著者
佐藤 祐磨 中村 嘉隆 高橋 修
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:21888655)
巻号頁・発行日
vol.2016-CSEC-72, no.25, pp.1-6, 2016-02-25

近年,Drive-by Download 攻撃の被害が増えている.Drive-by Download 攻撃は特定のサイトに訪れたユーザにマルウェアをダウンロード,実行させる攻撃である.Drive-by Download 攻撃においてエクスプロイトキットが利用される攻撃が見られる.そこで URL のパス・クエリ部のパターンや特徴を基に,エクスプロイトキットで利用される悪性 URL の検出手法を提案する.
著者
新里圭司 絹川 博之
雑誌
情報処理学会研究報告デジタルドキュメント(DD)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.28(2001-DD-032), pp.95-102, 2002-03-15

パソコンや各種携帯端末の普及により、多くの人がインターネット上のデータベースを利用することが可能になった。しかし、以下に示す課題が残っている.(1)情報機器に不慣れなユーザにとって,複雑な論理条件からなる検索要求を指定するのは難しい.(2)パソコンのディスプレイと比べ携帯端末等の表示画面領域は狭いため、多くの検索条件指定項目を表示することができず、ユーザが満足する検索要求を指定することは難しい.このような問題を解決する一つの方法として、会話的表現によるデータベース操作可能な自然言語インタフェースが考えられる.本研究では,図書データベースシステムの検索操作を対象に,パソコンや携帯電話からアクセス可能な自然言語インタフェース処理方式を開発することとした.
著者
加藤常員 小澤 一雅 高見 友幸
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.73(2002-CH-055), pp.9-16, 2002-07-26

地理情報は考古学にとって基盤をなす重要な情報である。古代遺跡の地理的分布の解明は考古学の重要な課題である。本稿では弥生時代の2種類の遺跡群を採り上げ、地理情報を活用した遺跡分布の解析について報告する。対象とした遺跡は、拠点集落遺跡と高地性集落遺跡である。両遺跡は同じ時代に同じ空間に存在したものであり、密接な関係であったと考えられる。本報告は淀川水系の両遺跡について2種類のネットワークの構成し、得られた情報をもとに関連深い遺跡の対を抽出し、地図上の円を描くことにより遺跡間の分布関係を明示することを試みる。円による表現は極めて簡潔であり、位置関係を端的に表す。示される結果は考古学の知見に相応した遺跡間の分布関係を得た。
著者
長野 昌生 ナガノ マサオ Masao NAGANO
出版者
総合研究大学院大学
巻号頁・発行日
2008-03-19

