著者
堀田 裕子 松崎 那奈子 萩原 孝泰 井上 康子 小川 博
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.33, pp.64, 2017

<p>スマトラオランウータンはIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧ⅠA類に指定される希少動物である。また,国内個体数が少ないことから,種の保存のために動物園で計画的に飼育下繁殖を進めていくことは重要である。そのために園間同士での個体の移動は必要なことである。一方で,動物の輸送には身体的および精神的ストレスが伴う。動物はストレス因子が極度の場合生理学的機能が激しく損なわれ死亡することがある。コルチゾールはストレスの指標となりうるホルモンであることから,尿を用いて非侵襲的にそれを測定した。昨年スマトラオランウータンの園内での新獣舎への移動,および園間またいでの移動が行われた。この際のストレスについて検証すべく,スマトラオランウータン雌1頭雄1頭を対象として,尿中コルチゾール濃度をEIA法を用いて測定し,その動態を追った。またそれと同時に行動観察を行い,行動と生理の面からそのストレスについて調べた。雌雄また園内と園間それぞれ,コルチゾール濃度および行動に変化がみられた。その結果からストレス要因およびストレス軽減要因について考察し報告する。</p>
著者
堀田 裕之 黒田 悦史 蜂須賀 徹
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.291-302, 2007-09-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
1 1

生殖免疫学の原点は, 半同種移植片(semi-allograft)である胎児が何故拒絶されないのかという免疫学的妊娠維持機構の解明にある. 1953年にMedawarがこの免疫学的矛盾を指摘して以来, 多くの研究者達がこの命題に取り組んできた. その結果, 妊娠の成立維持には単なる免疫寛容ではなく, 免疫系が積極的に胎児抗原を認識する事immunotrophismが重要である事が分かってきた. さらに着床, 妊娠維持におけるleukemia inhibitory factor (LIF)を始めとするサイトカインの重要性やTh2優位なサイトカイン環境の重要性なども分かってきている. しかしながらこれらサイトカインの生殖現象に対する分子生物学的なメカニズムは不明な事が多い. これらメカニズムの解明は不妊症や習慣流産などに対する将来の臨床応用に役立つものと思われる.
著者
堀田 裕子
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.119-132, 2010

テレビゲーム体験は、M.メルロ=ポンティの理論からどのように考察できるだろうか。彼は「奇妙な」空間に関する考察で、異なる空間への「投錨」とそのための「投錨点」の必要性を論じている。投錨は「構成的精神」によるのではなく、身体が新たな空間内の諸対象を「投錨点」として、そこに住みつくということである。だがその投錨(点)は対象ではなく地であり、異なる空間を同時にとらえることはできない。<br>テレピゲームにおける「客観視点」は、「主観視点」とは異なり、画面上にキャラクターが登場しそれを操作するプレイヤーの視点である。この時、キャラクターの身体は投錨点となり、プレイヤーの動きに応じてキャラクターは同時に動く。この現象を「同期」と呼ぶ論者もいる。だが、この考え方は二重の空間把握と物理的身体を前提しており、身体はその特質からしてまず「潜勢的身体」としてとらえる必要がある。<br>また、奥行の考察からは、対象同士、そして対象と身体もけっして並列的な関係にあるのではなく、互いに他方を導き入れる「含み合い」の関係にあることが示される。そして、この「含み合い」を「投錨」の観点から理解することで、ゲーム体験においてはプレイヤーの身体とキャラクターの身体とがまさしく「含み合い」の関係にあることが分かる。そして、過去・現在・未来もまた「含み合い」の関係にあるとともに、地となり時間を湧出する、潜勢的身体のもつ非反省的な主体性は、ゲーム体験によって解体されることはない。
著者
堀田 裕子 樫田 美雄
出版者
徳島大学
雑誌
徳島大学地域科学研究 (ISSN:21867720)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-16, 2012-12

