著者
伴 信太郎 西城 卓也
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は慢性疲労症候群(以下CFS)患者に対して、『漢方治療と認知行動療法を融合した集学的な治療戦略を確立』するための研究である。漢方治療に関しては、CFS患者29人を対象に、「証」の推移と治療効果を検討した。初診時の主証は、虚証群13人、実証群16人で、虚証群の罹病期間は、実証群に比して長い傾向を示した。治療開始後3ヶ月間に、証の変化により処方を変更した者は、虚証群62%、実証群56%で、両群間に有意差はなかった。治療6ヶ月後のPSスコアは、両群とも初診時に比して有意に低い値を呈したが、両群間に有意差はなかった。しかし、治療6ヶ月後のPSスコアが治療目標の2以下になった者の割合は実証群で高い傾向を示した。治療の有効性は、虚証群77%、実証群75%で両群間に差は認めなかった。CFS患者の証は多様であり、弁証論治に基づいた漢方治療が有用であること、また、経過中に証が変化する場合も多く随証応変に基づく治療が必要であること、そして、初診時に実証を呈する者の方が、比較的短期間での漢方治療効果が期待できることが示唆された。「慢性疲労症候群のための認知行動療法」に関してはCFS患者13名(中断患者3名含む)を対象として検討した。結果、CFS患者は、「認知的特徴」、「行動的特徴」、「認知・行動意識化の程度」という3次元の軸によってタイプ分けできる可能性が示唆された。また、タイプに応じた認知行動療法は、CFS症状維持のメカニズムに対する患者の理解を促し統制感を高めていることも示された。これらの結果は、患者のタイプに応じた技法を選択適用するといった認知行動療法の弾力的実践と個別的適応の重要性を示唆していると考えられた。
著者
西城 卓也 伴 信太郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.7, pp.1987-1993, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
13
被引用文献数
1

良き教育を提供する意義に疑いの余地はないが,その具体的改善策の理解は難しい.それらを裏付けする教育理論のうち,内科指導医に役立つと思われるものを抽出し概観した.成人である学習者の特性を理解できる"成人学習理論",学習者を動機付ける"TARGETモデル",経験が学習の基盤であることを示す"経験的学習モデル",人は如何にしてエキスパートに成長するかを説明する"熟達化理論",身の丈に合う練習の重要性を説く"Vygotskyの発達理論",人の知識がどのように構築されるかを示す"構成主義",競争的学習を脱却し,より成人らしい学習の在り方を提示する"協同的学習",先輩やロールモデルが存在する環境で学ぶことの重要性を説く"状況的学習",今後目指すべき新たな専門家像である"反省的実践家"について,これらのエッセンスを要約した.今後このような理論に基づき,内科臨床教育がより活発に推進されることが期待される.
著者
伴 信太郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.12, pp.2673-2680, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
9
被引用文献数
1

日本の医師国家試験は,認知領域の試験としては信頼性,透明性,公平性,効率性の高い試験となっているが,技能,態度を測定できておらず,妥当性に欠ける.又法的に見ても医師法第九条を満足していない.国家試験は卒前教育にも強い影響を与えており,早急に臨床実習に積極的に取り組んだ学生ほど合格し易くなるような設計をすべきである.また,改革のためにはその成果を検証しながら進めることが不可欠であり,常設の国家試験センターの設置を構想すべきである.
著者
神谷 信秀 橋本 政宏 鈴木 富雄 伴 信太郎 中村 亮一 渡辺 宏久 祖父江 元
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.11, pp.2838-2842, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10

抗NMDAR脳炎は卵巣奇形腫に随伴する辺縁系脳炎であり,若年女性に好発する.症例は16歳,女性.抗NMDAR脳炎の経過中に,家族などのかけがえのない人物が瓜二つの別の人物に入れ替わっているという妄想である,カプグラ症候群を併発した.抗NMDAR脳炎にカプグラ症候群が併発した報告は本例が初めてである.一方,抗NMDAR脳炎において海馬や扁桃体にIgGが沈着しているという報告があり,同部位はカプグラ症候群の責任病巣として知られている.今後,抗NMDAR脳炎患者が経過中に妄想や精神症状を示した場合には,病的言動に対してカプグラ症候群を念頭に置いた評価が必要である.
著者
高橋 徳幸 伴 信太郎
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

