著者
山本 泰大 渡邊 紘章 櫻井 愛菜 近藤 綾子 浅井 泰行 木原 里香 小田切 拓也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.55-58, 2020 (Released:2021-02-16)
参考文献数
11

【緒言】終末期がん患者に対して,痙攣発作の治療を目的とした抗痙攣薬の使用は臨床現場において稀でなく,経口および静脈投与不可能な症例への治療選択が求められることは少なくない.われわれは終末期がん患者で末梢血管の確保ができない症例に対してレベチラセタム(LEV)注を皮下注射した症例を3例経験したため報告する.【症例】3症例の年齢は83,75,82歳で,LEV皮下注射の投与時期は予後1カ月程度であった.3例ともLEVを点滴静脈から皮下へ投与経路変更した事例である.LEV皮下注射の実施後,痙攣の増悪や注射部位反応,その他の有害事象は確認できなかった.【考察】末梢血管確保の不可能な終末期がん患者においてLEVの皮下注射は痙攣発作の治療の選択肢の一つとなり得ると考える.
著者
小林 信義 山本 泰 明石 真言
出版者
Japan Health Physics Society
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.323-330, 1998 (Released:2010-02-25)
参考文献数
44
被引用文献数
7 8

Prussian blue, a blue pigment, belongs to the ferric cyanoferrate (II) group. It binds univalent metal ions, and the binding activity depends on their ionic radius. Prussian blue is not absorbed from the gastrointestinal tract in a significant amount. The cesium is entero-enteric cycled through the intestine. Prussian blue inhibits the reabsorption of the cesium. Many studies using experimental animals showed that the oral administration of Prussian blue increases the rate of the fecal excretion of radiocesium which results in shortening its biological half life. The accident in Goiania, Brazil, in 1987 showed that Prussian blue effectively accelerated the removal of radiocesium without toxicity. In the present review, we describe Prussian blue from a biological aspect and discuss its clinical application for the decontamination of cesium in radiation accidents.
著者
山本 泰
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.262-281, 1993-12-30 (Released:2010-01-29)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

一九九二年四月のロサンゼルス事件は、現代アメリカのマイノリティ問題の深刻さを改めて浮き彫りにした.この事件が黒人青年を暴行した警察官に対する無罪判決に端を発している以上、これは差別に対するマイノリティの大衆的抗議である.しかし、その背景についていえば、この事件は、 (1) 現代のマイノリティ問題の焦点は人種 (黒人) 問題ではなく、大規模な《都市アンダークラス》の問題であること、 (2) 都市貧困層=黒人ではもはやなく、そこには、きわめて多様な人種・民族が含まれること、 (3) 都市最下層の貧困は、六〇年代の公民権運動以来、少しも改善されていないこと、を劇的な形で示したのである.このような複合的な抑圧・葛藤関係はどのような構造のなかで、いかにして生み出されるのか、本論では、人種や民族に中立であるはずの自由主義的多元主義体制のもとにある現代のアメリカに、何故、人種や民族間の葛藤・反目がかくも顕在的にあらわれるのかを考察する.人種や民族の線に沿った集団形成やエスニシティの主張は下層の人々が上位者の資源独占に対抗する社会戦略であるが、この戦略は逆に、ルール指向・個人主義・手段主義といった基準になじまないが故に、中産階級が下層に対しておこなう差別に識別標識と正当化根拠を与えてしまうことになる.階層間葛藤は、自由主義的多元主義体制を仲立ちに人種間葛藤へと転態されるのである.
著者
山本 泰雄
出版者
日本福祉大学大学院
雑誌
日本福祉大学大学院福祉社会開発研究 = The Study of Social Well-Being and Development, Nihon Fukushi University Graduate schools (ISSN:24362018)
巻号頁・発行日
no.16, pp.11-20, 2021-03-01

