著者
岩崎 周一
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 社会科学系列 (ISSN:02879719)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.123-154, 2013-03

本論の目的は、近世においてハプスブルク君主国の兵士たちが実際に生きた世界の実状を、当時の法 令・通達、および関係者が残した体験記・見聞録を史料として検討することである。 17 世紀末より、常備軍の必要性を確信したハプスブルク王権は、軍を可能な限りその統制下におこう とした(「軍隊の君主国化」)。しかし、忠良にして勇敢・優秀な自国民出身の兵士によって構成される、 国家による管理監督が行き届いた軍隊の形成という理想が実現されることはなかった。人々の意識にお いて、戦争や軍事は基本的に自分とは関わりのない厄介事であった。実際に軍人・兵士となったのは、 (1)傭兵を生業とする人々、(2)強制的な徴募の犠牲となって意に反して軍役につかされた人々、(3) それまでの生活環境から脱出し、社会的上昇を果たす機会として軍役をとらえた人々のいずれかであっ た。また兵士たちは、身分・出身・民族・宗教・言語などにおいて多種多様であり、共属意識にはきわ めて乏しかった。 近世の軍隊が抱えたこうした諸問題を解決する策として、18 世紀後半からは、現実に存在する多様性・ 多元性を超克するような「国民」意識や愛国心の涵養が主張されるようになった。そしてこの主張の実 現は、フランス革命とナポレオン戦争がもたらした動乱の後、達成すべき国家目標に変化する。ハプス ブルク君主国の軍隊は以後その崩壊にいたるまで、個々の領邦や民族ではなくハプスブルク君主国その ものに愛国心をいだく「国民」を担い手とすることをめざし、不断の苦闘を重ねることとなっていった。
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.852, pp.104-113, 2003-07-21

「あの本もう読んでみた? すごく面白いよ」「ふぅん。それじゃ帰りに,ケータイで読んでみようかな」。 学校や会社,駅のホームで,こんな会話を耳にする日が間もなく訪れようとしている。多くの人が日常的に持ち歩く携帯電話機と,最近になって利用者数を増やしている電子辞書端末が,それぞれ「読書端末」へと進化を始めているからだ(図1)。

4 0 0 0 OA 日本地理小誌

著者
那珂通世, 秋山四郎 編
出版者
中央堂
巻号頁・発行日
vol.巻下, 1887
著者
竹原 新
出版者
説話・伝承学会
雑誌
説話・伝承学 (ISSN:09193995)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.27-42, 2017-03
著者
岡野 裕行
巻号頁・発行日
2006

筑波大学博士 (学術) 学位論文・平成18年6月30日授与 (甲第4147号)
著者
板倉 陽一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.28, pp.1-8, 2013-09-04

復興庁職員によるツイッターでの不適切発言事案が発生したことから,総務省は,同様の事案の再発防止を期する観点から、各府省庁等に対して職員の服務規律の徹底を求めるとともに、「国家公務員のソーシャルメディアの私的利用に当たっての留意点」 を取りまとめ、各府省庁等に対して、これを参考に職員への周知徹底を行うほか、必要に応じて、内規の制定、研修の実施等を行うよう求めている。本発表では,同取りまとめの意義を,具体的事例を交えて解説するとともに,その影響等につき考察する。Followed by the careless tweet case by the official of Reconstruction Agency, Government of Japan, Ministry of Internal Affairs and Communications, Government of Japan (MIC) announced government agencies for the compliance of rules for officials and published "Points for attention for personal use of social media by government officials". MIC required government agencies to refer this "Points", set internal rules and have in-house trainings. This paper examines the "Points" with cases and considers the impact of it.
著者
Yuki HIRAKAWA Tomomi YAMASAKI Ayako HARADA Seiji IWASA Hiroshi NARITA Shiro MIYAKE
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
Analytical Sciences (ISSN:09106340)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.533-539, 2018-05-10 (Released:2018-05-10)
参考文献数
30
被引用文献数
18

A simultaneous immunosensor based on surface plasmon resonance (SPR) was developed for determination of 3 pesticides —boscalid, clothianidin and nitenpyram— instead of the direct competitive enzyme-linked immunosorbent assays (dcELISAs) widely used as individual determination methods. Carboxy groups that introduced compounds to their pesticides were designed, and conjugates of them and bovine serum albumin were immobilized onto separate channels of the same sensor chip. When a mixture of 3 monoclonal antibodies reacted to each pesticide, and 3 pesticides were injected into the SPR immunosensor, each channel showed specific reactivity at 15 – 93 ng mL−1 for boscalid, 6.7 – 27 ng mL−1 for clothianidin, and 7.3 – 62 ng mL−1 for nitenpyram. Recovery tests using vegetables spiked with a mixture of 3 pesticides showed good results: 75 – 90%, 88 – 104%, and 72 – 105%, respectively, with a high correlation to results of the dcELISAs. The SPR immunosensor would be useful for the determination of pesticide residues in vegetables.
著者
山田 昌弘
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.341-354, 2004-03-31
被引用文献数
1 13

