著者
藤坂 実千郎
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
巻号頁・発行日
vol.124, no.9, pp.1256-1261, 2021-09-20 (Released:2021-10-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

補聴器は, われわれ耳鼻咽喉科医が最も慣れ親しんだ, 触れる機会の多い人工聴覚機器である. 難聴者の日常生活の質を向上させるには欠かせないものである. 近年, 認知症の発症リスクに難聴が挙げられたことから, 厚生労働省を中心とした認知症施策推進総合戦略 (新オレンジプラン) にも, 認知症発症の危険因子に難聴が記載された. 従って, われわれ耳鼻咽喉科医が補聴器を中心とした難聴対策にかかわる重要性が増している. そこで本稿は, あらためてわれわれ耳鼻咽喉科医が補聴器の過去, 現在を知り, 難聴対策に十分な役割を果たしていく一助となるように解説を試みた. また先人達が目指したように, 技術革新によってもたらされる, まだ見ぬ未来の補聴器への展望も述べてみたい.
著者
横山 由紀子
出版者
公益財団法人 年金シニアプラン総合研究機構
雑誌
年金研究
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-29, 2018

<p>本稿では、厚生年金からの退出行動の要因およびその変遷について、5年前の状況と比較することで分析を行った。「ねんきん定期便」を利用した長期的な回顧データを利用し、1994~2011年における若年女性を対象とした。本稿で得られた主な知見は以下の通りである。</p><p>第1に、第1子出産により厚生年金から退出する女性が総じて多いものの、近年では継続加入する女性が増加傾向にある。過去5年以内に第1子を出産した女性が継続加入している割合は2004年以前は2割に満たなかったが、その後徐々に上昇し、さらに2009年以降のやや大きな上昇の結果、2011年では約3割が厚生年金に継続加入している。</p><p>第2に、1994~2011年の分析期間において、2000~2006年頃とそれ以外の期間では、厚生年金への継続加入あるいは退出行動の要因が大きく異なる。2000~2006年頃を除く期間において、5年以内に第1子を出産した女性においては収入水準が厚生年金への継続加入の要因となっている傾向がある。また、結婚している女性においては、夫が大卒者の場合には厚生年金から退出しやすい傾向がみられた。逆に、2000~2006年頃にはこうした効果はみられず、むしろ1960年代後半に生まれた世代であるかどうかが大きな要因となっており、こうした世代は他の世代に比べて厚生年金から退出しやすい傾向が確認できた。</p><p>第3に、1990年代後半では高所得者ほど第1子出産後も厚生年金に加入し続けていたが、2000年以降ではほとんどの高所得者が第1子出産後に厚生年金から退出している。一方、2000年代後半では、もともと一定程度の収入があった女性が第1子出産後も厚生年金に加入するような働き方を選択している。</p><p>第4に、新規結婚者の第1子出産率は1996年以降安定的であるが、既婚継続者では出産率に変動がみられた。子どもがいない既婚継続者の第1子出産率は1997年から2003年頃は低下しており、また、すでに子どもがいる既婚継続者では第2子以降の出産率が2002年以降上昇傾向にある。既婚継続者における出産行動が景気の影響を受けた可能性が示唆される。</p><p>第5に、2003年頃までは、すでに子どもがいる厚生年金加入者はその後も継続加入する傾向があったが、2004年以降は厚生年金から退出するケースが増加した。第2子以降を出産する女性の増加およびこうした女性が厚生年金から退出しやすい傾向にあったことが原因だといえる。</p>
著者
倉元 綾子
出版者
一般社団法人 日本家政学会家政学原論部会
雑誌
家政学原論研究 (ISSN:24335312)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.2-13, 2010-08-20 (Released:2017-04-07)
参考文献数
11

The Family Life Education Programs in Taiwan require a minimum of 10 subjects and 20 credits for successful completion, and gender education is a compulsory component of the curriculums. The Gender Equality Education Act 2004, which aims to promote gender education, and the contents of gender education were investigated. The major findings are as follows: 1) "Gender education" in the Family Life Education Programs in Taiwan corresponds to "human sexuality" in the Family Life Education Programs of the National Council on Family Relations (NCFR)of the U.S. 2) Based on the Gender Equality Education Act, gender equality education is provided in Taiwanese schools and is integrated with all areas of learning. It is comprehensive and reformative, and its contents include "development of body and spirit," "self-confidence," "human relations," and "social and cultural contexts." 3) The contents of gender equality education in Taiwan are similar to those stated in the Guidelines for Comprehensive Sexuality Education-Kindergarten through 12th Grade (3^<rd> edition) by the Sexuality Information and Education Council of the United States. In both the above guidelines, the social and cultural contexts are reinforced.
著者
市原 勇一 黒木 淳 尻無濱 芳崇 福島 一矩
出版者
北九州市立大学経済学会
雑誌
北九州市立大学商経論集 (ISSN:13472623)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1・2・3・4合併号, pp.35-47, 2021-03

