著者
柴山 由理子
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.67-80, 2020

国民年金機構Kelaは、1937年国民年金法の制定によって議会直属の機関として設立されたフィンランド社会政策の主要な担い手である。本稿では、フィンランド社会政策の特徴をKelaの歴史的発展経緯から考察する。同組織は設立当初から農民政党との結びつきが強く、政治的な組織であることが指摘できる。Kelaは農民政党の意向を反映しながら管轄業務を拡大し、一律給付方式の保障や現金給付の割合の高いサービスを実現してきた。一方、社会民主党の役割は限定的で、同党が志向した所得比例方式の保障は妥協の産物としてKelaによる社会保障の枠外に置かれた。フィンランド社会政策の対立軸は「農村」対「都市」であり、Kelaを中心とする政治的対立に注目することは同国の社会政策の特徴を捉える上で意義深い。本研究では、フィンランド社会政策研究に「Kelaの視点」を加える必要性を主張し、比較福祉国家論の「社会民主主義レジーム」に多様性がある可能性を示す。
著者
早川 由紀夫 中島 秀子
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.213-221, 1998-08-31
被引用文献数
4

The 1108 eruption of Asama is the largest among numerous eruptions of the volcano during the Holocene. The magnitude is twice as large as that of the notorious 1783 eruption, which killed about 1,400 people. It is also the oldest written eruption of Asama. Chuyuki, which was written in Kyoto, 300 km SW of Asama, describes that the eruption started on September 29, 1108, by the Julian calendar, and that fields of rice and other crops were severely damaged. Many fatalities are strongly suspected by the distribution of the Oiwake ignimbrite, but no description is given for human loss in Chuyuki. A thin pumice layer intercalated between the 1108 scoria and the 1783 pumice can be correlated to a record of Pele's hair-fall in Kyoto in 1596. As many as 800 fatalities at the summit in 1598 described in Todaiki cannot be true. Tenmei Shinjo Hen'iki, which describes that a number of villages along the Jabori River were swept away by hot lahars in 1532, is not a contemporary document. It was written in the late 18th century. Fifteen fatalities at the summit in 1721 can be true. After the 1783 eruption, Asama had been relatively quiet for 100 years. During the early and middle 20th century, Asama had been very active with a peak of 398 times vulcanian explosions in 1941. About 30 Iives were lost at the summit, in the 20th century, by 12 explosions among the total about 3,000 explosions.
著者
矢野暢著
出版者
中央公論社
巻号頁・発行日
1986
著者
村上 弘治
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.129-137, 2000-10-01
被引用文献数
3

アブラナ科野菜根こぶ病は難防除土壌病害のひとつであり,その病原菌(Plasrnodiophora brassicae,根こぶ病菌)は絶対寄生菌であるため土壌中で腐生的に増殖することがない反面,培地上での培養,計数ができない。根こぶ病の発病と土壌中の休眠胞子密度との関係を示すDose Response Curve (DRC)は病原菌,土壌,植物により変動する。(1)根こぶ病菌:根こぶによる差だけでなく,1個の根こぶの中でさえ休眠胞子の発芽率,病原力が異なり,そのため圃場によって病原力が大きく異なった。(2)土壌:普通黒ボク土(福島)よりも淡色黒ボク土(福島)の方がDRCは全体に低く推移した。また,同じ淡色黒ボク土でも地域によりDRCは異なった。さらに,土壌pHの影響も受け,pHを高く矯正した土壌では元の土壌よりもDRCは低く推移した。(3)植物:ハクサイ,キャベツ,ブロッコリーの順でDRCは低く推移した。また,罹病的な品種と抵抗的な品種とでは後者の方がDRCは低くなった。以上のことから,現地農家圃場の正確な土壌評価を行うためには,土壌中の病原菌密度を把握するとともに,その圃場の病原菌(複数の根こぶ),土壌,植物(種類・品種)を用いて,DRCを作成することが必要である。現在根こぶ病の防除剤として広く使われているフルスルファミド粉剤は,休眠胞子の発芽や根毛感染を抑制するものの,土壌中の病原菌密度に対する影響はみられず,同剤の効果は殺菌的な作用ではなく,静菌的な作用によることが示唆された。さらに,残効性が認められるため,同剤の施用により根こぶ病の発生は抑制され,土壌中の病原菌密度が増大することはない反面,積極的な病原菌密度の減少もあまり期待できないことが示唆された。積極的に土壌中の休眠胞子密度を減少させる方法として,おとり植物の利用がある。即ち,おとり植物を前作として栽培し,土壌中の病原菌密度を積極的に低減させて,後作のアブラナ科植物の発病を軽減させることが可能であった。しかし,この発病抑制効果はDRCに依存し,病原菌密度が高くなるにつれて少なくなった。このように根こぶ病を防除する際には,土壌中の病原菌密度を把握し,対象とする圃場のDRCを十分考慮することが必要である。また,おとり植物以外にも病原菌密度低減効果を有する資材を利用するなど各種個別技術を組み合わせ,発病に伴う病原菌密度の増大を抑制しつつ,積極的に病原菌密度を低減させていくことが必要である。
著者
大賀 一郎
出版者
大法輪閣
雑誌
大法輪
巻号頁・発行日
vol.81, no.8, pp.234-242, 2014-08
著者
矢野,宗幹
出版者
東京動物學會
雑誌
動物学雑誌
巻号頁・発行日
vol.24, no.281, 1912-03-25
著者
康永 秀生 井出 博生 今村 知明 大江 和彦
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.40-50, 2006 (Released:2014-07-08)
参考文献数
55
被引用文献数
14

アンケート調査の方法として,従来から郵送調査法・面接調査法などが汎用されている。インターネット調査法の医学研究への適用は,その有用性や妥当性についていまだ評価が確立していない。今回,2005年 4 月現在までに報告された,インターネット・アンケートを利用した邦文医学研究論文36編をレビューした。インターネット調査法を用いた原著論文の絶対数は,近年若干の増加傾向を認めるものの依然として少ない。アレルギー疾患(アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎,蕁麻疹など)など,青壮年層の患者数が多い疾患を対象とした研究が比較的多い。従来法と比較して,インターネット調査法の利点として,(1)調査者・回答者双方の利便性が高い,(2)データ回収が迅速である,点が挙げられる。欠点として,(1)利用者の年齢層が偏っている,(2)モニター登録という有意抽出法が採用されるため,無作為抽出法と比較して標本誤差が発生しうる,点が挙げられる。しかしながら,近年のインターネットの爆発的な普及拡大によって,利用者の年齢層の偏りは解消されていくことが期待される。高齢者層にもアンケート対象が拡大すれば,より多くの疾病について研究が可能となる。インターネット調査法の利点を考慮すれば,今後は社会医学・臨床医学研究における有力なツールのひとつになりうると考えられる。
著者
副田 義也
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.1, pp.5-29, 2004-05-31 (Released:2012-09-24)

This paper discusses the following three matters.1) Welfare sociology is one of the hyphen sociologies, and is based on general sociology or theoretical sociology.2) Welfare sociology is the science of social welfare as social action by interpretation, or the science of understanding social welfare as the product of a total society by analysis.3) In Japan, welfare sociology was established as late as the beginning of the 21century.