著者
高津 良介 牧 宥作 井上 智雄 岡田 謙一
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.19-25, 2016-02-18

オーケストラをはじめとした複数人での演奏を支援する研究が広く行われている.その中で,演奏の中心となる指揮者が不在な環境に焦点を当てて,図形やコンピュータグラフィクスによる人型モデルなどによる仮想指揮者を用いて支援する研究が存在する.しかし,これらの研究では演奏者全体に向けた簡易な指揮しか行えないことから,演奏者に十分な指示ができないという問題があった.我々はこの問題を解決する新たなアプローチとして,演奏者のパートや役割に応じて個別に指揮する仮想指揮者を用いた合奏支援を提案する.これにより,各パートの演奏者に詳細な指示を行うことができるようになり,指揮者不在の環境において演奏者にとって演奏しやすい指揮環境を構築することが期待できる.実験により,本提案を演奏で使用した際の影響を評価した.
著者
真野 純子
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.161, pp.89-150, 2011-03-15

滋賀県野洲市三上のずいき祭りは宮座として知られるが、本稿では、公文と座を訴訟文書や伝承記録などから検証するとともに、現在の芝原式の儀礼のなかに何がこめられているのかをあきらかにした。ずいき祭りでは、長之家・東・西の三組から頭人が上座・下座の二人ずつでて(一九五一年からは長之家は一人)、ずいき神輿・花びら餅の神饌を準備し、東と西の頭人は芝原式での相撲役を身内からだして奉仕する。それら頭人を選出するのは、各組に一人ずついる公文の役目である。公文は家筋で固定し、各組(座)でおこなう頭渡しだけでなく、芝原式にたちあい、実質上、それらを差配している。芝原式の儀礼には、公文から総公文への頭人差定状の提出、花びら籠(犂耕での牛の口輪)という直截な勧農姿勢、猿田彦をとおして授けられる神の息吹といった中世の世界観がこめられていたことがわかった。また、公文・政所という用語の使われ方が時代とともに変化していくことを指摘したうえで、中近世移行期での公文・政所を特定した。彼らが訴訟や年貢の収納事務にたずさわり、文書を保管する職務についていたこと、在地の地主層で下人を抱える殿衆であったことなどをあきらかにした。長之家は庁屋を、東と西は神前の芝原に座る方角をさしているものの、公文の考察から、相撲神事の編成が荘園の収納機構と深くかかわっており、長之家は御上神社社領、東は三上庄、西は三上庄内の散所を原点に出発していると考えられる。神事再興の一五六一年(永禄四)以来、頭人には下人、入りびとをも含むため、開放的な宮座として知られるが、それは屋敷を基準に頭人を選定していく公事のやり方であり、神事には相当な負担が強いられた。三上庄の実質的管理責任者である公文が頭人を差定して、その頭人に神饌やら相撲奉仕の役をあてがい、神饌を地主神に供えることで在所の豊饒と安泰を願うという祭りであったことを実証した。
著者
増田 聡 Satoshi MASUDA
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門教育大学研究紀要 = Research bulletin of Arts, Naruto University of Education (ISSN:13434403)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.13-21, 2003-03-07

In this paper, it is discussed that Fumio Koizumi's famous studies in Japanese popular music have some problems. His studies have been influential in the Japanese musicological studies in popular music, and the method in that studies is mainly based on a theory of musical scales that used in the succeeding study by Yoshiaki Sato. Sato's study is better for explaining how some scales of Japanese popular music have taken roots, than Koizumi's, But Sato's study has same problem in Koizumi's, which became clear at Sato's appearance in a famous T.V. news show program, "News Station." Studies based on a theory of musical scales often cut the music to abstract entities which are not heard by audience, so the studies will fail to catch a whole of the musical event. This paper suggests that popular music studies should stare on three levels of productive/neutral/receptive in a music event, not accord a privilege to "music itself."
著者
中嶌 剛
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = CHIBA KEIZAI RONSO (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.62, pp.25-50, 2020-06-30

