著者
岡崎 博和 阿萬 裕久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. KBSE, 知能ソフトウェア工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.159, pp.1-6, 2007-07-17

本稿はソースコードの変更率(保守容易性に関する尺度)とコメントの頻度に着目している.コメント文にはソースコードの理解を助ける働きがあり,コード中へ適切に記述していくことで開発者によるコードの自己レビューが推進される.それによりコード中に含まれるフォールトが検出されやすくなり,ソースコードの品質向上も期待される.これまでの研究では,ソースコードにおけるコメント文の行数と保守容易性との間について統計的に有意な関係が見出されている.本稿ではさらなる解析として,オープンソースソフトウェアEclipseにおけるバージョンアップ4,521件について統計解析を行い,中規模以上のソースコード(LOC≧67)において,コメント文の量が多ければソースコードの変更率は低くなる傾向が確認されている.ただし,その中でもコメント記述の頻度が高い場合においては,逆にソースコードの変更率が高くなる傾向も得られている.
著者
密山 幸男 Andales Zaldy 尾上 孝雄 白川 功
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DSP, ディジタル信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.146, pp.89-94, 2001-06-22

AES(Advanced Encryption Standard)をはじめとする次世代128ビットブロック暗号の高性能化を実現する"burstモード"と呼ばれる新しい暗号モードが提案されている. burstモードは, ストリーム暗号型の暗号モードであり, 16回のブロック暗号処理によって64ブロックの平文に対して暗号処理を行うため, 従来の暗号モードと比較して, 処理速度を大きく向上させることができる. 本稿では, ブロック暗号アルゴリズムにAESを用い, burstモードをソフトウェアおよびハードウェアによって実装し, それぞれの実装結果について比較評価を行う. burstモードのすべてをソフトウェアで実装する場合には, 従来の暗号モードと比較して約2倍の処理速度が達成できることがわかった. 一方, ハードウェアで実装する場合, すなわち, ソフトウェアで実装したAESとburstモードのアクセラレータコアを併用する場合には, 処理速度が4倍まで向上でき, 最大1.3Gbpsの処理速度が達成できることがわかった.
著者
若林 明彦
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.703-725, 2003-12-30

環境問題を根本的に解決するための思想や哲学の構築において、日本は七〇年代に「水俣病」をその象徴とする悲惨な公害被害体験をしたにもかかわらず、欧米に比べて遅れていると言わざるを得ない。近年になってやっと、欧米の「環境倫理学」が注目され、その研究が盛んになったが、そのー方で、そうした「環境倫理学」に対抗するかのように、その倫理学的アプローチを皮相的なものとし、古代日本に見られる自然共生的エトス(心的傾向)を再生することこそが根本的な解決に繋がるとする梅原猛・安田喜憲らの「森の思想」や岩田慶治の「ネオ・アニミズム」論も注目されている。本論文では、まず欧米の環境思想の主要な理論を概観し、それらが共通して倫理学的アプローチをとっていることを指摘し、次にそれと対比的にエトスからのアプローチをとる「森の思想」や「ネオ・アニミズム」論の問題点を指摘する。最後に、両アプローチの相補的関係について述べる。
著者
宮下 誠
出版者
美学会
雑誌
美學 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.12-22, 1993-12-31

Trotz seiner Tatigkeit im Bauhaus galt Klee in den 1920er Jahren in Deutschland als Surrealist. Ursache dafur war vor allem die erste Ausstellung bei Vavin-Raspail 1925, die Pariser Surrealisten begeisterte. Davon ausgehend vertreten eine grosse Anzahl von Forschern die Auffassung, dass dieses Klee-Bild in Paris entstanden war. Untersucht man aber die damaligen deutschen Kunstzeitschriften, so kann man feststellen, dass das Bild "Klee als Surrealist" in Deutschland gemacht wurde. Dabei halfen deutsche Kunsthistoriker, Kritiker und Kunsthandler kraftig mit : da ihr Landsmann bei den Pariser Surrealisten grossen Beifall gefunden hatte, glaubten sie sich dazu berechtigt, Deutschland Heimatland des Surrealismus zu nennen. Dies jedoch ohne Einverstandnis der Franzosen : fur sie war Klee hochstens einer der "Vorlaufer des Surrealismus" (Andre Breton). Von deutscher Seite hiess die Devise : Klee als Surrealist gegen die Vorherrschaft der franzosischen Kunst ins Feld fuhren. Gewagt wurde dieser verspatete Prioritatsanspruch allerdings nicht aus bornierter Arroganz im Stil etwa der unter national-sozialistischer Federfuhrung stattgefundenen Aussstellung "Entartete Kunst" (1937), sondern aus dem durch das soziale und kulturelle Ohnmachtsgefuhl sensibilisierten Krisenbewusstsein der deutschen Kuntszene.
著者
小川 泰文 小川 猛志
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.577, pp.71-74, 2007-03-01

ユビキタスNW環境では,ユーザーは様々な手段でコミュニケーションを行うことになる.しかし例えば着信音が迷惑なシチュエーションがあるように,状況によって適切でない通信手段があり,状況の取得を可能とするプレゼンスサービスが重要となる.翻って,従来のプレゼンス情報は主にユーザーの自己申告によるものであることから,信頼性やリアルタイム性に欠け,通信手段を適切に選択するための判断根拠としての有効性は高くない.本研究では,NWを介してユーザーからのセンシング情報を収集し,センシング情報を基づき動的にプレゼンス情報を生成するためのシステムを提案し,これにより通信手段を適切に選択するためのプレゼンスサービス実現手段に関して考察を行う.
著者
松田 進勇
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.175-178, 1972
著者
菊池 章夫 有光 興記
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.137-148, 2006 (Released:2006-03-31)
参考文献数
22
被引用文献数
2 2