本研究は,高齢者の社会活動に向けた支援を検討する為の一研究とし,参加パターンとSense of coherence(SOC)との関連を明らかにすることを目的とした.要支援・軽度要介護者110名を対象に, SOCスケールと構造化面接を実施し,類型化した参加パターンとSOCとの関連を分析した.結果,参加パターンは継続群,再開群,不参加移行群,不参加継続群の4つの基準で分類され,不参加継続群以外でSOC下位因子間での差が有意に認められた.また,処理可能感では,不参加継続群よりも継続群と再開群が,有意味感では,不参加移行群,不参加継続群よりも継続群,再開群が有意に高い結果が得られた.要支援・軽度要介護者の社会活動促進に向けてSOCなかでも「処理可能感」「有意味感」を高める支援が有効である可能性が示唆された.
著者
山本 泰智 山口 敦子
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.1K2J403, 2019 (Released:2019-06-01)

我々はUmaka-Yummy Dataという生命科学分野のLinked Dataを提供するSPARQLエンドポイントの評価システムを構築し、結果を公開している。その目的は、より良いLinked Data利用基盤を構築することであり、そのためには、Linked Data提供者と利用者の相互理解を促すことが必要と考えているからである。SPARQLエンドポイントの評価は稼働率など6つの観点から行い、100点満点の数値化したUmaka Scoreとしている。これまで3年間の運用を経験し、Linked Data提供者から様々な意見や質問を得ている。本論文ではこれらの意見や質問を議論し、上述のより良いLinked Data利用基盤を構築するために必要な事項をまとめた。その結果、Linked Data提供者と利用者の間の相互理解を促すのに先立ち、信頼できる評価を提供するために、Linked Data提供者と我々の間の信頼関係の構築が重要であることが分かった。
著者
田舎中 真由美 山本 泰三 菅野 洋平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】骨盤底筋群,腹横筋,横隔膜,多裂筋はインナーユニットと総称され,腰痛症や尿失禁に対する運動療法の際に呼吸法と併用してトレーニングされている。臨床上,尿失禁や臓器下垂の症例や経産婦の呼吸は胸式呼吸が多い。骨盤底筋群に機能低下がある場合,吸気に骨盤底筋群を下方に押し下げることを避けるために胸式で呼吸すると考えられる。昨年の本学会で我々は意図的な腹圧上昇課題により腹壁が膨隆すると骨盤底部は下降し,腹横筋は伸張されることを報告した。しかし,呼吸時の腹壁の動きが骨盤底筋に与える報告はまだない。本研究の目的は,超音波画像診断装置及び3次元動作解析装置を用い,呼吸様式の違いが骨盤底筋に与える影響を評価することである。【方法】対象は胸腹部及び骨盤内臓器の手術歴の既往がない健常成人男性7名(平均年齢36.3±9.1歳)とした。呼吸様式は上部肋骨を上下させる上部胸式呼吸(以下,上部胸式),下部肋骨を広げる下部胸式呼吸(以下,下部胸式),腹式呼吸(以下,腹式)とし,それぞれの様式で安静呼吸と最大深呼吸させた。各呼吸課題は事前に練習した。胸郭と腹壁の動きは3次元動作解析装置(VICON社製)を用い,マーカーは第2肋骨,両肋骨下端,臍にマーカーを設置し測定した。各呼吸様式における胸郭及び腹壁の動きは安静呼気終末を基準として吸気時の各マーカーの変化量を算出した。骨盤底筋群の測定には超音波画像診断装置(Sono Site社製MicroMaxx)を用いた。骨盤底筋の変化はWhittakerらの手技に準じ,背臥位で恥骨結合の上部にプローブを当て,膀胱後面の動きを骨盤底筋の動きとし,安静呼気終末と吸気終末,最大呼気終末と最大吸気終末に測定した。安静及び最大呼気終末時の腹壁から膀胱後下面までの距離を基準として,各呼吸様式における安静及び最大吸気終末の膀胱後面の下降率(下方が正の数)を算出した。