著者
角 美弥子
出版者
北海道教育大学
雑誌
北海道教育大学紀要. 人文科学・社会科学編 (ISSN:13442562)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.65-74, 2020-02

都道府県では文化財保護法に基づき,文化財保護条例が定められている。無形の文化財は無形文化財と無形民俗文化財に分類され,都道府県間で指定数に差があり,無形文化財については指定がない都道府県もある。この原因について,都道府県の無形文化財の指定状況及び文化財保護条例からの検討を試みた。条例の差異を比較したところ,指定件数との関連性は特に見られなかったが,都道府県における無形文化財と無形民俗文化財の違い及び国の指定文化財との関連性が判明した。また,包括的な保護の必要性に言及し,現在取り組まれている指定文化財以外の文化財の保護の重要性,加えて文化財指定の解除を受けた文化財の視覚化などが今後の文化財保護の方向性として有効であると判断した。2018年に文化財保護法が改正され,文化財のさらなる活用が求められている。今後は無形有形の別に関わらずより包括的かつ効果的,また動的な保護が求められることとなるだろう。
著者
本岡 拓哉 Takuya Motooka
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
人文研ブックレット = Jimbunken Booklet
巻号頁・発行日
no.70, pp.27-48, 2021-03-31

会期・会場: 2020年12月11日:同志社大学今出川キャンパス良心館304番教室
著者
中原 篤徳
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 = Bulletin of Den-en Chofu University (ISSN:18828205)
巻号頁・発行日
no.10, pp.305-317, 2016-03

本稿では,子どもの造形における塑造制作について,これまでの筆者の取り組みを振り返り,具体的な造形方法,その意味内容を改めて考えていくこととした。塑造制作には長い歴史があり,明治期に受容された西洋式の塑造は,幼児教育の最初期に取り入れられた経緯がある。しかしながら,今日,保育・幼児教育の分野で,粘土による塑造は,造形活動の中で主流とはいえない状況となっている。そこで,塑造制作そのものについて考え,また,筆者が研修会の講師を務めた一般財団法人川崎市保育会特別対策委員会「造形班」での実践的な研修内容から,保育者による塑造制作における援助の仕方,制作の意義について考察した。また,「造形班」による研究発表や,これまでの研修の中での保育者の意見,感想等から,保育現場において触覚や皮膚感覚に訴える塑造制作によって,造形活動がより充実する可能性を見出すことができた。また,保育者と子どもの思いが共鳴する造形内容を,塑造は持っていることが改めて理解され,今後,実践の中での具体的な造形の援助の仕方について研究していくこととした。
著者
桐山 俊弥 小塩 英典 洞口 岳 井川 愛子 佐野 文 足立 尊仁 白子 隆 永田 翔馬 川田 紘資 齊藤 聡子
出版者
高山赤十字病院
雑誌
高山赤十字病院紀要 (ISSN:03877027)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.3-8, 2020-03-01

症例は55歳女性。乗用車運転中の自損事故のため救急搬送された。初診時の造影CT検査で複雑深在性肝損傷(IIIb型)を指摘した。バイタルは安定しており保存的に経過観察入院とした。受傷から6日後のCTで血腫の増大や仮性動脈瘤の指摘はなく、受傷から10日目に退院となった。以後当科外来で経過フォローを行ったが、受傷から43日後のCTで肝A5、A8に仮性動脈瘤が出現したため、血管内治療を行った。鈍的肝外傷後の仮性動脈瘤は遅発性出血の原因となるため、基本的にInterventional radiology (IVR) による治療が必要となる。フォローアップ期間について明確な基準は決まっていないが、受傷から1週間後および4週間後に造影CTでフォローを行うことは妥当であると考えられた。
著者
半澤 映拓 菊池 浩明
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.918-925, 2019-10-14

