著者
万福 尚紀 武藤 崇 マンプク ナオキ ムトウ タカシ Mampuku Naoki Muto Takashi
出版者
心理臨床科学編集委員会
雑誌
心理臨床科学 = Doshisha Clinical Psychology : therapy and research (ISSN:21864934)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.95-106, 2015-12-15

研究動向 本稿の目的は,糖尿病の一般的な治療と糖尿病に対する心理療法について概観すること,及び近年注目されているアプローチとして,マインドフルネスをベースにした心理的介入の有用性を示すことであった。本稿の構成としては,①糖尿病に対する一般的な治療,②糖尿病に対する代表的な心理療法,③糖尿病患者に対するマインドフルネスをベースにした介入,となっている。現段階でこれらの要素をレビューした結果,一般的な糖尿病治療では,患者の治療に対するアドヒアランスの維持が困難であり,適切な自己管理がもたらされないことが示唆された。そして,糖尿病に対する心理療法の代表としては,認知・行動療法(CBT)と動機づけ面接(MI)が挙げられ,前者は適応可能な患者層の狭さが,後者は糖尿病患者へのMIの実施経験の必要性が示された。一方,マインドフルネスを取り入れた介入は,糖尿病患者に広く適応可能であり,統合的かつテイラーメイドな糖尿病治療においても有用であることが示唆された。ただし,今後の課題点として長期的な効果検討と参加者の負担の軽減が挙げられた。
著者
祖父江 沙矢加 ソブエ サヤカ Sobue Sayaka 市原 正智 イチハラ マサトシ Ichihara Masatoshi
出版者
中部大学生命健康科学研究所
雑誌
生命健康科学研究所紀要 (ISSN:18803040)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.38-41, 2016-03 (Released:2016-04-06)

分子状水素(以下、水素)は、酸化ストレスのうちヒドロキシルラジカルを選択的に消去することが報告されており、酸化ストレスや炎症に起因するさまざまな疾患の予防や治療への有効性が期待されている。2007年から現在に至るまでに、水素は全身の多岐にわたる組織で発症する疾患において、その効果が示されており、水素の生体作用に関する論文数はこれまでに300報以上にものぼる。このように水素の効果については多数の論文で示されているが、どのような分子メカニズムでその効果を発揮しているかは未だ十分に明らかにされていない。水素の投与法としては、空気に水素を加えたもの(以下、水素ガス)を吸入させるか、水素水を飲ませるかのどちらかを採用しているものが多いが、他にもさまざまな投与法が検討されている。しかし複数の投与法間での生体作用を比較検討している報告は極めて少なく、最適な水素の投与法についても依然不明なままである。私たちは水素投与を、水素ガスの吸入、水素水の飲用の2種類から、単独、または併用投与をマウスに行い、組織内の遺伝子発現に及ぼす影響を検討した。こうした検討により水素の生体作用の分子機構の一端を明らかにすることが出来た。
著者
都築 繁幸 長田 洋一
出版者
愛知教育大学障害児教育講座
雑誌
障害者教育・福祉学研究 (ISSN:18833101)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.131-143, 2016-03 (Released:2017-03-28)

過去10年間で学会誌や大学の研究紀要等で掲載された論文のうち,小学校で行われた対人関係の向上に向けた支援という観点から限定的に分析した。27編を分析対象とし,通常の学級,通級指導教室,特別支援学級のそれぞれの場所でどのような介入が行われたかを検討した。その結果,次のような傾向が認められた。通常の学級全体の場では,第一次的な介入が多く見られた。クラスワイドな支援を行う利点としては,同じ学級の中に似たような行動上の問題を抱えた児童が複数人いる場合に有効であり,対象児以外の児童にとっても有益であることが示された。第二次的な介入や第三次的な介入を行っていく場所が通級指導教室や特別支援学級であるが,第二次的な介入として小集団SST指導を実施していることが多く,個別システムによる第三次的な介入はほとんど行われていなかった。効果の面から見ると「クラスワイドな支援」は他の児童や学級全体の改善および対象児童の集団参加や他児との環境調整に有効であり,「機能的アセスメント」,「コンサルテーション」,「校内支援体制」は対象児童の不適切行動の減少と適切行動の増加に有効であり,「認知行動療法」は対象児童の自尊心の高揚に有効であった。通級指導教室の小集団SST指導は小集団内での仲間関係の形成に有効であり,特別支援学級における小集団SST指導は,自発性の促進に有効であることが示された。今後,介入を効果的に行っていくためには,対象児童の行動問題の種類や改善の目標によって効果が上がると思われる技法を採択していくことが示唆された。
著者
工藤 英一
出版者
北海道農業改良普及協会
雑誌
農家の友
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.20-21, 2008-06
著者
浅川 満彦
出版者
日本生物科学者協会 (農文協)
雑誌
生物科学
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.124, 2011-02
著者
萩原 宏毅 塚田 絵里子 Hiroki HAGIWARA Eriko TSUKADA 帝京科学大学医療科学部作業療法学科 帝京科学大学医療科学部理学療法学科 Department of Occupational Therapy Faculty of Medical Sciences Teikyo University of Science Department of Physical Therapy Faculty of Medical Sciences Teikyo University of Science
雑誌
帝京科学大学紀要 = Bulletin of Teikyo University of Science
巻号頁・発行日
vol.8, pp.1-10, 2012-03-31 (Released:2016-02-15)