統計学的分析は分散分析後にポストホックテストした。各呼吸様式における第2肋骨,下部肋骨,臍点の変化量,及び各吸様式の臍点の変化量と膀胱後面の変化量の相関を求めた有意水準は5%未満とした。【結果】被験者の安静呼吸様式は上部胸式が6名,腹式が1名であった。安静呼吸における第2肋骨の矢状面の変化量は,上部胸式で1.0±1.3%,下部胸式で1.4±1.5%,腹式で1.0±1.5%であった。下部肋骨の前額面の変化量は,上部胸式で1.4±1.1%,下部胸式で2.7±2.5%,腹式で2.1±2.9%であった。安静呼吸の腹壁の矢状面の変化量は上部胸式で7.9±16.8%,下部胸式で36.6±86.8%,腹式で25.0±58.4%であった。最大深呼吸における下部肋骨の前額面の変化量は,上部胸式で3.6±2.7%,下部胸式で3.9±3.5%,腹式で4.5±4.5%であった。安静呼吸における膀胱の下降率は上部胸式で0.8±1.6%,下部胸式で0.4±1.0%,腹式で7.5±4.9%であり,安静腹式の下降率が下部胸式より有意あった。最大深呼吸における膀胱の下降率は,上部胸式で3.9±1.4%,下部胸式で0.3±1.9%,腹式で7.5±2.7%であり,最大深呼吸では腹式の下降率が上部胸式及び下部胸式より有意であった。各呼吸様式の腹部の矢上面の動きと膀胱下降率の相関は認められなかった。【考察】最大腹式呼吸における吸気では他の呼吸様式に比べて骨盤底筋を下降させることが分かった。骨盤底筋群の機能不全例では腹式呼吸を避け,胸式呼吸を行っていることが多い。これは骨盤底部に過剰な腹圧をかけないための逃避動作を裏付ける結果となった。上部胸式呼吸同様に下部胸郭を外側に広げる下部胸式呼吸では骨盤底筋は下降しにくいことが分かった。DeToroverらによると下部胸郭に対して吸気に抵抗をかけると次の呼気相において腹横筋が選択的に促通されるとの報告もある。臨床において骨盤底筋群の運動療法の際,腹式呼吸を併用させて吸気で腹部を膨らませ,呼気で骨盤底筋群の随意収縮を促すことが用いられている。しかし,本研究の結果から骨盤底筋群の運動療法を行う場合,初期段階では下部胸式呼吸は吸気に骨盤底筋に過負荷を与えることなく呼気で随意収縮を促しやすくなるため有効であると考える。今後症例数を増やし,呼吸様式の違いによる骨盤底筋群及び腹横筋の随意収縮への影響や腹圧変化を確認し,適切な体幹のスタビリティートレーニングを行うためのプロトコルを検討する。【理学療法学研究としての意義】腹式呼吸は他の呼吸様式に比べて骨盤底筋を下降させることから,骨盤底筋に機能不全がある場合,初期段階では吸気で骨盤底筋に負荷を与えにくい下部胸式呼吸を併用した運動療法を行うことが有効である。
著者
豊田 和典 山本 泰三 矢口 春木
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101156, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】膝蓋骨上脂肪体(suprapatella fat pad;以下SPF)は膝蓋骨上端と膝蓋上嚢前面と大腿四頭筋腱遠位後面で形成される三角形を埋めるように存在しており、その機能は膝関節屈曲時の大腿四頭筋腱の滑走や伸展機構の効率を高めること(H.U.Staeubli,1999)や大腿骨と膝蓋骨間での膝蓋上嚢のインピンジメントを予防すること(C.Roth,2004)が報告されている。SPFに関する報告は、MRIを用いての膝関節前面痛とSPF拡大の関係(C.Roth,2004)や滑膜増殖の指標として有効性を検討した報告(M.E.Schweitzer,1993・Lee HS,2000)、超音波画像診断装置を用いてのSPF浮腫に対する超音波検査とガイド下局所注射の有効性を示した症例報告(B.V.Le,2009)がある。静的な指標はあるものの、膝関節運動時のSPF動態に関する報告はほとんどない。