著者
笹崎 寿貴 シュウ インゴウ 丸山 誠太 森 達哉
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2018論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.2, pp.993-1000,

QR コードはその利便性から情報の共有手段として広く用いられる一方,安全性についてはセキュリティ上の問題が存在することが知られている.中でも,QR コードは第三者が撮影してもデータを読み取れてしまう性質上,機密なデータが含まれていてもその内容は保護されないという問題がある.本論文では,特定の距離からのみ読み取ることが可能な QR コード SeQR の生成手法を提案し,本手法がこのようなショルダーハッキングによるデータ盗難への対策として有効であることを示す.具体的な生成手法は,QR コードの誤り訂正能力を超えないようデータのランダム化を行い,QR コードのあるモジュールに対し偽色誘発パターンを配置することで誤り訂正能力を超えた QR コードが生成される.特定の距離から撮影した場合偽色が発生し,モジュールの明暗が反転するため読み取りが可能となる.本研究では,SeQR に対して撮影距離による読み取りの成功確率を測定し,ショルダーハッキング対策としての有効性を評価する.また,偽色誘発パターンと通常のモジュールを識別されることにより QR コードを復元される可能性があるという脅威モデルについて評価する.
著者
青池 亨 木下 貴文 里見 航 川島 隆徳
雑誌
じんもんこん2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.115-120, 2019-12-07

国立国会図書館電子情報部電子情報企画課次世代システム開発研究室(次世代室)では,機械学習技術を図書館サービスに取り入れ,応用することで,資料の検索可能性と提供可能性の拡張を実現するべく調査研究活動に取り組んできた[1].また,これらの研究成果を活用したサービスを一般に利用可能な形で提供する場として,2019 年3 月に「次世代デジタルライブラリー(https://lab.ndl.go.jp/dl/)[2][3]」を公開した.他方,国立国会図書館のデジタル化資料の利活用促進や学術コミュニティへの貢献の観点から,外部の研究者やエンジニアが研究・技術開発用途に利用可能なデータセットを公開することも大きな意義がある.本論文では,国立国会図書館デジタルコレクションのデジタル化資料を活用して作成・公開したデジタル化資料のレイアウトのデータセット(NDLDocL)について,その特色や先行する他機関のデータセットとの相違点を紹介する.また,実際の構築過程における検討事項や開発したアノテーションツールの紹介と,現時点で想定している活用方法のアイデアについて述べる.
著者
川嶋 舟 颯田 葉子 Schu Kawashima Yoko Satta
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.211-213,

日本在来馬8馬種(北海道和種馬,木曽馬,野間馬,対州馬,御崎馬,トカラ馬,宮古馬,与那国馬)のミトコンドリアDNAコントロール領域の多型解析を行なった。その結果,8馬種で14ハプロタイプが認められた。系統樹解析の結果,14ハプロタイプ間に明確な遺伝的差異は認められず,日本在来馬の単一起源説を支持するものであった。各馬種のハプロタイプ構成を比較した結果,遺伝的多様性が維持されている馬種や失いつつある馬種の存在が明らかとなった。また,8馬種は互いに明確に異なるハプロタイプ構成を保有することが明らかとなった。これは,各飼養地域内で長期間維持されてきたため,各馬種で固有のハプロタイプ構成を持つに至ったと考えられた。
著者
林 昭志
出版者
上田女子短期大学
雑誌
紀要 (ISSN:21883114)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.7-19, 2021-01-31

本研究ではアメリカで著名な研究者ブライアン・ワンシンク博士(Dr. Brian Wansink)の論文撤回と大学辞職事件を解説した。ワンシンク氏はイグノーベル賞を授賞したり、アメリカ政府の栄養政策のトップに就いたり、メディアに数多く出演するなど著名な食心理学研究者だった。しかし論文の記述の誤り、不適切な分析方法、不適切なオーサーシップなどだけではなく、ローデータの有無・保管が問題とされて、一流ジャーナルの論文撤回が決定的な原因となり辞職した。この事件はアメリカでは注目されたが日本では注目されなかった。最後に研究不正防止・研究倫理のために必要な内容を考察した。
著者
富樫 雅文
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第39回, no.データ処理, pp.810-811, 1989-10-16

JISで定める仮名文字は63字ある。これに対して文字キーの数は標準鍵盤では48鍵であり、さらに円滑な触指打鍵(touch typing)を考慮すれば、使用するキーは3段30鍵程度であることが要求される。このため、シフト機構を導入するか、または、ローマ字などによるマルチストローク化が考えられてきた。シフト方式とした場合、シフトキーの使用頻度は少なくとも16%程度となる。従来のシフト方式ではこのシフト操作を最も弱い指である小指や他の指と運動方向の異なる親指に割り当てている。本研究では、シフト操作の重要性に鑑み、これを中指に割り当て、鍵盤中央部の文字キーを前置型のシフトーとして使用する新しい文字配列を求める。新しい配列は標準鍵盤の使用を前提とし、使用するキーは3段32キーまたは33キーとする。
著者
三浦 哲司 Satoshi Miura
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.63-76, 2011-09-10

