著者
中澤 努 長 郁夫 坂田 健太郎 中里 裕臣 本郷 美佐緒 納谷 友規 野々垣 進 中山 俊雄
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.5, pp.367-385, 2019-05-15 (Released:2019-08-15)
参考文献数
68
被引用文献数
7 12

東京都世田谷区の武蔵野台地の下に分布する更新統世田谷層及び東京層の層序と地盤震動特性について検討した.世田谷層はMIS 6に開析された谷地形をMIS 5e前期~中期に埋積した地層であり,内湾成の軟らかい泥層を主体とする.一方,この地域の東京層は,MIS 5e中期?~後期の湾奥で形成された砂層などからなり,世田谷層とは対照的に広範囲に比較的平坦に分布する.常時微動観測により,段丘礫層を伴わず世田谷層が厚く分布する地域では,1Hzにピークをもつ地盤震動特性が示された.首都圏の地盤リスクを考えるとき,世田谷層をはじめとする台地の下のMIS 6開析谷埋積層の分布に注視する必要がある.
著者
スリヨン タンスリヤボン 千葉 正広 花木 真一
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 : 映像情報メディア = The journal of the Institute of Image Information and Television Engineers (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1980-1988, 2002-12-01
参考文献数
19
被引用文献数
3 1

A circumstantial video image should convey sufficient information about the situation, while protecting the privacy of the specific person' s in the scene. This paper describes a concealment system which automatically identifies a person by using face recognition, tracks him or her, and displays his or her image in a modified form such as in silhouette with or without name, or displays only a name instead of the original video image. A method for comparing situational information obtained from the modified or raw circumstantial video image with one required in several applications is also described. A subjective evaluation was carried out in order to ascertain how people evaluate modified video images from the observer or subject viewpoint. As a result of an experiment in which the several applications were considered, the silhouette with name list type of concealment seems to be the most appropriate observer-subject compromise.
著者
増山 雄太 中村 泰信 野口 篤史 布能 謙 村下 湧音 河野 信吾 田渕 豊 山崎 歴舟 上田 正仁 Pekola Jukka P.
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.71, pp.2649, 2016

<p>本研究では,三次元マイクロ波共振器中に超伝導量子ビットを配置した系により,超伝導量子ビットに対して射影測定を行い,その結果を用いてコヒーレンス時間内にフィードバックし,再び超伝導量子ビットを射影測定した.この一連の測定結果から,絶対不可逆な過程の寄与も考慮に入れた一般化された積分形のゆらぎの定理を検証した.この結果は量子系におけるMaxwellの悪魔を初めて実装できたことを示している.</p>
著者
鏡味 完二 松原 義継
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.7, no.5, pp.375-386,418, 1955

