著者
福澤 仁之 塚本 すみ子 塚本 斉
出版者
島根大学
雑誌
Laguna : 汽水域研究 (ISSN:13403834)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.55-62, 1998-03
被引用文献数
6

We have been collecting and analyzing sediment cores of non-glacial varved sediments around the Japanese Islands. In 1995, we were able to be collected 8 meters-long sediment core by using piston core sampler and recognized varved sediments of the last 3,000 years in the bottom sediments of Lake Ogawara, northern Japan. And also, two tephra layers which are named Towada-a tephra(To-a)and Baegdusan-Tomakomai(B-Tm)by Machida and Arai(1992)were recognized in the varved sequence. Machida(1992), and Koyama and Hayakawa(1995)have suggested that the chaotic eruption of Towada Volcano caused falling of To-a tephra over northern Japan occurred in AD 915. Based on varve counting of this sediment core, we can indicate that the sediments between To-a and B-Tm tephra layers were continuously deposited for 22 years. If the falling age of To-a tephra can be confirmed as AD 915 from historical documents, then we can show that B-Tm tephra was deposited from spring of AD 937 to summer of AD 938.13;7世紀から10世紀初頭にかけて,朝鮮半島北部から中国東北区やシホテ・アリンにかけて,東アジアの大国として繁栄した渤海国は,当時の日本と親密な関係を維持していたにもかかわらず,その成立と滅亡については謎の部分が多く,謎の王国と呼ば滅亡については謎の部分が多く,謎の王国と呼ばれる。しかも,渤海国はまわりの諸国とくに新羅や契丹などとの関係上,日本に対して渤海使を35回も派遣している(日下,1992)。この渤海国は西暦698年に建国され,西暦926年に契丹の侵入によって滅亡するまで約200年間繁栄したと考えられている。渤海国の繁栄に比べて,その滅亡はより謎が多い。これは,契丹に滅ぼされた時に,徹底的な破壊を受けたためにその痕跡をほとんど残していないことに理由がある。13;この渤海国の滅亡については,1988年にNHKが特別番組として制作した「まぼろしの王国・渤海」で,渤海国の突然の消滅・滅亡が渤海国南部にそぴえる白頭山(標高2,744m)の大噴火によって,その首都上京龍泉府がかのベスビオス火山の山麓の街ポンペイのように一日にして火山灰に埋もれたためことが原因であるとするドラマチックな仮説が示されたことがある。これに対して,渤海国の歴史に詳しい上田 雄などの歴史学者から厳しい反論がある(上田,1992)。それによれば,上京龍泉府は白頭山の北北西方250kmにあり,白頭山が大噴火を起こしたとしても,偏西風の風下にもない上京龍泉府に多量の火山灰が降下したとは科学的にまったく考えられないという(上田,1992)。そして,渤海国の滅亡は極めて突然であり,そして忽然と消え去ったことは事実であるが,その滅亡の直接の原因は,契丹の耶律阿保機に襲撃されたためであり,そのことは「遼史」ほかに詳細に記録されていると述べ,白頭山の噴火の時期も地層(堆積物)からだけで歴史学の求めるオーダーの世紀,年代を決めつけることは不可能であると述べている(上田,1992)。13;白頭山の大噴火と渤海国の滅亡との関係を明らかにする目的で,町田 洋は中世における白頭山の噴火規模およびその年代の推定に精力的に取り組んでいる。それによれば,この白頭山の噴火規模はフィリピンのピナツボ火山における1991年の噴火規模のおよそ1O倍の規模であり,過去2,000年間で最大の噴火であるスンダ諸島のタンボラ火山における1815年の噴火に匹敵するものと考えられている(町田,1992)。そして,この大規模噴火の火山灰は東北日本北部から北海道南部・道央南部に分布しており,白頭山一苫小牧火山灰(B-Tm)と呼ばれている(町田・新井,1992)。また,東北日本北部で白頭山一苫小牧火山灰層の直下1cm~2cm下位に発達する十和田a火山灰(To-a)の「扶桑略記」に記載された降灰年代やそのラハール堆積物に埋没した秋田杉の年輪年代学的検討によって,十和田a火山灰降灰が西暦915年であることが明らかになり,白頭山一苫小牧火山灰の降灰年代は西暦915年以降である可能性を示した(町田,1992;1994)。この見解は,渤海国の滅亡に対して,自然環境変動の面から白頭山の大噴火が大きな影響を与えた可能性を指摘したものである。13;一方,町田(1992;1994)の見解に対して,小山真人と早川由紀夫は歴史資料として「高麗史」や「興福寺年代記」の記載を引用して,中世における白頭山の噴火は946年以前のあまり遡らない時期に開始して,西暦947年前半ぐらいに終了したことを示した(早川・小山,1998)。そして,渤海国がその噴火で滅亡した仮説(町田,1992)があるが,渤海国の滅亡は西暦926年であり,白頭山の噴火開始がその滅亡を決定づけたことはあったとしても,直接の誘因ではなさそうであるとの見解を示した(早川・小山,1998)。13;本論文では,白頭山一苫小牧火山灰の降灰ひいては白頭山の中世における大噴火に関して,青森県太平洋側に位置する小川原湖の湖底堆積物に認められた「年縞」を用いて,以下の2つの問題に対して答えを与えることを目的とする。1)渤海国の滅亡に白頭山の中世における大噴火が本当に影響を与えたか?、2)白頭山一苫小牧火山灰と十和田a火山灰の降灰した季節はいつ頃で,どれくらい継続したのか?
著者
渡辺 美紀 小川 浩平 石黒 浩 濱口 秀司
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

