著者
鵜子 修司 高井 次郎
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.120-135, 2018 (Released:2018-12-27)

Ruch, Kohler, & Van Thriel(1996)の作成した状態・特性快活さ尺度(State-Trait-Cheerfulness-Inventory: STCI) は、ユーモア・センスに関連する気質的基盤として快活さ、真剣さ、不機嫌さの3つを、個人の状態ないし特性として測定する尺度である。本研究ではSTCIの特性版(STCI-T)について、各項目の日本語訳を新たに作成し、信頼性・妥当性を検証した。大学生263名を対象にした調査の結果、オリジナルのSTCI-Tを構成する下位特性(facet)モデルは、各下位特性における信頼性の低さから維持されなかった。その代わり、本研究では下位尺度への修正済I-T相関に基づく項目選定から、暫定的なSTCI-T 49を構成した。このときSTCI-Tにおける、3つの下位尺度の信頼性は.73から.89であり何れも高かった。また各下位尺度とBig Five、及びwell-beingの指標の相関は、先行研究の結果を再現した。以上から、STCI-T 49はオリジナルのSTCI-Tに類似した概念を測定する尺度として、ある程度の信頼性・妥当性を有していると結論付けられた。最後に、本研究でオリジナルのSTCI-Tにおける下位特性・因子構造が再現されなかった結果の説明として、考えられる可能性について検討し、今後の課題についてまとめた。
著者
小谷 章夫 朝井 宣美 中村 安久 大塚 正章 密山 幸男 尾上 孝雄
雑誌
情報処理学会研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.115(2004-HI-111), pp.63-70, 2004-11-12

近年、携帯電話などのモバイル端末が文字情報流通の主役となりつつあり、モバイル端末の小さな筐体に組込まれた低解像度表示デバイス上に限られたドット数で可読性の高い文字を表現することが求められている。そのためには個々の表示デバイスにあわせた専用フォントの開発が不可欠であるが、主観に頼らざるを得ないフォントの開発では,多大な工数がかかることが問題となっている。本研究では、フォントの読みやすさを決定する要因として最も重要な「文字重心」に注目し、文字輪郭を用いた重心位置評価手法を提案する。これにより、主観評価による文字重心位置を計算によって特定することができ、フォント開発工数の大幅な短縮が可能になる。
著者
秋風 千惠
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.175-187, 2018 (Released:2019-05-11)
参考文献数
19

本稿では軽度障害当事者の語りから、彼/彼女らのディスアビリティ経験をみていくこととする。まず軽度障害者が浮上してきた経緯を述べ、その背景となったイギリス社会モデル批判を検討し、アメリカ社会モデルが妥当であると結論する。これまで社会モデルへの批判は主にインペアメントの扱いについての批判であったが、星加良司はディスアビリティについて再検討し、障害者が蒙る不利益を集合としてみる“不利益の集中”という概念を持ち込んだ。本稿では星加の不利益理論を補助線として、軽度障害者の語りを検討する。『社会的価値』『個体的条件』『利用可能な社会資源』『個人的働きかけ』といった諸要素を考慮に入れながら、主に性別役割分業に照準したディスアビリティ経験を分析してみる。

2 0 0 0 OA 職員録

出版者
印刷局
巻号頁・発行日
vol.明治28年(甲), 1912

2 0 0 0 OA 根岸家諸記録

巻号頁・発行日
vol.[1], 1000
著者
木所 昭夫
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.302-312, 2001-12-25
参考文献数
7
被引用文献数
2

