著者
石田 翔太郎 須田 礼仁
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC) (ISSN:21888841)
巻号頁・発行日
vol.2015-HPC-152, no.5, pp.1-18, 2015-12-09

計算機上で整数一様乱数を生成する方法については,これまで多くの論文が発表されてきた.一方で,浮動小数点数一様乱数を生成する方法 (または整数一様乱数から浮動小数点数一様乱数への変換法) については,多くの場面で整数一様乱数を定数で割る方法 (rand()/232など) が用いられてきた.しかしながら,この方法では特定の形式の浮動小数点数しか生成されず,ほとんどの浮動小数点数は生成されない.これに対して,Moler は [2-53,1-2-53] の範囲にある全ての浮動小数点数を生成可能な一様乱数生成器を提案し,その後 Thoma により,その範囲は (0,1) にまで拡張された.しかしながら,Thoma により提案された手法は,浮動小数点数の丸めモードによっては,隣り合う浮動小数点数の出現確率が 3 倍程度異なる箇所が生じるといった,不自然な挙動を取ることが実験的及び理論的な検証から分かった.そこで,本論文はこの不自然な挙動を修正することを目的とした上で,まずは正しい浮動小数点数一様乱数生成器について議論し,続いてそのような生成器を提案すると共にその正当性を示し,最後に,提案された生成器の性能を実験により示した.
著者
池澤和希 浦谷則好
雑誌
第77回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, no.1, pp.191-193, 2015-03-17

歌はいつの時代も人々の関心を集め続けている。人間と常に寄り添って歩んできた歌を調べることにより社会学的に有用な人の動向、興味を調べることが可能となる。本研究では歌を形成する要素である歌詞の特徴や傾向を分析し可視化することを目的とする。 まず、共起ネットワークを用いてそれぞれの歌詞の語の特徴を分析、図にマッピングすることで作詞家の特徴を明確にする。対応分析を行い作詞家間の類似度を可視化する。さらに、歌詞から年代を推定し、時代背景との関連を考察する。
著者
田端 健人
雑誌
宮城教育大学紀要
巻号頁・発行日
vol.46, pp.185-192, 2011

教育実践現場の観察に基づく質的研究においては、実践現場を観察するなかで「問い」が生起することが自覚されてきた。本稿の課題は、質的研究の「問い」の固有性を明確化することである。このために本稿は、「問いの現象学」を手がかりとする。本稿では、まず、「問い」のタイプを4つに区分する。「見せかけの問い」「情報収集のための問い」「既知の項から未知の項を割り出す問い」「哲学の問い」である。そして、質的研究では、第二と第三の問いも重要な役割を果たすが、研究の質を深める問いにとって示唆となるのは、第四の問いであることが指摘される。そこで次に、第四の哲学の問いと質的研究の問いとの異同を明確化し、質的研究の問いの固有性を浮かび上がらせたい。その結果明らかになるのは、質的研究の問いは、哲学の問いと同様に、問う者を傍観者にさせず、巻き込んでいくという根本特徴をもつことである。また、質的研究者の「観察の有限性」「感情の曖昧さ」「記憶の間違い」は、観念論的には否定的にしか評価されないが、現象学に基づくならば肯定的に評価される。最後に、こうした問いに対する応答についても考察する。
著者
末竹 将人 木津 巴都希 Surote Wongpaiboon 光来 健一
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2015-OS-135, no.4, pp.1-7, 2015-11-17

仮想マシン (VM) をサービスとしてユーザに提供する IaaS 型クラウドの発展に伴い,一台のサーバで多くの VM を稼働させるだけでなく,大容量メモリを持つ VM も提供されるようになってきた.一方で,VM のマイグレーションを行うには移送先のホストに十分な空きメモリ容量が必要となり,大容量メモリを持つ VM はマイグレーションを行うのが困難になるという問題がある.マイグレーションのために大容量のメモリを備えたホストを確保しておくのはコストの面から難しいことが多いためである.本稿では,大容量メモリを持つ VM を複数のホストに分割してマイグレーションすることを可能とするシステム S-memV を提案する.S-memV は VM の核となる情報と頻繁にアクセスされるメモリを移送先のメインホストに送り,メインホストに入りきらないメモリはサブホストに送る.VM がサブホストにあるメモリを必要とした時には,メインホストとサブホストの間でメモリをスワップする.S-memV はこのような 1 対 N マイグレーションに加えて,N 対 1 マイグレーションおよび複数ホストにまたがる部分マイグレーションもサポートする.我々は S-memV を KVM に実装し,仮想メモリを用いた従来手法よりもマイグレーション時間を短縮できることを示した.
著者
加藤 麻由美
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.77-91, 2003-01-10

多文化主義は当初多民族国家カナダにおいて社会統合のための政策として採用され、その後オーストラリア、西ヨーロッパ、アメリカ合衆国などへ普及していった。しかしながら、多文化主義は文化的差異の間の新しい均衡を目指しているために、社会分裂の危険性や西欧文化の否定につながるというパラドックスに悩まされることになる。反多文化主義派は、これまで特権的な地位を占めていた西欧文化の優位性が失われるのではないかとの脅威を感じている。本稿ではグローバル社会の現在、民主主義思想から生まれてきた新たな社会統合原理としての多文化主義の可能性と問題点について概説し、多文化主義の限界を乗り越え、その可能性をより発展させる戦略としてディアスポラおよびハイブリディティ概念の活用を提案する。
著者
菅原 真
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.13-27, 2009-06-30

