著者
三上 紗季 山口 泰彦 斎藤 未來
出版者
一般社団法人 日本全身咬合学会
雑誌
日本全身咬合学会雑誌 (ISSN:13442007)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.16-23, 2020-11-30 (Released:2020-12-30)
参考文献数
17

側方運動を抑制する急傾斜の犬歯誘導を付与したオクルーザルアプライアンス(側方抑制スプリント)で治療した重度の睡眠時ブラキシズム(SB)症例について報告した.患者は,20 歳代女性で,歯ぎしり音を主訴に本院を受診した.SB の臨床診断のもと,当初一般的なスタビリゼーションアプライアンスを用いて治療を行ったが,睡眠時筋電図検査によるSB 評価では全くSB 波形数の低減が認められなかった.それに対し,側方抑制スプリントを適用したところ,大幅なSB 波形数の低減を示した.側方抑制スプリントの長期間の使用によっても,歯や歯周組織,顎関節,筋などに異常は認められず,良好な経過が得られた.本症例の治療経験から,オクルーザルアプライアンスの形態によってはSB が大幅に低減する場合があり得ることが示された.ただし,側方抑制スプリントがすべてのSB 症例に奏効する保証は今のところなく,睡眠時筋電図検査を用いた客観的な効果判定を行い,使用継続の適否の判断を的確に行うとともに,歯や歯周組織などに関する慎重な定期観察が必要と考えられた.
著者
池澤 聰 片山 成仁 河嶌 讓 山口 泰
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

知性、創造性、芸術、リーダシップ、あるいは特定の学術分野において高い潜在能力を有するギフテッドの人々は学校、職場で不適応など種々の心理社会的機能上の問題を抱える。背景には、彼らが潜在的に高い処理能力を有するだけでなく、様々な感覚的情報も大量に取り込み、強く反応する“過興奮性: Overexcitability”の特徴を有することが想定される。本研究では、ギフテッドの基準を満たす人々及び年齢性別をマッチさせた定型発達者を対象として、認知機能、過興奮性および日常生活機能の関連を検討し、過興奮性および日常生活機能の改善を目指した介入法の開発につながる基礎情報を得ることを目指す。
著者
山口 泰史
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.409-421, 2022 (Released:2022-11-11)
参考文献数
26

本稿では、大学進学者が同年代の過半数を占めるようになった今日の日本社会において、大学進学希望の形成時期が教育達成における階層差の形成メカニズムにどのように寄与しているのかを、高校生のパネル調査データを用いて検討した。分析から大学進学希望形成時期が出身階層と教育達成の関連を媒介していることが示唆されたことを踏まえて、高校による生徒の進路に対する「枠づけ」と教育達成の階層差形成の関連を議論した。
著者
青山 将己 山口 泰雄 長ヶ原 誠
出版者
日本生涯スポーツ学会
雑誌
生涯スポーツ学研究 (ISSN:13488619)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.1-12, 2022 (Released:2022-05-25)

The purpose of this study was to examine the background and influence of the integration between the Netherlands Olympic Committee and the Netherlands Paralympic Committee. We adopted the framework of a neo-institutional theory. Semi-structured interviews were conducted with two staff of the Netherlands Olympic Committee and the Netherlands Paralympic Committee. In addition, we collected data from the archival materials to complement and check the information obtained from the interview. The analysis was based on thematic analysis. An important milestone in this integration was marked by the signing of a declaration on the initiative of the former State Secretary of the ministry of Health, Welfare and Sports. This declaration was the initiative to integrate disability sport in mainstream sport. The Netherlands Olympic Committee was under formal and positive pressure to sign a country-led declaration, and this integration was " coercive isomorphism." The integration had the advantages of "sharing resources" and "getting fund", led to the strengthening of institutional legitimacy. Also, it had influences on "integration of the national federations and the national disability sport organizations," "grassroots expansion in region sport clubs," and "inclusion of society." Notably, these influences by integration were considered to "mimetic isomorphism" and "normative isomorphism." This study has contributed to the theoretical accumulation of a neo-institutional theory in the context peculiar to sport.
著者
山口 泰平 道辻 洋平 牧島 信吾 髙橋 諭
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.88, no.905, pp.21-00277, 2022 (Released:2022-01-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1

