著者
竹渕 瑛一 梶並 知記 徳弘 一路 速水 治夫
雑誌
マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2016論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.1840-1847, 2016-07-06

本論文では,ベース音を用いることで,Chroma-Vector 法で得られる音階情報を音程情報に変換することで,和音認識のパターンマッチを簡略化するための手法を提案する.本研究では,和音と倍音の調波構造に着目することで,音程情報をビットフラグと見立て,演奏情報と和音とのパターンマッチングを行った.評価実験では,著者の一人が試作システムとエレキギターを用いてコードを繰り返し弾弦することで実施した.評価実験の結果,完全一致では F 値が 19.1%,部分一致では F 値が 30.8% となったが,実験中の目視によってどのコードが弾弦されたのか理解できる結果となった.従って,提案手法と機械学習の組み合わせで認識率を向上させることが可能と考えられる.今後の課題として,演奏者がうまく弾けない状況やエレキギターの調波構造を考慮することである.先行研究のように音響信号から和音を認識するアプローチから,押弦位置を認識するアプローチで課題を解決できると考えられる.
著者
大岩 元
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.1-6, 2015-03-16

21世紀の市民社会を形成するための基礎としての識字教育として,プログラミング教育を行う必要があることを主張する.コンピュータの安易な教育利用が日本の教育に弊害を与えた例として,大学入試センター試験を示す.識字教育として行うプログラミング教育の内容は,市民が共有すべき知識/スキルであることから,目的/手段展開という一般性のある視点から行い,母語としての日本語を使うことで,プログラミング「言語」教育から決別すべきことを提案する.
著者
武井 恵雄
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1-9, 2016-06-01

中央教育審議会での高大接続改革の検討が進み,わが国の初等中等教育にも大きな変革が予想される.その変革の1つは,学習指導要領がこれまでの内容中心から教育・学習の方法にまで踏み込むというものであり,授業設計等,学習科学の成果が生かされるようになるという期待も持てる.一方,高校の教科『情報』は,設置直後の事情に由来する問題が残っているが,これについても今回の改革に好ましい変化がもたらされる可能性がある.そのような中で今後重要となるのは,きちんと情報技術の特性を理解した専門性を持つ教員であり,そのような教員を育てるための枠組みの確立であるというのが著者の考えである.
著者
高田 哲雄 広内 哲夫 平野 雅道 羽倉 弘之 海津 ゆりえ 若林 一平
出版者
文教大学
雑誌
湘南フォーラム:文教大学湘南総合研究所紀要 = Shonan Forum : Journal of the Shonan Research Institute Bunkyo University (ISSN:18834752)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.117-137, 2008-03-01

Cultural tourism has become an important phase of the new age tourism. Attractively archiving cultural resources provide cultural tourists with an intellectual and practical guide especially to a performing aspect of the urban and rural culture. This study focuses on the 3D imaging of performing rituals, festivals and lodging accommodations.“Shonan” is mainly the coastal region facing Sagami Bay extending from Kamakura and Enoshima, through Chigasaki and Hiratsuka, to Oiso and Ninomiya. This region has a fine view of Mount Fuji and “Shonan” beach. The Kamakura Shogunate have left a wide variety of historical and cultural heritage in “Shonan” area.Minamoto No Yoshitsune (shortly "Yoshitsune") is the younger brother of Minamoto No Yoritomo who is the founder of the Kamakura Shogunate. But Yoshitsune is a famous tragic general of Japanese samurai. He was named as an “enemy of the Emperor” by the shogunate, and finally betrayed by his patronage and forced to commit suicide “harakiri.”He is enshrined in Shirahata Shrine in Fujisawa.Our research team successfully achieved a challenging 3D image recording of Shirahata Shrine “Kagura.” The chief priests of shrines related to and emerging from the Shinto religious or historical legend perform “Kagura.”Another challenge is VRML technology. We have reconstructed Maita “Honjin” official accommodations for “Daimyo” warriors using VRML stereoscopic technology. Maita “Honjin is official accommodations managed by Maita family in Fujisawa “juku”lodging spot.
著者
加藤 知子
出版者
星城大学
雑誌
研究紀要 = Research bulletin of Seijoh University
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1-16, 2020-03-01

