著者
鈴木 信吉 森屋 泰夫 山本 隆
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.81-88, 1987-02-25 (Released:2010-02-26)
参考文献数
14
被引用文献数
5 5

一分子中に数個以上のO-O結合を持つポリ過酸化物 (PPO) を用いてビニルモノマーのブロックコポリマーの合成を行なった. 第一段重合はPPOで第一モノマーを重合させてポリマー中にO-O結合を持つブレボリマーを合成し, このポリマーに第二モノマーを付加重合させてブロックコポリマーを得た. メタクリル酸メチル (MMA) -スチレン (St) 及び酢酸ビニル (VAc) -スチレンの各等重量のモノマーの組合せについて行い, 次の組成の各ブロックコポリマーを得た. Poly- (VAc-b-st) /PVAc/PSt=68/24/8, Poly (VAc-b-St) /PVAc/PSt=84/6/10. 得られたブロックコポリマーについて, 成形物の電子顕微鏡による観察により, 微細な均一分散相を持つミクロ相分離構造を確認し, また, 相溶化剤としての機能も認めた.
著者
山本 隆久 内田 清久 斉藤 洋一
出版者
一般社団法人 日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.49-60, 1987-06-30 (Released:2012-11-13)
参考文献数
30

ラットに回腸広範囲切除を行い,最長12カ月までの胆汁酸代謝の変化につき検討した.回腸切除により糞中胆汁酸排泄量は増加し,胆汁中胆汁酸分泌量,胆汁酸プールサィズ,胆汁酸の腸肝循環回転数,胆汁酸の吸収効率は低下した,これらの変化は術後4週よりみられ,術後12ヵ月経過しても改善されなかった.肝では回腸切除により,胆汁酸特にCAの生合成が亢進し,CA系胆汁酸:CDCA系胆汁酸の比は術後6ヵ月まで増加した.反転小腸を用いた胆汁酸の吸収実験では,回腸切除後6ヵ月経過しても残存上部小腸に胆汁酸の能動吸収は認められなかった.以上の結果より,回腸広範囲切除により招来された胆汁酸吸収障害は,長期経過後も改善され得ないと結論される.
著者
山本 隆司
出版者
日本法社会学会
雑誌
法社会学 (ISSN:04376161)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.66, pp.16-36, 2007 (Released:2017-01-31)
著者
山本 隆志
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.157, pp.83-105, 2010-03

荘園・村落に居住する百姓の生活は田畠耕作を基本としたが、それだけでない。地域の自然を自然に近い状態で利用し、生活の糧としてきた。このような地域的自然の利用・用益を「生業」と概念化し、そのあり方を歴史的にとらえようとすると、「中世史」という時代区分のなかだけで問題をとらえることは難しい。本稿では、葦と菱を事例にして、平安時代から江戸時代前期の史料に基づいて考察するものである。難波浦では浦の用益の一つとして葦苅取が平安期から盛んであり、都の需要と結びついて増大したが、個別の荘園や村落の排他的独占地域は設定されなかった。琵琶湖周辺では鎌倉期からの用益が認められるが、南北朝期には荘園領域に編入されており、奥嶋庄では百姓等が庄官と対抗しつつ自己の独占的排他的葦場を設定する。これが戦国期になると村の排他的葦場を確保する動きが多くなり、当該地域の舟運・漁業などの多様な用益を否定することになるが、多様的用益を求める郷・村の動きも強く、相論が恒常的となり、調停も日常的となり、場合によっては領主権力に依存することとなった。菱の用益も奈良・平安期から見られるが、平安後期の武蔵大里郡のように水害地に在地側が意図的に栽培することも見られ、農民の救荒的食料として期待された。戦国~江戸期には、尾張や摂津の湿地帯では、菱栽培が都市需要を見込んだ商品的作物として栽培された例が見られるが、菱を独占的排他的に栽培する菱場を設定するにはいたらなかった。葦・菱ともに浦や湖辺の湿地に用益が見られるが、それは湿地の多様な用益の一つとして進展するのであり、葦場として特化した用益地の設定には在地での抵抗が起こり、葦場は設定されても、限定的な方向が在地の相論・調停のなかで展開する。湿地用益は、特定の用益目的に限定される傾向にも向かうことは少なく、多様な主体と用益形態が展開しており、そうした方向が在地での相論・調停のなかで維持されてきた、と考えられる。「湿田」もこのような多様な用益形態の一つであろう。
著者
須藤 茂 阪口 圭一 松林 修 鎌田 浩毅 加藤 完 山本 隆志
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山.第2集
巻号頁・発行日
vol.29, pp.S253-S265, 1984