わが国の救急医療の歴史は1931年日本赤十字社大阪支部で救急業務を開始したことに始まる.そして1933年ごろから大都市圏の警察組織のなかで救急業務が行われるようになった.1948年消防組織法が制定され,以降,救急業務は自治省(現在総務省)消防庁の指揮下で行われている.厚生省は1964年の救急医療機関告示制度を発足させ救急医療機関の整備を行った.1977年には全国の医療機関を機能別に初期・一次・三次救急医療機関に分類し,体系化した医療体制を発足させた.2000年4月現在,救急病院として4,315施設,救急診療所として783施設の合計5,098施設が救急医療施設として登録されており,三次救命救急センターは全国に157施設が設置されている.2000年4月現在,全国市町村の98%の市町村で救急業務が行われており,全国民の99.8%がカバーされており,昨年の統計では全国民の33人に1人が救急隊により搬送されていることになる.しかし,心肺停止状態の患者の救命率は欧米に比べ低く,米国のパラメディックに習って日本でも1991年から救命救急士制度が発足し,救命救急士は心肺停止状態の患者に対して,食道内挿管による気道確保・半自動式除細動器を用いた除細動・静脈路確保のための輸液を行うことが可能となった.しかし,救命率は当初考えられたほど上昇せず,そのためBystanderによる救命手当ての実施とメディカルコントロールの重要性が指摘されている.大学レベルでの救急医療は1967年大阪大学医学部附属病院に特殊救急部が創設されたのが始まりである.私立大学では1974年,川崎医科大学に救急部が1977年日本医科大学に救命救急センターが開設された.<救急医学講座>は1977年川崎医科大学が,1978年日本医科大学が,1986年大阪大学に開設された.以降2001年4月現在,43国立大学に22救急医学講座・20救急部,8公立大学中,3救急医学講座・4救急部・救命救急センター,29私立大学中,18救急医学講座・15救急部・救命救急センターが設置されている.救急医学に関係する学会としては1973年に創立された『日本救急医学会』,1998年に設立された『日本臨床救急医学会』を中心として,日本外傷学会・日本熱傷学会・日本労災学会・日本小児救急医学会など数多くの学会が組織されている.今後,<救急医療>では,小児科救急・精神科救急・外国人救急・ホームレス救急など解決しなければならない問題が山積しており,周知を集め解決を図らなければならないと考える.
著者
堀野 雅子
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 = Japanese journal of oriental medicine (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.27-31, 2010-01-20
参考文献数
10

リベド血管炎は,日常診療上対応に苦慮する皮膚疾患のひとつである。リベド血管炎と診断され,難治性の下肢の多発性潰瘍が,漢方治療によって奏効した一例を経験した。症例は23歳の女性で,X‐2年春より打撲傷のような皮疹が出現し,他病院にてリベド血管炎という診断を受けた。X年4月より両下肢に有痛性潰瘍が多発しはじめ,西洋医学的標準治療に抵抗した。X年5月6日より当院漢方治療を開始,約4カ月で有痛性潰瘍は消失した。薬剤は当帰四逆加呉茱萸生姜湯を主に,加工附子末,排膿湯,千金内托散,伯州散,当帰芍薬散を使用した。リベド症状は残っており,完治には長期治療を有すると思われるが,激痛を伴う潰瘍から開放されて,日常生活は正常に戻った。
著者
柴山 太
出版者
同志社大学
雑誌
同志社アメリカ研究 (ISSN:04200918)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.37-78, 2001-03

アメリカ研究所セミナー, Seminarアメリカ研究所は、2000年6月30日に朝鮮戦争勃発前後における日米関係をテーマとしたセミナーを開催した。ここに掲載されている2本の論文は、セミナーの発表に使用したものである。博遠館211番教室にて15時に始まった同セミナーは、前半約40分間は柴山太(愛知学院大学助教授)が発表し、後半約40分間はアメリカ研究所助教授の井口治夫が発表した。質疑応答は15分程度行われた。1950年から1952年は、日米の政治経済関係において大きな転換期であるが、両者が発表した論文は、戦後日米関係史の分野で研究されていない内容が多分に含まれている。柴山論文は、日本の再軍備を英米がどのように据え直していったのかを検証し、井口論文は、財界人鮎川義介の活動に焦点をあてながら日米における日本の電源開発構想を検証した。本来ならば2人の講演を2回に分ける方法があったかもしれないが、2人のスケジュール上の都合と、6月30日が朝鮮戦争勃発(1950年6月25日)から50年過ぎた直後にあたることから2人の同日講演を一挙に行った次第である。
著者
小山 佳彦 宇田 明
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.211-217, 1994
被引用文献数
4 4

