著者
原口 英之 小倉 正義 山口 穂菜美 井上 雅彦
出版者
NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
雑誌
自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.51-58, 2020-02-29 (Released:2021-02-28)
参考文献数
5

全国の都道府県と政令指定都市(以下、指定都市)におけるペアレントメンター(以下、メンター)の養成及び活動の実態を調査し、今後の自治体でのメンターの養成及び活動の普及に向けた課題を検討した。都道府県39箇所(83%)と指定都市16 箇所(80%)から回答を得た結果、個々の自治体の取り組みの実態にはばらつきがあるものの、都道府県、指定都市の実態には概ね共通する部分が多いことが明らかとなった。都道府県、指定都市ともに、5 ~6 割の自治体でメンターの登録制度があり、6 ~7 割の自治体で養成研修修了者への研修が実施されていた。メンターの活動は、6 ~7 割の自治体で実施され、グループ相談、保護者向け研修、保育者向けの研修が多く実施されていた。また、メンター活動の予算のある自治体は6 割、活動の謝礼・報酬のある自治体は4 ~5 割、コーディネーターが配置されている自治体は4 割であった。一方、養成研修の修了者のうちメンターとして登録し活動する人数の割合、養成研修の実施状況、活動評価の方法、情報交換・協議の場の有無については、都道府県、指定都市で違いが見られた。本研究の結果は、都道府県と指定都市、さらには市町村におけるメンターの養成と活動を評価、検討する上での基礎資料となり得るものである。今後、全国でメンターの養成及び活動の普及を目指すためには、メンター養成と活動の取り組みの有無に影響する要因、取り組みを促進するための要因について抽出することが必要である。
著者
内原 脩貴 多胡 憲治 多胡 めぐみ
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.153, no.4, pp.147-154, 2019 (Released:2019-04-11)
参考文献数
27
被引用文献数
1 2

BCR-ABLは,慢性骨髄性白血病(CML)や急性リンパ芽球性白血病(ALL)の原因遺伝子産物であり,転写因子STAT5やキナーゼAktの活性化を介して強力な形質転換能を示す.BCR-ABLを標的とした分子標的薬イマチニブの開発により,CMLやALLに対する治療効果は劇的に改善された.しかしながら,イマチニブの継続的な投与により,bcr-abl遺伝子にイマチニブ耐性を示す二次的な突然変異が生じることも報告されている.これまでに,イマチニブ耐性CMLやALLに対する第二世代のBCR-ABL阻害薬として,ニロチニブやダサチニブが開発されているが,BCR-ABLのATP結合領域に存在するT315I変異は,これらの第二世代のBCR-ABL阻害薬に対しても抵抗性を示すため,薬剤耐性を克服した新規の白血病治療薬の開発が望まれている.我々は,ヒノキ科ヌマスギ属の針葉樹であるラクウショウの球果から抽出されたアビエタン型ジテルペン化合物であるタキソジオンが,細胞内の活性酸素種(ROS)を産生することにより,BCR-ABL陽性CML患者由来K562細胞のアポトーシスを誘導することを見出した.タキソジオンは,ミトコンドリア呼吸鎖複合体Ⅲの活性を阻害することにより,ROSの産生を誘導した.また,タキソジオンは,ROSの産生を介して,BCR-ABLやその下流シグナル分子であるSTAT5やAktをミトコンドリアに局在させ,これらの分子の活性を阻害するというユニークな機序により,BCR-ABL陽性細胞のアポトーシスを誘導することを新たに見出した.さらに,タキソジオンは,T315I変異を有するBCR-ABL発現細胞に対しても強力な抗腫瘍活性を示すことが明らかになった.我々の研究成果は,タキソジオンがBCR-ABL阻害薬に耐性を示すCML,ALLの新たな治療薬として応用できる可能性を示すと共に,BCR-ABL以外の原因遺伝子に起因する様々な腫瘍性疾患に対する治療薬開発においても重要な手掛かりとなると期待される.