Neurological diseases are one of the most common causes for rehabilitation intervention such as physical therapy, occupational therapy, and speech therapy. Among them, stroke dominates the number of the patients and leading cause of adult disability in Japan. Until recently, there were no established training strategies to recover motor function for such patients. However, the findings from basic neuroscience brought the drastic change of this picture. The most critical and fundamental finding was" neural plasticity". The changes of organization in damaged primary cortex after movement training were demonstrated by using squirrel monkey. In addition, the methods to evaluate brain function such as fMRI, SPECT, PET, fNIRS, EEG, and MEG are developed. Studies in both animal model and patients after brain damage proved the principle that movement training in rehabilitation can modulate cortical plasticity. These results strongly suggest directions in the development of novel strategies to enhance training effects on motor recovery. The rehabilitation aimed to recover movement by inducing cortical plasticity is called as "neurorehabilitation". The most essential problem of neurorehabilitation is how to create to specific learning situations to promote mechanisms of neural plasticity in recovery from brain damage. In this review, we describe the concept of neurorehabilitation, the basic science principles on which they are based, and the current status and future view of clinical applications.
著者
奥原 孝幸:筆頭著者 鈴木 久義:その他 作田 浩行:その他 増山 英理子:その他 水野 高昌
出版者
昭和大学保健医療学部
雑誌
昭和大学保健医療学雑誌 (ISSN:1349029X)
巻号頁・発行日
no.10, pp.35-44, 2012-08 (Released:2014-10-10)

作業療法に参加している入院統合失調症患者188名を対象に、「作業療法に対するイメージ」の調査を6ヵ月間隔で2回行い、2回とも回答した71名の中から特徴的なイメージをもっている23名を抽出し、そのイメージの要因を探るために個別インタビューを行った。結果、作業療法に対してポジティブなイメージをもっている患者では、病状が安定しており、穏やかで普段からポジティブイメージを想像させる言動が多かった。一方ネガティブなイメージをもっている患者では、病状や気分の不安定さ、不機嫌さ、思考の偏りや狭さなどがみられた。ネガティブイメージの背景にはイライラ感や表情・思考の硬さなどがあり、さらに、その患者特有の心理的要素が影響しているものと考えられた。
著者
加藤 恵司 カトウ ケイジ
雑誌
聖学院大学論叢 (ISSN:09152539)
巻号頁・発行日
vol.第22巻, no.第1号, 2009-11
著者
山野 克明 ヤマノ カツアキ Yamano Katsuaki
出版者
熊本大学
雑誌
先端倫理研究 (ISSN:18807879)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.174-194, 2014-03

The purpose of this study is to define the identities of occupational therapists' inrelation to that of nurses. The author explores three points as background for thestudy; 1. Occupational therapy is considered as part of nursing practice. 2. Theprocesses in clinical practice differ between nurses and occupational therapists. 3. The roles of nurses and occupational therapists in the convalescent rehabilitationward differ. The author concludes with no apparent reason to distinguish theidentities of occupational therapists' and nurses.
著者
山田 美代子 宮前 珠子 鈴木 達也 佐野 哲也
雑誌
リハビリテーション科学ジャーナル = Journal of Rehabilitation Sciences Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
vol.9, pp.49-55, 2014-03-31 (Released:2014-07-14)

東日本大震災に伴う津波により被災した岩手県T 村S 地区の仮設団地で,筆者らは震災一年後に「意味のある作業開発」を目的に活動を開始した.本稿は,その内の第4 回目の訪問時(2013年3 月)に行った音楽を中心とした文化的活動(以下,音楽セッションとする)の報告である.「ふる里」をテーマとし,参加者と筆者らが住む地域の共通する話題に沿って音楽セッションを行った結果,親和的な双方向のコミュニケーションが展開したので,その経過と結果及びアンケート結果について報告する. The project aiming at the development of meaningful activities began one year after the Great East Japan Earthquake in the temporary housing complex in the Iwate Prefecture, where survivors of the tsunami disaster have been staying. This article is a report of the activity whichwas undertaken at the fourth stage (March, 2013) of the project. The theme was set as “myhometown” and cultural activities which focused on music were performed in accordance withtopics common to the local community and that of the authors. As a result, a friendly nteractivecommunication developed. The process and the results of the sessions are introduced in thearticle.
著者
埜崎 都代子:筆頭著者 宮崎 友晃:その他 中館 俊夫:責任著者
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.413-420, 2014-08 (Released:2015-11-06)