The person who laid foundation of modern Kiyosato (Yamanashi Prefecture, Japan)was Paul RUSCH, an American lay missionary of the Anglican Church. He introducedknow-hows about the modern agriculture and tourism to Kiyosato after World War Ⅱ.Kiyosato’s post-war success is mainly due to Rusch’s first-class effort, thanks to whichthe area continues attracting tourists from regions like Kanto and Chubu in Japan. Being a Christian missionary full of passion, he built St. Andrew’s Church inKiyosato, hoping that one day Christianity would prevail in Kiyosato and Japan. Howsuccessful has this endeavor been? Why has the Christian population in Japanremained small despite the efforts by passionate missionaries like Rusch? Can we findany similarities among the Christian and Japanese cultural traditions? How will thereligious landscape change once Christianity becomes a major religion in Japan? With these research questions in mind, and taking Kiyosato St. Andrew’s Church asa starting point, this paper will give some thoughts on Christian evangelism in Japanfrom an intercultural understating point of view.
著者
上田 義明
雑誌
第84回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, no.1, pp.111-112, 2022-02-17

近年のシステム運用では,一般にリソースの効率的な利用や高速なスケールアウトの実現のために分散環境を用いる.しかし,分散環境のDNSでは,各ノード間でDNSのキャッシュデータを共有することができず,キャッシュヒット率が低下するという問題があった.本研究ではDNSキャッシュを非同期で共有することで可用性や応答速度を落とさずにキャッシュヒット率を改善する手法を提案する.本手法を用いたPoCの性能を評価し,分散環境におけるDNSキャッシュヒット率の改善を確認した.
著者
坂井 和子 西尾 和人 西尾 誠人 Sakai Kazuko Nishio Kazuto Nishio Makoto
出版者
近畿大学
雑誌
科学研究費助成事業研究成果報告書 (2018)
巻号頁・発行日
pp.1-4, 2019

研究成果の概要(和文):本研究では血中からの融合遺伝子検出としてエキソソームを用いたALK融合遺伝子検出を試みた。ヒト由来肺癌細胞株をヌードマウス皮下移植したモデルを用い、次世代シークエンサーによる融合遺伝子検出の条件検討を行った。その後肺癌患者血漿からエキソソーム単離およびRNA抽出を行ない、PCR増幅によるEML4-ALK検出を試みたが検出が困難であった。そこで、遺伝子変異が既知である患者の血中循環無細胞DNA(cfDNA)を用いて検出可能性を検討した。6例のALK融合遺伝子陽性肺がん患者血漿からcfDNAを抽出し、キャプチャー法を用いて検出を試みた結果、1例でEML4-ALK融合遺伝子の検出が認められた。研究成果の概要(英文):We tried to detect EML4-ALK fusion gene in plasma-derived exosomal RNA derived from non-small cell lung cancer patients. We established a PCR-based assay to detect ALK fusion transcripts and tried to detect ALK fusion transcripts in exosomal RNA of the xenograft model bearing human lung cancer cell lines. However we failed to detect the fusion transcripts in exosomal RNA. Next, we tried to detect ALK fusion genes in circulating free DNA (cfDNA) obtained from plasma of non-small cell lung cancer patients. EML4-ALK fusion genes could be detected in one of 6 cases using CAPP-seq technology.
著者
鍛冶 博之 Hiroyuki Kaji
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
no.83, pp.99-125, 2009-02-28

本稿の目的は、第1に、小売・流通業界の大手企業であった株式会社ダイエーがパチンコホール事業を展開するようになった歴史的経緯を解明すること、第2に、1980年代後半からパチンコ業界の健全化の一環として展開される、ホール業界での「経営改革」にもたらした影響を考察すること、以上二点である。なお本稿では、ダイエーが日本ドリーム観光への経営支援と買収を行った時期(1980年代)と、株式会社パンドラを子会社化し、ホール業界への本格的参入を果たした時期(1990年代前・中期)に着目する。
著者
久保 龍哉 藤木 大地 吉岡 健太郎 高前田 伸也
雑誌
研究報告システム・アーキテクチャ(ARC) (ISSN:21888574)
巻号頁・発行日
vol.2023-ARC-254, no.18, pp.1-6, 2023-07-27

インメモリ計算は,メモリ上で直接計算を行う新しい計算方式であり,データインテンシブなアプリケーションの高速化技術として近年活発に研究されている.特に,短いアクセス時間と高い柔軟性を持つ SRAMは,インメモリ計算用のデバイスとして様々な回路技術が提案されている.しかしながら,In-SRAM 計算技術に応用できるような,柔軟な SRAM 回路設計ツールは存在せず,こうした回路の設計者は,膨大な時間を費やして回路の設計・評価を行っている.この課題を解決するために,我々はインメモリ計算のためのオープンソースなメモリコンパイラを検討する.これは,製造プロセスに応じて SRAM 回路を生成する,従来のメモリコンパイラとしての機能性を持ち合わせながら,インメモリ計算のための多様なメモリセルのタイプと,ペリフェラル部に配置される論理回路のカスタマイズ性を導入する.本稿が実現すれば,ユーザーは簡単な設計から高性能なインメモリ計算用の SRAM 回路を迅速に生成することができ,インメモリ計算技術の研究やシステム応用を効率化することができる.
著者
井口 篤 Atsushi Iguchi
雑誌
放送大学研究年報 = Journal of the Open University of Japan (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.63-69, 2011-03-22

