著者
高垣 伸匡 水野 成人 田内 義彦 竹内 雅代 福岡 敏雄
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.2019-032, 2020 (Released:2020-04-24)
参考文献数
13

Evidence-Based Medicine(EBM)は日本でも普及している医療従事者の行動様式,思考形式である.イギリスにはEBMの学習者を支援するCASP(Critical Appraisals Skills Programme)という組織が存在する.1999年に倉敷中央病院総合診療科兼研修医教育部長の福岡敏雄が日本支部としてCASP Japanを設立し,CASPワークショップをはじめ,EBM学習を提供してきた.内容は臨床疫学や教育手法など多岐にわたり,短時間で楽しんで学べるよう工夫されている.一方,日本において薬学生がEBMについての教育をうける機会は乏しいのが現状である.筆者らは2010年12月から,Student CASPと称する,学生を対象としたCASPワークショップを神戸薬科大学,同志社女子大学薬学部,摂南大学薬学部などで開催してきた.このうち神戸薬科大学でのStudent CASPワークショップの紹介,およびアンケート結果を若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
工藤 安代
出版者
文化経済学会〈日本〉
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.27-37, 2006

1930年代のニューディール芸術文化政策は、現代米国社会の文化政策の基盤となっていると言える。ニューディールの芸術政策は2つの性格を持っており、一つは国民の芸術享受の機会を創出し、大不況のなかで芸術家を救済するという社会福祉的視点であり、二つ目は国家の芸術レベルを向上させ精神的アイデンティティを構築していく国家の文化向上政策の視点である。後者の担い手となったのは財務省の管轄下で実施された「セクション」である。ニューディール芸術政策は、第二次大戦と共に中断されるが、セクションの思想は1962年に設立した「米国公共施設管理庁 (GSA)」によるパブリックアート政策に引き継がれる。本稿はまず、ニューディール芸術政策の目的と各プログラムの特色を概観した後、「セクション」の政策に的を絞り、プログラムの目的、作品選定の手順・評価方法等の特性を考察する。その上で「セクション」の思想が現代パブリックアート政策の基礎を形成したことを論じる。
著者
神谷 浩夫
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.221-237, 2002 (Released:2017-05-19)
被引用文献数
3

これまで日本の医療に関する研究では,社会的な平等性の重視が日本の医療の特色であると指摘されてきた.しかし空間的な観点からみると,自由診療制度を採用している日本では医療資源の地域的な不均衡が生じている.本稿では,精神科診療所の立地パターンを把握し,近年における大都市で精神科診療所が急増している背景とその意味を明らかにしようと試みた.まず,日本の戦後における精神医療の変遷を概観し,現在の精神医療制度が形成されてきた過程を考察した.戦後の日本では「社会防衛」の観点から低コストで患者を収容するために民間精神病院が大量に建設され,その多くは市街地から離れたところに立地した.精神医療が次第に開放医療,地域医療へと向かう中で精神科診療所も増えていったが,それはターミナル駅周辺の地域に開設されることが多かった.1980年代後半に入ると,診療報酬制度の度重なる改訂によって次第に精神科診療所の経営が安定するようになり,診療所の開設が相次ぐようになった.開設された診療所の多くは,従来のターミナル駅指向,駅周辺の商業ビル指向,商業地区.繁華街指向というパターンを強めるものであり,その背景には,利便性を重視して立地する診療所側の要因とともに,通院していることを周囲に知られたくないという匿名性を優先する患者側の要因も存在していた.こうした診療所立地の傾向は,アメリカにおいて精神病退院患者が都市計画規制の緩やかなインナーシティに集積している傾向と類似していた.
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.345, pp.30-35, 2004-02-13

長さ67mで,両端の幅が4.3mも変化する平面形状をもった拡幅桁を送り出し架設する工事。圏央道の本線と分岐部を一体にした桁で,重さは690t。土砂降りの雨で中断したものの,幅員の変化に追随できる「横移動装置」を初めて採用して延べ14時間で架設した。従来の架設方法だと,順調に進んでも二晩必要だった。
著者
青島 拓紀 鈴木 雅之
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.45084, (Released:2021-11-15)
参考文献数
54