Our purpose of this study is to describe a field of home care in detail and to explore the lay knowledge (or body knowledge) and the particularity of the home care. We research the field by interaction analysis. A patient 'F' who has paralysis in the lower half of the body and the left upper limbs, permitted us video recording of her everyday life. We especially focus on the scene of (1) "putting on the jacket" and (2) "putting on the gloves (and so on)" with the help of two caregivers (housekeepers) in this paper.13;As a result of our analysis (1), we find that the caregivers move as if they were F's hands and that the movements of them are overlapped in about 2 seconds. We also find that there is about 5 seconds interval between taking gloves and putting them on (2). 'F' holds out her hands, monitoring the caregivers' movements one after the other. The F's body consists in the intercorporeality with the caregivers. As A. Nishizaka suggests 'the body distributed', the body counters the distribution though F's body seems to be distributed in home care.
著者
堀田 裕子
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.119-132, 2010 (Released:2020-03-09)

テレビゲーム体験は、M.メルロ=ポンティの理論からどのように考察できるだろうか。彼は「奇妙な」空間に関する考察で、異なる空間への「投錨」とそのための「投錨点」の必要性を論じている。投錨は「構成的精神」によるのではなく、身体が新たな空間内の諸対象を「投錨点」として、そこに住みつくということである。だがその投錨(点)は対象ではなく地であり、異なる空間を同時にとらえることはできない。 テレピゲームにおける「客観視点」は、「主観視点」とは異なり、画面上にキャラクターが登場しそれを操作するプレイヤーの視点である。この時、キャラクターの身体は投錨点となり、プレイヤーの動きに応じてキャラクターは同時に動く。この現象を「同期」と呼ぶ論者もいる。だが、この考え方は二重の空間把握と物理的身体を前提しており、身体はその特質からしてまず「潜勢的身体」としてとらえる必要がある。 また、奥行の考察からは、対象同士、そして対象と身体もけっして並列的な関係にあるのではなく、互いに他方を導き入れる「含み合い」の関係にあることが示される。そして、この「含み合い」を「投錨」の観点から理解することで、ゲーム体験においてはプレイヤーの身体とキャラクターの身体とがまさしく「含み合い」の関係にあることが分かる。そして、過去・現在・未来もまた「含み合い」の関係にあるとともに、地となり時間を湧出する、潜勢的身体のもつ非反省的な主体性は、ゲーム体験によって解体されることはない。
著者
古澤 陽 西嶋 瑛世 海野 真穂 堀田 裕弘
出版者
一般社団法人 エネルギー・資源学会
雑誌
エネルギー・資源学会論文誌 (ISSN:24330531)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.152-159, 2023-05-10 (Released:2023-05-10)
参考文献数
23

In Japan, the active introduction of renewable energies is encouraged in order to achieve a decarbonized society. Among renewable energies, photovoltaic power generation, which can be introduced relatively easily in buildings and houses, is being used, and its further introduction is desired. Therefore, there is a need for technology to accurately predict the amount of electricity generated at potential sites for photovoltaic power generation facilities. In this study, we tried various machine learning methods for predicting the amount of electricity generated by photovoltaic power generation without using the information of the solar radiation meters, and examined the effect of the training period of machine learning on the accuracy of the estimation.
著者
西嶋 瑛世 古澤 陽 海野 真穂 堀田 裕弘
出版者
一般社団法人 エネルギー・資源学会
雑誌
エネルギー・資源学会論文誌 (ISSN:24330531)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.145-151, 2023-05-10 (Released:2023-05-10)
参考文献数
21

Since the Paris Agreement in 2015, there has been growing interest in global warming around the world, and accelerated measures to global warming are required to realize a decarbonized society by declaring the goal of carbon neutrality. As one of the measures, Demand Response (DR) are being actively introduced and provided. DR is a system whereby electric power companies pay incentives through transactions to consumers who cooperate in saving electricity during peak periods of electricity demand, thereby reducing peak electricity demand. Electricity demand for individual buildings is easily affected by seasonal fluctuations, the presence or absence of events, and other factors, and the occurrence of electricity demand peaks tends to be irregular, so highly accurate electricity demand forecasting is needed. In this study, we focus on the educational facilities such as University campus. The objective of this study is to use machine learning to construct a highly accurate forecasting model for not only the steady electricity demand in daily life, but also the characteristic electricity demand during events.
著者
堀田 裕貴 田中 隆文 小谷 亜由美
出版者
日本水文科学会
雑誌
日本水文科学会誌 (ISSN:13429612)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-22, 2022-04-25 (Released:2022-05-09)
参考文献数
49

