著者
西嶋 雅樹
出版者
島根大学教育学部附属教育支援センター
雑誌
島根大学教育臨床総合研究
巻号頁・発行日
no.20, pp.149-157, 2021-08

本研究では思春期がどう終わるかに関する理解を深めるために, 漫画『約束のネバーランド』を素材として考察を行った。物語終盤で描かれる2つの世界の間の渡りは意識と無意識の混濁した状態から意識の優位な状態への移行のメタファとして理解されることが見出された。また物語が終わることに並行して主人公のエマは親, 家族, 双子的存在, そして異能性の喪失を体験しており, ここに思春期の終焉の特徴が見出された。
著者
渡辺 憲司
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.8-16, 2000

「満散利久佐」(明暦二年刊(一六五六)四月刊)に登場する遊女小藤への、<利発者・わつさり者・おほちやく者・ふてき者・いたづら者・無心中者>といった評判記の表現を検証しながら、平凡、類型的な、近世初期遊女の像を描き、それとは対照的な名妓と呼ばれる遊女表現に言及し、西鶴の個性的な遊女理解についてもふれてみたい。
著者
石川 美澄
出版者
観光学術学会事務局(地域・研究アシスト事務所内)
巻号頁・発行日
2012-07-07

本稿の目的は、新聞記事分析を通して、「ゲストハウス」と称される施設や場所の変遷を整理することである。その上で、その1つであるゲストハウスやバックパッカーズなどと呼ばれる比較的低廉な宿泊施設(以下、宿泊型ゲストハウスとし、宿泊施設以外の意味を含む場合はゲストハウスとする)の特性を仮説的に提示する。近年、新聞記事を中心に、宿泊型ゲストハウスの増加が指摘されている。一方、国内の観光研究分野や観光庁が実施する調査では、このような指摘や報告はほとんど確認できない。したがって現時点では、メディアが語る「宿泊型ゲストハウス増加説」を学術的に証明することは困難であると同時に、その増加の社会的背景などについても不明瞭であると言わざるを得ない。しかしながら、低料金で1名から宿泊することができ、泊食分離が実践されている宿泊型ゲストハウスは、宿泊旅行をより身近で気軽・容易なものにする可能性がある。特に、宿泊型ゲストハウスは、旅先での自然・文化資源だけでなく、地元の人びとや他の旅行者との出会いを創出する場として地域に存在しうる点が、今後の観光のあり方を検討する上で示唆に富むと考えられる。なお、本稿の目的を達成することで、今後の宿泊型ゲストハウスを事例とした観光研究の基礎的資料を提示できる。
著者
植木 久行
出版者
弘前大学人文学部
雑誌
人文社会論叢. 人文科学編 (ISSN:13446061)
巻号頁・発行日
no.26, pp.1-24, 2011-08-31

2 0 0 0 OA 神経毒性試験

著者
高橋 宏明 高田 孝二
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.131, no.6, pp.462-467, 2008 (Released:2008-06-13)
参考文献数
8

農薬などの化学物質の安全性評価の分野では,脳神経系の機能,形態,発達への影響を体系的に評価するガイドラインが整備されている.その特徴は,一般毒性試験を1次スクリーニング試験と位置づけ,成獣期ならびに発達期のガイドラインを揃えることによって,脳神経系への影響を段階的に評価することにある.本稿では,神経毒性に関連するガイドラインを紹介し,世界的な標準であるOECDガイドラインに基づいて哺乳動物を対象にした神経毒性試験を解説した.
著者
西村 玲
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.531-552, 2012

明末新仏教の先駆けとなった雲棲〓宏は、生涯にわたって不殺生と放生を実行し、現代まで広く崇敬される。仏教における不殺生の原理は、梵網経を根拠として、インド由来の輪廻説と中国における孝道が一体化したものである。十六世紀末から始まったキリスト教中国布教の中心であったマテオ・リッチは、その教理書『天主実義』で、人間が動物を殺すことは天主から与えられた恩恵であると主張し、仏教の輪廻と孝による不殺生を不合理であると批判した。〓宏は肉食に生理的な拒絶を示して、人と動物の平等を説いた。〓宏にとっては、人も動物も同じ肉であり、動物の肉を食することは人肉食にも等しい行為だった。輪廻にもとづく不殺生の思想は、現世一生の閉塞から無限の過去世と未来世へ、人の現身から六道の多種多様な存在へと、魂をひらく回路である。〓宏の不殺生思想は、明末庶民の生活に即した平易な形で説かれ、その一つである放生は身近な善行として一般化していった。
著者
内藤 徹 Tohru Naito
出版者
同志社大学商学会
雑誌
同志社商学 = Doshisha Shogaku (The Doshisha Business Review) (ISSN:03872858)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.713-731, 2021-09-17

本論文は,2017年に発生した九州北部豪雨で被災し,一部不通となった日田彦山線(添田-夜明)の利便性の低下を金銭評価するものである.推定には日田彦山線の沿線の公示地価のパネルデータをもとに差の差分法(DID)を用いて推定した.推定の結果,不通による利便性の影響は確認されたが,必ずしも大きい影響とは言えないことを示した.