対話において、人の想像力を引き出すことは親密な関係性を築く上で重要である。人の想像力に関して、自由意思を担保することが人を想像的にするもっとも良い方法であると知られてきた。一方で、人は自由な発想を許されたとしても、人は自分の経験の範囲内でしか想像できないことが示されている。本研究では、人の発話に制約を与える選択式対話システムを開発し、対話における制約が人の想像力に与える影響について検証した。
著者
的井 愛紗 矢田 憲孝 廣田 哲也
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.748-752, 2017-12-31 (Released:2017-12-31)
参考文献数
10

症例:78歳女性。現病歴:C型肝硬変・肝細胞癌の既往があり,5年前よりグリチルリチン製剤80mg/日を週4回静注されていた。路上で倒れているところを発見され救急要請となり,救急隊到着時の心電図所見は心室細動であった。除細動とアドレナリンの投与を行い,心拍再開後に当院へ搬送された。来院後経過:来院時,血清K 値は1.6mEq/lと低値であり,心電図ではQTc延長(631ms)を認め,低K 血症により心室細動をきたしたものと考えられた。入院後,低K 血症にもかかわらず尿中K 排泄量は多く,第6病日のレニン活性・アルドステロン値はともに低く,偽性アルドステロン症と診断した。グリチルリチン製剤の中止とカリウム補充により血清K値は正常化し,その経過中に致死性不整脈を併発しなかったが,第18病日に低酸素脳症で死亡した。考察:静注グリチルリチン製剤による偽性アルドステロン症から心室細動をきたした稀な1例を経験した。
著者
松井 孝道
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.164-173, 2017-09-30 (Released:2017-11-05)
参考文献数
16

骨と結合し軟組織とも生体親和性の高いチタンは耐食性にも優れ,現在インプラントに使用される主な材料となっている.しかし,口腔内である一定の条件下におかれると腐食するとの報告がある.チタン腐食の原因となる因子としてチタン表面におけるpH,溶存酸素濃度,フッ素の存在などが挙げられる.インプラントの周囲環境となる口腔内は種々の細菌による有機酸,pHの低い食品・飲料物,炎症に伴うpH の低下,深いインプラント周囲ポケット内における溶存酸素濃度の低下,フッ素入り歯磨剤の使用など過酷な環境下にある.臨床においても,インプラント周囲肉芽組織からのチタン元素の検出やチタン表面において腐食孔が多数観察されている.チタンの組織内溶出はインプラント周囲炎において骨吸収を加速させるという報告もあり,さらには粘膜貫通部の鏡面研磨面における多数の腐食孔の形成はインプラントのメインテナンスに不利となる.基礎研究において歯磨剤レベルでのフッ素のチタンに対する腐食の影響が指摘される中,臨床でもチタンの腐食が観察される以上,現時点ではその原因となりえるフッ素入り歯磨剤のインプラントへの使用はインプラントの長期安定を維持するうえで注意を要すると思われる.
著者
大西 雅博
出版者
奈良学園大学人間教育学部
雑誌
人間教育学研究 = Journal for Humanistic Education (ISSN:21889228)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.185-192, 2014-12-01

Abstract:In order to express at a percussion instrument and a word, a too much huge numberof musical instruments exist all over the world. In Europe, the method of the division a "windinstrument", a "stringed instrument", and a "percussion instrument" will become general in the16th century, and the method of a classification called a percussion instrument has continuedup to now. I would like to make it develop from the conventional training method, and to aim atacquisition of performing technique in this paper, using a more efficient method. I would like toput the practical use especially in schools into a view, and to be able to utilize practically.
著者
宇都木 陽介 森山 剛
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.4, pp.1-6, 2009-05-14

