著者
蓑川 恵理子
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.48-63, 2006-01-01

商品名の研究では、なぜそのような命名が行われたのか、将来どのような名づけがなされるのかを予測する《命名のメカニズム》が明らかにされなければならない。そのためには、商品カテゴリーに対する競合各社の名づけ全体を見渡し、さらに、固有名だけでなく普通名による名づけも商品名と認めて、その《変遷》に見られる規則的な傾向を見出すことが必要である。このような観点から、戦後半世紀の新聞広告を資料として、「三種の神器」といわれた家庭用電気製品名の変遷を、4種の商品名構成要素を設定した上で、調査・分析した。その結果、(1)商品名の変遷において構成要素の出現には一定のパターンがある、(2)商品名構成要素の出現パターンは新商品・新機能の出現とその普及(一般化)とに関係する、(3)新商品・新機能の普及(一般化)に伴って類概念の意味が変化する、という3点を明らかにした。これらの諸点は、商品名の命名メカニズムを明らかにするための基礎的な部分を担う特徴であると考えられる。
著者
佐藤 みずほ 水山 元 中島 円 中野 冠
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18840833)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.397-405, 2019 (Released:2019-12-27)
参考文献数
19

It is difficult to find out what consumers actually demand, in a society with various information and products. Under such circumstances, the importance of finding consumer insight is increasing. However, it is difficult to find out consumer insight. In this paper, the effect of using visuals for the discovery of consumer insight was verified compared with using text. The experiment was conducted with two groups. Each group came up with ideas on two themes. At that time, the following conditions were set: one is to use visuals and the other is to use text. Then, the contents were analyzed using Finke’s Geneplopre model. The result showed that, the number of ideas with visuals were fewer than the number of ideas with text. However, it was implied that using visuals allows for deeper and wider interpretation of ideas, which could lead us closer to true consumer insight.
著者
尾崎 奈津
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.65-79, 2007-01-01
被引用文献数
1

本稿は否定命令文の機能と特異性,さらに命令文と否定の関わりについて記述したものである。従来,叙述の否定文は先に肯定的想定があってはじめて使用されることが知られているが,否定命令文も叙述の文と同様,肯定的な事態,すなわち命令文の対象となる行為が先にあって使用される。そしてその行為の成立する時間および意志性という二つの要因により,文の機能が,事態の実現を要求する《命令》から,〈不満の表明〉・〈当為的判断〉・対象となる行為に対する〈評価〉・〈願望〉に変化する。実例では後者の《命令》以外のもののうち,叙述文的な機能を担う〈不満の表明〉〈当為的判断〉〈評価〉の例が非常に多く出現する。しかもその中で〈評価〉は否定命令文に特有のものである。こうしたことから,否定命令文は肯定命令文に比べて叙述文に傾く傾向が強いといえる。
著者
Diego Fernando GARCIA-DIAZ Patricia LOPEZ-LEGARREA Pablo QUINTERO Jose Alfredo MARTINEZ
出版者
Center for Academic Publications Japan
雑誌
Journal of Nutritional Science and Vitaminology (ISSN:03014800)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.367-379, 2014 (Released:2015-04-06)
参考文献数
115
被引用文献数
16 76

Obesity has emerged as one of the major health threats worldwide. Moreover, an excessive body fat accumulation, which defines this disease, could lead to several associated clinical manifestations such as cardiovascular events, type 2 diabetes, inflammation, and some types of cancer. The appearance of these co-morbidities has been often related to an unbalanced oxidative stress. Therefore, antioxidant-based treatments could be considered as interesting approaches to possibly counteract obesity fat accumulation complications. In this context, it has been observed that vitamin C intake (ascorbic acid) is negatively associated with the occurrence of several conditions such as hypertension, gallbladder disease, stroke, cancers, and atherosclerosis, and also with the onset of obesity in humans and animals. Among the possible beneficial effects of ascorbic acid on obesity-related mechanisms, it has been suggested that this vitamin may: (a) modulate adipocyte lipolysis; (b) regulate the glucocorticoid release from adrenal glands; (c) inhibit glucose metabolism and leptin secretion on isolated adipocytes; (d) lead to an improvement in hyperglycemia and decrease glycosylation in obese-diabetic models; and (e) reduce the inflammatory response. Possibly, all these features could be related with the outstanding antioxidant characteristics of this vitamin. Thus, the present article reviews the up-to-date evidence regarding in vitro and in vivo effects of vitamin C in obesity and its co-morbidities.
著者
栗田 岳
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.16-31, 2011-01-01