著者は掃引式スペクトラム・アナライザの掃引速度を高速化するアーキテクチャを開発し、<br />実験装置を製作した。これにより掃引式のダイナミックレンジの優位さと測定条件の多様性<br />という特長を保持したまま、測定速度を向上させることができた。測定速度が向上すること<br />でスペクトルの検出感度も向上し、電波天文観測にも簡易な分光計としても使用可能である<br />ことが分かった。<br /><br />(1)掃引式スペクトラム・アナライザは擬似的なフーリエ変換装置である。掃引式スペク<br />トラム・アナライザでは、掃引速度を高速にすると「過掃引現象(over sweep response)」が<br />発生し、観測結果にひずみが生じる。一般には、そのひずみの許容値を定め、それに対応し<br />た低速の掃引速度で使用しているのが実情である。著者は数値および実機による実験からそ<br />の性質を分析し、動作原理と数学モデルを明らかにした。このモデルから掃引式の過掃引現<br />象を厳密に議論することができた。その結果、掃引式における掃引速度がこのように制限さ<br />れる主たる理由は、スペクトラムを得るために、周波数掃引しながら、分解能フィルタにI<br />F信号を入力させていることにあることが明確になった。<br /><br />(2)掃引式スペクトラム・アナライザの掃引速度の制限を軽減するには、IF信号のチャ<br />ープ成分を複素信号処理により相殺すればよい。著者はこの新しい手法を「Super Sweep<br />Method (超掃引方式)」と名づけた。その数学モデルを確立し、有限の掃引速度においても擬<br />似的フーリエ変換が成立することを確認した。このモデルは、観測スペクトラムが、分解能<br />フィルタのフーリエ変換と被測定信号のフーリエ変換の畳み込みで得られる、というもので<br />ある。<br /><br />(3)(2)の数学モデルを検証する実験装置を考案・製作し、その詳細な実験結果を報<br />告した。実験装置は、既存のスペクトラム・アナライザを用い、局部発振器が掃引発振する<br />周波数ダウンコンバータとして活用したもので、そのIF信号出力(21.4MH<sub>-z</sub>)を80MH<sub>-z</sub>) 14bit<br />にてA/D変換し、デジタルダウンコンバータにより帯域幅とサンプルレートを、測定条件に<br />応じた所定の割合で減じたのち、複素数の係数を持つ「逆チャープ・フィルタ」によりスペ<br />クトラムを抽出するものである。<br /><br />提案方式において掃引と同期してスペクトラムを得るには高速な演算装置が必要となる。<br />本方式で要求される演算速度は、分解能帯域幅と倍速率(従来の掃引式に対する掃引速度の倍<br />率)の二乗に比例することを解明した。<br />本方式を実現するには、システムに関与する多数のパラメータを整合させなくてはならな<br />い。特に、水平軸を測定すべき周波数と合致させるには、各処理段階におけるサンプル数を<br />厳密に管理しなくてはならない、著者は、これらのパラメータの最適化を計り、歪のないス<br />ペクトル計測を超高速の周波数掃引で実現した。<br />(4) 著者が製作した実験装置により、従来方式よりも3倍、10倍、30倍、100倍の掃<br />引速度においても過掃引現象が発生しないことを確認した。より高速な掃引を実現するに<br />は、より広帯域なIF信号に対して複素信号処理を施せばよいことを明らかにした。IF信号<br />の広帯域化に伴って高速演算が必要になるが、昨今のDSPやFPGAを用いれば十分実現は<br />可能であり、そのモデルを提案し将来の発展方向も示した。<br /><br />(5) 著者は超過掃引方式の性質について議論し、次のよう3つの特徴を明らかにした。<br />1.FFT方式ではIFフィルタの周波数特性は、観測スペクトラムに対する乗算の形<br />で観測結果に影響を与えるのに対して、超掃引式では畳み込みの形で現れる。超掃引式で<br />はIFフィルタの特性は、より狭帯域な分解能フィルタの効果が支配的になり、観測結果<br />にほとんど影響しない。これはFFT方式に対する優位性である。<br />2. 著者は、既存のスペクトラム解析手法であるチャープZ変換と超掃引方式の関連を<br />明らかにした。超掃引方式はチャープZ変換と主要な部分を共有し、重要度の低い部分を<br />簡略化し、前半はアナログ、後半をデジタル信号処理で実現したものであることを明確に<br />した。本実験装置は、掃引式局部発振器をもつ受信機を前段に用いることでチャープZ<br />変換によるスペクトル分析を可能にした最初の装置である。<br />3. 掃引式スペクトラム・アナライザでは、ときとして内部のひずみ等によるスプリアス<br />が発生し、観測信号との識別が困難である。本方式では、スプリアス信号は、周波数軸上<br />で拡散され、かつレベルが低下した状態(過掃引現象の状態)で観測されることにより、実<br />際の測定信号との判別が可能となっている。これは従来の掃引式にもFFT方式にもなか<br />った特徴である。 <br /><br />(6) 本研究の実験装置により、電波望遠鏡による水メーザー天体のスペクトトル観測を<br />行った。掃引式に対してスペクトル計測感度の点で格段の優位性を実証した。電波望遠鏡の<br />簡易な分光器としての応用も可能であることを確認した。また本方式による性能の限界と実<br />現可能性を考察し、より高性能な分光装置開発の可能性を検討した。<br />
著者
中村 尚史 Nakamura Takashi
雑誌
川崎医学会誌 = Kawasaki medical journal (ISSN:03865924)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-11, 2014

思春期,青年期の適応障害患者において広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders,PDD)を基盤にもつ患者の割合を検討し,その場合,どのような臨床的特徴があるかを調査し,PDDの有無に関連する要因について検討した.DSM-IV-TR(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,Fourth Edition,Text Revision)によって適応障害と診断された12歳以上30歳以下の患者58名を対象とし,以下の自記式質問紙を用いて臨床的特徴を評価した.精神症状の評価は,日本語版パラノイアチェックリスト(JPC:Japanese version of Paranoia Checklist),思春期の精神病様体験(PLEs:Psychotic Like Experiences),精神症状評価尺度(SCL-90-R:Symptom Checklist-90-Revised)を用いた.PDDの評価については,詳細な養育歴の聴取と,患者に対して自閉症スペクトラム指数日本版(AQ-J:Autism Spectrum Quotient-Japanese Version)を用いて,養育者に対しては,自閉症スクリーニング質問紙(ASQ:AutismScreening Questionnaire)を用いて総合的に判断し評価した.その結果,1)58名のうち,PDDと診断されたのは,32名(55.1%)であった.2)AQ-Jについては,PDDの有無に関してコミュニケーションが有意な関連性を示した.3)JPCについては,PDD群が,非PDD群と比較して総得点,確信度において有意に高い結果となった.PDDの有無に関して,確信度が有意に関連していた.4)SCL-90-RについてはPDD群では,恐怖症性不安,妄想,精神病症状,強迫症状,対人過敏,抑うつ,不安,その他の8項目において非PDD群に比較して有意に高かった.PDDの有無に関して強迫症状が有意に関連していた.5)各質問紙の総得点とPDDとの関連を見ると,JPCの総得点のみがPDDと有意な関連性を示した.思春期,青年期の適応障害患者では,PDDを基盤にもつと,被害妄想や,強迫症状など様々な精神症状を自覚する可能性があり,JPCなど質問紙も併用して,PDDの存在を念頭において診療を行う必要があることが示唆された.
著者
樋口 雄彦
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.109, pp.47-92, 2004-03-01