Residential IP Proxyは,住宅用ネットワークのホストを利用したトラフィック中継を提供するプロキシサービスである.サービスを提供している事業者はホストが自発的にサービスに参加して良質な各種応用に利用されていると主張しているが,実際のところは,良性なユーザとして振る舞うことで検出やブロッキングを回避し,DoS攻撃などの不正行為に悪用されているのが明らかになっていた.Miらは2019年にResidential IP Proxyサービスに参加するホストによる不正行為を指摘し,ホストの探索とプロファイルを行い,Residential IP Proxyサービスの基盤,規模,悪性を明らかにした.本研究では,Miらが収集したResidential IP Proxyに参加するホストのデータセットを解析し,情報通信研究機構の提供する分析基盤NONSTOPを用いて,Residential IP Proxyが国内のインターネットで行っている通信についての調査を結果を報告する.解析結果に基づき, Residential IP Proxyが日本のネットワークにもたらす脅威について明らかにする.
著者
吉井 裕人
雑誌
情報処理学会研究報告ゲーム情報学(GI)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.52(2000-GI-003), pp.33-40, 2000-05-31

本論文では、ゲームのフラクタル仮説というゲームの構造にかんする仮説を提出する。この仮説を元に、ゲームが面白いとはどういうことか?について議論していく。以前行った囲碁に関するパターンの統計研究をレビューし、心理学実験の方針について提案を行う。
著者
本多 佑希 兼宗 進
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.583-584, 2019-02-28

ブラウザ上でプログラムの編集・実行が可能なDNCLの学習環境「どんくり」を開発した.どんくりはブラウザ上で動作するため,PCやタブレットのブラウザからアクセスするだけで,手軽にプログラミングの学習が可能である.どんくりでは,DNCLの仕様に配列や関数の宣言など一部機能を拡張している.また,アルゴリズムの学習を目的とした機能として,プログラムを実行した際のプロファイリング情報を確認する機能や,配列操作を簡易化する関数を用意している.本稿では,どんくりの設計と実装について報告する.
著者
コヘン タガー アダ コヘン シラ マルカ Ada Cohen Taggar
出版者
同志社大学一神教学際研究センター
雑誌
一神教学際研究 = Journal of the interdisciplinary study of monotheistic religions : JISMOR (ISSN:18801080)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.43-62, 2019-03-31

古代近東において知恵は神々から人間に与えられた知識であった。それは人間が文明を築き、神々への奉仕を続けるために与えられたものであった。本稿は、アッカド語・ウガリト語・ヒッタイト語で書かれたメソポタミア・レバント・アナトリアの文書を考察し、知恵の概念が父から息子への教訓のように特定の形式を持った文書を通じて伝えられていたことを示す。続いて、知恵の思想と言葉がどのような形で聖書のテクストに織り込まれているのかについて明らかにする。本稿では、主に二つのアッカド語文書を扱い、それらの形式をヒッタイト語文書と比較する。両言語で書かれた文書の比較考察からは、それらの聖書の知恵文学との関係が理解されると共に、とりわけヒッタイト語文書の理解が深められる。
著者
金川 晋吾
出版者
東京藝術大学
巻号頁・発行日
2015-03-25

平成26年度
著者
住友 元美 スミトモ モトミ Motomi SUMITOMO
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.43, pp.193-205, 2006-03-08

本稿では、樟蔭高等女学校(1918年4月開校)・樟蔭女子専門学校(1926年4月開校)の初代校長を務め樟蔭学園創設の中心的役割を担った伊賀駒吉郎の女子教育論の特徴を明らかにし、それが如何に樟蔭学園の教育に反映されたかについて分析した。 まずはじめに、伊賀の著書である『女性大観』(1907年12月)および『女子教育の革新』(1917年11月)を分析して、彼が、当該期における女子教育および女子教育論の問題点を指摘したうえ、女子の人格修養を目的とした「淑女主義」を提唱し、女子中等教育(高等女学校)の改善と女子教育の高等化(女子のための高等普通教育)の必要性を強調していたことを示した。 次に、『私立樟蔭高等女学校記念帖』(1918年、樟蔭高等女学校落成式開催時に編纂)に掲載されている樟蔭高等女学校の設立趣旨や教育方針と上述した伊賀の女子教育論とを比較検討し、伊賀の女子教育論が樟蔭高等女学校をはじめとする樟蔭学園のその後の運営(教育理念・施設等)のなかで具体化されていったことを明らかにした。 そして最後に、伊賀の女子教育論が、女性の女性性を肯定的に捉えたうえでその国家的・社会的役割を強調するという点において、1910~20年代の女性論および女子教育論の新たな潮流と共通する側面を有しており、その一翼を担うものとして位置づけられる可能性を示した。