医師の共感的態度醸成の必要性が叫ばれるなかで、医師の共感的態度は経年的に低下することが定説となっている。しかしこれは「患者の視点からの量的検証」を経たものではない。よって本研究は、我々が開発した患者の視点から医師の共感を評価する質問紙票であるCARE Measure 日本語版(Aomatsu et.al, 2014)を踏まえて作成された、医師の診療の質を患者の視点から評価する尺度C Q I - 2 の信頼性・妥当性検証を行うことを目的としている。それに先立ち、CARE Measure日本語版の評価者間信頼性に関して明らかにされていなかったことから、本研究で検討を行っている。その結果、評価者間信頼性を検討するために40枚程度の質問紙票を回収する必要があることが明らかになった。これは過去に他国で検討された数値と比較しても妥当な値であり、日本語版CARE Measureの汎用性を高める意義がある。一方、本研究では医師の共感的態度の経年的低下という定説に対して、質的探索によるアプローチも行っている。すなわち、既に我々は医学生・初期研修医への質的探索により「共感の量的減少ではなく質的変化」の可能性を示した(Aomatsu et.al, 2013)。これを踏まえて、本研究では後期研修医・指導医についても共感に関する認知構造を質的に探索し、共感の認知構造に関する新たな経年的変化モデルを構築することを目的としている。これまでに、患者との信頼関係構築のためのコミュニケーションスキルとして共感を特に重視する総合診療科に焦点を当て、そこで研修をする後期研修医(専攻医)に対して、2017年度は質的探索を行った。その結果、専攻医は臨床経験によって認知的共感を獲得し、それを主に用いながらも、専攻医自身の出産といった非職業的経験によって感情的共感をも行っていることが明らかになった。
著者
伴 信太郎 伴 信太郎
出版者
Japan Society for Medical Education
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.9-13, 1998-02-25
参考文献数
5
被引用文献数
15