維新後、旧幕臣は、徳川家に従い静岡へ移住するか、新政府に仕え朝臣となるか、帰農・帰商するかという選択を迫られた。一方、脱走・抗戦という第四の選択肢を選んだ者もいた。箱館五稜郭で官軍に降伏するまで戦った彼らの中には、洋学系の人材が豊富に含まれていた。榎本武揚ら幹部数名を除き、大多数の箱館戦争降伏人は明治三年(一八七〇)までには謹慎処分を解かれ、静岡藩に帰参する。一部の有能な降伏人は静岡・沼津の藩校等に採用されたが、「人減らし」を余儀なくされていた藩の内情では、ほとんどの者は一代限りの藩士身分と三人扶持という最低の扶持米を保障されることが精一杯であった。勝海舟は、箱館降伏人のうち優れた人物を選び、明治政府へ出仕させたり、他藩へ派遣したりといった方法で、藩外で活用しようとした。降伏人が他藩の教育・軍事の指導者として派遣された事例として、和歌山・津山・名古屋・福井等の諸藩への「御貸人」が知られる。なお、御貸人には、帰参した降伏人を静岡藩が直接派遣した場合と、諸藩に預けられ謹慎生活を送っていた降伏人がそのまま現地で採用された場合とがあった。一方、剣客・志士的資質を有した降伏人の中には、敵として戦った鹿児島藩に率先遊学し、同藩の質実剛健な士風に感化され、静岡藩で新たな教育機関の設立を発起する動きも現れた。人見寧が静岡に設立した集学所がそれで、士風刷新を目指し、文武両道を教えるとともに、他藩士との交遊も重視した。鹿児島藩遊学とそれがもたらした集学所は、藩内と藩内外での横の交流や自己修養を意図したものであり、洋学を通じ藩や国家に役立つ人材を下から上へ吸い上げるべく創られた静岡学問所・沼津兵学校とは全く違う意義をもつものだった。
著者
布村 育子 Ikuko NUNOMURA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University. Faculty of Humanities (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.77-89, 2015-12-01

2015年6月、選挙権年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる改正公職選挙法が公布された。この動きに連動する格好で、高等学校教育における生徒の政治的教養のあり方に関して、「政治の解禁」と「政治の抑制」との二つの相反する動きが存在している。近い将来、現場の具体的な個別の教育実践に関して、事件化や問題化される事例が生じてしまう可能性を否定できない。こした事件化や問題化をどう考えたらよいのだろうか。本稿では、まず教育公務員の政治的行為と政治教育に関する法制度の仕組みを確認する(第2節)。そのうえで、今後予想される事態の先行事例といえる1954(昭和29)年の教育二法の成立時の経緯を掘り下げて、ある性格をもった物語化の機制がそこで働いていたことを示す(第3節)。そこでの知見をふまえて、第4節では現在の政治教育解禁/抑制の動きを考察し(第4節)、近い将来に起こるかもしれない「事件化/問題化」をどう考えるべきかについて論じる(まとめ)。
著者
近藤 まりあ
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.219-230, 2013-10-10

Jonathan Safran Foer の2 作目の長編小説であるExtremely Loud and IncrediblyClose(2005)では,2001年の同時多発テロで父親を亡くした9 歳の少年オスカーが語り手となる。この作品では,形式上のポストモダニスティックな仕掛けが目立つが,大きな主題として描かれていると考えられるのは父と子の関係と,同時多発テロであろう。本論では,ユダヤ系アメリカ人作家であるFoer と他のユダヤ系作家等を比較することにより,これらのテーマが作品でいかに機能しているかを考察する。父と子の関係はユダヤ系アメリカ人作家の伝統に連なるテーマだといえるが,この作品は同じくユダヤ系作家であるPaul Auster が自らの父親を描いたThe Invention of Solitude(1982)に,形式だけでなくテーマの深い部分をも負っているといえるだろう。同時多発テロに関しては,この事件そのものの歴史的特異性を強調するよりもむしろ,事件を相対化する視点が小説に導入されていることを確認する。