The settlement of "Nomugi" lies on a compound talus at the hight of 1320m above sea level. (Fig. II) This talus was constructed on the northern side of "River Mashita", at the western foot of "Nomugi Pass" 1672 meters high). "Nomugi" was the most important pass in the "Northern Japanese Alps" in the days about 50 years ago, through which a highway was constructed in the feudal times from Takayama to Matsumoto (Fig. I). Every day about 70-80 "da" (one "da" is the cargo of one cattle) was conveyed through this pass.In the settlement of "Nomugi" there are 29 houses now, but about 50 years ago were neary 50 houses. Among these houses, there were three inns, four doss houses and other shops such as bar, grocers, etc. But all these shops transformed their occupations to agricultural, pastral, or forestry. As the result of this change of trade, the prosperity of this village was declined. The reason of this decline was the construction of Chuo Line Railway from Nagoya to Tokyo, and then the opening of Hokuriku L.R.W. along the coast of Japan Sea and finally Takayama L.R.W. from Gifu to Toyama. All the communication through "Nomugi pass" was pillaged by these rail road traffic, and the number of "Nomugi" decreased gradually from about 50 to 30 since 50 years ago. Thus this settlement has turnd into a lonely mountain village and "Nomugi Pass" was almost closed to passengers. This village is a rare example in Japan which has no medical man and no electric lamp.But this place would revive if a plan of construction of tourist bus road on the ridge line from "Nomugi Pass" to the top of Norikura Volcano only be realized in these years.The meaning of the place name of "Nomugi" may be explained an old Japanese words, namely "no"=field, "mugi"=apparent place from every direction. This means the topographical feature of the talus on which this settlement stands.The annual mean temperature of this place is 6.7°C.. This value coincides with that of the inner land type climate in the central part of Hokkaido. With the summer maximum temperature 28°C, and comparatively stronger sunshine with longer shining hour, these owe to the nature landform of talus on which this village stands, farmers can plant summer crops suitable to the low temperature such as buckwheat, barnyardgrass, soyabean, millet, corn etc.. Thus the production of crops. amounts to 90% of the whole agricultural products. But rice culture finds no place on account of the low temperature. As the result of the shorter period free from the frost (199 days), these crops frequently experienced the frost damage and diminished the yield.Thus the length of self sustaining of food in this village is only 4…5 months in a year. (Average number of cultivated field per one house is one ha..) We can find a definite relationship between the distance from farm house and the species of crop; namely vegetable field near the house, fields of buckwheat, millet etc. apart from it. Because the former requires much more labour than the latter. Mulberry trees are planted on foot-path or on the escarpments of river terraces and their tall trees need a ladder to pick the leaves.This village has 47 head of plough cattle by 27 farm houses. They breed them in the way of transhumance; grazing in summer, pen feeding in winter. Summer grazing is taken in the sloping pasture on the mountain side of Norikura Volcano (Its area is abont 800ha..). Mowing fields are found near the farm houses and so they lie on the place lower than the pasture. Its area is about 300ha.. From this mowing field farmers collect their hay, and by the labour efficiency of this colection the number of cattle can be bred in one farm house is defined. In this village the highest number is only 3.
著者
石原 公道
出版者
日本ロシア文学会
雑誌
ロシア語ロシア文学研究 (ISSN:03873277)
巻号頁・発行日
no.34, 2002

ミハイル・ブルガーコフの死により第二部冒頭の半ばで推敲が永遠に中断した『巨匠とマルガリータ』のマルガリータには作者の三番目の妻であり,未亡人となったエレーナ・セルゲーヴナ(1893-1970)が擬せられている。スターリン治下のモスクワを舞台に,1928年もしくは29年から始められ,40年の死の直前まで続けられた『巨匠とマルガリータ』の断続的な創作過程において,作者ブルガーコフは,ある時,《どうして私は逮捕されないのか,自分の回りにスパイがいるのではないか》という考えが頭をよぎったことはなかったであろうか。「技師の蹄」「蹄のある顧問」等様々な題名を経て,「悪魔(ヴォランド)の福音書」の物語は最終的には『巨匠とマルガリータ』となり,悪魔(ヴォランド)が後景に退き,巨匠とマルガリータが主人公の位置を確保することになるのだが,その間,作者は考えてはならないことを考えたのではないか。その結果マルガリータが〈悪魔の舞踏会〉に登場するようになるとしたら……。1940年3月10日に亡くなったブルガーコフは,モスクワはノヴォデヴィチ墓地,モスクワ芸術座関係者(スタニスラフスキイ,チェーホフ,ゴーゴリ等)の眠る一郭に12日に埋葬。今でこそこういった人々と共に埋葬されていることに何の違和感もないが,当時ブルガーコフは,身分としてはボリショイ劇場に所属,スターリン生誕60周年祭のためモスクワ芸術座から依頼された,スターリンを主人公とした戯曲「バツーム」の上演禁止後,この劇場との関係はなく,公的にも,作品発表がほとんど禁じられた作家であったにもかかわらず,おそらくモスクワ市内でも一等地とされるこの墓地になにゆえ埋葬されることとなったのか。未亡人エレーナの関わりが考えられないだろうか?さらに厄介な問題は,『巨匠とマルガリータ』のテキストとして,5巻本全集版がエレーナの手元から出ているが故に,それが作者による正当性のある稿本とばかりは言えないことにあり,エレーナ没後刊行の73年芸術出版社判との異動が大きな問題となる。軽々の憶測は避けなければならないが,四半世紀の間,未亡人エレーナと言う〈密室〉に置かれてもいた作品であったことが考慮されていいのではないか。また,ブルガーコフにかかわる基礎資料の一つとして,『エレーナの日記』が,1990年に刊行。60年代初頭彼女による編集後のテキストは,明らかに臨場感が薄れている。それもさることながら,文学者ブルガーコフには,日記をつけることが許されていなかったときに,どうしてエレーナに日記が可能となったのか,という素朴な疑問が沸いてくるのだ。マルガリータの《罪と罰》について考えていかねばならない。