628名の大学生の回答をもとに確認的因子分析を繰り返すことで,6つの自己意識的感情(対人的負債感・個人的苦痛・恥・罪責感・役割取得・共感的配慮)を測定する12シナリオ(場面)・72項目からなる尺度 (KA-JiKoKan-12) が構成された.この尺度の信頼性は,α係数・再テスト信頼性係数とも十分なものであった.その妥当性は,これらの感情に対応あるいは関連する他の特性的尺度(罪悪感喚起状況尺度・状況別羞恥感情質問紙・対人的反応性指標・心理的負債感尺度)および行動指標(攻撃性質問紙・向社会的行動尺度)との関係を分析することで検討された.得られた結果はいずれもおおむね満足すべきもので,この尺度が十分な妥当性を持つことを示していた.「全体的考察」では,こうした結果を背景にして,シナリオ方式の利点や問題点,この尺度が測定している感情の性質,弁別的妥当性の問題などが論じられた.
著者
水子 学 寺嵜 正治 金光 義弘
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.65-72, 1998

大学新入生30名を対象に, 対人相互作用とポジティブおよびネガティブ感情との関連について縦断的に検討した.なお, 対人相互作用の量と性質は体験抽出法によって記録され, 感情は多面的感情状態尺度および多面的感情特性尺度を用いて測定された.その結果, 対人相互作用量や性質は, 時系列で変化しないが, 測定時期によって各対人相互作用量, 性質と感情との関連が異なることが明らかになった.4月から6月にかけての「家族」との接触は, 日常生活における新入生の適応状態に影響を及ぼす可能性が示唆された.また, 対人相互作用の性質は入学当初の4月よりも10月において感情との間に多くの関連が認められた.この結果は親密な友人との間の相互作用の質が, 開示的あるいは肯定的なものであるほど, ネガティブ感情が抑制される傾向を示している.
著者
小関 聡
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.1322-1328, 1994-12-01

HCV抗体測定法が開発されて輸血時のスクリーニング検査に導入されたことにより輸血後C型肝炎は激減したが, それ以外の感染経路については不明な点が少なくない. 今回その一つとされる母子感染の実態を明らかにする目的で, 当科ならびに関連病院を受診した4,801例の妊婦とその出産児を対象に, C型肝炎の母子感染の発生とその成立因子について検討し, 以下の結果を得た. 1) HCV抗体陽性者は4,801例中59例(1.23%), RT-semi nested PCR法によるHCV-RNA陽性者は25例(0.52%)であった. 2) HCV抗体陽性者のうち, 現在までに分娩に至った14例において, 分娩時臍帯血中HCV抗体は全例陽性であったが, HCV-RNAは全例陰性であり, 胎内感染と明らかに断定できる症例は存在しなかった. 3) 追跡中の13例の児のうち3例にHCV-RNAが検出され, 母子感染の発生率は全妊婦に対し0.06%, HCV-RNA陽性妊婦に対し23%であった. また, これら3例では, 妊娠末期の母体血清GPT値が軽度上昇を示したのに対して, 他の10例はすべて正常範囲内であった. 一方, HCV-genotype, 妊娠末期の母体血中HCV-RNAの半定量, HCV抗体価およびγ-GTP値と, 母子感染成立との間に関連性は認められなかった. 4) 児のHCV-RNAが陽性となった3例のうち, 1例は母体でのHCVとHIVとの重感染が認められたが, HIVの母子感染は認められなかった. 5) 母乳中にHCV-RNAが検出された症例が3例認められたが, これらの児からはHCV-RNAは検出されず, 母子感染における母乳の意義は不明であった. 以上より, C型肝炎の母子感染の存在が確認され, 母子感染成立の因子の一つとして妊娠末期における母体の肝炎の活動性が重要であることが示唆された.
著者
高橋 弘司 野口 裕之 安藤 雅和 渡辺 直登
出版者
経営行動科学学会
雑誌
経営行動科学 (ISSN:09145206)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.113-123, 1999-11-20
被引用文献数
1

Organization image, defined as psychological reproduction of organization made by individual who is a member of or is involved in the organization, has been less examined in the past research. Instead, quite a few research dealing with "non-membership" image, which was built by non-member or non-involved person of the organization, have been conducted. It is inconsistent with the definition of image literally, which has an affinity for impression toward object. In this article, we developed a new scale to measure membership image of organization, tested its reliability and validity, and revealed item characteristics of the scale items using graded response model of Item Response Theory (IRT). Questionnaire survey was executed to 3,412 university, college, or junior college students who were informally promised their first job employment. Results of exploratory factor analysis showed that factor structure was consistent with the notion on which the scale was based, and discriminant validity of the scale and reliability of each subscale yielded as high. Results brought by IRT analyses also showed general tendencies that each value of item characteristics parameter emerged high in discriminant and relatively low in difficulty. Further discussion was made about (1) dimensionality of the scale and its overall feasibility; (2) psychodynamic account for organizational image; and (3) future direction to improve validity of the scale.