Temperature measurements of the lava of 1983 in Miyake-jima in the Ako district were started fifty days after the eruption and have been continued since then. The following three kinds of temperature data have been obtained (Fig. 2). 1. Temperatures at 20 cm depth along a graveled temporary road on the clinkery surface of the lava using mercury and alcohol thermometers. 2. Temperatures at 0.5 to 2.5 m depth in iron pipes inserted into the clinker layer using thermocouples and mercury thermometers. The pipe holes were distributed along the temporary road and at scattered stations on the surface of the lava. 3. We drilled a borehole (DH-1) which penetrates through 5.5 m-thick lava into the previous ground. Temperature was measured at 10 points in the hole using thermocouples. For comparison, similar measurements in the Awabe district were made in pipes with depths up to 2.5 m (Fig. 3). These pipes were buried in the holes dug into the massive part of the lava for electric poles. The temperature data at 20 cm depth and in the pipe holes (Figs. 5-10) indicate that isothermal surfaces in the clinker layer are very complicated. This complexity is explained by rising plumes of hot vapor irregularly present in the lava field. The vapor is produced by degassing process in the massive part of the lava and comes up through newly formed cooling joints. Once a cooling joint is formed, the temperature of the massive part of the lava around the joint fell rapidly because a gas plume effectively transports the heat from the massive part to the surface. But the rate of temperature decrease varies greatly from one station to another. New plumes were formed sporadically and the temperatures of the new plumes were much higher than the decreased temperatures of the older plumes. Some older plumes died out because degassing process ended or the joints were self sealed by sublimates. It is necessary to arrange a number of observation stations and to add stations timely in order to reveal a cooling history of aa lava like the lava of 1983 in Miyake-jima. Around a plume, a convection cell was identified in the clinker layer (Figs. 16-18), which is similar to a hydrothermal convection system usually found in geothermal areas. The change of the temperature-depth profile of DH-1 with time (Figs. 11, 12) clearly shows that the lava heated the underlying previous ground. The peak shape of the profile has become broader and the depth of the maximum temperature has steadily fallen. The change of the temperature-depth profile also suggests that the upper clinker layer prevented rainfall from effective cooling of the massive part of the lava for the first 250 days. During that time, raindrops were evaporated in the clinker layer and did not reach the massive part below the clinker layer. Difference of cooling rate between Awabe lava and Ako lava may be due to the difference of the thickness of the clinker layers (Figs. 15, 19).
著者
阿久津 典子 阿久津 泰弘 山本 隆夫
出版者
The Surface Science Society of Japan
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.20, no.12, pp.837-844, 1999-12-10 (Released:2009-08-07)
参考文献数
69

We present a highly reliable statistical mechanical approach to calculate step-related quantities on the vicinal surface, which is comprised of the imaginary path-weight random walk method and the numerical renormalization group method. We applied the method to the studies of Si(001), Si(111) 7×7 and Si(111) 1×1 surfaces. From the effective kink energy, we obtain anisotropic step tension, step stiffness, equilibrium island shape, and step interaction coefficient, which allows quantitative comparison with experiments.
著者
山本 隆彦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.36, no.10, pp.592-596, 1987
被引用文献数
1 4

