著者
中川 敦寛・冨永 悌二 大谷 清伸 富田 博秋 久志本 成樹 Rocco Armonda
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.441-446, 2016-12-15 (Released:2016-12-15)
参考文献数
25

爆風損傷は爆発に伴い発生する爆風に暴露され生じる.一般の臨床医が経験する外傷機転に加えて,衝撃波を伴う圧損傷が複合的に生体に影響を及ぼし,損傷が発生する.イラク戦争,アフガニスタン紛争以降,爆風損傷が著しく増加し,軽症例における高次脳機能障害,心的外傷後ストレス障害の頻度が高い可能性が示唆されたことから,新しい疾患概念として認識されるようになった.眼,耳,肺,消化管,心臓血管系の損傷も特徴的であるが,受傷早期に顕在化しないことがあり注意が必要である.外傷初期診療ガイドラインに沿った対応を行うとともに,損傷時の状況の把握を含めて衝撃波を伴う圧損傷のリスク階層化と病態を考慮した治療を行う. テロや産業事故による爆風損傷は遠い存在ではなく,わが国においても救急に携わる医療従事者,関係者も病態と診断・治療に関する一定の知識を持っていることが望ましい.
著者
中川 敦史
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.327-333, 1993-10-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
21
被引用文献数
3 5

Flower colors, from red through purple to blue, are mostly from anthocyanins. Although there are many colors, only a few anthocyanins are found. We have succeeded to solve the structure of real anthocyanin and a sugar containing flavonoid, Cd-commelinin, using the Weissenberg camera for macromolecular crystallography with imaging plates at the Photon Factory. The blue flower-color development and the stability of the color can be explained by metal complexation of anthocyanin and intermolecular hydrophobic association. Commelinin is a new type of stoichiometric supramolecule, which consists of low molecular mass components.
著者
片岡 祐子 菅谷 明子 中川 敦子 田中 里実 問田 直美 福島 邦博 前田 幸英 假谷 伸
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.87-95, 2021-02-28 (Released:2021-03-20)
参考文献数
24

要旨: 先天性難聴の早期発見,早期療育, 人工内耳手術の低年齢化などに伴い, 難聴児の聴取能, 言語発達は向上し, 近年地域の学校でインクルーシブ教育を受ける者が増加しているが, それに伴う問題も挙げられている。我々は, 小学校5年生以上25歳未満のインクルーシブ教育を受けた経験のある両側難聴者89名に, 学校生活で抱える問題に関して質問紙での実態把握調査を実施した。 対象者の多くは, 授業中の支障に加え, グループ学習や雑音下, 距離が離れた場所からの聞き取りの支障を抱えており, また英語, 音楽, 体育をはじめとする教科学習での課題や, 友人関係での問題も挙げていた。難聴の程度が重いほど頻度が高い傾向がみられた。 個々の学校生活における状況と問題を正確に把握した上で, 視覚情報を用いたコミュニケーション, 支援員の配属, 学習面でのサポート, 専門家による心理的負担へのアプローチといった個々に対応した介入の必要性が示唆される。
著者
中川 敦
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.217-239, 2018-05-31 (Released:2019-06-20)
参考文献数
34

遠距離介護におけるコミュニケーションは,離れて暮らす家族が親元に帰省した時の対面場面に限られず,彼らが普段暮らしている場所から行われる遠隔コミュニケーションもまた重要性を持っている.そこで,遠距離介護を行う離れて暮らす家族と,高齢の親に関わる介護の専門職者の間の遠隔コミュニケーションについて,カシオ計算機株式会社が開発したDaisy Circle というスマートフォン向けアプリによるSNS への実際の投稿をデータとする,会話分析的研究を行うことで,以下の知見を得た. 離れて暮らす家族は,介護の専門職者からの親についての報告に対して,第2 の報告という形で,自らが知識をすでに持っていることを主張することがあった.また離れて暮らす家族にとって,介護の専門職者から初めてもたらされる情報については,その詳細を介護の専門職に求めるのではなく,まずは家族の内部で直接に把握しようとする試みが行われることがあった.それらは,介護の専門職者から伝えられる情報が,本来的には家族があらかじめ持っているべき種類のものであることを示している.つまり遠距離介護に関わる離れて暮らす家族にとって,親の状況に関して介護の専門職者から報告を受けるということ自体が,親の安否とは異なる水準で,つまり知識の道徳性という次元で,ある種のジレンマを意味しているのである.結論として,こうしたジレンマを解消する一つの可能性が,SNS に高齢者本人を参加させることにあることを指摘した.
著者
吉田 拓哉 中川 敦子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.144, 2013