生徒の自律的な学習動機づけを高めるための教師の指導として,自律性支援の重要性が示されてきた.教師の自律性支援に対する生徒の認知を測定する尺度としては,Learning Climate Questionnaire(LCQ)があり,多くの先行研究において用いられている.そこで本研究では,LCQの日本語版(LCQ-J)とその短縮版を作成し,妥当性と信頼性の検討を目的とした.研究1では,中学生114名を対象に調査を実施し,原版と同様に1因子構造であることが確認された.また,自律性支援の認知は自律的な学習動機づけ,および基本的心理欲求充足と正の相関を示した.研究2では,中学生293名を対象に調査を行い,研究1と同一の因子構造が得られた.また,自律性支援の認知は自律的な学習動機づけ,および自己効力感と正の相関,学習不安と負の相関を示した.これら一連の結果は,フルバージョンと短縮版とで一致していたことから,フルバージョンと短縮版のいずれも,LCQ-Jには一定の妥当性があるといえる.
著者
永野 亜紀
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.35(2021年度 環境情報科学研究発表大会)
巻号頁・発行日
pp.119-124, 2021-11-30 (Released:2021-11-29)
参考文献数
14

本研究は政府のトップダウンによる地球温暖化対策であるクールビズについて,メディアが何を市民に伝えたのか,市民はどのように評価したのかを明らかにする事を目的とする。分析データは新聞報道の抽出記事,並びに,読者の投書記事をテキストデータ化し,内容分析と感情分析を用いた分析をおこなった。内容分析の結果からクールビズの報道は経済政治面に集中していたが、これにはクールビズの官製需要の側面が関係していると考察する。また,感情分析の結果からすべての感情極性値はネガティブな値を示していた。これは気候変動に関する人々の行動変容の観点から必ずしも悪い結果ではないと考える。
著者
早川 聞多
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本・ブラジル文化交流
巻号頁・発行日
pp.209-219, 2009-11-30

サンパウロ大学, 2008年10月13日-15日
著者
多田隈 建二郎 広瀬 茂男
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2003, 2003
被引用文献数
1

人が乗れるほどの耐荷重性をもつ薄型の全方向移動車両用に当研究室で開発したOmni-Discを, よりシンプルで, モーメントに耐えやすい構造を持った段差踏破可能型全方向車両用のOmni-Discへと改良した。

3 0 0 0 OA 私の履歴書(1)

著者
村井 資長
出版者
社団法人全国大学体育連合
雑誌
体育・スポーツ・レクリエーション (ISSN:03858464)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.22-25, 1977-11-01
著者
松田時彦
出版者
ラテイス
雑誌
関東地方の地震と地殻変動
巻号頁・発行日
pp.175-192, 1974
被引用文献数
10
著者
筧 捷彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.499-507, 1975-06-15

昭和処年度および49年度にかけて,NHK教育テレビで行った「コンピューター講座」について,担当者の1人として,解説する.コンピューター講座は,昭和44年度に開設され,以後毎年継続して放映されている.48,49両年度については,島内剛一(立教大学)を主任講師とし,石田晴久(東京大学),寛捷彦(東京大学,後に立教大学),木村泉(東京工業大学),広瀬健(早稲田大学),米田信夫(学習院大学)の合計6人が,講座の立案企画から,各番組での講師役までを担当した.47年度以前の講座との大きな違いの1つに,スタジオ内にミニコンを持ち込み,これの活用を図ったことがあげられる.解説の中心も,このミニコンの活用状況におくことにする.
著者
西村 泰彦 Thomas Lübbers 北山 真理 吉村 政樹 服部 剛典
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1124-1135, 2021-11-10

Point・全内視鏡下脊椎手術(FESS)で使用される内視鏡はforaminoscope(椎間孔鏡)であるので,椎間孔からのアクセスを習熟することが肝要である.・水中手術であるため,われわれ脳神経外科医にとって重要な硬膜内外の圧に影響を与えながら処置を行っていることを自覚することが重要である.・FESSは極めて低侵襲な手術手技であるが,その習熟には急峻なラーニングカーブが存在する.
著者
Daiki ABURAKAWA Masayuki KANAMORI Toshiaki AKASHI Shiho SATO Ryuta SAITO Teiji TOMINAGA
出版者
The Japan Neurosurgical Society
雑誌
NMC Case Report Journal (ISSN:21884226)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.535-543, 2021 (Released:2021-09-29)
参考文献数
17