カナダ医学協議会 (Medical Council of Canada) は, 1989年から国家試験に臨床技能評価を取り入れる検討を始め, パイロット試験を経て, 1992年からOSCEを国家試験に正式に導入した.このOSCEは, 20ステーションからなり, 各ステーションは10分, いずれも標準模擬患者を相手にした課題である.評価者は医師で, 合格基準は基準準拠方式である.1993~1995年のまとめでは, 不合格率は9~17%で, 十分な信頼性が得られた.現在は2段階試験の方式と妥当性の検討が行われている.カナダのこの試験は, 国試レベルでもOSCEを用いて臨床技能を評価することが可能であるということを示している.
著者
西園 昌久 高橋 流里子 対馬 節子 松永 智子 福屋 靖子 土屋 滋 大貫 稔 高橋 美智 浅野 ふみぢ 小松崎 房枝 鈴木 小津江 平山 清武 中田 福市 鈴木 信 壁島 あや子 名嘉 幸一 鵜飼 照喜 福永 康継 浪川 昭子 高田 みつ子 岩渕 勉 森脇 浩一 加藤 謙二 早川 邦弘 森岡 信行 津田 司 平野 寛 渡辺 洋一郎 伴 信太郎 木戸 友幸 木下 清二 山田 寛保 福原 俊一 北井 暁子 小泉 俊三 今中 孝信 柏原 貞夫 渡辺 晃 俣野 一郎 村上 穆 柴崎 信吾 加畑 治 西崎 統 大宮 彬男 岩崎 徹也 奥宮 暁子 鈴木 妙 貝森 則子 大橋 ミツ 川井 浩 石川 友衛 加世田 正和 宮澤 多恵子 古賀 知行 西川 眞八 桜井 勇 三宅 史郎 北野 周作 竹洞 勝 北郷 朝衛 橋本 信也 斉藤 宣彦 石田 清 畑尾 正彦 平川 顕名 山本 浩司 庄村 東洋 島田 恒治 前川 喜平 久保 浩一 鈴木 勝 今中 雄一 木内 貴弘 朝倉 由加利 荻原 典和 若松 弘之 石崎 達郎 後藤 敏 田中 智之 小林 泰一郎 宮下 政子 飯田 年保 奥山 尚 中川 米造 永田 勝太郎 池見 酉次郎 村山 良介 河野 友信 G. S. Wagner 伊藤 幸郎 中村 多恵子 内田 玲子 永留 てる子 石原 敏子 河原 照子 石原 満子 平山 正実 中野 康平 鴨下 重彦 大道 久 中村 晃 倉光 秀麿 織畑 秀夫 鈴木 忠 馬渕 原吾 木村 恒人 大地 哲郎 宮崎 保 松嶋 喬 桜田 恵右 西尾 利一 森 忠三 宮森 正 奥野 正孝 江尻 崇 前沢 政次 大川 藤夫 関口 忠司 吉新 通康 岡田 正資 池田 博 釜野 安昭 高畠 由隆 高山 千史 吉村 望 小田 利通 川崎 孝一 堀 原一 山根 至二 小森 亮 小林 建一 田中 直樹 国府田 守雄 高橋 宣胖 島田 甚五郎 丸地 信弘 松田 正己 永井 友二郎 向平 淳 中嶌 義麿 鎮西 忠信 岡田 究 赤澤 淳平 大西 勝也 後藤 淳郎 下浦 範輔 上田 武 川西 正広 山室 隆夫 岡部 保 鳥居 有人 日向野 晃一 田宮 幸一 菅野 二郎 黒川 一郎 恩村 雄太 青木 高志 宮田 亮 高野 純一 藤井 正三 武内 恵輔 南須原 浩一 佐々木 亨 浜向 賢司 本田 麺康 中川 昌一 小松 作蔵 東 匡伸 小野寺 壮吉 土谷 茂樹 岡 国臣 那須 郁夫 有田 清三郎 斎藤 泰一 清水 強 真島 英信 村岡 亮 梅田 典嗣 下条 ゑみ 松枝 啓 林 茂樹 森 一博 星野 恵津夫 正田 良介 黒沢 進 大和 滋 丸山 稔之 織田 敏次 千先 康二 田中 勧 瓜生田 曜造 尾形 利郎 細田 四郎 上田 智 尾島 昭次 大鐘 稔彦 小倉 脩 林 博史 島 澄夫 小池 晃 笹岡 俊邦 磯村 孝二 岩崎 栄 鈴木 荘一 吉崎 正義 平田 耕造
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.145-173, 1984-06-25 (Released:2011-08-11)
著者
西園 昌久 高橋 流里子 対馬 節子 松永 智子 福屋 靖子 土屋 滋 大貫 稔 高橋 美智 浅野 ふみぢ 小松崎 房枝 鈴木 小津江 平山 清武 中田 福市 鈴木 信 壁島 あや子 名嘉 幸一 鵜飼 照喜 福永 康継 浪川 昭子 高田 みつ子 岩渕 勉 森脇 浩一 加藤 謙二 早川 邦弘 森岡 信行 津田 司 平野 寛 渡辺 洋一郎 伴 信太郎 木戸 友幸 木下 清二 山田 寛保 福原 俊一 北井 暁子 小泉 俊三 今中 孝信 柏原 貞夫 渡辺 晃 俣野 一郎 村上 穆 柴崎 信吾 加畑 治 西崎 統 大宮 彬男 岩崎 徹也 奥宮 暁子 鈴木 妙 貝森 則子 大橋 ミツ 川井 浩 石川 友衛 加世田 正和 宮澤 多恵子 古賀 知行 西川 眞八 桜井 勇 三宅 史郎 北野 周作 竹洞 勝 北郷 朝衛 橋本 信也 斉藤 宣彦 石田 清 畑尾 正彦 平川 顕名 山本 浩司 庄村 東洋 島田 恒治 前川 喜平 久保 浩一 鈴木 勝 今中 雄一 木内 貴弘 朝倉 由加利 荻原 典和 若松 弘之 石崎 達郎 後藤 敏 田中 智之 小林 泰一郎 宮下 政子 飯田 年保 奥山 尚 中川 米造 永田 勝太郎 池見 酉次郎 村山 良介 河野 友信 Wagner G. S. 伊藤 幸郎 中村 多恵子 内田 玲子 永留 てる子 石原 敏子 河原 照子 石原 満子 平山 正実 中野 康平 鴨下 重彦 大道 久 中村 晃 倉光 秀麿 織畑 秀夫 鈴木 忠 馬渕 原吾 木村 恒人 大地 哲郎 宮崎 保 松嶋 喬 桜田 恵右 西尾 利一 森 忠三 宮森 正 奥野 正孝 江尻 崇 前沢 政次 大川 藤夫 関口 忠司 吉新 通康 岡田 正資 池田 博 釜野 安昭 高畠 由隆 高山 千史 吉村 望 小田 利通 川崎 孝一 堀 原一 山根 至二 小森 亮 小林 建一 田中 直樹 国府田 守雄 高橋 宣胖 島田 甚五郎 丸地 信弘 松田 正己 永井 友二郎 向平 淳 中嶌 義麿 鎮西 忠信 岡田 究 赤澤 淳平 大西 勝也 後藤 淳郎 下浦 範輔 上田 武 川西 正広 山室 隆夫 岡部 保 鳥居 有人 日向野 晃一 田宮 幸一 菅野 二郎 黒川 一郎 恩村 雄太 青木 高志 宮田 亮 高野 純一 藤井 正三 武内 恵輔 南須原 浩一 佐々木 亨 浜向 賢司 本田 麺康 中川 昌一 小松 作蔵 東 匡伸 小野寺 壮吉 土谷 茂樹 岡 国臣 那須 郁夫 有田 清三郎 斎藤 泰一 清水 強 真島 英信 村岡 亮 梅田 典嗣 下条 ゑみ 松枝 啓 林 茂樹 森 一博 星野 恵津夫 正田 良介 黒沢 進 大和 滋 丸山 稔之 織田 敏次 千先 康二 田中 勧 瓜生田 曜造 尾形 利郎 細田 四郎 上田 智 尾島 昭次 大鐘 稔彦 小倉 脩 林 博史 島 澄夫 小池 晃 笹岡 俊邦 磯村 孝二 岩崎 栄 鈴木 荘一 吉崎 正義 平田 耕造
出版者
Japan Society for Medical Education
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.145-173, 1984
著者
伴 信太郎
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.165-169, 2006-06-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
7
被引用文献数
2
著者
篠崎 惠美子 坂田 五月 渡邉 順子 阿部 恵子 伴 信太郎 藤井 徹也
雑誌
聖隷クリストファー大学看護学部紀要 = Bulletin Department of Nursing Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
vol.22, pp.37-44, 2014-03-31