母の日の数日前に高品質のカーネーションを出荷するために, つぼみ段階で採花した品種'コーラル'の貯蔵性, STS処理, 開花室, 市販開花液について検討した.<BR>1.品種'コーラル'の貯蔵限界は, 開花所要日数を考慮すると, 12週間であった.<BR>2.5月上旬の温室内平均温度は約20°Cで, 1°Cで4週間貯蔵したつぼみ切り切り花の開花環境条件に適しており, 切り花の花色は自然開花のものに近くなった.<BR>3.貯蔵後のSTS処理 (1mM, 2時間) は, 開花後の品質保持期間を向上させた.<BR>4.貯蔵後のSTSの処理と開花室としての温室および市販開花液の利用により, 高需要期である母の日の数日前に高品質の切り花が得られた.
著者
Takeshi SUGIMOTO Tomoyuki SHIBATA Masako YOSHIKAWA Keiji TAKEMURA
出版者
Japan Association of Mineralogical Sciences
雑誌
Journal of Mineralogical and Petrological Sciences (ISSN:13456296)
巻号頁・発行日
vol.101, no.5, pp.270-275, 2006 (Released:2006-10-14)
参考文献数
29
被引用文献数
16 20

We have characterized the Sr-Nd-Pb isotopes and major and trace element compositions of 10 Quaternary volcanic rocks from the Yufu and Tsurumi volcanoes in northeast Kyushu, Japan. The enriched incompatible elements, negative Nb, and positive Pb and Sr anomalies are generally interpreted to be from island arc affinities of the lavas. However, the LREE/HREE ratio of the lavas (La/Yb = 8.5 ± 1.3) is greater than that from the island arc intermediate volcanics from northeast Japan (La/Yb = 3.8 ± 0.6), suggesting a different origin. One dacite sample had a Sr/Y ratio > 40, and the SiO2, Al2O3, MgO, Y, Yb, Sr, and 87Sr/86Sr compositions fell within the range of typical adakites. Other lavas were classified as normal island arc-type magmas. These results suggest that a partial melting of the subducting Philippine Sea Plate played a role in the genesis of the Yufu-Tsurumi volcanic rocks. The Sr, Nd, and Pb isotopic compositions show evidence of mixing between melts, derived from oceanic basaltic crust and subducted terrigenous sediments for the adakite magma, whereas another source is required to explain the enrichment in Sr-Nd isotopes and depletion in Pb isotopes of the island arc-type magma. Although the island arc-type magma appears to have a different source, a mixing of the adakite magma with this magma is apparent from our observations of the trace elements and isotopes.
著者
福浦 厚子
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.116-130, 2017 (Released:2018-06-13)
参考文献数
36