2 0 0 0 OA 日本の競馬

出版者
日本競馬会
巻号頁・発行日
1942
著者
酒井 弘憲
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.790-791, 2015

昨年は年末に任期の半分というタイミングで衆院選挙が行われ,つい先日も統一地方選挙が行われたが,開票があまり進んでいないにもかかわらず,選挙速報で「当選確実」のクレジットが出るのを不思議に思われている方もいるのではないだろうか? 選挙では,よく出口調査をやっているのにお気付きだろう.結論を先に言えば,選挙速報での当確情報は,実際の開票状況と出口調査の結果に基づいている.<br>そもそも,調べたい対象の全てのデータを得ることは,多くの場合,不可能である.そのため一部のデータ,つまり抽出サンプルから,全体の母集団を推定することが必要になる.一部から全体を予測する統計的方法として,「推定」という考えがある.推定の良さは,一致性や不偏性などによって決まってくる.一致性とは,データの数が多くなればなるほど,1つの値に収れんしていく性質のことである.つまり,少ないサンプルよりは多数のサンプルを集めた方が,良い推定が可能になるということである.不偏性とは,偏りのないことであり,推定値の期待値が真の値に限りなく一致してくるということである.<br>説明を簡単にするために,出口調査で,ある候補者Aの得票率を推定することを考えてみよう.<br>例えば,投票を済ませた任意の100人の有権者に投票した候補者を聞いたところ,そのうち45人がAに投票したと答えたとしよう.この場合,注目するAの得票率は45/100=0.45である.この値は一点決め打ちの推定値なので点推定値と呼ぶ.この値に基づいて,Aの真の得票率(これは全部の票を開票してみないと分からない)に対する区間推定,つまり,上で調査した0.45という得票率がどのくらいの信頼性を持っているのかということを調べてみる.ここでは,Aが立候補した選挙区で投票した有権者全体が母集団ということになり,出口調査の対象となった100人が標本ということになる.標本が100人で,調査結果としてAに投票した人数が45であるとすると,得票率45%の信頼度95%の信頼区間は,0.3525~0.5475となる(簡単な式なので提示しておくと,p±1.96√<span style="text-decoration: overline;">(p(1-p)/n)</span>で計算できる).いま,Aに対立するB候補がいるとしよう.Bに投票したと答えた人数が100人中35人であったとする.そうすると,Aに投票したとする人よりも10%少ない.したがって,かなりの確率でAの方がBよりも得票率が高いと言えそうであるが,本当にそうだろうか? 実際にBの得票率について同じく95%信頼区間を計算してみると,0.2565~0.4435となる.これは,Aの信頼区間とかなり重なっている.つまり,Aの得票率は低ければ40%を切る可能性もあり,Bの得票率は高ければ40%を超えることも考えられる.したがって,この出口調査からだけでは,AがBを抑えて当選するとは言い切れない.これは出口調査の対象人数が少ないためである.もし,全投票者を出口調査対象とすれば答えは簡単であるが,そのような調査は不可能である.そうすると,どのくらいの人数が標本として適当なのかということになるが,出口調査の対象者を増やしてn人にしたとしよう.その場合でもAとBの得票率はそれぞれ45%,35%としておく.このとき,95%の確率で両候補の真の得票率に差があると言うためには,2つの信頼区間が重なり合わなければよいことになる.つまり,「Aの信頼区間の下端」>「Bの信頼区間の上端」であればよい訳である.信頼区間の公式に当てはめて計算すると,この場合,n>364.8となる.したがって,出口調査でAとBの得票率の差45-35=10%が信頼度95%で有意な差であると言うためには,365人以上の人に回答してもらう必要があるということになる.このように標本抽出して得られた結果を用いて,選挙速報で当選確実が出ている訳である(当然,本連載の去年の第1回に紹介したギャロップ調査のように,地域差,性別,年齢構成なども考慮して出口調査する投票所も選ばれているはずである).もし,接戦でB候補者の得票率が43%であったとすると,僅か2%の得票率の差を見いだすためには調査対象として9,462人が必要になってくる.<br>読者の皆さんは論文などで,この「95%信頼区間」という記述を目にされたことがあるだろう.95%信頼区間であれば,その区間内にその推定値が存在する確率が95%であることを示していることになる.さらに,その区間幅はサンプルサイズ,臨床研究や治験で言えば症例数が増えれば,狭くなる.つまり推定精度が高まる訳である.医薬の世界では,5%有意であるか否かという二者択一の「検定」偏重のきらいがあるが,検定の弱点は,具体的にどのくらいの差があるのかとか,その試験がどのくらいの精度で実施されたのかというようなことが分からないことである.「推定」は,「検定」の弱点を補強する情報を提示してくれる方法なのである.
著者
植田 邦彦
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.339-348, 1987-09-25
著者
安森 亮雄 渡邉 翼 泉山 塁威
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.25, no.59, pp.337-342, 2019-02-20 (Released:2019-02-20)
参考文献数
8
被引用文献数
3 8