本研究の目的は、模擬患者(Simulated or Standardized Patient: 以下SP)養成において、SP が熟達する過程ごとの特徴を明らかにすることである。 対象は、2002 年から2012 年までSP 養成者が作成したSP トレーニング時、SP 参加型授業時のSP の発言・行動記録、SP 養成者の感想および介入の記録である。SP 養成過程は、ドレイファス・モデルを参考に、初心者、新人、一人前、中堅、達人のレベルとし、得られたデータを各レベルに分類し、特徴をカテゴリー化した。 その結果、一般市民であったSP が熟達する過程の特徴として、以下のカテゴリーが抽出された。初心者レベルでは<SP として不確実な自分>を感じ、新人レベルでは<SP として不安な自分>を感じる。さらに一人前レベルでは<SP として自覚が芽生える自分>を認識し、中堅レベルでは<SP として成長を感じる自分>を実感する。そして、達人レベルに到達すると<SPを極める自分>の存在を認識する。
著者
高村 昭輝 伴 信太郎
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.255-258, 2010 (Released:2012-03-27)
参考文献数
5

1) オーストラリアではここ数年で多くの医学部が医学生に対して全学年を通して地域医療と地域社会そのものを認知・意識できるカリキュラムを採用している.2) フリンダース大学では医学生に対してオーストラリアで初めて,遠隔地での長期間にわたる地域小病院・診療所での総合診療実習に着目してプログラムを作成,実践し,大きな成果を上げている.3) 地域立脚型医学教育には様々な形態が考えられるが,どのような地域医療教育が日本の文化,歴史,医療制度に適合し,将来的な地域医療の充実につながるのか考察する必要がある.