著者
伊藤 恒 山本 一徹 福武 滋 山口 敏雄 平 孝臣 亀井 徹正
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.43-46, 2020 (Released:2020-07-21)
参考文献数
13

薬剤抵抗性の本態性振戦(essential tremor:ET)10例(男性8例,女性2例,67.1±17.5歳,全例右利き)に対してMRガイド下集束超音波(MR–guided focused ultrasound:MRgFUS)による左視床中間腹側核(ventral intermediate nucleus:Vim)破壊術を行い,12か月後までの有効性と安全性を検討した.治療直後から全例で右上肢の振戦が改善し,2例で振戦が再増悪したものの,右上肢のClinical Rating Scale for Tremorの平均値は12か月後まで約60%の低下が持続した.しかし,Quality of Life in Essential Tremor QuestionnaireのGlobal Impression Scoreの平均値は有意な改善を認めなかった.有害事象の大部分は軽微かつ一過性であり,治療から6か月後以降に新規の有害事象は生じなかった.MRgFUSによる片側Vim破壊術は薬剤抵抗性のETに対する治療選択肢の1つであるが,振戦の改善効果を高めるとともに,より多数例を長期に検討する必要がある.
著者
古賀 正則 W.F Menski 金子 勝 山本 一美 山本 由美子 浜口 恒夫 佐藤 毅 中村 平次 山崎 利男 松井 透
出版者
一橋大学
雑誌
海外学術研究
巻号頁・発行日
1985

本年度の研究計画の目的は, 昨年度イギリスにおいて実施した調査によりえられたデータ,とりわけ面接調査票のデータを整理し, 一定の解析をおこなうことによって,今後の調査,研究に役立てることにあった. したがって, 本年度の研究成果はあくまでも中間的総括の域を出ないものであることを,まずことわっておきたい.1.研究成果の概要データの整理,解析によってえられた新たな知見,成果の要点は次の通りである.(1)第二次大戦後,イギリス植民地体制の崩壊にともなって,英領植民地各地に展開していたインド人移民社会は大きな変動を豪り,植民地本国イギリスへの大量の移動をひきおこすとともに,インド亜大陸からイギリスへの移住もまた激増した. こうしたインド人移民の大きな二つの流れに応じて,イギリスにおけるインド人社会の間にさまざまな面で大きな差異がみられることが明らかとなった.(2)イギリスにおけるインド人移民社会の形成,発展の歴史,およびインド人移民社会の構造,インド人移民の組織,政治,経済,社会,宗教活動などを,ある程度解明しえた. 殊にインド人移民のカースト,宗教組織の果す役割の重要性が注目される.(3)インド人移民社会の形成,発展は,イギリスの社会に大きなインパクトを与えつつあるが,他方インド人移民社会は,イギリス社会の影響を蒙り,一定の変容を受けながら,移民社会独自のアイデンティティを形成しつつある. そこにみられるのは,移民社会の受入れ国社会に対する一方的な同化の過程ではなく,多文化社会という新らしい社会の形成にむけての,共存的発展の過程であると考えられる.2.今後の研究の展望これまでの研究によってえられた新たな知見の一つは,インド人移民にとって必らずしもイギリスが最終的な移民先ではなく,かなりのインド人移民がイギリスを経由して,さらに他の英連邦諸国,とりわけカナダ,オーストラリア,あるいはアメリカ合衆国へ再移住しているという事実であった. われわれは今後の研究において,こうした再移住の過程を明らかにするとともに,インド人移民社会それ自体の変容と,受入れ国の社会にあたえるインパクトの解明を試みるつもりである. また,移民の主な送り出し地域の一つであるインドのグジャラート地方の調査を実施することによって,移民送出のメカニズム,海外移民の存在によって,この地方の蒙るインパクトを解明したいと考えている.
著者
山本 一生
出版者
教育史学会
雑誌
日本の教育史学 (ISSN:03868982)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.60-72, 2019

<p>This paper clarifies the actual state of compulsory education during Chinese collaboration with Japan by analyzing the attributes of students who attended public elementary schools in Qingdao during the period of occupied northern China (1937-1945). The target of analysis includes student records from public elementary schools in the Archives of Qingdao. These materials were used to analyze in concrete detail differences in the attributes between students in industrial areas and fishing villages in the period of occupied northern China. This evaluation reveals a stratified structure involving fishing regions where local private education was subsumed by public education versus industrial regions where children moved between public elementary schools, as well as boys who were expected versus girls who were not expected to attend elementary school until graduation.</p>
著者
近藤 義典 松本 秀一 岩田 隆敬 佐藤 直樹 今田 高峰 山本 一二三 小林 聡 本山 昇
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
年次大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp._S191022-1-_S191022-5, 2012