背景音楽の歌詞が文章課題の遂行を妨害することが報告されている。本研究は,この影響を実行注意の個人差から検討した。実行注意の効率を測定する尺度としてエフォートフル・コントロール(EC)尺度を用い,大学生をEC低群とEC高群に群分けした。そして両群ともに無音,音楽のみ,音楽・歌詞の3つの音楽環境条件で,文章課題と計算課題を行った。課題ごとに作業量を分析した結果,EC低群の音楽・歌詞条件で文章課題の作業量減少が認められたが,高群は両課題のどの条件でも差は認められなかった。よって課題遂行時の背景音楽の歌詞による妨害効果は,実行注意の働きで軽減される可能性が示された。また課題ごとに正答率を分析した結果,音楽のみ条件で正答率が低下した。この結果からは,音楽・歌詞条件では,より注意を喚起する歌詞に抵抗するために却って課題に集中した一方で,音楽のみ条件では,音楽によって弛緩状態に陥った可能性が考えられる。
著者
中川 敦寛 工藤 大介 園部 真也 麦倉 俊司 久志本 成樹 冨永 悌二
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.955-963, 2021-09-10

Point・現在の神経集中治療では二次侵襲を最小限にとどめ,生体の自己回復能力を最大限に引き出す環境を作ることに主眼が置かれている.・神経学的所見やモニタリングから得られる情報を統合し,頭蓋内圧亢進を的確に評価して治療のタイミングを逃さない.・今後,インフォマティクスなどがモニタリングや管理の質の向上を支援することが予想されるが,生理学,病態生理を深く理解することが本質であることには変わらない.
著者
中川 敦子
出版者
金沢医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

被験者は外来通院の分裂病患者10名。各患者の症状評価は精神科医2名によって行われた。課題は、プライム、ターゲットともに視野中央に提示する語彙判断であった。実験計画;プライム条件(反対、遠隔連想、無関連、中立)×SOA(67msec,750msec)の被験者内2要因実験。反対、遠隔連想という意味関係は、意味ネットワーク上のターゲットとの意味距離がより近い、より遠いことをそれぞれ示した。刺激:各試行はプライムとターゲットの平仮名表記の文字列ペアより成った。1つの刺激リストは,YES反応用の4つの異なった意味的関係を含む24ペア、およびNO反応用の非単語(単語の1文字を入れ替えて作られた)を含む24ペアによって構成された。4つの刺激リストを設け,1つの刺激リスト内で同じターゲットが繰りかえされることはなかった。例えば,リスト1で反対語条件(さむい-あつい)のターゲットは,リスト2では遠隔連想条件(あせ-あつい),リスト3では無関係条件(ゆずる-あつい),リスト4では中立条件(くうはく-あつい)であった。手続き;各被験者に、練習の後,4ブロックをとおして4つの刺激リストが与えられた。各試行では、視野中央に注視点そしてプライム60msecの提示後、ISI(SOA条件によって7msecまたは690msec)の後、ターゲットが示された。被験者は、実験中は視野スクリーンの中心を凝視し、ターゲットが有意味な文字列(単語)であるか否か(非単語)の判断をボタン押しによってできるだけ早くかつ正確に行なうよう求められた。結果;分析は単語に対する正反対時間およびエラー率について行ない、反応の促進および抑制効果は,各プライム条件での反応時間が中立条件(くうはく)での反応時間よりも早いか遅いかによって決定された。外来通院の予後良好な分裂病患者の意味プライミングパタンは、コントロール群のパタンと同様であった。各症状と意味プライミングパタンの関係について検討したが、明らかな結果は得られなかった。
著者
刈部 博 林 俊哲 平野 孝幸 亀山 元信 中川 敦寛 冨永 悌二
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.12, pp.965-972, 2014 (Released:2014-12-25)
参考文献数
54
被引用文献数
10 5

