著者
石井 香絵
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = The Bulletin of The National Institure of Japanese Literature (ISSN:18802230)
巻号頁・発行日
no.43, pp.147-181, 2017-03-16

明治二一年、フランス留学から帰国した合田清は、洋画家山本芳翠とともに生巧館を設立し、日本に本格的な木口木版の技術をもたらした。初期の新聞附録から雑誌の表紙、挿絵、口絵、教科書の口絵、挿絵、広告、商標、パッケージなどの多くの複製メディアに登場し、生巧館は出版文化の隆盛とともにその活動が広く知られることとなった。しかしその全貌については不明な点が多く、研究も充分には進められていない。国文学研究資料館には生巧館が残した木口木版による膨大な数の清刷り(印刷にかける前の試し刷り)が所蔵されている。本稿では特定研究「生巧館制作による木口木版の研究―国文学研究資料館所蔵品を中心に」のこれまでの研究成果をふまえ、生巧館設立前後の時代を見直しつつ当館所蔵品の美術および歴史的価値について考察する。初期新聞附録の時代、続く雑誌・教科書の時代、後年の時代それぞれの活動状況と所蔵品がどのように関連づけられるか検討し、併せて所蔵品を手がかりに生巧館の活動の一端を明らかにしていくことを試みる。The wood block artist Gōda Kiyoshi (1862-1938) returned to Japan from a period of study in France in the twenty-first year of Meiji (1888). It was at this time that he united with Yamamoto Hōsui (1850-1906), an artist skilled in Western painting, to form the Seikō Society, which was dedicated to transmitting the techniques of wood engraving throughout Japan. The Seikō Studio, working in a time when publishing culture was at its peak, became widely known for their woodblock prints, many of which appeared in such mass-produced media as newspapers, magazines, textbooks, advertisements, as well as on business signs and the packaging for various products. Despite their fame, current research has yet to offer us a convincing picture of the overall activities of the Seikō Studio. The National Institute of Japanese Literature (NIJL) has in its possession an enormous number of test prints-those made in order to test the quality of theoriginal engraving before mass production - taken from woodblock engravings produced by the Seikō Studio. By taking into account research already conducted at NIJL on this subject, and by reexamining those historical circumstances surrounding the establishment of the Seikō Studio, this paper aims at evaluating these test prints in respect to both their artistic as well as their historical value. I will attempt, through an examination of these objects, to give a clear picture of the development of the studio’s work, tracing its appearance, first in newspapers, then in magazines and textbooks, and finally, later on, in other forms of media.
著者
笹尾 和宏 高須 正和 関 治之 奈良部 隆行 山本 光穂 飯田 哲 山本 博之 栗原 一貴
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2013論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.324-329, 2013-09-27

本論文では,顔認識技術と集合知に基づき,主に月および火星表面から俗に「人面岩」とも言われる,人の顔の形をした構造物の探索について報告する.我々はBrightness Binary Feature をはじめとする複数の顔認識アルゴリズムを併用し,NASA が提供した膨大な月および火星表面の衛星画像から人面状構造物を検出した.さらに,検出した映像をユーザが鑑賞,レーティングし,質の良いものを抽出するアプリケーションを試作した.
著者
岩本 裕子 イワモト ヒロコ Hiroko Iwamoto
雑誌
浦和論叢
巻号頁・発行日
no.38, pp.25-47, 2008-03

こども学部発足により始まった「歴史入門」の講義を手がかりに、西洋精神の起源に関する一考察を試みた。講義は筆者の専門領域である西洋史を中心に展開する。旧約聖書・ギリシャ神話・ケルト伝説という、史実と虚構の狭間に存在する西洋精神の起源から講義を始めることは意義深いばかりか、「歴史嫌い」の学生の興味を引くことにつながった。従来歴史嫌いの学生を歴史が大切だと自覚させるために、筆者の講義では映像や音楽を用いてきた。視覚や聴覚を刺激し学生の「気づき」を誘導できれば、歴史学習の必要性は明らかになる。 往年のハリウッドで『天地創造』や『十戒』が制作され、旧約聖書の世界が欧米社会に直結することは周知された。21世紀を迎えた現在も、『トロイ』『アレキサンダー』『キング・アーサー』等の西洋史の古典領域をテーマとする映画化は続いている。講義題材としてばかりでなく、ハリウッド映画を歴史学の視点で読み解く意義は深い。
著者
入江 智和
雑誌
インターネットと運用技術シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.58-64, 2017-11-30

近年の無線 LAN の通信速度の向上は顕著であり,今後もさらに高速な規格の標準化が期待される.一方で,高速な無線 LAN 規格を使用しているにもかかわらず,期待した通信速度が得られないこともよくある.その原因の一つにブロードキャストの通信が挙げられる.ブロードキャストは有線 LAN でも行われているが,無線 LAN ではその特性により有線 LAN の場合よりも大きな影響を及ぼす.本稿ではこのブロードキャストの影響がより顕著と思われる中 ・ 大規模無線 LAN 環境を対象に,ブロードキャストの伝播を最小化するネットワーク構成を提案する.提案構成は AP にブリッジ型ではなくルータ型を用いるとこに特徴がある.提案構成の通信実験環境を構築し,実験結果から提案構成の実現性と有効性を確認した.
著者
真﨑 拓也 築地 立家
雑誌
第78回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, no.1, pp.737-738, 2016-03-10