2 0 0 0 OA 高青邱全集

著者
金檀 注
出版者
青木嵩山堂
巻号頁・発行日
vol.七言古詩 巻2, 1897
著者
趙 英玉 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.35-44, 2000
参考文献数
44

満州族の支配下におかれた清時代には、漢民族の被服文化に大きな変容が生じた。本研究では、清時代に書かれた小説『紅楼夢』にみられる被服の記述を抽出し、清代民族文化の出会いによる新しい文化創生の物語を、被服形態と着衣観念の側面から考察した。1)被服形態における特徴 : 外出服には満州族の被服がそのまま導入されているのに対し、在宅服には満州族の被服をそのまま導入する場合と、丈が短い上衣やほっそりとした仕立ての上衣など満州族の被服特質の一部を取り入れた新しい被服が着装される場合とがある。2)着衣観念における特徴 : 漢民族の古代思想は、陰陽観念をその基本に据え、被服においても陰陽の両面から解釈された。たとえば、上衣は「〓」より高貴な存在とみなされ、貴族は「〓」を露出せず、下着としてのみ着用した。しかし、『紅楼夢』には、「〓」を表に着用する場面が数ヶ所に現われる。このことは、清代中期における漢民族の衣生活にあっては、陰陽の観念に基づいた儒教観念の影響が薄らぎ、新しい被服文化が創生されつつあることを意味している。
著者
塩崎 智之 和田 佳郎 伊藤 妙子 山中 敏彰 北原 糺
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.274-280, 2020-08-31 (Released:2020-10-01)
参考文献数
12

There are patients with floating dizziness who do not show abnormalities in current vertigo balance tests. We developed a clinical examination to quantify gravity perception as a first step to test our hypothesis that a gravity perception disturbance is the cause of floating dizziness. The gravity sensitivity can be measured accurately by adding the head tilting condition to the original subjective visual vertical (SVV) test. We named this test the Head Tilt SVV (HT-SVV). The most important measurement item in HT-SVV is head tilt perception gain (HTPG). HT-SVV measurements in 329 healthy subjects yielded an average value and standard deviation of 1.02±0.12 and a reference value of 0.80-1.25 for HTPG, and a difference between the left and right HTPG of 4.7±3.7%, i.e.,<10.0%. We could not detect age-related changes in gravitational sensitivity by the original SVV, but found that HTPG, determined by HT-SVV, increased with age. A significantly higher rate of subjective dizziness was noted in patients who tested positive in the HT-SVV than in those who tested negative among patients who developed floating dizziness after BPPV. We would like to clarify the clinical significance of the test method and establish the concept of gravitational susceptibility disorder, although a number of relevant issues still remain to be clarified.
著者
阿部 孝司 年代 光宏 林 貴宏 木村 春彦
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 = Imaging & Visual Computing The Journal of the Institute of Image Electronics Engineers of Japan (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.701-709, 2007-09-25
参考文献数
21
被引用文献数
1

スポーツ中継で表示されるスコアテロップの内容解析は,放送型スポーツ 中継映像の内容解析に有効であると示唆されるが,近年のスコアテロップは,文字やマーク,その背景まで様々な色や輝度が混在し,輝度値だけに 着目して領域内に存在する多種のオブジェクトを背景と区別することは難しい.また,スコアテロップ内の各オブジェクトの表示内容を認識するには,時間経過に伴うオブジェクトの状態変化を調べる必要がある.本稿では,放送型野球中継映像のスコアテロップ領域を対象に,白黒濃淡画像の輝度値に加えRGB濃度値のヒストグラムを用いて領域内に 存在するオブジェクトの外接矩形を抽出し,試合の内容解析に 必要なキーとなる,アウトカウント,得点,ランナーの有無を示す 領域を次フレームでの同一領域との相関を求めて特定する方法を提案する.四つの野球中継映像に対し実験を行った結果,アウトカウントがマーク 表示されている映像を除き,上記の抽出項目はすべて精度良く抽出された.
著者
川崎 智也 轟 朝幸 小林 聡一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_523-I_532, 2015
被引用文献数
1

首都圏の都市鉄道では,朝ラッシュ時に定常的な混雑が発生している.混雑緩和に対する一つの解決策として,時差通勤をした者に対して,抽選で賞金が当たる抽選型報奨金制度がある.本研究では,東京メトロ東西線利用者を対象として,オーダードロジットモデルを用いて抽選型報奨金制度を導入した場合の鉄道利用者行動モデルを構築し,当選金額および当選金額に対する感度分析を実施した.その結果,当選の期待値が100円の下で当選金額を28.9千円(当選確率0.33%)とした場合,定額型施策よりも時差通勤施策の参加者が増加する可能性が示され,混雑率は197.5%となり,現状の混雑率である199%から1.5%減少することが示された.当選金額を20万円(当選確率0.05%)と高額に設定すると,混雑率は196.9%まで減少し,定額型施策よりも0.6%低下した.
著者
原 武雄
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1287, pp.108-110, 2005-04-11

たこ焼き器の前に立った焼き手が、千枚通しで器用に、テンポよくたこ焼きをひっくり返していく。どのたこ焼き店でも見られる風景だが、その職人芸は何度見てもちょっと楽しい気分にさせてくれるところがある。 たこ焼きチェーン「築地銀だこ」ではさらに、仕上げに大量の油を焼き器全体にかける。