本稿は、西洋中世が現代日本の大衆文化においてどのように表象されているかについて考察する。はじめに、西洋中世に端を発するイメージが今日の世界においても繰り返し現れることに言及する。これは一般的に「中世主義」と呼ばれる文化現象であり、この現象においては、これまでに様々な形のナショナリスト的、宗教的、そして学問的イデオロギーが互いに争うように「ヨーロッパ」という概念を我がものとしようとしてきた。しかし日本はヨーロッパと地政学的に隔絶しており、現在の領土を正当化するために中世ヨーロッパという概念を喚起することはない。にもかかわらず、中世西洋のイメージは戦後日本の大衆文化において頻繁に利用されてきた。本稿は、11世紀の北欧を描く幸村誠の連載漫画『ヴィンランド・サガ』を分析することにより、日本の大衆文化における中世ヨーロッパの我有化は、現実逃避的とは到底言えないことを示す。作者の幸村にとって、中世ヨーロッパの日本人にとっての他者性はまったく障害ではない。幸村は亡命と帰郷という重要なテーマを作品の中で技巧的に展開することに成功している。この亡命と帰郷というテーマは、人間の一生が神への帰郷であると捉えられていた中世ヨーロッパにおいても重要であった。幸村の作品は一見中世ヨーロッパの社会を忠実に再現しようと試みているだけに見えるが、暴力、信仰の危機、仮借なき搾取に溢れる社会を読者に提供している。
著者
鯨井 正子 Masako Kujirai 国立音楽大学音楽研究科
雑誌
音楽研究 : 大学院研究年報 (ISSN:02894807)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.77-92, 2013-03-29

本論は、昭和戦前期の家庭において、当時の子どもにとってレコードがどのような存在となり何をもたらしたのかを考察する上で、西洋芸術音楽のレコードと童謡のレコードに着目し、レコード企業のひとつである日本ビクター発行の月刊誌『ビクター』を資料に、家庭において両レコードがどのような接点を持って同調するに至り、さらにどのように展開されるのか解き明かすことを目的とした。 西洋芸術音楽と童謡の二つのレコードの接点は、比較的通俗的で聴きやすい曲目を収録した『ビクター洋楽愛好家協会』と『ビクター家庭音楽名盤集』の登場により、西洋芸術音楽が家庭に歩み寄り、西洋芸術音楽のレコードを聴くことが家庭を中心に実践され、聴き手が拡大していく中に児童をも巻き込んでいったことから推測できると考えられた。洋楽愛好家協会と家庭音楽名盤集のレコードは、聴衆層の増大と拡大を促し、愛好者を作ったが、このことにより、児童向けレコードの、特にレコード童謡に対し、それが現在伝えられているような大正期の創作童謡とは芸術的に異なる質を持つレコードであっても、その優劣を問わない親世代が増えたことを予想することができ、大衆的とされるレコード童謡は自然と家庭に入ったと推察された。ゆえに家庭において、西洋芸術音楽のレコードと童謡のレコードが共存し同調することにつながると考えられた。 接点が見出されて以降の西洋芸術音楽のレコードと童謡のレコードは、まさに時局を背景に展開されていったと言え、家庭、レコード企業、レコードそのものといった様々な立場が、時局下において、その解釈や役割を変えていったことがわかった。まず、家庭の意味や役割は、時局を背景に情操教育や情操教化の場に転じたことが明らかとなった。その家庭を販売の対象とする蓄音機・レコード会社は、時局を支え、家庭娯楽と音楽報国のために積極的に責任を負うことを明言するようになっていった。媒体であるレコードは、情操や慰楽、及び報国のため、そして国民精神作興のために存在し提供されるものとして示された。中でも、聴衆層を拡げた洋楽は日本の音楽であると捉え直され、大正期の創作童謡を含んだ童謡のレコードとともに、時局の緊張感ゆえに求められる情操やゆとりの役割を担い、国民や第二の国民と呼ばれた子どもたちに向けて与えられていったと考えられた。 最後に、時局のもと、企業が娯楽と報国を並列の責務に据えてレコードを制作し販売していく中で、西洋芸術音楽と童謡のレコードもその役割や解釈を変えていったが、レコードを聴いていた聴衆は、時局に合わせていく企業の指向をそのままに受けたとは限らず、音楽を音楽として受け入れるような聴き方をしていたのではないかと述べ、結びとした。