著者
浅利 靖 島津 盛一 西村 博行 新井 伸康 中 英男 大和田 隆 比企 能樹 柿田 章
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.9, pp.2461-2465, 1991-09-01
被引用文献数
9

中年の男性に発生した巨大な膵のsolid and cystic tumor(SCT)を経験し,その臨床経過よりdoubling timeを算出した.また本邦報告例139例について検討した.症例は58歳男性.腹部腫瘤を主訴に入院.開腹したところ,膵体部に被膜におおわれ充実性かつ弾性軟の,24×19×8cmの腫瘤が存在し,膵体尾部脾合併切除施行.病理組織学的に,充実性で髄様増殖パターンを呈し,免疫染色では上皮系マーカーに陽性でありSCTの診断を得た.4年前の初診時の腫瘍径と今回術前の精査時の腫瘍径とからdoubling timeを算出したところ,240日とslow growingな腫瘍に分類されることを証明しえた.本邦報告例139例について検討したところ,本例は男性例としては最年長かつ最大の腫瘍径を持つものであった.術後1年経過した現在,患者は健在であり,再発も認められていない.
著者
平 啓介 根本 敬久 (1989) MULLIN M. EPPLEY R. SPIESS F. 中田 英昭 藤本 博巳 大和田 紘一 小池 勲夫 杉本 隆成 川口 弘一 沖山 宗雄 瀬川 爾郎 SPIES F. 清水 潮
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1989

大気中の二酸化炭素の増大やオゾン層の破壊などグロ-バルな地球環境の変動の可能性が広く注目を集めるようになり、大気中に放出された二酸化炭素の50%を吸収することに示される海洋の役割とその変動を解明するために、東京大学海洋研究所は太平洋の対岸に位置する米国スクリップス海洋研究所と平成1ー3年度にわたって共同研究を行った。これに先だって1968年5月に東京大学(海洋研究所)とリフォルニア大学サンディゴ分校(スクリップス海洋研究所)は学術研究協力協定を締結して、太平洋における地球圏変動(グロ-バルチェンジ)にともなう海洋の生産力、生物資源および海底の動態に関する協力研究に着手することに合意していた。平成1年、本研究の発足に当たって、根本敬久(当時、研究代表者)と小池勲夫がスクリップス海洋研究所を訪問して、全体の研究計画ならびに海洋上層における炭素・窒素の生物的循環を対象として研究する方法について討議した。同年11月に新造された白鳳丸がスクリップス海洋研究所に寄港して、海洋物理学、海洋化学、海底物理学、海洋生物学そして水産学の全分野について研究計画の打ち合わせを行った。また、スクリップス海洋研究所のヘイワ-ド博士を東京大学海洋研究所に招き、杉本隆成が渡米して地球規模の生物環境問題、特にイワシ類の資源変動の機構解明の方策が話し合われた。瀬川爾朗がスピ-ス教授を訪問して、東太平洋海膨の海底活動荷ついて電磁気学的特性について討論し、それぞれの海域で観測研究を実施することを打ち合わせた。平成2、3年度は上記の方針に沿って、カタクチイワシ、マイワシ類の稚仔魚の変動については、平成2年、3年の冬季に薩南海域で実施したマイワシの資源調査の結果ならびに既存資料とスクリップス海洋研究所がカルフォルニア沖で40年以上継続している調査結果と比べて大規模な地球的変動であるエルニ-ニョに対する応答を明かにした。物理的(温度、塩分、雲量、光量、海流)、化学的(栄養塩量、溶存酸素)パラメ-タ-によって資源変動を予測するための海洋環境変動モデルをそれぞれの海域について構築することができた。これらの資源環境学的研究は英文モノグラフとして刊行することになった。海洋における栄養塩の量的変動と微生物食物連鎖の研究も実施された。海洋物理学では、CTD観測に基づく海洋構造の観測と中立フロ-トの追跡によって太平洋の深層循環の研究を実施した。スクリップス海洋研究所は1987年2北緯24度と47度の太平洋横断観測を実施し、東太平洋の南北測線の観測を1990ー91年に実施した。後者についてはスクリップス海洋研究所のデ-ビス教授が南極環海と熱帯海域においてアリスフロ-トの追跡実験を、東京大学海洋研究所では平啓介が中心になって四国海盆ならびに黒潮続流域でソ-ファ-フロ-ト追跡実験を実施しており、デ-タ交換を深層流の統計学的特性を明らかにした。海底磁力計と電位差計による海底観測は東京大学海洋研究所では瀬川爾朗が中心に、スクリップス海洋研究所ではスピ-ス教授のグル-プが実施しており、相互のデ-タ交換を行い、海底ステ-ションによる長期観測法を確立した。海洋の炭素循環について、国際共同研究の一環として白鳳丸による北西太平洋における観測を平成3年5月に実施した。また、太平洋熱帯域ではスクリップス海洋研究所が8月に観測を実施した。これらのデ-タ解析により、溶存炭素の循環に関する研究をとりまとめた。
著者
大和田 猛 加賀谷 真紀
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.21-28, 2008-06