本稿では東京都中野区の「地域センター及び住区協議会構想」に焦点を当て、主に「構想の概要の確認」「構想の実践の把握」「構想廃止過程・要因の整理」という3つの作業に取り組む。というのも、平成の大合併が終息した今日では、大都市で都市内分権や地域自治組織のしくみが要請されている状況にあり、先行事例である中野区について分析することで、他都市で何らかのしくみを導入し運営するうえでの留意点が導き出されると考えるからである。もっとも、本稿のねらいは、先の3つの作業によって今後の研究の足がかりを確立することにあり、独自の視座からの分析ができているわけではない。ともあれ、本稿が扱う中野区の「地域センター及び住区協議会構想」とは、区内に15住区を設定し、それぞれに「地域センター」と「住区協議会」を置いて、双方が連携して地域自治の活性化を進めるという内容であった。そして、この枠組みを通じ、なかには熱心に活動する住区協議会もみられた。しかし、その後に区行政当局の対応や協議会委員の固定化などで問題が生じ、構想自体が2006年1月に廃止されてしまったのである。こうした動向をふまえつつ、今後の研究においては特定の住区を対象として、時系列的な分析や最新の実態分析を行う必要がある。あるいは、住区協議会が廃止された住区と、廃止されずに継続している住区とを取り上げて、双方を比較するといった作業も欠くことができない。このように中野区の「地域センター及び住区協議会構想」についてさらなる研究を進めることにより、都市内分権や地域自治組織を導入し運営する他の大都市にとっての留意点が提示できよう。
著者
喜多 一馬 池田 耕二
出版者
日本医療福祉情報行動科学会
雑誌
医療福祉情報行動科学研究 = Journal of Information and Behavioral Science for Health and Welfare (ISSN:21851999)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.37-44, 2020-03-25

【目的】本研究の目的は,地域リハビリテーションのソフトインフラとして温泉旅行を整備するため,温泉旅行および温泉旅行の各活動場面が要介護高齢者に与える影響を明らかにすることである。【方法】日帰り温泉旅行に参加した要介護高齢者2名を対象に,半構造化インタビューを行った。インタビューでは温泉旅行にある各活動場面の楽しみの程度と対象者や家族等の変化を調査した。【結果】A氏は入浴を含めた温泉旅行の全活動場面を楽しんでいた。また,脳卒中後10年間行くことはなかった温泉旅行に再び行こうとしており,温泉旅行の参加に対する自信を回復していた。B氏は温泉旅行の入浴以外の準備,移動を楽しんでおり,温泉旅行で新たな人間関係を構築していた。【結論】本研究では,温泉旅行にある各活動場面や温泉旅行は個々の要介護高齢者に様々な影響を及ぼすことが示唆された。その影響としては,自信の回復や人間関係の再構築を促進させることが示唆された。
著者
国立女性教育会館情報課
巻号頁・発行日
2021-01

長辺とじ両面印刷し、中心で縦折にしてご利用ください。
著者
青木 順子 Junko Aoki
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大学紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.46, pp.31-50, 2018-02-20

2017年1月トランプ政権誕生後、「代替的事実」や「偽ニュース」の言葉で、政権側から公然と事実と異なることが事実として提示される、または、都合の悪い事実は信用ならないものとして貶められる、という驚愕するような言動が民主国家の代表とされてきた米国の政権でも通用することを世界は見せつけられることになる。多種多様なメディアの出現によって、虚構世界と現実世界の物語の境界が曖昧になっている今、他者のメディア表象に拘ることへの尊重が一層必要とされている。社会で優位にあるグループであれば「気にかけない」として済ませられるかもしれない出来事について、一つひとつに「拘る」ことで権利を主張する必要がある少数派が社会には存在する。「我が国・自国への愛国心」、「我々・自国中心」、「テロリストの彼ら」、「犯罪者の彼ら」と、「我々だけ」を尊重し、他者「彼ら」への敵対心や恐怖のみを煽り立てる乱暴なレトリックが民主国家の政治の権力側から公然と示され得る時、社会で少数派の拘りの行為が抑圧される可能性は高くなっているのである。ポピュラーカルチャーに見える「ホワイトウォッシュ」から大国の政権による「壁を作る」政策まで、全て関係し合い、相互に影響しないではいられないグローバル化した世界を私達は生きている。ジジェクの言う「人間の顔をもったグローバル資本主義」の実現のために、一人ひとりが拘り、今自分に出来ることを丁寧に問い、真摯な他者とのコミュニケーションを通して実現しようとする、そうした人々を育てることが異文化教育には要求されているのである。