本稿では,就職活動を行う若者の8割程度が入社前に抱くと報告されてきた「何が何でも正社員として就職したい」(労働政策研究・研修機構,2006)という曖昧な進路・目的意識が入社後のキャリア形成に及ぼす影響を推定した。先行研究の理論的考察を通じて8つの仮説を設定し,労働供給側(仮説①・②・③)と労働需要側(仮説④~⑧)の両面から検証を行った。 その結果,労働供給サイドからの「とりあえず正社員」意識に立脚した仮説①・③,および,労働需要サイドの仮説⑥・⑦・⑧が支持され,「とりあえず正社員」意識が必ずしも優柔不断で曖昧な否定的意識として,一面的に捉え切れないことが示唆された。 さらに,就職困難な状況で卒業期を迎える若者が自分を信じて,困難な状況を乗り越えることで就職活動を通じた人間的成長が見込めるばかりか,その間に成熟していく意識は,会社内の良好な職場環境の維持に有効な面があり,人事評価・処遇やキャリア開発支援の充実等の労働需要側の要因によっても,さらに引き伸ばすことが可能な要素となり得ることを見出した。
著者
平井 誠 北橋 忠宏
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.79(1986-NL-058), pp.1-8, 1986-11-21

本稿では、「XのY」という形態の名詞句と連体修飾を統一的な枠組みで捉らえることを目的として、両者を同一の基準で分類し、「の」と連体修飾の解析を行なう際に必要となる辞書情報について言及する。「XのY」という名詞句は極めて頻繁に使用されうえに、その意味も多様である。従って、言語解析の立場からは「の」の意味の決定が1つの大きな問題であり、その意味の適切な分類が必要である。これを分類する一方法は、「XのY」を関係節(形容詞節)と被修飾名詞から成る連体修飾の短縮形かあるいは単文の短縮形と考え、連体修飾の分類に基づいた分類を行なうことである。本稿では連体修飾を、1)関係節と被修飾名詞の意味的な関係および2)連体修飾句全体が何を指示するかの2点から、格要素型、関数型、isa型、推論型、および間接限定型の5種類に分類する。次いで、この分類基準を利用することにより、「の」の意味が6種類に分類できることを示す。最後に、この分類を用いて「の」と連体修飾を解析する際に必要となる名詞や動詞の意味情報(辞書情報)を各カテゴリー別にまとめる。
著者
徳田 恵一
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.1005-1011, 2004-10-15

音声認識の分野では,時系列の統計モデルである隠れマルコフモデル(Hidden Markov Model: 以下HMM)が音声パラメータ系列のモデル化手法として有効なことが知られ,実用的なシステムにおいても広く用いられている.本稿では,HMMの定義および関連するアルゴリズムについて,概説した上で,音声認識および音声合成におけるHMMの利用について述べる.また,HMMの限界を指摘した上で,次世代音声モデルとして期待される手法についても触れる.
著者
長谷川 昌士 河井 秀夫 西脇 健司 向井 公一 北山 淳 三谷 保弘 高見 栄喜 Masashi Hasegawa Hideo Kawai Kenji Nishiwaki Kouiti Mukai Atsushi Kitayama Yasuhiro Mitani Hidenobu Takami
雑誌
四條畷学園大学リハビリテーション学部紀要 = Annual reports of Faculty of Rehabilitation, Shijonawate Gakuen University
巻号頁・発行日
vol.6, pp.13-18, 2010

高校吹奏楽部所属の1~3年生160名に、楽器の練習が影響していると考えられる身体症状についてアンケート調査を実施した. 結果は、チューバ奏者の多くが腰痛を訴えていた. サックス奏者やチューバ奏者には顎関節の痛みが発生していた. サックス奏者やチューバ奏者ならびにパーカッション奏者では利き手側の手関節や手指関節に関節痛が集中していた. また、整形外科的症状以外にも、頭痛、めまい、過呼吸、耳なり、倦怠感などの内科的症状が多くの学生に発生していた. これらの症状が改善できないまま学生は練習を継続していることもわかり、予防や対処法を検討していく必要があると考える.
著者
松浦 晶子
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho (ISSN:03869067)
巻号頁・発行日
vol.100, no.3, pp.1-29, 2018-12