作業療法の受療者に適切な作業選択をするための基礎的情報を得るために、臨床でよく用いられる「ぬり絵(以下PA)」作業が対象者に与える生理的・心理的作用について、ストレス課題と想定される「内田クレペリン精神検査(連続加算課題、以下CA)」との比較において検討した。女性24名(平均21歳)を対象にPAとCAという2つの課題を実施した。前安静20分、作業前半15分、休憩5分、作業後半15分、後安静20分、計75分間、同一時間帯、場所にて1課題ずつ2日間、実施した。実験中、5分毎の唾液αアミラーゼ(以下SAmy)、毎秒、心拍と脳血流量(酸素化ヘモグロビン濃度:oxy-HB)を継時的に測定した。また日本版POMS(Profile of Mood States)を用いて作業前後の気分を測定した。測定値平均の経時的変化と課題間の変化を分散分析法で、安静時と作業時の平均値を対応のあるt検定で、POMSはWilcoxonの符号付き順位和検定で差を検定した。有意水準は5%とした。その結果、心拍・脳血流量は作業中の変化はCAが大きいが、PAとCAに有意差はなく、両課題とも安静時より作業中は高値を示す類似した変化だった。一方、SAmyはPAとCAで異なる経時的変化を示し、両課題間には有意差が見られた。CAは安静時に対して作業中が有意に高値を示したが、PAは有意差がなく作業中低値の傾向もみられた。POMSによる気分の変化ではPAは「緊張・不安」「怒り・敵意」「活気」「抑うつ・落ち込み」「混乱」に有意な低下がみられた。CAは「緊張・不安」が高値となる傾向が示され、「活気」「混乱」のみ有意な低下を示した。以上から、自発的なPA作業が、CAにおける半強制的な計算作業と同程度の酸素要求量を持つ脳活動であるにもかかわらず、PA作業は心理的ストレスが認められない課題であることが示唆された。(著者抄録)
著者
牧野 圭子
雑誌
成城文藝
巻号頁・発行日
no.216, pp.82-66, 2011-09 (Released:2012-09-26)
著者
濱田 匠 菊池 紀彦 HAMADA Takumi KIKUCHI Toshihiko
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.215-222, 2014-03-31 (Released:2017-02-18)

本研究は重症心身障害児(以下、「重症児」とする)のコミュニケーションの特徴を明らかにするために、かかわり手の行動および重症児の行動について詳細な分析を行った。作業療法の場面におけるかかわり手の行動を整理したところ、かかわり手と重症児のコミュニケーションの特徴は、「かかわり手主導で働きかける」、「重症児の期待や合図、要求行動の表出に対応して働きかける」、「重症児の合図や要求行動の後に新たな合図や要求行動を促す」の3つに分類された。このことは、かかわり手の行動に着目することが、重症児のコミュニケーションの特徴を理解していく上で意義があることが示唆された。
著者
稲熊 成憲
巻号頁・発行日
pp.1-11, 2014-03-25 (Released:2016-08-04)

近年「痛み」は,5番目のバイタルサインと言われ,治療の質的向上に重要視されている.痛みにより行動の狭小化や活動の制限は対象者の精神状態と密接に関係があると考えられている.本研究は,統制感(Locus of control 以下 LOC)と健康統制感(Multidimensional health locus of control 以下 MHLC)を用いて分析することにより,「患者教育」に重点を置き考案した介入の効果が対象者の行動特性にどのような変化を与えたかを抽出するとともに,疼痛,身体機能,うつ傾向,統制の所在との関係性を明らかにすることを目的とした.また,この結果から,作業療法介入における「患者教育」が重要な役割であることを検討することを目的とした. To clear the interaction between pain, physical function, depressive tendency, and locus of control, the 13-patients who were diagnosed with scapulohumeral periarthritis, what was known as frozen shoulder, had the occupational therapy intervention that used method of the pain control program in accordance with the cognitive-behavioral therapy for 3 months. We used VAS to measure the pain, ADL subscale in JOAS to measure the life function, SDS to measure the depression, and LOC and MHLC to measure the locus of control at the first and in the end of the interventions. Significance test between the first and the final result in each of the measure-scale indicated the improvement in the pain and function category. That suggested the OT intervention were effective. As a result of the correlation in each measure category, the pain control program would be related to the pain categories among the measure-scale. The occupational therapy intervention using the skill of the cognitive-behavioral therapy may be effective to work with the patient's mental health. 首都大学東京, 2014-03-25, 修士(作業療法科学)