塩化物イオン,臭化物イオン及びヨウ化物イオンそれぞれ0.5mg以下を含む溶液50cm<SUP>3</SUP>に硝酸銀溶液を加え生成するハロゲン化銀の沈殿を0.45μmメンブランフィルター上に薄膜状に捕集し,蛍光X線分析法による各ハロゲン化物イオンを測定する方法を検討した.約0.9M硝酸酸性溶液中に生成したハロゲン化銀は過剰の銀イオンで溶解せず沈殿は定量的に形成される.沈殿条件を5℃,5分間とした.検量線は塩化物イオンは0.1mg以下で直線性を示すが,0.1~0.5mgでは曲線となった.臭化物イオン及びヨウ化物イオンは0.5mg以下で直線性を示した.検出下限は,塩化物イオンで0.2μg,臭化物イオンで0.1μg及びヨウ化物イオンで0.5μgであった.再現性は各ハロゲン化物イオン80μgで相対標準偏差(<I>n</I>=5)は2%以下で良好であった.これらの3ハロゲン化物イオンが共存した試料に本法を適用したところ±3%の誤差で同時定量が可能であった.本法を雪中のハロゲン化物イオンの測定に適用するに当たって,通常の雨水中に含まれるイオンを対象として共存イオンの効果を検討したが,妨害はほとんどなかった.日本海側の雪中のハロゲン化物イオンを測定し,満足すべき結果を得た.
著者
田中 肖吾 石原 寛治 倉島 夕紀子 大野 耕一 山本 隆嗣
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.99-103, 2013-01-31 (Released:2013-04-17)
参考文献数
41

患者は86歳,女性。以前から左鼠径ヘルニアを自覚していたが放置していた。また認知症があり食べ物を飲み込む習慣があった。平成23年10月発熱を主訴に来院。触診上,腹部全体に圧痛および筋性防御を伴っていた。左鼠径ヘルニアは疼痛もなく用手還納は可能であった。血液検査上著明な炎症所見の亢進を認めた。腹部CT像上,わずかな遊離ガスおよび左鼠径ヘルニアを認めたが,穿孔部位は同定できなかった。また異物の描出も認めなかった。汎発性腹膜炎の診断で緊急開腹したところ,Douglas窩膿瘍の中に爪楊枝を認め,左鼠径部に陥入していた小腸に穿孔部位を認めたために小腸部分切除を施行した。術後経過は良好で,術後6日後に鼠径ヘルニア修復術を施行した。その後家人より受診2日前に作った串揚げにつかった爪楊枝と串が数本無くなっていたとの報告をうけ,術後8日後にCTを撮影したところ,盲腸に線状の高吸収域を認めたため遺残異物と診断した。線状高吸収域は術後13日後には横行結腸に移動していた。術後15日後に大腸内視鏡を施行したところ横行結腸に串を認め,摘出した。経過良好で術後22日後に退院となった。異物誤飲に対しては詳細な病歴聴取と術後症状がなくても遺残がないかCT検査を行うことが重要と思われた。
著者
山本 隆一郎 今泉 結
雑誌
江戸川大学心理相談センター紀要 = The bulletin of Edogawa University Psychological Counseling Center
巻号頁・発行日
vol.1, pp.15-24, 2020-03-25

本研究の目的は,拡張版計画的行動理論(TPB-E)に基づき大学生におけるインフルエンザワクチン接種行動意図の関連要因を探索することであった。大学生を対象にTPB-E における各コンストラクトの操作的定義及び測定法(Schmid et al., 2017)を用いた質問紙調査が実施された。127 名の有効回答が分析対象であった。ステップワイズ法による重回帰分析の結果,“ワクチン接種をしない場合に予期される後悔(β = .374,p < .001)”,“態度(β = .248, p = .011)”,“知覚されたインフルエンザ罹患可能性(β = .193,p = .026)”がモデルに投入された(R 2 = .436)。性別ごとに解析したところ,男性では,“ワクチン接種をしない場合に予期される後悔(β = .492,p < .001)”,“知覚されたインフルエンザ罹患可能性(β = .267,p = .015)” がモデルに投入され(R 2 = .343),女性では,“ワクチン接種をしない場合に予期される後悔(β = .571,p < .001)”,“ワクチンを接種した場合に予期される後悔(β = -.375,p < .001)”,“態度(β = .301,p = .011)” がモデルに投入された(R 2 = .654)。このことから,ワクチン接種行動意図を高めるためには,ワクチン接種を行わなかった際の損益を強調すること,特に,男性では予防接種の効果に対する評価を高める介入,女性では副反応に関する正しい知識の教育が有効であると考えられた。
著者
小林 淳 蔡 恩美 山中 修也 櫻 勇人 山本 隆太 加藤 宏平 高橋 義朗
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.71, pp.507, 2016