そこで今回、SPFの大腿四頭筋腱側の長さ(以下;腱側長)が膝関節屈曲時にどのように変化するか超音波画像診断装置を用いて検討した。【方法】対象は神経学的および整形外科的疾患の既往がない健常男性10名で、測定肢はすべて左下肢とした。対象者の平均年齢は32.9±4.7歳、平均身長は174±6.4cm、平均体重は66.2±9.0kgであった。測定姿勢は背臥位とし、膝関節伸展時および膝関節屈曲90度・120度・最大屈曲・正座時の長軸像を撮影した。膝関節屈曲角度は東大式ゴニオメーターを使用して設定した。撮影は超音波画像診断装置(esaote社製 MyLab25)を使用して、プローブを皮膚に対して直角にあて、過度の圧が加わらないように注意した。撮影したSPF腱側長を内臓デジタルメジャーにて計測した。測定部位は下前腸骨棘と膝蓋骨中央を結ぶ線上でプローブ端を膝蓋骨上端とし、膝関節屈曲時には膝蓋骨とプローブの位置関係が変化しないように膝蓋骨の動きに合わせてプローブを操作した。測定は3回行い、その平均値を測定値とした。測定および計測はすべて同一セラピストが行なった。検討項目は、膝関節伸展時、膝関節屈曲90度・120度・最大屈曲・正座時のSPF腱側長とその増加率とした。増加率は膝関節伸展時の計測値を基準としそれぞれの膝関節屈曲角度で比較した。統計処理は多重比較法を用い、すべての統計解析とも危険率5%未満を有意水準とした。統計処理にはSPSS Ver.14を使用した。【倫理的配慮、説明と同意】実験に先立ち、対象者には研究内容について口頭にて十分に説明を行い、同意を得た。【結果】膝関節伸展時のSPF腱側長は18.0±1.1mm、膝関節屈曲90度では22.2±1.8mm、膝関節屈曲120度では23.0±1.6mm、最大屈曲では25.7±1.3mm、正座時は28.5±1.4mmであった。SPF腱側長の増加率は膝関節屈曲90度では123.5±10.0%、膝関節屈曲120度では128.3±10.6%、最大屈曲では143.1±10.7%、正座時は158.6±12.3%であった。それぞれの膝関節屈曲角度のSPF腱側長増加率に主効果が認められた。膝関節伸展は膝関節屈曲90度・120度・最大屈曲・正座時、膝関節屈曲90度および120度では最大屈曲・正座時、最大屈曲では正座時との間に有意差があった。膝関節屈曲90度と120度との間には有意差はなかった。【考察】近年、関節拘縮や疼痛の原因の一つとして関節周囲の脂肪体が注目されている。膝関節周囲の脂肪体は膝蓋下脂肪体や大腿骨前脂肪体、SPFがあり、関節もしくは関節周囲のスペースを埋めるように存在している。大腿骨前脂肪体とSPFの機能は比較的類似しており、筋・腱や膝蓋上嚢の滑走性維持、大腿四頭筋腱のレバーアーム長維持による伸展機構の効率化機能が報告されているが、動態についての報告はほとんどない。今回、SPFの腱側長増加率を指標に膝関節屈曲に伴うSPFの動態を分析した結果、腱側長増加率は膝関節屈曲に伴い増加しており、特に最大屈曲、正座時において顕著であった。関節可動域、特に深屈曲や正座を獲得するためには、SPFは大腿四頭筋腱の滑走を促すだけではなく、大腿四頭筋などの他の軟部組織と連動して十分に変形できる柔軟性が必要であり、SPFは関節可動域を制限する軟部組織の一つである可能性が示唆された。今回は、SPF腱側長のみの分析であったが、膝関節屈曲時にはSPF膝蓋骨側が変形する様子も観察できており、今後はSPF膝蓋骨側の動態や関節拘縮との関連性などの研究をさらにすすめていきたいと考えている。【理学療法学研究としての意義】SPFは膝関節機能改善を図るためには重要な組織であると考えられるが、その動態については明らかにされていない点が多い。今回、健常者のSPF動態の一部が明らかになったことで、理学療法手技や評価に応用していけるのではないかと考える。
著者
山本 泰彦 武田 厚 長合 友造
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.704, pp.187-199, 2002-05-20
被引用文献数
1

