著者
久保田 真功
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.49-61, 2011

本研究の目的は,暴走族マンガの分析をもとに,マンガに見られる暴走族の下位文化を明らかにし,青少年が暴走族マンガに惹かれる理由について検討することにある。分析を行った結果,①主要登場人物は,アイディンティティ獲得のツールとしてバイクを消費していること,②暴走族内には確固たる上下関係と,構成員が従うべき掟が存在すること,③主要登場人物の多くは暴走族引退後に社会復帰を果たしているとともに,現役の暴走族に教育的な働きかけをしていること,などが明らかとなった。これらの結果を踏まえ,マンガに見られる暴走族が,ドリフト理論で知られる Matzaの主張する非行少年像に類似していることを指摘した。そして,青少年は,暴走族の姿に Matzaが言うところの「隠れた価値」(subterranean values)を見出すことによって,登場人物の姿に共感し,暴走族マンガを好んで読んでいるものと考察した。
著者
平松 隆円
出版者
佛教大学教育学部学会
雑誌
佛教大学教育学部学会紀要 (ISSN:13474782)
巻号頁・発行日
no.10, pp.175-181, 2011
被引用文献数
1

人は不快な感情を最小限にし、快の感情を最大限にしようと、様々な行動をおこなう。そのような感情調整行動の一つに、化粧がある。本研究の目的は、化粧のもつ日常的な感情調整作用に注目し、男子大学生15名(平均年齢=20.87歳、SD=0.62)を対象に、化粧行動としてのマニキュアの塗抹がもたらす感情調整作用について検討することである。マニキュア塗抹前後の感情の変化をProfile of Mood States(POMS)によって測定したところ、マニキュアの塗抹にともない、「混乱」が有意に低下することが明らかとなった。本研究の結果から、マニキュアの塗抹は部分的ではあるが、リラクセーションに有用であることがわかった。化粧行動感情調整作用マニキュアリラクセーション男子大学生
著者
葛綿 正一
出版者
沖縄国際大学
雑誌
沖縄国際大学日本語日本文学研究 (ISSN:13429485)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-28, 2007-10

『将門記』は承平・天慶の乱を記した漢文文献である。軍記文学の先駆として分厚い研究史を有しているが、ここでは『将門記』に出てくる「雷」というメタファーに注目し、将門が雷神であるかのように描かれていることを指摘する。また「雷」の文学誌とでもいうべきものを掘り起こし、表象の問題から「雷」の崇高性と喜劇性について論じる。
著者
菅原 真
出版者
早稲田大学
雑誌
早稲田教育評論 (ISSN:09145680)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.41-54, 2003-03-31

国旗・国歌法制定後,公立学校では「国旗掲揚」「国歌斉唱」を拒む教師に対し,行政上の懲戒処分などの法的措置を含む有形無形の圧力が以前より強くかけられている。こうした中で,筆者の勤務する私立中学・高等学校では,従来慣行として行われてきた「君が代斉唱」を卒業式・入学式の式次第から削除した。この根底には,卒業式・入学式において「君が代斉唱」は不可欠の構成要素ではあり得ないという認識がある。本来,学校の設置主体が公立であれ私立であれ,いかなる卒業式・入学式をおこなうかについては,各学校がそれぞれ自主的に決めるべき問題であり,国旗・国歌の強制は憲法に違背する行為である。
著者
久野 康彦
出版者
日本ロシア文学会
雑誌
ロシア語ロシア文学研究 (ISSN:03873277)
巻号頁・発行日
no.34, 2002

19世紀末〜20世紀初頭はロシアにおいて大衆文学が急速に発展した時期であり,そこに見られる「オカルト」への関心,および文学への反映は,リアリズムからシンボリズムへといった当時の主流文学の流れとある程度連動しながらも異なった様相を呈し,当時の文学状況の全体像を把握する上で興味深い。死後の霊の存在を信じ霊との交信を試みるという,1850年代以降西欧で大流行したスピリチュアリズム(心霊主義)は,И. С. Тургеневの神秘小説やВс. С. Соловьев(1849-1903)の連作長編に見られるように,ロシアの文学においては,フランスのシャルコーに代表される当時の精神病理学としばしば結びつき,一種独特な心理分析的な幻想表現を生み出した。その点では,動物磁気への関心を強く反映した19世紀前半の「幻想心理小説」(В. Ф. Олоевский, Н. И. Гречなど)の系譜を継承するものである。動物学者・作家のН. П. Вагнер(1829-1907)の短編《Не вылержал》(1895)は,田舎の知り合いを訪ねた主人公が心ならずも心霊体験をするというもので,心理分析への志向が強いという点で前述の特徴が典型的に見られる。また十月革命前のロシアで最も人気を誇った作家の一人であるА. В. Амфитсатро(1862-1938)の長編《Жар-Цвет》(1895;1910,11改訂)は,オカルト,フォークロア,民間信仰,古代・中世文学,神話などの多彩な情報を盛り込んだスケールの大きいオカルト小説で,同じく「死後の生」というスピリチュアリズムのテーマを扱いながらも,実証主義的な観点から精神病理学の知識などを援用している点に特色がある。一方,芸術・思想により強いインパクトを与えたのが神智学である。ロシア人女性Е. П. Блаватская(1831-91)を創始者とし,古代の忘れられた叡智の再発見と普遍宗教の確立を目指すこのオカルト運動は,ロシアでも20世紀になってシンボリストたちなどに強い影響を及ぼすようになる。しかし,神智学がもたらした秘教的東洋というイメージをより鮮明に提示したのは大衆小説であった。創始者の妹でオカルト小説の作者としても有名なВ. П. Желиховская(1835-96)の短編《Виление вкристалле》(1893)は,東洋の叡智に触れながらもオカルト的知を軽率に扱う西欧人という設定に,神智学が本来持つ西洋近代文明批判の観点が窺える。そして,20世紀初頭のロシアにおける最大のオカルト小説作家В. И. Крыжановская(1857-1924)の長編《Смерть планеты》(1911)は,滅亡の迫った地球を舞台にキリスト教信仰を守りつつ悪と戦うインド人のマギたちの活躍を描いたもので,より大衆的なレベルでの神智学の影響の例となっている。
著者
中名生 正己
出版者
海人社
雑誌
世界の艦船
巻号頁・発行日
no.825, pp.168-173, 2015-11
著者
石田 英子 小笠原 春彦 藤永 保
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.270-278, 1991-09-30