We are now studying high accuracy reentry guidance algorithms for reentry capsule. In this paper, we propose a real-time prediction guidance using numerical integration. The real-time prediction guidance is an explicit guidance law using numerical integration for range prediction during reentry flight. One of technical issues of the real-time prediction guidance using numerical integration is that navigation error and wind error lessens the navigation accuracy. Especially, errors in the last phase of reentry flight affects the navigation accuracy. So we researched that mechanism by investigating the navigation ability (ability of range adjustment) of several navigation segments.
著者
廣田 陽平 岩田 有弘 横田 啓太 吉川 一志 山本 一世
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.47-57, 2016

&emsp;目的 : 歯の硬組織切削では, Er : YAGレーザーは特に優れた効果を示し, 臨床応用されているが, 高速回転切削器具と比較し除去効率では到底及ばず, 治療時間の延長などが問題となっている. われわれの研究グループは切削効率を向上させるため, 注水機構を霧状に改良した試作チップを作製し, 実験を重ねてきた. 今回この試作チップが製品化され, CS600Fとして発売された. 本研究はCS600Fを用いてレーザー照射を行い, ヒト象牙質に対する切削体積量, チップ先端損耗体積, チップ先端損耗率および先端出力への影響について検討した. <br>&emsp;材料と方法 : 被験歯として健全ヒト大臼歯を用い, 象牙質までモデルトリマーにて面出しを行い, 耐水研磨紙にて#2000まで研磨を行った後, 0.5mm/sでムービングステージを移動させながら4&times;4mmの範囲に均一にレーザー照射を10回行った. レーザー照射は試料までの距離を0.5, 1.0mmおよび2.0mmに規定した. C600Fにてレーザー照射を行った群をコントロール群, CS600Fにてレーザー照射を行った群を霧状噴霧群とした. 各試料および各照射チップをレーザーマイクロスコープにて観察し, 象牙質切削体積量およびチップ先端損耗体積量を計測し, チップ先端損耗率を算出した (n=3). また, 照射後の先端出力を計測し, 照射前に規定した先端出力と比較した. <br>&emsp;成績 : 象牙質切削体積量およびチップ先端損耗率ではすべての条件でコントロール群と比べ霧状噴霧群が有意に高い値を示し, チップ先端損耗体積および先端出力ではコントロール群と霧状噴霧群間で有意な差は認められなかった (p=0.05). <br>&emsp;結論 : 象牙質切削において, 霧状噴霧注水は, チップの損耗状態は変わらずに象牙質切削体積量を向上させることが示唆された. また, 従来の注水機構と霧状噴霧注水ともに, 10回照射後も先端出力の変化は認められなかった.
著者
粕谷 大智 竹内 二士夫 山本 一彦 伊藤 幸治 坂井 友実
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.201-206, 1999 (Released:2010-04-30)
参考文献数
13

We executed an acupuncture therapy to 62 lumbar spinal canal stenosis cases who were diagnosed by CT, MRI photo state and clinical symptom and examined the result.The 36 men and 26 women in this study had a mean age of 67.3 years.An acupuncture was executed by aiming to give an effect to the soft tissues and a blood circulation around the area where the stenosis was recognized then pierced facet joint closely and deeply and gave an electric acupuncture stimulus.14 cases were very good and 17 cases had good results according to the JOA score. No cases worsened.We concluded an acupuncture treatment was effective for treating lumbar spinal canal stenosis.
著者
山下 満智子 松原 秀樹 中島 貴志 上田 奈穂 山本 一恵 大槻 馨 梅岡 俊二 正田 一貴 宮藤 章 市川 恵 鵜飼 智代 村上 恵 真部 真里子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成21年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.2118, 2009 (Released:2009-08-28)

【目的】 加熱調理機器(IHクッキングヒーター[IH]・ガスコンロ[ガス])による調理特性の相異を究明する目的で、本研究では鍋物調理に着目し、加熱調理機器の違いによる土鍋の昇温特性について検討した。 【方法】 IH・ガス兼用土鍋[兼用土鍋]に、鍋肌測定用として鍋胴部の鍋肌最高温到達部(鍋底よりIH 39mm、ガス49mm)にシート熱電対、水温測定用として鍋中央部で鍋底より17.5mmにシース熱電対をあらかじめ設置した。IHは、定格出力が得られるように電圧はコンセント電圧のまま(強使用時 99.5~100.6V)、ガスはガス圧をガスガバナで3段階に調圧(強使用時 0.78kPa、1.44kPa、2kPa)した。1400ccの水道水を入れ、IHならびにガスを用いて加熱し水温と鍋肌温度を連続的に20分間計測した。同条件で、加熱開始15分後の土鍋の状態(水温100℃に到達)を赤外線サーモグラフィ装置で撮影した。 【結果】 IHとガスの加熱開始20分後の鍋肌温度は、それぞれ84℃、125℃(ガス圧0.78kPa)、 156℃(ガス圧1.44kPa)、170℃(ガス圧2kPa)となり、IHとほぼ同じ時間で水が100℃に昇温したガス圧0.78kPaでも、ガスはIHより41℃高くなった。サーモグラフィ画像からも、IHでは鍋肌温度が上昇せず、加熱中鍋肌が水温を超えないことが確認できた。別種の兼用土鍋でも同様の傾向であった。また、ガス専用土鍋を用いて、ガス圧1kPa(ガス専用土鍋中の水温上昇が兼用土鍋とほぼ同様になる条件)にて実験したところ、兼用土鍋と比べ鍋肌温度上昇が抑えられたが、常に水温より高く加熱開始20分後115℃に到達した。このような昇温特性の相違が鍋物調理のおいしさに及ぼす影響は今後の検討課題である。
著者
竹島 雄介 岩崎 由希子 岡村 僚久 藤尾 圭志 山本 一彦
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.12-20, 2017 (Released:2017-05-23)
参考文献数
64
被引用文献数
1 1