日本の伝統楽器の一つである尺八は,無形文化財としてその演奏が録音されているが,特定の奏法を聴くには,専門家が録音を聴いて録音箇所を特定するしかない.従って,初学者はもちろん,ごく一部の専門家以外にとっては,失われているも同然である.本研究では,尺八の演奏音のみから,演奏されている奏法を自動認識し,演奏音にメタ情報を付与することを目的とする.これにより,無形文化の保存及び普及,国内外への発信に貢献できると考える.本報告では,手動で切り出した演奏音に対して,演奏音の音高及びパワー,音色の物理特徴量を算出し,奏法の識別を行う手法を提案する.実験の結果,ユリ,カラカラ,ウチ,オシ,オトシ,ムライキ,スリアゲ,ナヤシの奏法に関して,82% (スリアゲとナヤシを1つに分類した場合は 98%) の高い精度で識別を行えることが示された.Shakuhachi is one of the Japanese traditional instruments, and its performance has been recorded for years for future recovery of the cultural heritage. Yet, in order for beginners to listen to a specific playing method, Shakuhachi specialists need to locate it in a large amount of data. It prevents it from being pervaded to the world and even succeeding to be restored in future. We propose a method of classifying playing methods of Shakuhachi's only from the performance. The method uses basic characteristics in music such as pitch, power, and timber of the sound. Experimental results showed the proposed method classified eight playing methods (Yuri, Karakara, Uchi, Oshi, Otoshi, Muraiki, Suriage, and Nayashi) successfully at the average rate of 82%.

3 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1894年08月15日, 1894-08-15
著者
奈河七五三助一世
出版者
巻号頁・発行日
vol.[1],

3 0 0 0 OA 還歴

著者
村上巧児 著
出版者
西日本鉄道
巻号頁・発行日
1943
著者
堀 進悟 副島 京子 篠澤 洋太郎 藤島 清太郎 武田 英孝 木村 裕之 小林 正人 鈴木 昌 村井 達哉 柳田 純一 相川 直樹
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.11-14, 1997

近隣救急隊の1994年12月から1996年4月まで16ヵ月間の出場記録を調査し,浴室内で発生した急病の調査を行った.浴室の急病は43例で当該期間の全救急件数の0.19%を占めていた.年齢は77±10歳と高齢者に多く,男女比は24例対19例と男性に多かった.診断は心肺停止26例(60%),失神(前駆症)14例,脳血管障害3例であった.各群とも高齢者が多く,明らかな年齢差を認めなかった.浴室急病の発生時期は,心肺停止のみならず,いずれの群も12-3月の厳寒期に集中していた。心肺停止は自宅浴室の発生が26例(100%)で,公衆浴場における発生は認めなかった. 一方, 非心肺停止例では自宅浴室が12例,公衆浴場が5例であった(p<0.01).さらに浴室内の発生場所を検討すると,心肺停止は浴槽内が22例(85%),洗い場が4例,非心肺停止では浴槽内が7例,洗い場が7例,不明が3例であった(p<0.01).溺水の有無を検討すると,心肺停止では21例に,非心肺停止では2例に溺水を認めた(p<0.01).すなわち,心肺停止は非心肺停止例と比較して自宅浴室の浴槽内で発生しやすく,溺水をともない易いことが示された.<BR>本研究により,公衆浴場よりも自宅浴室が心肺停止の危険をもたらしうることが示された.すなわち,身近に救助者がいれば入浴急死は防止できる可能性が示唆された.
著者
Takaya Murakami Yoshiaki Iwamuro Reiko Ishimaru Satoshi Chinaka Ippei Noda Shuhei Higashibayashi Nariaki Takayama
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
pp.722, (Released:2017-04-28)
参考文献数
22
被引用文献数
5

We present herein a practical methodology for elucidating the o-, m-, or p-fluorine substitution pattern of indazole-type synthetic cannabinoids containing a fluorobenzyl group at the N-1 position and a carbonyl group at the C-3 position via electron ionization-triple quadrupole mass spectrometry. We synthesized, as model compounds of the synthetic cannabinoids, the o-, m-, and p-fluorine positional isomers: 1-[1-(2-, 3-, and 4-fluorobenzyl)-1H-indazol-3-yl]ethanone (o-, m-, and p-FUBINAE). Mass spectral analyses showed that the three isomers differed significantly in the logarithmic values of the abundance ratios of the product ion at m/z 109 to the precursor ion at m/z 253 (ln(A109/A253)), following the order of meta<ortho<para. In addition, the relationships between ln(A109/A253) and collision energy were linear with high correlation coefficients. Comparing the ln(A109/A253) plots of the FUBINAE isomers versus collision energy with similar plots of AB-FUBINACA and its o- and m-fluorobenzyl isomers showed that the three AB-FUBINACA isomers behaved as the FUBINAE isomers did with the same fluorine substitution pattern on the phenyl ring. Moreover, other synthetic cannabinoids with a p-fluorobenzyl group (ADB-FUBINACA, FUB-AMB, FUB-APINACA, FUB-NPB-22, and FU-PX-2) also exhibited behavior similar to p-FUBINAE. These results indicated that the fluorine substitution position on the phenyl ring can be differentiated by collating the model compounds according to the logarithmic plots of their mass spectral abundance ratios as a function of the collision energy.