本研究の目的は、軍隊と社会との関係についてのこれまでの研究を概観したうえで、個別的日常的な民軍関係に着目し、社会学や文化人類学での成果を紹介し、近年の研究の特徴をみていく。そのうえで、日常に埋め込まれた軍隊と社会や個人との関係性を文化人類学的な視点からみることで、軍隊研究に新たな議論の局面を示したい。その一つの例として、自衛隊を取り上げ、これまで行われてきた自衛隊研究を、1:政軍関係その1、自衛隊を取り巻く政治状況の視点から検討する研究、2:政軍関係その2:医療や災害・メンタルヘルス対策として自衛隊でどんな対処が可能かについて検討する研究、3:ノンフィクション・ルポ、自衛隊員の視点に近い立場からの提言や報告、4:民軍関係の4つに大別し、そのなかの民軍関係について概観する。自衛隊の普通化、ソフト路線に注目し、その例として自衛官の婚活に着目し、雑誌MAMORや実際の自衛隊婚活のなかで語られる自衛官像や希望する交際相手や配偶者像がどのように表象されているのか検討する。その結果、従来の軍人妻研究にみられるダブルの役割期待が婚活にも存在するにも関わらず、言及されないままになっていることが明らかになった。
著者
鶴田 猛 富崎 崇 酒向 俊治 太田 清人 田上 裕記 南谷 さつき 杉浦 弘通 江西 浩一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.E4P3193, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】我々は、日常生活における活動場面において、その活動目的や趣味、嗜好に合わせ履物を選択し使用している。仕事で使う安全靴やスポーツ活動で使用する運動靴、外見の美しさを追求するパンプスなど、履物の種類は多種多様である。様々な活動に必要な姿勢変化や動作が安定して行われるためには、足底と床とが十分に接し、足部にて荷重を適切に受け止める必要がある。歩行による、骨・関節、軟部組織など足部の機能変化は、支持基底面や足部支持性に影響を及ぼし、安定した立位や歩行などの能力改善をもたらすものと考える。これまで、履物と歩行との関連に関する研究は多数報告されているが、足部機能等の評価法の一つである「足底圧」との関連を報告した例は少ない。本研究は、歩行時における履物の違いによる重心の軌跡の変化を捉えることにより、履物が足部機能に与える影響を明らかにすることを目的とする。【方法】対象は健康な若年成人女性6名(年齢18~32歳)とし、使用した履物は、一般靴及びパンプス、サイズはすべて23.5cmとした。歩行にはトレッドミルを用い、速度4km/h、勾配3%に設定し、裸足、一般靴、パンプスを着用し、1分間の慣らし歩行の後、30秒間(各靴3回測定)の足圧測定を行った。足圧測定には、足圧分布測定システム・F―スキャン(ニッタ株式会社製)を使用し、裸足、スニーカー、パンプス着用時の重心(圧力中心)の移動軌跡長を比較検証した。実験より得られた足圧分布図において、重心点の開始位置(始点・踵部)及び終了位置(終点・踏み付け部)を算出し、(1)始点(2)終点(3)重心の長さの3項目について、それぞれの全足長に対する割合を求め、裸足、一般靴、パンプスにおけるそれぞれの値を対応のあるt検定にて比較検討した。【説明と同意】被験者には、本研究の趣旨、内容、個人情報保護や潜在するリスクなどを書面にて十分に説明し、同意を得て実験を行った。【結果】始点において、裸足は一般靴及びパンプスとの比較で有意に値が小さく、パンプスは一般靴よりも有意に大きな値が認められた。終点において、裸足はパンプスとの比較で有意に小さな値が、パンプスは一般靴よりも有意に大きな値が認められた。裸足と一般靴との間に有意差は認められなかった。重心の長さにおいて、裸足は一般靴及びパンプスとの比較で有意に大きな値が認められた。一般靴とパンプスとの間に有意差は認められなかった。 始点は、裸足、一般靴、パンプスの順で裸足が最後方(踵部)に最も近く、終点は、一般靴、裸足、パンプスの順でパンプスが最後方(踵部)から最も遠く、重心の長さは、パンプス、一般靴、裸足の順でパンプスが最も短かった。【考察】裸足歩行では、一般靴及びパンプスを着用した歩行に比べて重心の長さが顕著に長く、始点が最も後方に位置していることから、踵部でしっかりと荷重を受けた後、踏み付け部に重心が至るまで、足底全体を使って歩行していることが分かった。また、足圧分布図の重心軌跡を見てみると、重心線の重なりが少なく、履物を着用した歩行の重心軌跡に比べて、足部内外側へのばらつきが大きいことが見られたことから、履物を着用することにより、足関節及び足部関節の運動が制限され、結果的に重心の移動範囲が限定される傾向があることが示唆された。 パンプスを着用した歩行では、始点・終点ともに最も前方に位置していることから、本来、踵部で受けるべき荷重の一部が前足部に分散し、前足部における荷重ストレスが増強していることが推測される。更に、踵離地における荷重が踏み付け部前方もしくは足趾においてなされている傾向があり、蹴り出しに必要な足趾の運動が制限されるなど、足部が正常に機能していない可能性がある。また、重心の軌跡が最も短いことから、足部の限局した部位を使用した歩行であることが示唆された。このような足部の偏った動きが、将来足部病変をもたらす可能性につながると思われる。【理学療法学研究としての意義】我々は、ライフスタイルや職業の違いにより、様々な履物を着用して活動しているが、外反母趾や扁平足、足部の痛みや異常を訴えるケースは非常に多い。歩行時における履物の違いが足部に与える影響を理学療法学的に検証することで、より安全で機能的な履物の開発の一翼を担うことができ、国民の健康増進に寄与できるものと考える。