十分な空気を混入したコンクリートが約半日から14日までの各材齢に保有している耐凍害性能を通常の急速水中凍結融解試験によって実験的に調べた. 実験結果の解析には, 試験中にセメントの水和が継続する影響を排除する手法として著者等が過去の研究で提示したデータ解析手法を適用した.<br>本研究では, 若材齢コンクリートの耐凍害性も, 強度および含水量に大きく左右され, 水セメント比の直接的な影響は小さいこと, 飽水状態にあるコンクリートに満足すべき耐凍害性を付与するためには24N/mm<sup>2</sup>以上の圧縮強度が必要であること等を示した. また, 寒中コンクリートの養生方法に関し, わが国で標準となっている湿潤養生よりも封かん養生に近い養生方法を採ることが望ましいことを示した.
著者
橘 眞理 山本 泰朗
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.83, no.10, pp.2132-2138, 1986 (Released:2007-12-26)
参考文献数
27
被引用文献数
3

急性胃アニサキス症20症例を対象としIgE型アニサキス抗体をRAST法で測定, 85%で陽性成績を得た. 抗体価は感染1~2日後より急上昇し, 3~5週で最高に達し, 以後ゆるやかに低下する. 一方, 横川吸虫症, アレルギー性疾患での抗体陽性率は, 夫々33%, 14%で抗体価は軽度上昇にとどまつた. アニサキス蔓延推定地域での一般住民及び一般外来患者の抗体陽性率は, 夫々26%及び31%であつたが, 短時日での抗体価の変動は認められないので, この数値は一般住民のアニサキス感染既往率, または他の線虫類感染及び既往率を示す可能性が考えられた. これらの成績よりIgE型アニサキス抗体の測定は, 特に経時的な変化を捉えることにより, 急性胃アニサキス症の補助的な診断方法として有用と考えられた.
著者
山本 泰由 大庭 寅雄
出版者
The Weed Science Society of Japan
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.29-33, 1977
被引用文献数
2

主要な畑雑草12種を供試し, 4段階の土壌水分条件下における種子の休眠覚醒状況を調査した。<br>1) 冬雑草のスズメノテッポウ, ノミノフスマ, ナズナは高土壌水分 (最大容水量の約85%) 下で休眠覚醒時期が早くなるが, スズメノカタビラ, ミミナグサは最大容水量の約43~85%の範囲では同時に覚醒された。たん水条件下では, スズメノテッポウ以外の草種はいずれの時期もほとんど発芽せず, ミミナグサ, ナズナでは大部分の種子が死滅したものと推察された。<br>2) イヌタデはたん水条件下で休眠覚醒が遅れた。ハルタデは高土壌水分ほど休眠覚醒が早まるが, たん水条件下では, その進行が緩慢であつた。<br>3) メヒシバ, オヒシバ, スベリヒユ, コゴメガヤツリの休眠覚醒は, 最大容水量の約43~85%の範囲では差がなかったが, ホナガイヌビユは85%水分で若干遅れた。また, メヒシバ, オヒシバはたん水条件下で休眠覚醒が遅れたが, たん水による種子の死滅はみられなかった。しかし, スベリヒユ, ホナガイヌビユ, コゴメガヤツリは10月中旬から4月中旬までのたん水によって多くの種子が死滅するものと推察された。
著者
湯澤 正通 山本 泰昌
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.377-387, 2002-09-30
被引用文献数
8

本研究では,理科と数学の関連づけの仕方を変えた授業が,生徒の学習にどのように影響するかを調べた。公立中学校の2年生が金属の酸化に関して定比例の法則(化合する物質の質量比は一定である)を2種類の授業方法で学習した。実験群の生徒は,最初に,定比例の法則を原子モデルから演繹した後,数学で学習した比例の知識を用いて,酸化前後の金属の質量比を求める課題を2回行った。その際,理科と数学の教師がチームで指導に当たった。他方,統制群の生徒は,マグネシウムの酸化の実験を行い,そこから,定比例の法則を帰納した。また,酸化前後の金属の質量比を求める課題を1回行い,すべて理科の教師から指導を受けた。その結果,成績高群の場合,実験群の生徒は,統制群の生徒よりも,授業後のテストで,数学の関数の知識を用いて,酸化前後の金属の質量関係を予測し,計算する得点が高かった。また,実験群の生徒は,統制群の生徒よりも,誤差のある測定値を適切に理解することができた。
著者
坂本 悠 山本 泰生 岩沼 宏治
雑誌
研究報告バイオ情報学(BIO)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.23, pp.1-6, 2012-06-21