Wheel slips in railway vehicles cause poor acceleration and damage to wheels and rails. Re-adhesion control is widely used to resolve wheel slips in electric motor cars. In re-adhesion control, it has been an important problem to consider appropriately the vehicle dynamic motion, which affects the control performance greatly. In this study, we investigate the mechanism and characteristics of slip misdetection phenomena which occur due to bogie vibration excited during re-adhesion control. We construct a three-dimensional vehicle model including roll motion with parallel Cardan drives. The tangential force coefficient model between wheels and rails includes the influence of translational velocity, slip velocity and wheel loads. The simulation model is validated by comparison with measurements in a test run of a real vehicle conducted in previous research. Simulation results illustrate the behavior of the bogie under traction such as the difference of wheel loads of four wheels and the attitude of the bogie frame. It is shown that continual slip misdetection can occur because of pitch and roll vibration of the bogie frame which is excited during re-adhesion control when the primary vertical damping coefficient is small. The misdetection is prevented by changing the amount of motor torque reduction in re-adhesion control. The appropriate range of the amount of reduction to avoid the misdetection gets narrower as the primary vertical damping coefficient decreases. The primary vertical suspension stiffness and characteristic of tangential force coefficient also affect the occurrence of the misdetection.
著者
山田 浩久 宮原 育子 櫛引 素夫 林 玉恵 山口 泰史 初澤 敏生
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.237-247, 2020

<p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;本稿は,2020年8月8日の13:30~15:00に「Post COVID-19に向けた東北の観光戦略」をテーマにオンラインで開催された北東支部例会の報告である.参加者は北海道から九州まで,非学会員を含めて41名を数えた.広域からの参加が認められたことは,Post COVID-19に対する関心が地域を選ばないことの現れであると思われるが,それを支部例会で議論することができたのはオンライン開催のメリットである.会場では,東北地方を対象にして,震災復興事業とCOVID-19対策の両立,国と県の施策のずれ,航空機と新幹線への影響に関する報告があった後,東北地方のインバウンド旅行に大きな影響力を持つ台湾の観光情勢について報告がなされ,総合討論において活発な意見交換が行われた.</p>
著者
由良 晋也 戸塚 靖則 大井 一浩 馬渕 亜希子 由川 哲也 出山 文子 大廣 洋一 後藤田 章人 松樹 隆光 岡田 和樹 山口 泰彦 小松 孝雪 井上 農夫男
出版者
The Japanese Society for Temporomandibular Joint
雑誌
TMJ : journal of Japanese Society for Temporomandibular Joint : 日本顎関節学会雑誌 (ISSN:09153004)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.200-204, 2002-08-20

咬合力と関節内圧との相関関係を明らかにする目的で, クローズド・ロック症例と顎関節症状のないボランティアの咬合力と関節内圧を同時に測定したので報告する。<BR>対象は, クローズド・ロック症例4名4関節と顎関節症状のないボランティア4名4関節である。プレスケール50HタイプRを用いて咬合力を測定し, 動脈圧モニタリング用のトランスデューサーを用いて関節内圧を測定した。<BR>咬合力と関節内圧との間の相関係数は, クローズド・ロック症例とボランティアのいずれも0.7以上 (0.710~0.954), 決定係数は0.5以上 (0.504~0.910) であった。これらの結果から, 咬合力と関節内圧との関係は, 直線的な正の相関関係であることが示された。回帰係数は, 被験者により差のあることが示された (15.3~270.9)。<BR>関節内圧は咬合力の増加に伴って上昇することから, 強い噛みしめが顎関節に負荷を加える因子の一つであることが明らかとなった。
著者
片平 浩孝 山本 敦也 増渕 隆仁 今津 雄一郎 山口 泰代 渡邊 典浩 金岩 稔
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.191-195, 2019