This article attempts to clarify the realities of Song Dynasty court music in terms of music history rather than as part of scientific, intellectual, or political history. It focuses on changes to the form of chime bells (bianzhong)—the core court music instrument—discussed in great detail by Northern Song Dynasty bureaucrats, and analyzes their musical significance. Since pre-Qin times, chime bells had a form that featured rows of studs or bosses on the bells’ surface that served to deaden reverberations. Their sides were flattened, and they were hung at an angle. Consequently, the bells had little sustained and in musical performance did not blend in with the other instruments. However, during Northern Song Emperor Renzong’s reign (r. 1022-1063), the official charged with reforming music institutions, Li Zhao, altered the instrument by making bells rounder and hanging them straight down. This changed their sound. The notes now lingered much longer and the sound became one that shrouded those of the other instruments. Two of Li’s successors, Tuan Yi and Hu Yuan, made further alterations of the same sort. They also changed the sizes of the bells. While the sizes of individual bells since pre-Qin times had varied, Tuan and Hu now divided them into two size-based classes and changed individual bell size so they roughly conformed to one or the other class. Some previous research on these instruments has been skeptical about these changes, wondering if they had made the bells impossible to play as musical instruments. However, it is clear from the historical record that—regardless of whether those made by Li or those made by Tuan and Hu are the subject—these changes were made with due consideration given to the bells’ musical function. The true significance of these alterations is that they indicate there was a change in the elements that comprise music, namely rhythm, harmony, and melody; namely, they show that the role of the bell-chimes in the musical performance as a whole had changed. We may surmise that the musical sensibility of people during Song had changed in a way that would have been unacceptable going back to pre-Qin times, and that this was accompanied by a major change in the musical landscape of court music.
著者
坂口 寛典 宮田 一乘
雑誌
研究報告グラフィクスとCAD(CG)
巻号頁・発行日
vol.2013-CG-150, no.5, pp.1-6, 2013-02-11

本報告では日常の中で女性が身に着けるストッキングの質感を, CG で表現する手法を提案する.ストッキングは伸縮によって構造や質感が変化するという特徴を持ち,女性の表現には欠かせない要素の 1 つであるため,その質感を表現することは重要である.提案手法では,ばね質点モデルを使用することによってストッキングの構造を再現し,足形状へのフィッティングを行った.その情報を用いてレンダリングすることで,ストッキングの構造に基づいた質感の表現が可能となる.
著者
澤田 忠幸
出版者
石川県立大学
雑誌
石川県立大学研究紀要 = Bulletin of Ishikawa Prefectural University (ISSN:24347167)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.89-98, 2020-03

本研究では、「キャリア教育」の法制化に関する一連の施策や各大学での教育改善の動向を踏まえ、地方 A 大学の 3 年次生を対象として、就職活動前の汎用的技能(PROG)の個人差を規定する要因について、キャリア意識および自己調整学習方略の習得度、インターンシップ経験の有無との関連から検討を行った。その結果、PROG のリテラシーは、全国国公立大学理系の傾向と同様、1 年生よりも3 年次生で高かったが、コンピテンシーでは違いは認められず、国公立大学理系の全国平均と同等もしくは低い傾向にあることが示された。また、3 年時の夏休みまでにインターンシップや教育実習に参加したか否かによっては、コンピテンシーの高低に違いは認められず、自身の将来について展望と設計をもっている者、インターンシップを通じて課題の意図ややり方を考え、計画的に取り組むメタ認知的な自己調整学習方略を習得した者ほど、コンピテンシーが高いことが示唆された。本結果は、キャリア教育の設計の観点から議論された。
著者
宮下 学 井上 寛生 竹渕 瑛一 速水 治夫
雑誌
研究報告高度交通システムとスマートコミュニティ(ITS) (ISSN:21888965)
巻号頁・発行日
vol.2016-ITS-65, no.31, pp.1-7, 2016-05-19

アニラジ (アニメラジオ) とは,アニメ・声優・ゲーム・コミック関連のラジオ番組のことである.アニラジは,地上波放送以外にインターネットを利用したラジオコンテンツである Web ラジオでも展開されている.Web ラジオでのアニラジは,多くのサイトで様々な番組が異なる形式で配信されているため,番組の聴取には複数の配信サイトにアクセスする必要があり,聴取する番組を探すという手間がかかる.聴取番組が多い場合,どの番組がどの配信サイトでいつ更新されるかの把握が困難であること,番組が更新されたことの見逃しから番組を聞き逃してしまうことも問題点として挙げられる.本研究では,配信サイトが異なる番組を一括管理するアニラジ管理システムを提案する.本システムの機能は,聴取番組を登録できるお気に入り機能と聴取番組が更新されたことをユーザーに通知する通知機能である.また,番組ページへのアクセスが容易であり,番組ページから番組を聴取することができる.本システムにより,番組を聴取するまでの手間を削減し,聴取する番組の把握が容易であり,番組の聞き逃しを防止することが期待できる.
著者
後藤 隆基
雑誌
大衆文化 = Popular culture
巻号頁・発行日
vol.8, pp.21-33, 2013-01-25