The aim of this paper is to clarify the arrangement of elements and activities on street space through the practice of the Sidewalk Cafe in the Orion Street, Utsunomiya city. First, the activities through people’s postures and situation and their change are examined. Secondly, the arrangement of elements such as furnitures and advertisements in relationship to adjacent buildings are examined. By integrating them, the sets of the arrangements and activities are analyzed. Finally, through the sequence of the set, the characteristics of the street space are clarified.
著者
平野 哲
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.392-398, 2020-05-18 (Released:2020-06-13)
参考文献数
19
被引用文献数
1

脳卒中患者で下肢麻痺が中等度以上である場合には,麻痺の完全な回復は困難であり,装具や歩行補助具を用いた歩行再建が現実的な目標であることが多い.道具を使った新しい歩容を修得する過程では運動学習が起こるため,効果の高い歩行練習とは,運動学習を促進させる歩行練習であるといってよい.したがって,歩行練習を支援するロボットにも,運動学習を促進する機序が必要であり,医療者もこのことを理解してロボットを活用する必要がある.本稿では,運動学習を促進する工夫を備えたロボットについて,ウェルウォークを例に説明する.ロボットを用いた歩行練習のエビデンスや今後の展望についても言及する.
著者
今井 正 出濱 和弥 坂見 知子 高志 利宣 森田 哲男 今井 智 岡 雅一 山本 義久
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.93-100, 2021 (Released:2022-03-20)
参考文献数
21

本研究の目的は長期間,硝化作用を有する熟成状態のろ材を保存するための安定状態を評価することである。密封して保湿状態にしたろ材のアンモニア酸化活性に及ぼす保存温度の影響を調査した。ろ材のアンモニア酸化活性を25℃で測定した後,これらを海水から取り出してジッパー付き袋に入れて,1~35℃の8段階の温度で180日間管理した。1℃で保存したろ材のアンモニア酸化活性は最初と同様であった。加えて,アンモニア酸化古細菌とアンモニア酸化細菌の現存量は,それぞれ14%と10%でわずかな減少であった。5~20℃で保存したろ材の活性は約50%まで減少した。活性のさらなる減少は25℃以上で保存したろ材で認められた。また,1℃で約3年間保存した場合でも,ろ材の活性が33%残っていることが示された。ゆえに,硝化作用を有する熟成ろ材の長期間保存のためのアンモニア酸化微生物の保持は,設定温度温度内では1℃で最も高かった。