著者
岡田 敬司 笹森 建英
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.29-46, 1994-10

土笛としてここで検討するのは,縄文時代後期から晩期のものとして出土したものである。筆者が調査することができた数点のものについて概観し,細部に亙っての検討は青森市細越の土笛と,北海道の向有珠の土笛を中心にして行った。形状を考察し,楽器と仮定し,実際に奏してその昔高・音色から,その仮定が妥当であるか検討した。すべてが中空・2孔であり音を作り得,その有休構造は意図的である。楽器としての証左となる類似の楽器と比較し,現に楽器として用いられているアフリカ等の土笛との形態上の類似性から,楽器であった可能性が高いことを実証した。実際に粘土を用い製作を試み,成形の方法を探り,模様を考察し,製作過程を通して膚で感じた縄文時代の製作者の心理に迫りつつ,造形として・音響として,美術・音楽の観点から解釈を試みたものである。
著者
真部 真里子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.21-29, 2006-01-15
被引用文献数
2

We examined the correlation between the odour desirability and the overall desirability by a sensory evaluation of four kinds of soybean paste (miso), differing in the food material and/or fermentation period. Compared with the three other kinds of miso, soy miso was particularly disliked for both its odour and overall attributes. The results of the sensory evaluation also suggested that familiarity with the food contributed to its overall desirability. Most subjects seemed to be unfamiliar with soy miso and barley miso, although barley miso was acceptable as well as the two kinds of rice miso. The aromas of these four kinds of miso were then investigated by headspace solid-phase microextraction (HS-SPME) and gas chromatographic-olfactometric (GC-O) analysis. The results showed that soy miso had a characteristic odour which was undesirable and resulted in a low evaluation. The results of this survey of miso for food preference suggest that an unpleasant odour induced an overall dislike for it.
著者
巌佐 庸
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.169-177, 2015

生態学における数理モデルには、多数の変数を含み多様なプロセスを表現する現実的なモデルと、本質を捉えようとして少数の変数だけを追跡する単純なモデルとがある。モデルの対象となっているシステムでは、個体の間に、種だけでなく年齢、性、場所、社会的地位、体調などさまざまな違いがあり、詳細なモデルといっても、それらのいくつかを表現し、他の違いを無視して束ねることではじめて数理モデルとして成り立つ。本稿では、多数の変数を持つ複雑モデルと、少数の変数しか持たない単純モデルがあるときに、それらの間に矛盾が無いための条件について説明した。単純モデルの少数の変数は、複雑モデルの多数の変数から計算できるとした。単純モデルの変数の将来の変化について、複雑モデルにより計算した値から計算する正しい値と単純モデルを用いて計算した値とが、すべての状況で一致する場合には、完全アグリゲーションが成立するという。両者が力学系(非線形の微分方程式システム)で与えられる場合について、必要十分条件を導いた。例として、(1)複数の競争種を束ねた場合、(2)複数の生息地をまとめた場合、(3)齢構成を単純化した場合、(4)コホートの個体数と個体重を束ねる場合、(5)捕食者被食者系で両者の比率のみに注目する場合、などを例にとり説明した。完全アグリゲーション条件は厳しすぎて多くの場合に成り立たないが、どのような状況でモデルの単純化が誤差をもたらすかについての洞察が得られた。次に、単純モデルによる予測の誤差を最小にする最良アグリゲーションを議論した。モデルを短期的予測に使う場合と長期予測に使う場合で最良の単純モデルが異なることがわかった。
著者
久保田貴大
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告情報システムと社会環境(IS)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.1, pp.1-3, 2014-03-10

選挙における投票を電子化することには以前から関心がもたれており,実際に,地方選に電子投票機が用いられたこともあった.2013 年のネット選挙解禁とも相まってインターネットでの投票にも関心が高まっている.本研究では,日本におけるインターネット投票の実現の可能性や,その制度の導入までの課題について,安全性,コスト,法制度の三つの観点から調査・検討した.特に,JCJ-Civitas 投票プロトコルを基にした,「攻撃者が投票者と物理的に同じ場所にいて投票者の端末を監視する」 という攻撃に対処するようなプロトコルを提案する.
著者
岡田 大助 オカダ ダイスケ Okada Daisuke
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.373-380, 2013-03

ICTが我々の生活の隅々にまで深く影響を与えているにもかかわらず,政治過程とくに選挙過程においてはあまり活発ではない。デメリットが大きいと考えているからであろう。そこで,本稿ではその限界と可能性について,憲法学の観点から考察を行う。憲法上の選挙原則を考え,そのうえで,選挙過程におけるICTの類型としての,ネット選挙,電子投票,そしてインターネット投票を考察し,問題点を明らかにする。
著者
田中 秀俊
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.76, pp.9-12, 1999-09-21

風速分布を単純な混合モデルである対角共分散混合ガウシアンモデルで分類し、その分類の変遷を隠れマルコフモデルで解析して風速の区間推定を試みた。気象庁の提供している高層気象観測データから、1993年∼1997年の鹿児島上空を選んで実験したところ、地表から高度20kmまでにわたっておよそ70%の確率で風速が20m/s以下であるような2週間が予想可能という結果を得た。Wind profiles are classified by mixture Gaussian model and the transition of the classes are analyzed by hidden Markov model so that wind speed could be predicted. Wind profile data from 1993 to 1997 at Kagoshima which are provided by Japan Meteorological Agency indicate that we can estimate consecutive 2 weeks when every wind speed checkpoint from the ground through 20km height are less than 20m/s in about 70% probability.
著者
貝谷 壽宣 難波 益之 加藤 一夫 森 秀樹
出版者
日本組織細胞化学会
雑誌
日本組織細胞化学会総会プログラムおよび抄録集
巻号頁・発行日
no.19, 1978-11-01

ヒト脳の黒質と青斑核の神経細胞には、生後4〜5年からメラニン色素(M)がみられ、加令と共に増加する。本研究ではこれらカテコールアミン産生ノイロンの活動状況を知る目的で、上記部位のM量を定量した。対象は12-82歳の明らかな神経精神疾患を認めなかった40剖検脳を用いた。ホルマリン固定後中脳および橋の中央部を水平断し、パラフィン包埋標本を作製し、各ブロック毎に10μm切片を2枚作り、1枚はニツスル染色を施し細胞がクループの判定に、他の1枚は無染色のまま封入した。無染色標本の黒質と青斑核ではMのみが茶褐色顆粒として検鏡される。この顆粒を走査型顕微濃度計(Nikon Vickers M85)にて定性すると550nm付近にて最大吸光度を示したので、この波長を使用し、バックグランドセット法でMを定量した。1回のスキャンニングに10〜25個の神経細胞が測定できるようシャドウイングした。スキャンニング時間5秒で3回測定し、それを和し、density値をarea値で除した値を各個体間の比較に使用した。対象脳では黒質でも青斑核においてもMは加令とともに増加した。(r=0.72、P<0.001)。
著者
川野 克典
出版者
日本原価計算研究学会
雑誌
原価計算研究 (ISSN:13496530)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.11-21, 2010-03

2009年度から工事契約会計基準等が適用された。これらの基準等の適用が契機となって,受注ソフトウェア制作事業において,顧客重視,原価企画の活用,将来予測重視,コストドライバーの管理スコアカードやWBSの活用等の特徴を持つ新しい管理会計が導入されつつある。一方で国際会計基準の収益認識基準の変更が新しい管理会計の定着化,普及に水を注す可能性もある。