Corpus callosum swelling has been reported to occur after ventriculoperitoneal shunting for long-standing hydrocephalus. This report presents a case of corpus callosum swelling after intraventricular tumor resection. A 34-year-old woman presented with a headache that worsened over 1 month. Magnetic resonance (MR) images revealed a mass lesion in the left lateral ventricle and obstructive hydrocephalus. She underwent subtotal resection with a transcallosal approach. After tumor resection, she had long-lasting status epilepticus followed by consciousness disturbance. T2-weighted MR images obtained 8 hr after the operation showed a hyperintense area in the corpus callosum. The patient then presented with bilateral dilated pupils 14 hr after the operation due to acute hydrocephalus and tension pneumocephalus. An emergent re-craniotomy was performed and a ventricular drain was placed. The patient recovered consciousness 3 days after the operation. However, she experienced progressive corpus callosum swelling 25 days after the operation, which improved since then. Approximately 4 months after the operation, she returned to her usual workplace with no neurocognitive functional decline. Two years later, she was doing well with no radiological abnormal findings except corpus callosum thinning. Thus, corpus callosum swelling can develop not only after shunting for chronic hydrocephalus but also after intraventricular tumor resection. It occurred relatively acutely and there was no decline in intelligence after long-term follow-up. This case suggests that corpus callosum swelling after intraventricular tumor resection is a rare but noteworthy complication that can improve without intervention.
著者
田代 敦志 相田 潤 菖蒲川 由郷 藤山 友紀 山本 龍生 齋藤 玲子 近藤 克則
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.190-196, 2017

<p><b>目的</b> 高齢者における残存歯の実態と背景にある要因を明らかにすることを目的として,個人の所得や暮らしのゆとりといった経済的な状況で説明されるかどうか,それらを考慮しても高齢者の残存歯数がジニ係数により評価した居住地の所得の不平等と関連するか検討した。</p><p><b>方法</b> 介護認定を受けていない65歳以上の高齢者を対象として2013年に全国で約20万人を対象に行われた健康と暮らしの調査(JAGES2013,回収率71.1%)において,新潟市データを分析対象とした。自記式調査票を用いて新潟市に住民票がある8,000人に郵送調査を実施し,4,983人(62.3%)より回答を得て,年齢と性別に欠損が無かった3,980人(49.8%)の有効回答を使用した。中学校区別の所得格差(ジニ係数)と残存歯数の地域相関を求め,ジニ係数別の残存歯数を比較した。次に,目的変数を残存歯数,説明変数を個人レベルの変数として,性別,年齢以外に,教育歴,等価所得,暮らしのゆとり,世帯人数,糖尿病治療の有無,喫煙状況を用い,地域レベルの変数として,中学校区ごとの平均等価所得とジニ係数とした順序ロジスティック回帰モデルによるマルチレベル分析を行った。</p><p><b>結果</b> 57中学校区別のジニ係数と残存歯数の地域相関は,相関係数−0.44(<i>P</i><0.01)の弱い負の相関を認め,ジニ係数が0.35以上の所得格差が大きい地域は他の地域と比較して有意(<i>P</i><0.001)に残存歯数が少なかった。残存歯数を目的変数とした順序ロジスティック回帰モデルにおいて,性別と年齢を調整後,個人レベルでは教育歴,等価所得,暮らしのゆとり,喫煙状況,地域レベルではジニ係数,平均等価所得が有意な変数であった。一方で,すべての変数を投入したモデルでは,個人レベルの教育歴と地域レベルの平均等価所得において有意な結果は得られなかった。</p><p><b>結論</b> 所得格差が比較的小さいと考えられる日本の地方都市においても,個人レベルの要因を調整後に地域レベルの所得格差と残存歯数の間に関連が認められた。高齢者の残存歯数は永久歯への生え変わり以降,長い時間をかけて形成されたものであり,機序は明らかではないが,所得分配の不平等が住民の健康状態を決めるとする相対所得仮説は,今回対象となった高齢者の残存歯数において支持される結果であった。</p>
著者
平井 紗夜子 氏原 岳人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.623-630, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
6

本研究では,Jリーグの試合観戦者を対象としたMM施策を展開し,経年的な効果を検証した.分析の結果,1)2019年のプロジェクト認知度は79%,1試合あたりの自家用車からの転換率は11%であった.いずれも初年度を上回る数値であった.また,「ファジウォーカー」というキーワードの認知率も極めて高く,ブランディングが功を奏した.2)本プロジェクトでは数多くの施策を展開したが,行動プラン法によるワンショットTFPが転換に最も効果的であった.3)ファジアーノバスの内装リニューアルや試合時刻に合わせた運行,国道情報板の標語掲示,JRの駅構内・車内広告といった交通機関と連携した施策が,プロジェクト認知のきっかけとなっていた.4)公共交通機関の利用者は,沿道商店への立ち寄り頻度が相対的に高い.したがって,公共交通の利用促進が地元消費の増加に有効である.