連体形終止、及び、連体形+ヨの終止には、述語にム・ラム・ケム(=ム系)を持ちつつ、推量・意志の文とは解しがたい例を見るが、それらは、以下の2類に区分される。・I類言語主体の推量・意志の作用とは関わりなく構成される未来事態を表すもの。・II類言語主体にとって、本来在るはずの姿とは齟齬する既実現の事態を表すもの。I類に表される未来事態とは、言語主体に思い描かれることによってのみ存在する事態である。一方、II類の言語主体は、本来在るはずの姿と齪齬する事態に惑い、改めてその存在を思い描くものと考えられる。以上より、これらI類・II類のム系は「事態が現実世界に存在することを思い描く」作用(=「設想」)を担う形式であると結論する。
著者
坪井正五郎, 沼田頼輔 編
出版者
東洋社
巻号頁・発行日
vol.第1集, 1901
出版者
日本国有鉄道自動車局
巻号頁・発行日
vol.昭和37年版, 1962
著者
川口 淳一郎 森田 泰弘 澤井 秀次郎
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告 (ISSN:02852853)
巻号頁・発行日
vol.82, pp.1-180, 1995-09

本書は, 文部省宇宙科学研究所が平成7年1月15日に打ち上げたM-3SII型ロケット第8号機の第2段飛翔中に発生した姿勢異常について行った技術検討結果を報告するものである。本書は, M-3SII-8号機調査特別委員会の報告書ではなく, 内容は, 技術検討結果のみを報告するものである。過去, 今号機において行われた飛翔前試験の実施状況や, 体制を含めた不具合発生との関連, 再発防止などについては, 同調査特別委員会の最終報告書にゆずる。内容は, 何回かの調査特別委員会にて検討に供された技術資料を, 順次章ごとにたどる形式が採られている。本書では, 以下の同委員会報告内容の主たる点を, この冒頭で記述するにとどめる。「姿勢異常の原因は, 制御系を介した構造振動モードの励振に端を発した姿勢制御用噴射体の枯渇にあったことが明らかとなった。制御系が自励的に構造振動を発振せしめた原因は, 今第8号機におけるペイロード重量増により, 姿勢検出部における構造振動モードが不安定側に大きく転じていたことと, 同じ理由により構造振動に対する制御利得が著しく大きな値となっていたためである。M-3SII型ロケットの開発にあたっては, その初号機の飛翔前においては, 構造振動モード解析ならびにそれら柔軟性を考慮した制御系解析が行われたのであるが, 1)初号機においては剛体性が極めて高いことが数値指標で確認されていたこと, 2)姿勢検出部は初号機においては第1次構造振動モードの腹の位置にあり少なくとも線形性の成立する範囲ではペイロード重量の構造振動モードの制御安定性におよぼす感度は十分小さいと判断されていたこと, 3)今号機の飛翔以前の7回の飛翔を通じて第1次構造振動モードは励振はもちろん検出されたことがなかったことから, 今第8号機の飛翔前においては, 依然として剛体性近似が適用できると判断し, 構造振動モード解析および柔軟性を考慮した制御系検討は行われなかった。これが今回の不具合を事前に発見するにいたらなかった理由である。」
著者
川野 靖子
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.47-61, 2009-10

「塗る」等の動詞は壁塗り代換と呼ばれる格体制の交替を起こすが,「付ける」「汚す」等は交替を起こさない。壁にペンキを{塗る/付ける/*汚す}壁をペンキで{塗る/*付ける/汚す}この現象に関して次のことを論じた。(1)「交替を起こすのは位置変化と状態変化を表す動詞」という従来の記述は,現象の言い換えであり説明にならない。交替を起こさない動詞が表す位置変化・状態変化との違いを明らかにする必要がある。(2)分析の結果,交替を起こす動詞が表す位置変化・状態変化は,それぞれ依存的転位・総体変化として特徴づけられるものであり,両者のシフトによって交替が起こることが分かった。「付ける」「汚す」等はこのようなタイプの位置変化・状態変化を表さないため交替が起こらないのである。(3)本稿のアプローチは,動詞の範疇的語義の階層性に着目したものである。これは,複数の交替の体系的記述を可能にする点でも有意義なアプローチである。
著者
宮永 孝
出版者
法政大学社会学部学会
雑誌
社会志林 (ISSN:13445952)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.146-99, 2013-12
著者
島野 智之
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.4-14, 2018-02-28 (Released:2018-03-20)
参考文献数
65

