著者
浦川 加代子 萩 典子 Urakawa Kayoko Hagi Noriko
出版者
三重大学医学部看護学科
雑誌
三重看護学誌 (ISSN:13446983)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.89-92, 2008-03-05

本研究では, 職業性ストレスの中でも 「対人関係」, 「活気」, 「仕事の満足度」, 「仕事の適性度」, 「家族のサポ-ト」 などがストレス対処行動に影響していることが明らかになった. 性別との関連では, 男性より女性の方が約 6 倍の確率でストレス対処をしていること, 男性は趣味を含めた自分の好きなことや運動など単独で対処する傾向にあり, 女性は人と話をする対処行動が最も多く, ソ-シャルサポ-トを活用している傾向がみられた. このような結果をふまえ, セルフケア推進のため個別に認知・行動療法などの内的ストレス対処方法の指導を実践していくことが課題である.
著者
末武 康弘
出版者
法政大学現代福祉学部現代福祉研究編集委員会
雑誌
現代福祉研究 = The Bulletin of the Faculty of Social Policy and Aoministration : Reviewing research and practice for human and social well-being (ISSN:13463349)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.7-29, 2017-03-01

本稿の目的は、カウンセリングやサイコセラピーの中でフォーカシング(Gendlin, 1981)およびTAE(thinking at the edge) (Gendlin, 2004; Gendlin & Hendricks, 2004)を、他のさまざまな方法と多元的に組み合わせながら活用するための理論的な枠組みと手続きを示し、それを1つのガイドとして作成することである。フォーカシングとTAEを中心にして他のさまざまな方法を多元的に活用するための理論的な観点と手続きが論じられ、「多元的フォーカシングセラピー(pluralistic focusing therapy: PFT)のガイド」が作成された。
著者
松川 克彦
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 社会科学系列 (ISSN:02879719)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.99-125, 2006-03

拙稿は1970年に締結され、オーデル・西ナイセの境界を戦後はじめて正式な国境として承認したポーランドと西ドイツ関係正常化基本条約、及び締結に至る経緯を扱う。この条約はポーランドにとってのみならず、ヨーロッパ全体の安定のためにも不可欠の条約であったにも拘らず、その背後には歴史的な対立が存在したため締結までに25年という歳月を要している。 冷戦期、ドイツは東西に分裂していたにもかかわらず、ポーランドとの新しい国境を認めないという点では一致していた。二つの国家に分断されたとはいえ、ポーランドに対しては共同歩調をとり得たのである。東ドイツは、社会主義国としてポーランドと同じ陣営に属していながら、その望むところは戦前の旧国境の回復であった。しかし東ドイツは1950年にソ連からの圧力によって、この国境を承認せざるをえなかった。問題は西ドイツだった。ポーランドは、西ドイツからの承認が得られない限り、自国の存立の基盤、安全の保障に支障があったのである。 敵対的な両国の関係に転機をもたらしたのは、新たに西ドイツ首相となったブラントであった。東側との和解を求めんとするブラントは1970年にワルシャワを訪問して、国境承認に関する条約に調印したが、その際ゲットーの跡の記念碑に詣で、そこにひざまずいたのである。ポーランド側にとって誠に好都合なジェスチュアであると思われたのであるが、同国はブラントのこの行為に困惑した。ひざまずいている写真を国内で報道することを一切許さなかった。 その理由は、直接にはブラント訪問の三年前、ポーランド社会主義政権が始めたユダヤ系ポーランド市民排斥の動きに抗議して学生、労働者がおこした反体制運動と関連している。ポーランドの共産党第一書記ゴムウカは、ブラントがこれらユダヤ人を支援するとの意図を持つのではないかと疑った。 また社会主義陣営内では一般国民に向けて、西ドイツとは即ち「アメリカ帝国主義の手先」であって、常に報復を企てている悪辣な国家であるとの宣伝を行っていた。ここでブラントがひざまずいた写真を公表するならば、従来の西ドイツに関する説明は、根拠が薄弱となることを認めなければならない。写真を公表しなかったのはそのためでもある。 ゴムウカは破綻しかかっている社会主義の経済、全体主義的な支配にたいする国民の不満をさらに覆い隠すためにも、真実を発表できなかったのである。しかし、発表しなかったことによっても政権は救えなかった。ブラントのこの行為は結局、社会主義専制体制の崩壊へとつながっていく。ポーランドを取り巻く列強の思惑、東ドイツとの関係に触れながら、以上の点を明らかにする。
著者
村山 にな
雑誌
玉川大学芸術学部研究紀要 (ISSN:18816517)
巻号頁・発行日
no.11, pp.17-31, 2020-03-31