フランスの1789年「人および市民の権利宣言」における「市民」概念は、外国人を排除する観念であるのか。本稿は、この問いにささやかな検討を加えるものである。この問いに対して、フランスの公法学説には二つの対立する見解がある。第一の説は、人権と市民の権利の間を「分離切断」し、外国人を含む全ての人に属する権利と、外国人には保障されずフランス市民だけに限定された権利とに区別する考え方である。第二の説は、人権宣言の起草者たちの「普遍主義」的ないし自然法論的観点からこの1789年宣言を再定位するというものである。1789年宣言の諸条項それ自体を再検証し、またフランス革命初期における立法者意思、1789年当時においては「普遍主義的潮流」が「ナショナルな潮流」を上回っていたこと等を総合的に斟酌すると、この第二説の解釈が妥当性を有すると考えられる。
著者
五十嵐 修 イガラシ オサム Osamu IGARASHI
雑誌
人文・社会科学論集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1-22, 2004-03

Die tatsachliche Kaisererhebung Karls des Groβen bereitete dem frankischen Hof groβe Schwierigkeiten. Das 800 in Rom geschaffene Kaisertum entsprach nicht der Vorstellungen des frankischen Hofs. Die Ideen Alkuins und anderer frankischer Kleriker zielten eigentlich auf eine spirituelle Uberhohung des frankischen Konigtums zum imperium Christianum. Aber der romische Ursprung in Karls Kaisertum trat weiter in den Vordergrund. Deshalb bedurfte es viel Zeit, um diese Schwierigkeiten zu uberwinden. Karls Titel nach seiner Kaiserkronung unterstutzt diese Interpretation. Zum neuen Titel wahlte Karl der Groβe eine sehr komplizierte Form. Der neue Titel behielt auch wie bisher den frankischen und langobardischen Konigstitel bei. Der Kaisertitel war nur ein Bestandteil seines neues Titels. Wahrscheinlich konnte der frankische Hof erst 802 eine bestimmte Richtung geben. Vielleicht zeigt es auch die Schwache der Idee des Kaisertums. Der Begriff des Kaisertums, dessen Titel Karl endlich erwerben konnte, war zu kompliziert fur das langere Bestehen des Kaiserreiches Karls des Groβen.
著者
宮川 久美
出版者
奈良佐保短期大学
雑誌
奈良佐保短期大学研究紀要 = Bulletin of Nara Saho College (ISSN:13485911)
巻号頁・発行日
no.21, pp.1-23, 2013-03-31

本書は、正倉院文書の中の月借り銭解について、訓読と注釈を試みたものである。東大寺正倉院には、正倉院文書と呼ばれる奈良時代の文書群が納められている。この「正倉院文書」は、転写を経ない千三百年前の生の資料であるという点で非常に価値が高い。すでにその価値に着目して様々な研究がなされ、建築・美術・工芸・服飾・食物・産業・経済など多方面にわたる数多くの成果が上げられている。しかい、国語学の分野の研究はいまだ緒についたばかりと言ってよいのではないだろうか。正倉院文書を一言一句訓読することは奈良時代の言葉の研究にとって大きな意味を持つと考えられ、ひいては逆に様々な分野の研究に資することもできるのではないかと期待される。
著者
島岡 政基
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1070-1075, 2015-10-15

暗号技術は情報通信技術とともに今や広く社会で利用されているが,複雑な暗号技術があたり前のように社会で利用できるのは「社会の複雑性を縮減するメカニズムのひとつ」であるトラストに支えられているからである.暗号技術がトラストに支えられて広く普及した典型例としてWeb PKI(Public Key Infrastructure)がある.本記事では,このWeb PKIを事例に暗号技術を支えるトラストについて解説するとともに,急速に発展しつつあるInternet of Things時代においてトラストがどのように変わっていくのかについて考察していく.
著者
須賀 祐治
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1064-1069, 2015-10-15

SSL/TLSプロトコルの概観と,これまでに公開されたSSL/TLSに対する攻撃の概要を紹介する.さらに現在策定中のTLS1.3の策定状況についても触れる.暗号プロトコル
著者
手塚 悟
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1058-1063, 2015-10-15

我が国において,2016年1月から開始されるマイナンバー制度について概要を説明する.電子署名と電子認証の違いについて述べ,電子署名・電子認証技術がどのようにマイナンバー制度に係りを持っているのかを概説する.さらに,海外の状況,特にEUの制度を説明し,我が国の制度との違いについて説明する.最後に,マイナンバー制度において電子認証技術がどのように活用されているかを解説する.
著者
Xiaoxiong Xing Yoshinori Dobashi Tsuyoshi Yamamoto
雑誌
研究報告グラフィクスとCAD(CG)
巻号頁・発行日
vol.2012-CG-147, no.2, pp.1-6, 2012-06-15

We present a real-time framework for rendering hair under environment lighting. We precompute the diffuse and specular irradiance environment maps for Kajiya-Kay model with a given environment map, thus reduce the runtime shading computation to simple texture lookups, and we simulate hair self-shadowing by using offline ambient occlusion. In addition, we further achieve runtime editing of the environment map by using spherical harmonic lighting to accelerate the computation of irradiance maps.