地理的に離れた流域間においては,降水条件が大きく異なるため流量データのみからその流域が持つ降雨–流出応答特性(本論文では流出特性)を比較することは難しい。そのため流出モデルのパラメータを比較することで流出特性を比較するという試みがなされている。しかし,多数の流域で同一の構造を持つ流出モデルを用いて蒸発散量を考慮した1年以上の長期間の流出解析を行い,そのパラメータを比較することで流域条件が与える影響を検討した研究はほとんどない。そこで本研究では,降雪が少なく上流にダムが無い国内の27の堆積岩流域・変成岩流域,38の火成岩流域において,タンクモデルパラメータと流域の気候・地形・流域面積・地質年代・土壌・植生との関係を重回帰分析により検証した。その結果,年平均降水量が多いほどタンクモデルの流出率は大きくなる傾向,そして浸透率は小さくなる傾向が見られ,特に堆積岩流域・変成岩流域でその傾向が顕著であった。また,地質を問わずTopographic Wetness Index 7以上の面積率が大きいほど,タンクモデルの第一タンクの横孔が低くなる傾向と,森林面積における広葉樹林の割合が高いほどタンクモデルの第一タンクの流出率が小さくなり,洪水時のピーク流量が小さくなる可能性が示された。
著者
加藤 秀一 堀田 裕 峯田 昌之 三宅 正文
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.104, no.3, pp.536-539, 2013-05-20 (Released:2014-06-16)
参考文献数
9

症例は56歳,女性.多発性嚢胞腎,慢性腎臓病にて内科通院中に発熱と左背部痛を認めた.CTにて左水腎症,左尿管結石を認め,急性複雑性腎盂腎炎と診断し,左尿管ステント留置および抗菌化学療法を施行した.発熱が持続するため感染性腎嚢胞を疑いMRIを施行したところ,拡散強調画像にて左腎下極の嚢胞の1つが高信号を呈し,感染源と考えられた.同部位にCTガイド下経皮的嚢胞穿刺術を施行し,膿汁のドレナージに成功し治癒に至った.超音波検査やCTでは感染性腎嚢胞を同定するのは困難であるが,本症例のようにMRI拡散強調画像は感染性嚢胞を特定するのに有効であると考える.
著者
川口 清司 加瀬 篤志 堀田 裕弘
出版者
公益社団法人 日本工学教育協会
雑誌
工学教育 (ISSN:13412167)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.2_48-2_53, 2018 (Released:2018-03-25)
参考文献数
8

The upbringing of creativity, problem-identifying ability, problem-solving ability, and planning ability of engineers by using logical thinking is one of important problems for developing products in Japan. The upbringing of above abilities by using logical thinking is required for graduation research and master research in university. Therefore the authors planned and practiced the new subject “Advanced Exercises for Creative Designing toward Problem Solving” that performed master research by using logical thinking. In this education subject, students performed the investigation of conventional studies, the examination of problem-solving method, the planning of research and the conduct of research about their master researches by using logical thinking methods. The results of the questionnaire made it clear to be able to bring up creativity, problem-identifying ability, problem-solving ability, and planning ability by attending the subject.
著者
堀田 裕司 大塚 泰正
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
pp.B15001, (Released:2015-07-07)