千葉県市原市を南北に走る小湊鉄道沿線地域の南部で繰り広げられる「いちはらアート×ミックス」を事例に、既存の市民活動とアートプロジェクトを比較し、地域におけるアートの真価を問う。地方の芸術祭における新規作品展示の再魔術化と運営合理化の連鎖と、ノスタルジアを媒介とする来場者と地域の共犯と相反関係の錯綜を示唆する。内外から見えてくる市原市の芸術祭は身の丈で、アマチュアとプロの境なく、大規模な恒久作品もないが、専門用語で飾った言説で市民を疎外するものでもない。過疎化する地域に出現するアートに対する期待と現状の齟齬を擦り合わせ、まちづくりのビジョン形成と共有化、具現化の試行錯誤におけるアートの役割を考察する。
著者
武村 政彦 井﨑 博文 小森 政嗣 仙崎 智一 布川 朋也 山本 恭代 山口 邦久 中逵 弘能 高橋 正幸 福森 知治 金山 博臣
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.91-95, 2013-02

A 61-year-old woman was referred to our department with a diagnosis of left solitary adrenal metastasis from cervical cancer in September 2011. She presented with postmenopausal bleeding in September 2010. The patient received seven courses of paclitaxel (175 mg/m2) and carboplatin (6 mg/GFR+25) for stage IV cervical cancer with paraaortic, bilateral common iliac, mediastinal lymph node metastases and left adrenal metastasis from October 2010 to April 2011. Paraaortic radiation (50.4 Gy) was subsequently administered from May 2011 to July 2011. Abdominal nonenhanced computed tomography (CT) revealed a left 26×21 mm adrenal mass with regular margins (attenuation values 53 HU). On enhanced CT, the mass showed heterogeneous enhancement. F fluoro-2-deoxy D-glucose (FDG) positron emission tomography/CT images showed moderately increased FDG-avid uptake in the left adrenal tumor which was high enough to be suspicious of malignant tumor (standardized uptake value max : SUVmax 6.8). There were no other foci of pathologic uptake of FDG in the whole body. The plasma endocrinological examinations was all normal. Left laparoscopic adrenalectomy was performed. The final pathologic evaluation revealed adrenal cortical adenoma.
著者
鳥居 高明 佐竹 潔
出版者
東京都立大学小笠原研究委員会
雑誌
小笠原研究年報 (ISSN:03879844)
巻号頁・発行日
no.43, pp.91-101, 2020-06-30

小笠原諸島において淡水性の多毛類や貧毛類相が種レベルで調べられたことはこれまでにない。今回、小笠原村父島字小曲の八ツ瀬川水系の4地点において2012年から2015年までの4年間、断続的に調査を行った。その結果、多毛類2種および広分布種と考えられる貧毛類11種を確認した。長谷橋付近から長谷川下流部までの3地点で確認された貧毛類群集は、本州における平地の浅い富栄養湖の種構成と共通していた。また、この3地点では汎世界的に分布し、特に東南アジアでよくみられるAllonais inaequalis やウチワミミズなどが比較的多く生息していた。このことは、父島の水生多毛類・貧毛類相の特徴の一つと言えるだろう。
著者
江 楠
出版者
北海道大学大学院教育学研究院教育福祉論研究グループ
雑誌
教育福祉研究 (ISSN:09196226)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.21-37, 2020-02-27

本稿は、2017年に実施された「北海道ひとり親家庭生活実態調査」のデータを用いて、未婚でひとり親となった母子世帯の生活の実態を明らかにすることを目的とする。特に、未婚母子世帯の母の社会関係に着目し、どのような特徴があるのかを考察する。