著者
松本 伊智朗 湯澤 直美 関 あゆみ 蓑輪 明子 永野 咲 加藤 弘通 長瀬 正子 丸山 里美 大谷 和大 岩田 美香 大澤 亜里 鳥山 まどか 佐々木 宏 杉田 真衣 山野 良一 田中 智子 上山 浩次郎 藤原 千沙 吉中 季子 福間 麻紀 大澤 真平 藤原 里佐 川田 学 谷口 由希子 中澤 香織 伊部 恭子 山内 太郎 新藤 こずえ 小西 祐馬 加藤 佳代
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、子どもの貧困の現代的特質を明らかにすると同時に、政策的介入と支援のあり方を検討することである。そのために、大規模な子ども・家族を対象とした生活調査(3万人対象)を北海道で行った。あわせて、女性の貧困に関する理論的検討、社会的養護経験者に対する調査を行った。それらを通して、経済的問題、時間の確保、追加的ケアへの対応、ジェンダー平等の重要性、子どもの活動と経験、社会的ケアと社会保障制度の問題について検討を行った。
著者
伊藤 詩菜 松田 康子 加藤 弘通
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.5-12, 2015-03-25

本研究では、援助要請行動生起における利益とコストの関係性を検証するため、中岡・兒玉(2011)の援助要請期待尺度の信頼性・妥当性の検討を行うとともに、援助要請不安尺度を元に援助要請行動生起における心理的コスト尺度を作成し、その信頼性・妥当性の検討を行った。そのため、大学生、大学院生208名を対象とし、既存の援助要請期待尺度(中岡・兒玉,2011)と、本研究で作成した心理的コスト尺度を合わせた計46項目を「カウンセリングに対する印象」として質問紙を用いて調査した。その結果、心理的コスト尺度は「スティグマへの懸念」因子、「カウンセラーの対応への懸念」因子、「強要への懸念」因子の3因子となり、中岡・兒玉(2011)と同様の結果となった。一方、援助要請期待尺度については、「内面の安定への期待」因子、「カウンセラーの対応への期待」因子、「知識習得への期待」因子の3因子となり、中岡・兒玉(2011)と異なる結果となった。また、Cronbachのα係数と2つの尺度の下位尺度との相関により、本研究で作成された心理的コスト尺度は十分な信頼性と妥当性が示された。援助要請期待尺度(中岡・兒玉,2011)についても再検討され、因子構造は中岡・兒玉(2011)とは異なる結果となったものの、より多くの項目数からなる、より信頼性・妥当性を有した尺度が作成されたと考えられる。
著者
飯田昭人 水野君平 加藤弘通
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第61回総会
巻号頁・発行日
2019-08-29

問題と目的 本研究では,「子どもの貧困対策に関する大綱」に謳われている「教育の支援」に焦点を当て,保育現場や学校で働いている保育士や教職員等を対象に,子どもの貧困への意識について,(1)子どもの貧困状況の捉え方,(2)貧困状況にある子どもの困難の捉え方の2点について明らかにするために,支援者に向けての質問紙調査を実施した。方 法調査協力者と調査時期 A市内の小学校全18校,中学校全8校(私立中を除く),保育施設(保育園,幼稚園,認定こども園,小規模保育施設,事業所内保育施設,家庭的保育施設)27施設の合計53施設の保育関係者,教職員を対象にした。有効回答数は,小学校15校283件(72.0%),中学校8校188件(82.8%),保育施設18施設213件(56.8%),合計41施設684件(68.7%)であった。調査時期は2017年12月から2018年1月であった。調査内容 「滋賀県『子どもの貧困』対策のための支援者調査」(滋賀県・龍谷大学, 2016)を参考に調査票を作成した。まず「子どもの貧困状況の捉え方」に関する9項目を尋ねた(回答は「まったく深刻ではない;1点」―「非常に深刻である;5点」の5件法)。また,「貧困状況にある子どもの困難についての捉え方」に関する13項目を尋ねた(回答は「まったく当てはまらない;1点」―「とても当てはまる;5点」の5件法に,「子どもの年齢が低くてわからない」も設定した)。その他の質問項目も尋ねたが,本報告では省略する。結 果 「子どもの貧困状況の捉え方」および,「貧困状況にある子どもの困難についての捉え方」(因子負荷量の低さやダブルローディングで5項目を除外)について,因子分析(最尤法・プロマックス回転)の結果と各因子におけるα係数,負荷量,因子間相関はTable 1,Table 2のとおりである。考 察 子どもの貧困の捉え方を,「基本となる生活基盤の不安定さ」と,各種支援費を受給しなければ生活が安定しない,「家庭の経済的困窮」の2点に集約された。貧困状況にある子どもの困難についての捉え方において,主に「子どもの生活面から生じる心身の健康的側面」と,「子どもの学力面」に大別された。 公益財団法人子どもの貧困対策センターあすのば(2016)が,貧困問題を「貧」(低所得などの経済的問題」と「困」(一人ひとりの困りごと)に分け,家庭の「貧」を改善するだけではなく,子どもたちの「困」も支援していくことの必要性を述べている。今回,Table 1では「貧」について,Table 2では「困」についての捉え方を明らかにした。特に,「困」については,保育施設や小中学校というフィールド(現場)で,関係機関と連携しながら対処していくことが求められると考える。
著者
加藤 弘通 太田 正義
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.147-155, 2016
被引用文献数
7