The purpose of this study was to clarify (1) people's concept of intelligence in the following six cultures : Japan, Korea, China, Taiwan, Canada and Mexico ; and (2) the difference between the three following Japanese concepts : 'atamanoyoi', 'rikouna', 'kashikoi', which express "intelligent" in Japanese. The results were as follows : 1)Five-factor solution was found to be valid. They were named "sympathy and sociability", "inter-personal competence", "ability to comprehend and process knowledge", "accurate and quick decision making", and "ability to express oneself" ; 2)The factorstructures of Japan, Korea, China and Taiwan were similar to each other, but dissimilar to those of Canada and Mexico ; 3)The patterns of the correlations among the five factors were rather similar, while the variances of the factors were different between the nations concerned ; 4)The concept of 'kashikoi' was different from that of 'atamanoyoi' in that 'kashikoi' implied sociability together with cognitive ability.
著者
岡田 英己子
出版者
首都大学東京
雑誌
人文学報. 社会福祉学 (ISSN:03868729)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.23-97, 2005-03-25

1990年頃から「平塚らいてうは優生思想の持ち主」論が通説として流布している。その典拠とされるのが、平塚執筆の「避妊の可否を論ず」に記された断種法要求であるが、実は原稿は3種類あり、刊行時期も食い違う。では、フェミニズムの旗手である平塚は、いつ、どのようにして女性の「性と生殖の自己決定」から、「性と生殖の国家管理」断種法要求にまで暴走していくのか。平塚著作の検討を通して、新婦人協会の花柳病男子結婚制限法案の修正経緯を概観し、同時に民族衛生学会の永井潜やドイツ社会事業に精通する海野幸徳との比較から、「いか程の優生思想の持ち主なのか」を査定した。これは優生学歴史研究方法の再考であり、また第一波フェミニズムの最初の敗退の背景解明にも繋がるものである。
著者
吉村 文成
出版者
龍谷大学
雑誌
国際文化研究 (ISSN:13431404)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.43-58, 2007

同源の一神教として知られるユダヤ教、キリスト教、イスラム教はそれぞれ利息を禁止してきた。イスラム教はいまも建前としては利息を禁止、ユダヤ教は「同胞」に限って禁止し、また、キリスト教は中世末期の宗教改革で解禁した。中世ヨーロッパ社会にあってキリスト教聖職者らは利息禁止を強く主張したが、その主張の背後に、ユダヤ人を差別しながらも、その一方で特権的に「異教徒(キリスト教徒)」相手の金貸し営業権を与え、そのことで彼らを操り、その収益の一部を巻き上げる、いわば体制の維持装置という側面があったとみることができる。現代金融論では、利息とは、「いまのおカネ」と「未来のおカネ」の交換、いわばおカネの"異時点間交換"にともなう差額の補填である。こうした信用システムから必然的に生じる利潤の追求こそが、現代資本主義の根幹であろう。しかし、この仕組みによって生まれたのは、「いま」に取り込まれた「未来のおカネ」を実現するため、休むことなく馬車馬のように走り続け、経済の拡大・成長を追求することを運命づけられた社会である。いつまで持続できるのか。おカネはほんらい、暮らしに役立つモノやサービスと交換したときにその価値を発揮する。その点で、モノやサービスという効用の代理物であり、効用を数値化したシンボル(象徴)といえる。効用は有限だが、シンボルは無限である。逆説的だが、古(いにしえ)の賢人や諸宗教が利息を禁止したのは、シンボルが効用を離れて暴走し、「未来」という時間を侵食することへの畏れがあったのではないか。
著者
八木 聖弥
出版者
京都府立医科大学
雑誌
Studia humana et naturalia (ISSN:03856755)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.19-39, 2003-12-20