近年,遺伝子制御系,シグナル伝達系や代謝系などの生体機構をひとつのシステムとして再構築する研究が進められている.実験機器のハイスループット化に伴い,生体システムに関与する観測データは急速に増加しており,システムと観測データ間の整合性を組織的に検証する技術が必要となってきている.本論文では,遺伝子制御系のようなネットワーク形式で表現される生体システムを多値論理の枠組みでモデル検査する手法を提案する.また酵母のグルコース抑制機構に関する生体ネットワークに対して本手法を適用した結果を報告する.Recently, a systematic approach has been evolved in biology to reconstruct biological mechanisms involved in genome, proteome and metabolome into one whole system. Along with high-throughput experimental tools like microarrays, it is required to analyze the consistency between a large amount of data and those reconstructed systems. In this paper, we propose a qualitative way with multiple-valued logic that enables to systematically evaluate those systems that are represented as networks, like gene regulatory networks. This paper also reports preliminary experimental results obtained by applying our technique to a biological network on the glucose repression system of S. cerevisiae.
著者
佐藤 仁 小西 史一 山本 泰智 高木 利久 松岡 聡
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.2009-HPC-123, no.6, pp.1-7, 2009-11-23

TSUBAME 上で Hadoop を実行するためのツール 「Tsudoop」 を開発した.Tsudoop は,既存システムの構成や運用方針の変更をすることなく,TSUBAME 上のジョブスケジューラである n1ge や Lustre ファイルシステムなどと協調して動作して Hadoop 実行環境を構築し,ユーザの MapReduce アプリケーションを実行する.予備実験として,このツールを用いて,生物医学系の学術論文を対象にした書籍情報データベースである MEDLINE に対してテキストの全文検索を行うアプリケーションを実行した.その結果,1 ノード (16 コア) での実行と 32 ノード (512 コア) での実行とを比較して 14 倍の性能向上を示し,TSUBAME のような高速な共有ファイルシステムやジョブスケジューラが存在するような計算環境でも,MapReduce アプリケーションの実行が可能なことを確認した.
著者
岩井 恵理華 山本 泰 飯塚 普子 末光 正昌 久山 佳代 小宮 正道
出版者
公益社団法人 日本口腔外科学会
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.630-633, 2021-11-20 (Released:2022-01-20)
参考文献数
12

Dipeptidyl peptidase-4 (hereinafter referred to as DPP-4) inhibitors are used in diabetes therapy. They lower blood glucose by inhibiting DPP-4 and promoting insulin secretion. Here, we report a case of oral mucous membrane pemphigoid caused by the oral administration of a DPP-4 inhibitor. A 61-year-old female with gingival erosion and bleeding in the maxilla from the right first premolar to the left first premolar was referred to our department. On the first visit, redness, blisters, erosion, and the Nikolsky phenomenon were observed in the aforementioned region. A biopsy was performed for suspected pemphigoid. A histopathologicaldiagnosis of pemphigoid was obtained using HE staining and the fluorescent antibody method. The patient had diabetes and had been taking a combination drug containing vildagliptin (DPP-4 inhibitor) and metformin hydrochloride for two years and six months. We suspected that the pemphigoid was caused by the DPP-4 inhibitor. A request for a prescription modification was made to the internal medicine department, and the DPP-4 inhibitor was replaced with canagliflozin hydrate. The symptoms (redness, blisters, erosion, and the Nikolsky phenomenon) disappeared one month after suspension of the drug containing the DPP-4 inhibitor. Furthermore, relapse has not occurred in the 2 years since.