本稿は,中小企業における管理会計システムの整備度と管理会計活用能力のギャップが財務業績に与える影響を検証した。中小企業327社のデータを分析した結果,管理会計活用能力を超える過剰な管理会計システムをもつ企業ほど売上高経常利益率が低くなることが示された。これらから,優れた管理会計システムはそれだけで業績を向上させるわけではなく,十分な管理会計活用能力を有することではじめて業績が向上することが示唆された。
著者
津田 秀和
出版者
愛知学院大学
雑誌
経営管理研究所紀要 (ISSN:13413821)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.59-78, 2008-12-25

本稿はインターネットというパーソナルメディアを通じた市民および企業関係者の企業倫理感覚の構築過程を分析するための手法の検討と事例への適用を目的とする。メディア効果理論や間メディア性に関する研究を整理し,東芝クレーマ一事件への適用を試みる。東芝クレーマ一事件では,議題設定機能仮説などの新しい効果理論と呼称される分析モデルが適しているとともに,インターネットメディアと既存のマスメディアの相互参照関係を視野におさめる間メディア性の研究が不可欠である。この指摘は他の同様の事件の解釈と共通の部分が多いが,この事件では,インターネットからマスメディアへの影響が大きく,争点の再構成もマスメディアにおいて行われている点で特徴的である。また,インターネットを通じて争点を構成し,それを実際の企業告発につなげるという点では初期の事例であることから,この事件以降の展開とは異なる特徴を持つ。
著者
別司 大典
出版者
金沢大学人間社会学域経済学類社会言語学演習
雑誌
論文集:金沢大学人間社会学域経済学類社会言語学演習 (ISSN:21886350)
巻号頁・発行日
vol.11, no.29, pp.29-46, 2016-03-23

日本では毎年年末に、1年の中で新しく生まれたり流行した言葉から新語・流行語大賞を決定するが、 この新語・流行語大賞を決定する習慣は世界中で存在している。 実際に2015年のイギリスでは、1年を象徴する言菓は絵文字と決定されに2014年のアメリカで黒人差別問題が大きな間題となったことを受け、 それに関係する語が選出された。 このように現代社会を鋭く反映した新語・流行語について深く知ることは、 世界の動きを把握する手がかりとなる。本論文では、 新語・流行語全体の傾向を明らかにするのではなく、 どのような要素を持つ語が新語・流行語となるのかを調査する。 その新しいアプロ ーチとして、 Goog1 e Trendsを用いて新語・流行語を検索にかけ、 得られた傾向によ って分類した。 そして、 各分類がどのような要素から成立しているのかを考察した。
著者
大賀 智也 大八木 八七 野口 雅敏
出版者
The Surface Finishing Society of Japan
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.355-361, 1997-03-01 (Released:2009-10-30)
参考文献数
8

Serious problems arise in the rapid detinning of plain tinplate cans, particularly when the cans contain are tropical fruit with high nitrate concentrations poses.An investigation found that rapid detinning does not occur in presence of high nitrate concentrations, because the tin sulfide film formed on the tinplate surface surpresses detinning.We confirmed that sulfur forming tin sulfide originates from cans contents, i.e. sulfur-containing compounds that determine fruit flavor and taste. Sulfur-containing compounds such as L-cysteine are particularly thermally unstable and decomposed by heat treatment. Tin sulfide film surpresses detinning, and tends to cause iron dissolution reaction, meaning that due care must be exercised.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1327, pp.44-47, 2006-02-06

「閉塞感」が新語・流行語大賞に選出された1996年。東京大学の学生が東京・六本木の雑居ビルの一室で会社を立ち上げた。 その経営者は「ホリエモン」の愛称で親しまれる時代の寵児へと駆け上っていく。会社の株価は急騰し、株高を背景にプロ野球球団やメディアを相手に派手な買収劇を繰り広げる。政界の抵抗勢力への刺客候補として衆院選にも出馬。「俺が日本の未来を変える!」。
著者
中村 邦夫 小林 収
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1050, pp.184-187, 2000-07-17

