於いては蹄冠縁及び尾房が黒いか又は黒毛を混じている。その外に牝牡共鼻鏡,角,蹄,眼瞼,虹彩等が黒色である。<br>2 口周囲,頸側,肩胛部,季肋部,外腿部,下胸部牡の陰毛,蹄冠部,尾房の9部位から採取した檢毛についてその色を檢するに,牡に於ける頸側,肩胛部,尾房及び牝に於ける尾房は高知県産のものの方が暗色を呈しているが,その他の部分は檢毛全体としての色調には熊本高知両県産のものの間に差を認めない。<br>3 前記9部位の檢毛について褐毛と異色毛との割合を檢するに,熊本県産褐牛は総ての部位に於いて黒色の毛を含んでいないのに対し,高知県産の褐牛では口周囲,頸側,陰毛,蹄冠,尾房等は大部分の牛に於いて褐毛の外に黒毛又は二色毛を混じている。<br>4 熊本県産褐牛の毛はその基調色が淡黄色で,それに黄色ないし黄褐色の色素顆粒を有するけれども,概して顆粒の分布が少なく,黒毛和種に比して格段に少量である。黒毛和種の毛はその基調色はやはり淡黄色で,これに褐黒色の色素顆粒が極めて濃密に分布しておる。高知県産褐牛の毛の内,褐色の毛は全く熊本県産褐牛の毛と同様であり,黒色の毛は黒毛和種のそれと同様である。而して二色毛に於ける黒と褐との移行部は黄褐色の色素顆粒と褐黒色の色素顆粒とが著明に入り混つている5 熊本県産褐毛和種の皮膚はその表面が淡紅白色であるが,その皮膚色素も極めて少なく,部位によつては色素顆粒を全く認めない部もある。而も色素顆粒の色が概して淡黄色である。黒毛和種の皮膚はその色素が極めて多く.表皮全層に亘つて濃密に存し,眞皮内にも少量それを認められる。而も色素顆粒の色が濃褐色ないし褐黒色である。高知県産褐牛の皮膚は色素の分布量,分布範囲,色素顆粒の色等に於いて全く黒毛和種と同様である。<br>5 熊本県産褐毛和種の皮膚はその表面が淡紅白色であるが,その皮膚色素も極めて少なく,部位によつては色素顆粒を全く認めない部もある。而も色素顆粒の色が概して淡黄色である。黒毛和種の皮膚はその色素が極めて多く.表皮全層に亘つて濃密に存し,眞皮内にも少量それを認められる。而も色素顆粒の色が濃褐色ないし褐黒色である。高知県産褐牛の皮膚は色素の分布量,分布範囲,色素顆粒の色等に於いて全く黒毛和種と同様である。<br>6 熊本県産褐牛の舌背面は色素顆粒の量が極めて少なく,上皮最下層の所々にそれを見出したのと,各種の乳頭にそれを見た程度であるが,黒毛和種の舌背には上皮全層に亘つて褐黒色の色素顆粒が濃く分布している。而して高知県産褐牛の舌は黒毛和種のそれと全く同様の所見である。<br>7 以上要するに,高知県産褐牛は皮膚及び舌の色素蹄,角,虹彩等の色に於いては熊本県産褐牛のそれらと非常に異なつて黒毛和種と同じであり,被毛の色素に於いてはその大部分を占める褐毛は熊本県産褐牛と同様であるが,その一部分に刺毛の如く散在する黒毛は黒毛和種のそれと全く同一であり,その二色毛は1本の毛に両者の様相を併備したものである。