本研究の目的は, 中学校における学級の荒れと規範意識および他者の規範意識の認知の関係について検討することにあった。そのために公立中学校2校の中学生1~3年生906名を対象に質問紙調査を実施した。学級タイプを通常学級と困難学級に, 生徒タイプを一般生徒と問題生徒に分け分析を行った結果, 規範意識に関しては通常学級と困難学級では差は見られなかったが, 他の生徒の規範意識に関しては, 通常学級と困難学級で差が見られ, 困難学級の生徒のほうが学級全体の他の生徒の規範意識をより低く評価していた。以上のことから, 学級の荒れには, 生徒自身の規範意識の低下が関係しているのではなく, 他の生徒の規範意識を低く見積もる認知が関係していることが示唆された。こうした結果をふまえ, 学級の荒れを解決するためには, 従来から指摘されている生徒の「規範意識の醸成」よりも, 実際にはそれほど低くない他の生徒の規範意識を知ることが必要であり, そのための手立てとして, 生徒相互の「規範意識を巡るコミュニケーション」の活性化が必要だろうということが議論された。
著者
加藤 弘通
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.135-147, 2001-07-15

本研究の目的は,問題行動及び指導に対する生徒の意味づけを明らかにすることにより生徒同士の関係のあり方から問題行動の継続過程について検討することである。問題行動の繰り返しによって高校を中途退学した少年F(18歳)を対象に17回のインタビューを行い,彼の問題行動や指導,自己に対する意味づけを探った。また,Fと同時期に同校に在籍していた生徒4名へのインタビューから,他の生徒の問題行動や指導,及び問題行動を起こす生徒(F)への意味づけを探った。そして,Fと他の生徒の意味づけを比較し,問題行動を巡る生徒同士の関係のあり方から問題行動の継続過程について検討した。その結果,(1)問題行動・指導に対する意味づけは,生徒が置かれた状況によって異なること,それと対応して,(2)問題行動を起こす生徒も個々の生徒との関係に応じて,自らの問題行動に対して異なる意味づけをしていることが明らかになった。Fは「悪ガキ」との関係において,問題行動を肯定的に意味づけ(「格好いい」),親密な関係を築く一方で,悪ガキ以外の生徒との関係においては,問題行動を否定的に意味づけ(「(自分は)抹消されている」),関係を希簿化させていた。このことから,Fが問題行動を起こすほど,そして,それに対する指導を受けるほど問題行動が繰り返されやすくなる生徒同士の関係が生じるという。Fの問題行動・指導を巡る循環関係の存在が示唆された。
著者
加藤 弘通 大久保 智生
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.466-477, 2009-12-30

本研究の目的は,学校の荒れが収束する過程で指導および生徒の意識にどのような変化が生じているのかを明らかにすることにある。そこで本研究では,調査期間中に荒れが問題化し収束に向かったB中学校の生徒(のべ1,055名)に対して,学校生活への感情,教師との関係,不良少年へのイメージおよび不公平な指導などをたずねる質問紙調査を3年間行い,その結果を荒れが問題化していない中学校7校の生徒(計738名)と比較した。またB中学校の管理職の教師に対し面接を行い,荒れの収束過程で指導にどのような変化があったのかを探った。その結果,生徒の意識に関しては荒れの収束に伴い不公平な指導の頻度が下がり,学校生活への感情や不良少年へのイメージ,教師との関係が改善していることが明らかになった。また生徒指導に関してはその指導が当該生徒に対してもつ意味だけでなく,他の生徒や保護者に対してもつ意味が考慮された間接的な関わりが多用されるようになっていた。以上のことをふまえ,実践的には指導を教師-当該生徒との関係の中だけで考えるのではなく,それを見ている第三者まで含めた三者関係の中で考える必要性があることを示唆した。