問 社長就任会見では「ソニーはライバルであり、リーダーであり、先生である」とおっしゃっていました。やはり、一番気になる会社ですか。 答 私は米国時代から、AV(音響・映像)関連の事業部(AVC社)をやって、ソニーさんを目標にしていましたからね。でも最近、「対"ソ"戦争は卒業」と言ったんですよ(笑)。
著者
青見 樹 堤 瑛美子 宇都 雅輝 植野 真臣
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J104-D, no.11, pp.784-795, 2021-11-01

小論文自動採点は,人間評価者に代わって自動採点モデルが小論文の採点を行う自然言語処理におけるタスクの一つである.近年では多くの自動採点モデルが提案されており,それぞれに異なった特徴を有している.本研究では,評価者特性を考慮した項目反応理論を用いて自動採点モデルのモデル平均を行う新たな手法を提案する.具体的には自動採点モデルを一人の評価者とみなして評価者特性を考慮した項目反応モデルを適用することで,それぞれの自動採点モデルの特徴を考慮した統合を行う.実験を通して,提案手法が単体の自動採点モデルや,単純な予測スコアの平均化手法と比べて予測精度を向上させることを示す.更に,提案手法が統合した自動採点モデルの特徴を捉え,安定したスコアの予測を行うことができることを示す.
著者
沖田 一彦 田端 幸枝 越智 淳子 吉田 彰
出版者
県立広島大学
雑誌
広島県立保健福祉大学誌人間と科学 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.87-95, 2004-03

学生が, 専門科目に関してレポートや卒業論文を作成するときには, さまざまな学術資料を検索する。その場合, 和雑誌に掲載された論文の検索には医学中央雑誌 Web のデータベース利用が主となっているが, 本学ではその利用頻度の高さと契約口数の少なさから, 利用が集中した場合には検索が行えないこともある。また, 卒後の教育を考えたとき, 医学中央雑誌 Web のデータベース利用は限られた施設でのみ可能である。これらのことから, 学生の在学時および卒後の学習や研究を支えるため, 試験的に理学療法及び作業療法に関わる文献検索システムの構築を試みた。本領域の学術・商業雑誌計6誌の書誌情報をデータベース化し, 学内LANから Web ブラウザにより, サーバ上のデータベースにアクセスして文献検索ができるようにした。検索条件には学術論文の場合はキーワード, 見出し, 表題, 著者, 発行年, 巻, 号を用いた。本システムは, 現在は学内LANからのアクセスに限られているが学外からの利用もできるよう構築されているため, 今後は公開利用の可能性を模索したい。
著者
橋爪 烈
出版者
一般社団法人 日本オリエント学会
雑誌
オリエント (ISSN:00305219)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.96-119, 2011-09-30 (Released:2015-02-27)
参考文献数
32

‘Aḍud al-Dawla (d. 372H/983) was the most powerful ruler of the Buwayhid Dynasty. This paper aims to examine his view of his royal lineage as expressed in Kitāb al-Tājī, which was written by Abū Isḥāq Ibrāhīm al-Ṣābi’ (d. 384H/ 994) at the express command of ‘Aḍud al-Dawla. It also aims to understand the book within the wider social and political context of the period when Buwayhid Dynasty was at its zenith. Section 1 provides an outline of the content of Kitāb al-Tājī and its background. The book was written when ‘Aḍud al-Dawla was just about to send a military expedition in 369H/980 against the Ziyārid and Sāmānid dynasties in the eastern regions of the ‘Abbāsid Caliphate. Section 2 establishes the noble lineage of the Daylam and the Jīl people by reconstructing the contents of Kitāb al-Tājī, which is now available only in an excerpt version. I compare the excerpt with some later sources that quote directly from the original text of Kitāb al-Tājī. These sources suggest that not only the Daylam but also the Jīl were connected with the Buwayhid Dynasty through a marriage alliance. Section 3 further analyses how the writing of Kitāb al-Tājī was affected by the ongoing conflict between the Buwayhid and the Ziyārid. When ‘Aḍud al-Dawla ordered Abū Isḥāq to write Kitāb al-Tājī, his underlying agenda was to present his lineage in order to justify his reign vis-à-vis the Ziyārid and their allies. In conclusion: (1) Kitāb al-Tājī reflected ‘Aḍud al-Dawla’s view of his own royal lineage, and, crucially, it was written under his supervision. (2) He portrayed himself as the converging point of the two noble lineages of the Daylam and the Jīl. (3) His purpose was to justify to his own army and to the Daylamite and Jīlite principalities the legitimacy of his reign just before lauching his military expedition against the Ziyārid of the Jīl.