目的:職場のソーシャルサポートを高める可能性のある要因として,組織市民行動における対人的援助がある.本研究の目的は,職場における対人的援助向上プログラムの実施により対人的援助が上昇すること,および,対人的援助の上昇により量的負担が増加するものの,ソーシャルサポートも増加し,心理的ストレス反応が低下することを検証することである.対象と方法:製造業A社に所属する労働者72名を調査対象とした.per-protocol解析を行うために,調査票への欠損回答者,退職者および研修の欠席者の24名を除いた介入群26名(男性22名,女性4名,B事業所所属)と統制群22名(男性19名,女性3名,C事業所所属)を最終的な分析対象とした.また,intention-to-treat解析(以下ITT解析)を行うために,pre-testでの欠損回答者10名を除いた介入群35名(男性30名,女性5名,B事業所所属)と統制群27名(男性23名,女性4名,C事業所所属)を分析対象とした.調査票は,日本版組織市民行動尺度の対人的援助,職業性ストレス簡易調査票の量的負担,心理的ストレス反応,ソーシャルサポートを使用した.介入群の参加者のみ心理教育とロールプレイ,4週間のホームワーク(以下HW)を実施した.両群の参加者に pre test(以下pre),post test(以下post),follow-up test(以下follow-up)を同一時期に実施した.プログラムの効果を検証するために,各効果評価指標を従属変数,時期(pre,post,follow-up)と群(介入群,統制群)を独立変数とし,per-protocol解析については2要因分散分析を,ITT解析については混合効果モデルによる分析を行った.結果:per-protocol解析では,対人的援助および同僚サポートにおける介入群のpost時,follow-up時の得点がpre時よりも有意に高かった.また,同僚サポートにおいて,post時に介入群の得点が統制群よりも有意に高かった.ITT解析では,対人的援助における介入群のpost時,follow-up時の得点がpre時よりも有意に高かった.また,同僚サポートにおける介入群のpost時の得点がpre時よりも有意に高かった.結論:対人的援助向上プログラムの実施の結果,介入群の対人的援助および同僚サポートが有意に増加することが明らかとなった.しかしながら,上司サポート,量的負担の有意な増加,および,心理的ストレス反応の有意な低下は認められなかった.対人的援助を上昇させることで,特に同僚からのサポートを向上させることができる可能性がある.
著者
稲積 泰宏 吉田 俊之 酒井 善則 堀田 裕弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.7, pp.1130-1142, 2002-07-01
被引用文献数
29

リアルタイム動画像通信に関するアプリケーションが普及する一方で,ユーザ数やユーザ当りの需要帯域の増大等によって帯域の確保が困難となっていることを背景として,動画像を利用可能なビットレートに再符号化して伝送するトランスコーダの必要性が高まっている.ユーザから見たサービス品質を可能な限り高く保つためには,動画像の空間・時間方向の情報をバランス良く削減する画質評価基準が必要がある.従来のトランスコーダは主に2乗誤差に基づく制御が行われているが,2乗誤差はユーザが視・知覚する動画像品質(主観評価品質)を直接に表しているとはいえない.そこで本論文では,ビデオサーバに蓄えられた動画像(原画像)を指定されたビットレートで再符号化する際に,主観評価品質を最大化するフレームレート(最適フレームレート)の推定手法を提案する.本手法は,多くの主観評価実験による平均オピニオン評点(MOS:Mean Opinion Score)を少数のパラメータを含む関数で近似し,原画像から得られる特徴量を用いて関数のパラメータを推定する.この関数に対して指定されたビットレートを与え,その最大点を求めることによって最適フレームレートを得る.提案法を用いてopen dataに対する最適フレームレートを区間推定した結果,平均誤差4frames/s程度で推定可能なことを確認している.
著者
堀田 裕弘 河合 良直 南 陽子 村井 忠邦 中嶋 芳雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告オーディオビジュアル複合情報処理(AVM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.24, pp.31-36, 2000-03-03
被引用文献数
6

立体映像のQoSを考えるためには、符号化されたステレオ画像の品質評価技術が必要不可欠である。本稿では、符号化されたステレオ画像における画質劣化の見え方の相違や視差情報を考慮した画質評価モデルの構築を検討した。左右画像に対する符号化方式の影饗をなくすために、視差補償符号化ではなく、それぞれにJPEG符号化を施した。画質評価モデルとしては、edge部分やそれ以外のsmooth部分に関する歪要因を別々に取り扱い、さらに左画像のTexture特徴量や左右画像間の視差情報を加えることにより、高精度に品質評価の推定が行なえた。To consider the quality of service for stereoscopic image, it is necessary to develop a quality evaluation model for coded stereoscopic image. We propose a quality evaluation model of the coded stereoscopic color image. This evaluation model considers not only the distortions of the edge region and smooth region but also the texture features of the left image. In addition, this model also takes into account the disparity information between left and right images. Instead of the disparity compensated coded image, we employ the JPEG coded image for the subjective assessment test. As the results, the evaluation model is useful for coded stereoscopic image.