高齢者頭部外傷は予後不良とされ, 病態の解明, 治療法の開発, 予防への取り組みは, 高齢化社会を迎えた本邦における喫緊の課題である. 本稿では, その特徴と問題点について言及・考察する. 高齢者頭部外傷は運動機能や生理機能の低下による転倒・転落が多い. 急性期頭蓋内病変では急性硬膜下血腫の頻度が高く, 血腫量が多いことが特徴で, 加齢による硬膜下腔の拡大など解剖学的特徴に起因する. また, 遅発性頭蓋内血腫や脳血流変化など, 解剖学的・生理学的特徴に関連する病態も高齢者に特徴的である. 近年普及した抗凝固・血小板療法は, 頭蓋内出血増悪の一因であり, さらに治療を困難にしている. 今後, さらなる研究が期待される.
著者
東浦 彰史 中川 敦史
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.332-338, 2011-10-31 (Released:2011-11-20)
参考文献数
11

Recent technical developments in macromolecular X-ray crystallography have significantly improved the resolution limit of protein structures. However, numbers of high-resolution structures are still limited. In this study, the X-ray crystal structure of bovine H-protein, a component of the glycine cleavage system, was determined at 0.88 Å resolution. This is the first ultrahigh-resolution structure of an H-protein. The data were collected using synchrotron radiation. Because of limitations of the hardware, especially the dynamic range of the CCD detector, three data sets (high-, medium- and low-resolution data sets) were measured in order to obtain a complete set of data. To improve the quality of the merged data, the reference data set was optimized for merging and the merged data were assessed by comparing merging statistics and R factors against the final model and the number of visualized hydrogen atoms. In addition, the advantages of merging three data sets were evaluated. The omission of low-resolution reflections had an adverse effect on visualization of hydrogen atoms in hydrogen-omit maps. Visualization of hydrogen electron density is a good indicator for assessing the quality of high-resolution X-ray diffraction data.
著者
刈部 博 林 俊哲 成澤 あゆみ 赤松 洋祐 亀山 元信 中川 敦寛 冨永 悌二
出版者
一般社団法人 日本神経救急学会
雑誌
Journal of Japan Society of Neurological Emergencies & Critical Care (ISSN:24330485)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.1-8, 2018-06-01 (Released:2018-11-15)
参考文献数
21

In this study, eleven cases with sports-related traumatic occlusive cerebrovascular accident (OCVA) are investigated to clarify clinical characteristics by reviewing following clinical factors: age, gender, mechanism of trauma, symptom, type of sports, duration between the time of injury and outpatient visit or diagnosis, type and site of vascular injury, co-existent traumatic intracranial lesion, treatment, and outcome. Traumatic OCVAs were accounted for 9.1% of sports-related TBI, as 1.1% of other TBIs than sports-related. It is more common in male than female. Histogram of age distribution demonstrated a peak at the age of 5-14 y.o. Cervical hyperextension and/or hyper-rotation was the most common mechanism of injury. Head and/or neck pain immediately after trauma was the most common initial symptom. The most frequent vascular lesion was an arterial dissection of internal carotid or vertebral artery. Antiplatelets or anticoagulants were introduced for treatment in cases without traumatic intracranial hematoma. Favorable outcomes were obtained in most cases, however, permanent neurological deficits were remained in 3 cases. Since delay in the introduction of treatment results in poor functional outcome, an early visit of outpatient are quite important in patients with sports-related traumatic OCVAs, as well as the standardization of diagnostic algorithm.
著者
中川 敦夫
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

わが国での実施に適した新規認知行動療法プログラムである反芻焦点化認知行動療法(rumination-focused CBT: RFCBT)の実践を目的に、本研究ではRFCBT治療者用ハンドブックを作成し、パイロットケース(5例)としてRFCBTを行い、そのfeasibilityを確認した。さらに、原著者のEdward Watkins教授らのもと、面接音声ファイルを用いたスーパービジョンを受け、この経験を踏まえRFCBT治療者用ハンドブックの改良を図った。そして、うつ病に対するRFBCTの前後比較研究プロトコール(UMIN000037191)を作成し、実施した。