近代社会においては, 家族は国家と並んでその関係が選択不可能, 解消困難という意味で, 個人化されざる領域と考えられてきた.この2つの領域に, 選択可能性の拡大という意味で個人化が浸透していることが, 現代社会の特徴である.<BR>家族の個人化が日本の家族社会学者の間で考察され始めるのは, 1980年代である.それは, 家族の多様化という形で, 家族規範の弱体化が進んだことの反映である.<BR>考察に当たって, 2つの質的に異なった家族の個人化を区別することが重要である.1つは, 家族の枠内での個人化であり, 家族の選択不可能, 解消困難性を保持したまま, 家族形態や家族行動の選択肢の可能性が高まるプロセスである.<BR>それに対して, ベックやバウマンが近年強調しているのは, 家族関係自体を選択したり, 解消したりする自由が拡大するプロセスであり, これを家族の本質的個人化と呼びたい.個人の側から見れば, 家族の範囲を決定する自由の拡大となる.<BR>家族の枠内での個人化は, 家族成員間の利害の対立が不可避的に生じさせる.その結果, 家族内部での勢力の強い成員の決定が優先される傾向が強まる.家族の本質的個人化が進行すれば, 次の帰結が導かれる. (1) 家族が不安定化し, リスクを伴ったものとなる. (2) 階層化が進展し, 社会の中で魅力や経済力によって選択の実現率に差が出る. (3) ナルシシズムが広がり, 家族が道具化する. (4) 幻想の中に家族が追いやられる.
著者
良峯 徳和
出版者
多摩大学グローバルスタディーズ学部グローバルスタディーズ学科
雑誌
紀要 = Bulletin (ISSN:18838480)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.125-143, 2014-03-01

虚構存在をめぐる哲学上の議論を概観すると、その議論の多くが、虚構に関する知識フレームのあり方を問うたものであり、虚構のパラドキシカルな性質の多くは、指示対象としての存在者とそれに関する知識フレームを混同したことに起因することがわかる。こうした考察に基づき、知識フレームの概念を用いて、コンピュータ上に意味ネットワークを構築することで、現実世界と虚構世界を混同することなく、虚構テキストの内容を理解する擬似的なシステムの構築を試みた。In this paper, I reviewed the recent philosophical discussions on fiction. I found most of them are on the ontological status of knowledge frames about fictitious existence and that the presumed paradoxical properties of fictitious existence arise from the confusion between the referents of fictitious expressions and the knowledge frames about them. Based on the consideration, I tried to implement a computer simulation program whereby both the information from fictional text and that from common-sense are integrated into the semantic network without being mixed up.
著者
清水 敏行 建部修見 工藤 知宏
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.23-34, 2004-05-15

最近のクラスタ向け計算機,とりわけラックマウント型では,限られた容積に多くの機器が実装されているため,それを冷却するファンの振動によってHDD等のデータ転送性能が低下する問題が生じていることが分かった.従来より外部からの振動によってHDD の転送性能が影響を受けることは知られていたが,我々の実験によりHDD の仕様以下の強さの振動であっても特定の周波数の振動が連続的に加わると20?90%の転送速度の低下が見られ,ときにはHDD が回復不能なダメージを被る場合があることが明らかとなった.本稿ではこの問題について紹介し,HDD の転送速度の周波数特性を詳細に調べることで原因の推定を試みる.またその結果をふまえて,解決の一手法について述べる.Performance of latest HDDs can be affected by the mechanical vibration of the cooling fan. This phenomenon is often observed in recent low height rack-mounted type computers, which have number of components in its limited capacity of the enclosure. The head positioning servo of latest HDD's are designed considering the effect of vibration. However, we found that the transfer rate of HDD is sometimes degraded by the continuous vibration even when the magnitude of the vibration is smaller than the specified allowance. Moreover, such vibration cause an unrecoverable damage in some cases. This paper introduces such phenomena, and tries to investigate the cause of the phenomena by analyzing frequency response characteristics of the HDD transfer rate in detail. This paper also discusses ways to avoid these problems.

4 0 0 0 OA 校刻日本外史

著者
頼山陽 著
出版者
彰文館
巻号頁・発行日
1911
著者
シェフォールト ベルトラム
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.17-32, 2010-10-31 (Released:2015-04-04)
参考文献数
5

発展した資本主義的諸関係のもとで生産された諸商品の価格は,長期的平均では,これらの商品のうちに技術的生産物として体化した労働時間,つまりそれらの 商品の労働価値に比例するという仮説を,労働価値説と理解するならば,偉大な巨匠であるスミス,リカードウ,マルクスのいずれもが,労働価値説を真とは考 えなかったことになる.その一方,ある商品の長期的平均価格を,その商品のうちに体化した労働時間と数学的に関連づけようとする試みとして,労働価値説を 理解するならば,新古典派の創設者であるマーシャルでさえも,労働価値説の信奉者ということになる.混乱を避けるために,以下で労働価値説という場合に は,たえずマルクスの価値論が念頭に置かれる.そこでは,いわゆる転形問題が関わってくる「量的側面」は,いくつかある側面の1つに過ぎない.本稿では,生産価格と労働価値との関係が,ピエロ・スラッファにならって展開される.(原著「マルクス経済学とネオ・ケインジアンの蓄積論 における価値と価格」*)の序文)