細胞の代謝制御の重要性は,癌細胞においてエネルギー産生を解糖系に依存する現象がWarburg効果として報告されたことに始まる.近年,免疫担当細胞における代謝の制御が細胞の分化や機能において鍵となるという知見が蓄積されつつあり,免疫担当細胞が休止状態から活性化状態に入る際には,酸化的リン酸化に依っていたエネルギー産生から,解糖系に依存したエネルギー産生へと大きな代謝状態の変化を要することが明らかとなっている.特にT細胞においては,ナイーブT細胞からエフェクターT細胞への分化過程における代謝制御の研究がより詳細に解明されており,免疫代謝の分野では最も研究が進んだ分野となっているが,B細胞や骨髄球系の細胞においても特徴的な代謝制御が明らかにされつつある.現在,全身性エリテマトーデスを始めとする自己免疫疾患において,免疫担当細胞における代謝変調は慢性的な免疫系の活性化の結果としてばかりでなく,疾患の引き金としても極めて重要であると考えられている.本稿では,全身性エリテマトーデスにおける代謝制御について,T細胞およびB細胞を中心に概説し,病態と如何に関わっているか,更には将来的な治療ターゲットの可能性について考察する.
著者
山本 一
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.415-421, 2011-10-10 (Released:2011-10-13)
参考文献数
1

特許出願は,企業等における研究開発の結果としてなされ,原則として公開されるものであるから,こうした特許情報を分析することにより,各技術分野におけるプレイヤーとその活動状況,得意分野などを知ることができる.研究開発段階や知財戦略などへの特許情報の活用を図るため,特許庁では例年,特許出願技術動向調査と称して特許出願を基にした技術動向の調査を実施しており,平成22年度のテーマとして「電子写真装置の定着技術」を選択した.本稿では特許出願技術動向調査の概要及びその調査結果を紹介する.
著者
庄田 宏文 藤尾 圭志 山本 一彦
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.46-50, 2012 (Released:2012-02-28)
参考文献数
15

Immunoglobulin Binding Protein (BiP)は熱ショック蛋白(HSP)70ファミリーに属するタンパク質で,生理的にはストレス応答蛋白として滑面小胞体に発現し,蛋白のfoldingを行うシャペロン蛋白である.BiPに対する自己免疫応答の報告は,関節リウマチ,全身性エリテマトーデスなどでみられ,主に血清抗BiP抗体が上昇するとの報告がある.我々のグループからは,新たにシトルリン化BiPに対する自己抗体が関節リウマチで出現することを報告した.抗シトルリン化蛋白抗体は関節リウマチの発症機序に密接な関与が推定されており,BiPに対する自己免疫応答の重要性が示唆される.また関節リウマチにおいては,BiPを認識するT細胞の報告もある.一方でBiPそのものには制御性活性があることが知られている.マウスモデルにおいてはBiPを認識するT細胞がIL-4, IL-10を産生し関節炎を抑制することや,BiPで刺激された樹状細胞は制御性活性を持つことが知られている.このようにBiPに対する免疫系の応答は多様であり,そのバランスが崩れることで自己免疫寛容が破綻することが,自己免疫疾患発症に繋がりうると考えられている.
著者
大瀧保広 野口宏 山本一幸 外岡秀行 鎌田賢
出版者
国立大学法人 情報系センター協議会
雑誌
学術情報処理研究 (ISSN:13432915)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-8, 2019-09-17 (Released:2019-09-17)
参考文献数
8

多くの大学では情報処理演習システムの一部として印刷環境を提供しており,学生のレポート作成等に供している.どのような印刷環境を提供するかは大学の方針により様々であるが,教育的観点から枚数制限や課金を行う大学が増えつつある.茨城大学では教育用電子計算機システムの一部として印刷環境を提供しており,学生はIT基盤センターが管理するPCから印刷できる.2011年度までは枚数制限もなく無料で印刷できたが,2012年度から印刷枚数制限を課すようになり,2017年度には完全従量課金制へと移行した.当センターでは,印刷状況を把握するために2010年10月から詳細な印刷履歴を記録しており,年度単位で揃ったものとしては2011年度から2018年度までの8年にわたるデータを収集した.本論文では印刷履歴のデータ等に基づいて,印刷環境の変化に伴って学生の印刷行動がどのように変化したのか考察する.