本研究は、青森県内のホームヘルパーを対象に対人援助におけるコミュニケーションスキルの活用の現状を調査し、その実態を明らかにすることにある。その結果、(1)ヘルパー業務の中で身体介護や家事援助と並んで、相談業務という心理社会的業務を行っているヘルパーが50%にのぼる、(2)何らかの形でコミュニケーションスキルを活用しているものは、79%存在する、(3)最も多く活用されている技法は、うなずき・相槌・共感・明確化・繰り返しなどである、(4)利用者との信頼関係や親密性を維持するためのコミュニケーション効果については、情緒的・精神的・心理的に安定する、ことや行動障害の軽減・性格が穏やかになる・存在認知が出来るなどが挙げられている。これらの結果から、対人援助の専門職としてのホームヘルプサービス業務の確立のためには、コミュニケーションスキルが不可欠なものとして活用され、利用者の精神的・心理的・情緒的支援に活用されなければならない。
著者
秋山 久尚 黒澤 利郎 相馬 一亥 大和田 隆
出版者
北里大学
雑誌
北里医学 (ISSN:03855449)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.279-283, 1995-06-30

われわれは,急性興奮覚醒薬(メタンフェタミン)中毒が来院時心肺停止(CPA)の原因と考えられた1症例を経験したので若干の考察を加えて報告する。症例は,39歳男性。平成3年6月9日,心肺停止で北里大学病院救命救急センターに搬送された。心肺蘇生術後,著明な高血圧と発汗が持続し,眼瞼および体幹の痙攣,40℃を越える高熱も認められた。蘇生後の胸部レントゲンは心拡大,両側肺うっ血以外に異常は認めなかった。頭部CTは異常を認めなかったが,脳波は平坦であった。また,心電図,心エコー図からは高血圧心が示唆された。一般検査では原因不明であったが,著しい交感神経刺激症状から薬物中毒を疑い,各種薬物の検索を行った。光学異性体カラム法にて,血中に9.17μmol/100 mlと致死量のメタンフェタミンが検出され急性覚醒剤中毒と診断した。今後,一般検索で原因不明のCPA症例では覚醒剤などの特殊な薬物中毒についても血中の濃度測定が重要であると考えられた。
著者
川手 進 六本木 隆 大和田 進
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.27, no.8, pp.1999-2002, 1994-08-01
被引用文献数
7

偶然に発見された巨大な大網嚢腫性リンパ管腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告した.患者は16歳の男性で,感冒様症状のため来院した際に,腹部の膨隆と波動を指摘され,精査加療のため入院した.腹部超音波および腹部CT検査で多房性の腫瘤を認め,大網嚢腫の診断で嚢腫剔出術を施行した.嚢腫は多房性で,大きさ32×23×15cm,重さ7,100gで,その表面は大網組織で覆われていた.病理組織学的に腫瘍は嚢腫性リンパ管腫であった.本症例は大網嚢腫の本邦報告例のうち最大であった.
著者
加々美 寛雄 飯泉 滋 大和田 正明 濡木 輝一 柚原 雅樹 田結庄 良昭 端山 好和
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.44, pp.309-320, 1995-11-30
被引用文献数
10

瀬戸内・近畿地方の領家帯地域に分布する火成岩類の活動時期は, ジュラ紀初期-中期, 後期白亜紀, 中新世中期の3回である。最初のジュラ紀初期-中期に活動した火成岩類は領家花崗岩中に捕獲岩体として分布するはんれい岩, 変輝緑岩である。前者は下部地殻条件下 (6-8 kb) におけるソレアイト質マグマからの早期晶出相と考えられる。ノーライト, 角閃石はんれい岩, 変輝緑岩によるSm-Nd全岩アイソクロン年代は192±19 Maである。また, ノーライト, 角閃石はんれい岩中に不規則な形の産状を示す斜長岩質はんれい岩のSm-Nd全岩年代は162±29 Maである。後期白亜紀の火成活動は約110 Ma 前, 安山岩質マグマの活動で始まり, その後, 花崗岩の大規模な深成作用に引き継がれた。この深成作用は100-95 Maと80-75 Maの2つの時期に分けることができる。中新世中期の火成活動はユーラシア大陸から西南日本が分離, 移動したことにより引き起こされたものである。日本海形成(15 Ma)に関係した火成活動は, ユーラシア大陸東縁部の狭い範囲で始新世後期-漸新世初期に始まった。ジュラ紀初期*中期火成岩類の ^<87>Sr/^<86>Sr初生値, εNd初生値は後期白亜紀花崗岩類のこれらの値と似ている。このことは両火成岩類が似た起源物質から形成されたことを暗示している。一方, 中新世中期火成岩類のSr同位体比初生値, εNd初生値は以上の火成岩類の値とは著しく異なっている。中新世中期の日本海形成とともに, 西南日本弧の大陸性リンスフェアがフィリピン海プレート上にのし上げた。この出来事によって, 瀬戸内, 近畿領家帯地域下のリンスフェア・マントルはLILあるいはLREE元素に枯渇した化学組成をもつ様になった。中新世中期に活動した玄武岩はこの様にして形成された新しいマントルから形成された。高マグネシア安山岩は玄武岩を形成したマントルより浅い, 沈み込むプレートに由来する流動体相の影響を受けたマントルから形成された。安山岩, 石英安山岩は上部マントル由来のマグマと下部地殻の部分溶融によって出来たマグマとの混合物から形成された。それらのSr同位体比初生値とεNd初生値は, 下部地殻の部分溶融によって出来たマグマの寄与の程度により変わる。この下部地殻は苦鉄質化学組成をもち, 西南日本弧の後期白亜紀に活動した花崗岩類にとっても重要な起源物質である。
著者
大和田 勇人 溝口 文雄
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.45-46, 1994-09-20

