- 著者
-
鳥山 平三
- 出版者
- 大阪樟蔭女子大学
- 雑誌
- 大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
- 巻号頁・発行日
- vol.8, pp.125-142, 2009-01-31
我が国の臨床心理学界の第一人者で,長く斯界(しかい)の先頭に立って導いて来られた河合隼雄先生が亡くなった。先生は20 世紀最後の「老賢者」の一人と言ってもよい。筆者は,先生に特に近い存在ではなかったが,それでも40 年に及ぶ浅からぬ交流があった。その出会いから,折々のエピソードを追想することにより,河合先生を偲ぶよすがとしたく思う。筆者の個人的な臨床心理学研鑽の経験の織りなす,河合先生の周囲の人との交流の中に,河合先生を慕う女性と男性のさまざまな人間模様が興味深く観察された。そこで,河合先生もよく触れておられたユング心理学の「元型」の中でも,現代における「老賢者」の失墜(しっつい),そして,否定的な意味での「太母」の籠絡(ろうらく)について,見解を述べたく思う。時代は「老賢者」の英知から「太母」の呪縛へと移り行く現代である。