The taxon-group of Acari has most number of valid species (almost 55,000) in Arachnida, however Acari was disappeared in textbooks of invertebrate nowadays. Acariformes and Parasitiformes sensu lato are used as separated taxon-groups instead of Acari. Although two-name system, tick (sucking blood) and mite (others) were common for meaning Acari in some countries, Japanese use one word “dani” for Acari. French use three categories, tick, mite and ciron (ceron). The “ciron” means cheese mites (and some small bugs) and was used as the symbol of minimums in some French literature (e.g. Fables by Jean de la Fontaine in 1668, Pensées by Blaise Pascal in 1670). Acarine species are recorded almost 2,000 in Japan, and 1% (almost 20 species) of them are harmful as common sucking blood ticks. Acari have diverse eating habits, while other members of Arachnida are only predators. The diversity of Acarine eating habits may have maintained species diversity of them. Oribatida as a decomposer has various physical appearance. The much morphological diversity is a strategy to defend against predators. The oribatid mite have not only morphological defense but also chemical defense as chemical secretion from opisthonotal glands and physical defense as jumping. These various defense strategies are also helpful in maintaining diverse species.
著者
佐藤 貴裕
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.132-118, 2015-04-01

辞書史的観点を中心とする、節用集研究の現況と今後の可能性・注目点・注意点などを記した。まず、従来の研究の到達点の大要を示した。ついで、研究の基礎となる資料上の諸問題について、「節用集諸本の現況と問題点」「資料新出の可能性」「版種研究」「編集をめぐる諸相の解明」の四題について詳述した。さらに、時代ごとの社会的位置づけのための手法について、「諸本の性格論・本質論」「付録研究の進展」「利用様態研究の可能性」の三題のもと、やや詳述した。以上により、辞書史的観点からの研究を深化させるためには、様々な側面・部分について隣接分野の研究成果を積極的に参照・摂取する必要のあることが知られた。
著者
宮澤 陽夫 藤本 健四郎
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

酸化油脂を経口摂取したときの生体毒性の発現機構を知るため, リノール酸メチルヒドロペルオキシドおよびその二次酸化分解生成物(主にカルボニル化合物)を経口投与したときのマウス免疫系組織への影響を調べた.C67BL/6系雄マウス(体重20〜30g)に精製リノール酸メチルヒドロペルオキシド(過酸化物価=6100meq/kg)を90, 190, 270, 310mgずつ経口投与した. また別にヒドロペルオキシドの分解物(カルボニル化合物)を経口投与した. 投与24時間後に, 臓器重量正測定するとともに, 各種臓器組織をHE, PASおよびズダンIII法で染色し, 組織像(肝臓, 胸腺, 脾臓, パイエル板など)を光学顕微鏡で調べた. また, 血清GOTとGPTの活性を測定した. リノール酸メチルヒドロペルオキシドなどの脂質過酸化物を投与したときの胸腺細胞をフローサイトメトリーによるドットプロット分析に供し, 胸腺細胞の変化を調査した.リノール酸メチルヒドロペルオキシドなどの脂質過酸化物を経口摂取したマウスの免疫系組織(胸腺, 脾臓)の重量は顕著な低下を示した. とくに胸腺上皮組織では, 浸潤しているリンパ球の著しい壊死が観察できた. この時胸腺ホモジネートからの自発的な極微弱化学発光量は顕著な増加を示した. また脂質過酸化物を摂取したマウスの脾臓においてはヘモグロビンの変性を示すヘモジゼリンの蓄積が認められ, 一方, 小腸パイエル板においてはリンパ球の壊死が顕著に認められた. ヒドロペルオキシド投与マウス胸腺のリンパ球をフローサイトメトリーで分析すると, 免疫応答能の欠落した容積の小さいリンパ球群の出現が新たに認められた. これらの結果から, 脂質加酸化物を摂取した場合に生体の免疫系組織に大きな障害のあらわれることが明らかになった.
著者
犬飼 隆
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-14, 2008-01-01

木簡をはじめとする出土物に墨や線刻で文字を書いたものがあり、手続きをふめば言語資料になる。それらは、古代の現物がそのまま利用できる点に価値がある。また、日々の文書行政の場で使い捨てを前提にして書かれたので、日常の言語使用が反映している点にも価値がある。出土物を言語資料として活用することによって、記紀万葉の類からとは異なる知見を得ることができ、今後、八世紀以前の日本語の全体像が塗り替えられるであろう。九世紀以降との連続・不連続も一層精密に解明されるであろう。より良質な資料を得て適切にとりあつかうためには、歴史学・考古学との学際を深める必要がある。また、朝鮮半島の出土物との比較が、研究の深化と精密化と発展をもたらす。