制約充足問題はAIの中心的問題の一つであり,例として設計,レイアウト問題等がある.制約充足問題とは,制約集合を充足する変数への値の割り当てを決定することであり,NP-完全なクラスに属する.そのため,近似的ではあるが効率のよい解法が求められている.例えば,制約充足問題の代表的な手法であるアーク無矛盾は局所的なものであり,後戻り探索を実施する前に局所的に矛盾するものを除去する.さらに,実問題を考えると,必要十分な制約集合を与えることは困難で,できるだけ多くの制約を充足するものを求めるといった部分制約充足問題も考慮しなければならない.我々は,住宅間取り問題に対して,このような手法を導入してきたが,満足のいく解法を得ることはできず,新たなアプローチを模索している.本研究はこのような問題意識から,制約充足だけでは解決できない部分を過去の事例を利用して,帰納学習により補完するという方法を考える.特に,正,負事例から論理プログラムを生成する帰納論理プログラミングを用いて,制約充足問題の近似解を求めるための規則を生成することを目指す.現状では,帰納論理プログラミングで用いられている相対最小汎化を制約論理プログラミングの枠組みから拡張し,システム化した.本稿ではその概要を報告する.
著者
森田 悠基 松井 藤五郎 大和田 勇人
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.23, 2009

本論文では構築したWeb上のブログ空間から、評判ブログを抽出し、検索できるようにするためのシステムに対し、適切な分類アルゴリズムを比較検討する。ブログを個人ブログと非個人ブログに分けるという観点に基づいた分類に対し、Naive Bayes, Support Vector Machineといった教師あり学習とEMといった半教師学習を組み合わせた手法について比較実験を行う。
著者
向井 理朗 大和田 勇人 溝口 文雄
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.46, pp.3-4, 1993-03-01
被引用文献数
1

本稿で扱うロボット動作計画とは作業環境内に存在する障害物を回避しつつどのように初期状態から目標状態へ移動するかという障害物回避問題について扱う.従来の障害物回避のアプローチとしてポテンシャル場を用いる方法とコンフィギュレーション空間を用いる方法がある.ポテンシャル場を用いる方法では衝突を避けるためのポテンシャルと目標状態に達するためのポテンシャルを用いるが,ポテンシャルの極小点に迷い込む可能性がある.コンフィギュレーション空間(以下C-Space)を用いる方法では物体の姿勢を一意に定めるパラメータによって張られるC-Spaceを定義し,この上で経路探索を行なう.インプリメントが簡単でマニピュレータ全体の経路が求まる反面,C-Spaceの生成に膨大な計算量を要するという問題点がある.ここでは,制約論理プログラミングの宣言性,モジュール性,数理的処理という特徴に着目し,コンフィギュレーション空間法に応用することにより経路を導出する方法を述べる.ここで使用した制約論理型言語は,CLP〓であり,対象としたロボットは回転型のマニピュレータである.
著者
大和田 猛
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.17-25, 2005-03-31

2000年6月に成立した社会福祉法は、我が国の社会福祉パラダイムを地域福祉の推進と規定した。個別地域社会において、地域福祉を推進していく上に、「福祉コミュニティ」の形成は不可欠である。本研究では、地域福祉の歴史、背景を考察し、地域福祉政策も福祉コミュニティづくりの理念と方向を持つものであることを考察した。さらに、先行研究の地域福祉概念や構成要件をレビューした。その結果、地域福祉は、地域を基盤にする社会福祉の構築と環境づくり、福祉コミュニティづくりが一体化されたものであり、福祉コミュニティづくりが伴わなければ、在宅福祉を軸とし、地域を基盤とした福祉が構築されたとしても、真の地域福祉とは言えない。福祉コミュニティは、コミュニティづくりの目標であると同時に、コミュニティを構成する一つの社会状態をつくるというものでもある。従って、地域福祉の推進の上で、「福祉コミュニティ」づくりは重要な意義をもつ、と結論付けた。