画像認識を利用したカードゲームシステムとして、絵柄認識によるタロット占い、対人式コミュニケーションにも対応した神経衰弱、インターネット通信によるジャンケンなどが開発されてきた。本研究では、これらの要素を併せ持つ遊戯王カードゲームシステムを、市販のWEBカメラを入力とするPC環境で開発し、高速性と誤認識率を計測した。さらに、リアルカードでのインターネットを介したカードゲーム対戦を実施して、ユーザー評価実験を行った。結果として、リアルカードの絵柄認識によるオンラインカードゲーム対戦を低コストで実現するための、カード枚数の上限、ゲームルールの複雑さ、カードの操作性に関する知見を得た。
著者
渡辺 哲朗 近山 隆
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.113(2006-MUS-067), pp.27-32, 2006-10-27

今日のコンピュータ音楽においては,本来の人間の演奏に内在するずれやゆらぎといった「グルーヴ感」を表現することに困難がある.本研究では,プロのドラマーが実際に演奏したドラム演奏を収録した音源を解析することにより,演奏に内在するグルーヴ感の定量的評価を行い,グルーヴ感を持った「人間らしい」演奏を自動生成するシステムの構築を目指す.本稿においては,演奏中のハイハットシンバルの打点時刻から仮想的なメトロノームの位置を定め,その仮想メトロノームに対する各楽器の打点のずれと打点音量を解析した.その結果,グルーヴ感の種類によって打点のずれの標準偏差や打点音量の平均値に特に大きな差が生じることがわかった.
著者
HOSSAIN Sharif M. HOSOE Nobuhiro
出版者
GRIPS Policy Research Center
雑誌
GRIPS Discussion Papers
巻号頁・発行日
vol.17-10, 2017-10

Bangladesh, being a labor-abundant country, benefits from foreign direct investment (FDI) as it is considered as a supplement to domestic investment for this capital-scarce economy. We examine how the benefits of increased FDI in the ready-made garments (RMG) sector are transmitted and shared among households with different characteristics, and the appropriate government policies to mitigate adverse distributional problems, if any, created from the increased FDI. To address these issues, we develop a computable general equilibrium model for Bangladesh that describes competition between local firms and multinational enterprises (MNEs) in the RMG sector and the distributional impacts of FDI among households. Our simulation results demonstrate that an increase in FDI promotes both output and exports in the RMG sector. However, because of the competition between MNEs and domestic firms, the output of domestic firms would fall slightly. Scrutinizing the welfare effects among household groups, we find that the benefits of FDI-induced growth would affect all household groups unevenly. We also demonstrate that the benefits could be shared equitably among household groups with skill development programs targeted at the adversely affected household groups.
著者
武島 知勲 梶 克彦 廣井 慧 河口 信夫 神山 剛 太田 賢 稲村 浩
雑誌
マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2016論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.889-898, 2016-07-06

本研究では意図的に特徴的な磁場を生成する磁場マーカを作成し,環境に設置して歩行者が所持しているスマートフォンのような端末での磁場の計測により位置推定を行う.磁場マーカにより特徴的な磁場を狭い範囲に限定して生成し,磁場マーカからの相対的な距離と角度を推定し詳細な位置推定を行う.提案する磁場マーカは,磁石の回転により特徴的な磁場を発生させ,かつ磁場マーカの磁石の向きとスマートフォンの磁気センサの値が極値を取るタイミングから,マーカとスマートフォン間の相対的な位置を推定する.提案手法は,磁場マーカとスマートフォンの距離を推定する距離推定と,磁場マーカとの相対角度推定の 2 段階で構成される.磁場マーカとスマートフォンとの距離の推定は 2 m 以内ならば最大で 13 cm 以下の平均誤差で推定でき,1.4 m 以内の範囲であれば 4 cm 以内の誤差で推定可能である.磁場マーカから見たスマートフォンの方角の推定は平均誤差が 24 度で標準偏差が 29 度の精度であった.
著者
中村 泰治 ナカムラ ヤスハル Yasuharu Nakamura
雑誌
浦和論叢
巻号頁・発行日
no.40, pp.71-81, 2009-02

信用創造は商業銀行に特徴的な業務とされ、それが可能になる条件の解明が銀行論の大きな課題になってきた。しかし、商業銀行が手形割引きを媒介に密接な関係を結ぶ商業信用で、すでに信用創造は行われているという見解がある。そこで、掛け売買に遡りながら商業信用における信用創造的な事態を確認したあと、そうした事態を生む商業信用の成立条件を考察しながら、商業銀行における本来の信用創造の成立条件について展望することにする。
著者
中村 泰治 ナカムラ ヤスハル Yasuharu Nakamura
雑誌
浦和論叢
巻号頁・発行日
no.46, pp.29-43, 2012-02

証券市場をどのように導き出すかは経済原論の難問の一つであり、従来から資本結合の発展から導出するものと、信用制度の限界から導出するものとが対立してきた。しかし、原理論で資本と資本の結合を説くのはそもそも無理である。そうかといって、株式市場に流入する資金を説き得ない以上、信用制度の限界から株式市場を導出することもできない。原理論ではせいぜい手形よりも期限の長い貸付証券の市場を説き得るにとどまるのである。
著者
中村 泰治 ナカムラ ヤスハル Yasuharu Nakamura
雑誌
浦和論叢
巻号頁・発行日
no.44, pp.15-29, 2011-01

商業銀行の基本業務は預金収集と手形割引であり、商業銀行といえども、基本的には他のタイプの銀行と同様に金融仲介機関である。しかし商業銀行は別の業務も行う。たとえば手形割引の拡大のために銀行券を発行するが、この信用創造は、商業銀行の基本業務というより、基本業務をベースにして行う商業銀行の特徴的業務といえる。また、商業銀行は銀行券による預金収集や手形交換を行うし、銀行間で短期金融業務も行う。これらの業務も基本業務をベースにして登場し、基本業務を増幅すると同時に信用創造を拡大する意義をもつものということができる。