<p>アユ冷水病の蔓延を防ぐためには遊漁者の協力が不可欠であるが,現場でどの程度理解を得られているのか未だ把握されていない。そこで本稿では,三重県内のアユ釣り大会開催に際し集積されてきた意識調査を報告する。2015年から2018年にかけて集められた総回答数598件(回答者343名)のうち,冷水病への対策を講じているとの回答は393件(65.7%),対策なしとの回答が135件(22.6%)であった。調査期間内で追跡できた回答者のうち,22名で対策を講じる意識改善が見られたが,反対に20名が対策をやめるか不明となる変化も見られた。これらの結果は,冷水病への当事者意識は未だ十分ではなく,さらなる普及啓発が必要であることを示唆している。</p>
著者
山口 泰弘
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.395-402, 2014
被引用文献数
2

高齢者に特徴的な肺組織像である老人肺では,炎症性変化や不規則な肺胞壁の断裂を伴うことなく,気腔が拡大し,肺の弾性収縮力は低下する。また,加齢とともに胸郭は硬くなり,呼吸筋力も低下する。そのため,呼吸機能検査では,一秒率が低下,肺活量が低下,残気量が増加,肺拡散能が低下する。そのほか,特に運動時には,加齢とともに肺動脈圧は上昇しやすくなる。睡眠呼吸障害の頻度も高齢者で増加する。また,高齢者では気道過敏性の亢進を示す症例が増えることや,線毛活動による気道異物の排出が遅延していることも報告されている。運動時には呼気流速の低下から一回換気量が十分に増加せず,加齢による運動耐容能低下の一因となっている。さらに,高齢者では,脊柱の強い後弯や著しいるい痩など,多様な病態が気道・肺機能の低下を増強する。加齢による劇的な呼吸機能の低下に比べて,安静時の動脈血酸素分圧の低下は軽く,動脈血二酸化炭素分圧は変化しない。すなわち,高齢者では,肺の障害に対する予備能が低下しているといえる。このような機能低下は,肺結核後遺症による呼吸不全の進行や慢性閉塞性肺疾患患者の経年的な呼吸機能低下の要因であり,また,高齢者に肺炎が頻発し,重症化,長期化しやすい一因でもある。
著者
大田 秀隆 本多 正幸 山口 泰弘 秋下 雅弘 大内 尉義
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.627-631, 2012 (Released:2013-03-04)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

プロトンポンプ阻害薬であるランソプラゾール長期内服によるcollagenous colitisが原因となった,慢性に持続する水様下痢症の一例を報告する.症例は75歳女性.ランソプラゾール(30 mg/日)内服開始後より水様性下痢および体重減少が持続し,上部・下部消化管内視鏡・便中脂肪精査・消化管シンチが施行されたが,上部消化管内視鏡で萎縮性胃炎を認めた以外に異常所見は認められず,以後2年以上にわたり慢性的な下痢が持続していた.2011年5月末より,下痢症状に加え,歩行障害・意識障害が出現し,原因精査および加療目的に入院となった.入院後,薬剤性の下痢を疑ってランソプラゾールを中止しファモチジン(20 mg/日)に変更,中止後数日で下痢は軽快消失しており,同剤によるcollagenous colitisが原因として疑われた.下部消化管内視鏡による病理組織検体からcollagenous colitisの所見を認め,確定診断に至った. collagenous colitisは特に高齢女性に多いことがわかっている.原因不明の難治性下痢症として放置されることが多く,長期間持続する下血を伴わない水様下痢が主症状であり,腹痛・体重減少・低蛋白血症を伴うこともある.これらの症状は,通常は原因薬剤の中止のみで数日~数週で症状は改善し治癒するが,放置されたまま原因不明の下痢症として扱われている場合も多い.これら慢性的な下痢症状は,高齢患者のADLを著しく低下させ,また介護者による負担をも増やすことになる. 今回の症例のように確定診断には,その他の原因疾患の除外・下部内視鏡検査正常所見・下部消化管内視鏡による大腸粘膜生検が必須であるが,確定診断に至る前にcollagenous colitisを念頭に,原因となる薬剤を中止してみることが重要であると考えられ,ここに報告する.