<p>近年、光格子中の冷却原子に対する量子気体顕微鏡の技術が急速に進展している。我々はこれまでにYb原子の量子気体顕微鏡を作成に成功している。これによって光格子中での原子位置を1サイトの単位で決定することができる。今回我々はこの技術を分子に適用した。光格子中のYb原子に対する2光子光会合によって電子基底状態の分子を作成し、さらにその分子を原子に戻して観測することで、分子の量子気体顕微鏡による観測に成功した。</p>
著者
飯田 順一郎 金子 知生 山本 隆昭 佐藤 嘉晃
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.43-46, 2016-03

口唇閉鎖不全状態,すなわち常時上下の口唇が離れて口呼吸をしているような状態でいると,口腔内が乾燥しやすく,歯肉炎,歯周病などの歯周疾患が進行する要因になると考えられている.一方で,歯科矯正学の分野においても,このような口唇閉鎖不全の状態は,不正咬合の原因,あるいは動的矯正治療後の歯の位置を安定させる保定に関連して,注意すべき事象の一つとなっている. 矯正歯科治療においては,セファロ分析法などを用いて顎顔面骨格形態を分析し,その顎顔面骨格形態に調和するように,治療ゴールとしての歯の位置を決めて正常咬合に導く治療をしている.しかし,歯あるいは顎骨の位置を正常咬合に導いた後,すなわち動的矯正治療が終了した後に,得られた歯の位置,あるいは得られた正常咬合が生涯にわたって維持されるかどうかということは,矯正治療の施術の意義に関わる重要な考慮すべきポイントである.動的矯正治療終了後に通常用いる保定装置は,このような観点から,歯の位置あるいは得られた正常咬合を機械的に保持するために用いるが,生涯にわたって保定装置を使い続けることは非常に稀である. 歯は口唇,頬,舌などの口腔周囲の筋・軟組織が生み出す力に絶えず晒されており,その力によって徐々にその位置を変え得ることから,そのような口腔周囲軟組織から受ける力を考慮して治療ゴールを決定することは矯正歯科治療の成果を左右する重要な要素である. 本稿ではこの様な観点から,口唇閉鎖不全の影響,またそれに対する対応に関して,これまで行われてきた研究成果を紹介する.
著者
有馬 孝彦 佐々木 亮介 Carlito Baltazar TABELIN 田本 修一 山本 隆広 Tangviroon PAWIT 五十嵐 敏文
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.136, no.6, pp.64-76, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
21
被引用文献数
1

Rocks generated from tunnel construction projects for roads and railways throughout Japan have often leached out hazardous trace elements, such as arsenic (As) and selenium (Se). In nature, the oxyanionic species of As and Se have a variety of chemical species, so speciation is one of the crucial factors in their migration through natural geologic media. In this study, column experiments consisting of four types of crushed rock samples containing As and Se, and a river sediment (RS) as an adsorbent obtained near the tunnel construction site were conducted to evaluate the leaching and adsorption behavior of arsenite (As (III) ), arsenate (As (V) ), selenite (Se (IV) ), and selenate (Se (VI) ). The results showed that the dominant speciation of As and Se in the effluent from the rock layer was As (V) and Se (VI), and that the addition of a bottom RS adsorption layer or the mixing of RS with the rock layer decreased the leaching concentrations of As (III), As (V), Se (IV), and Se (VI). Cumulative leachability (CL) for each speciation through the column experiments was calculated to evaluate the amounts of As and Se retained in RS. The calculated CL showed that the bottom RS layer or mixing of RS with the rock reduced the CL of As (III), As (V), Se (IV), and Se (IV) ranging from 60 to 89%, 73 to 89%, 9 to 75%, and 36 to 60%, respectively; however, mixing of RS with the rock layer was ineffective in decreasing CL of Se (VI). The reduction of CL may be due to adsorption and/or coprecipitation by iron and/or aluminum oxides contained in RS. These results indicated that utilization of RS for the bottom adsorption layer was effective in reducing As and Se concentrations irrespective of their speciation, although that of mixed with rock layer was effective only in reducing As concentrations irrespective of their speciation.

1 0 0 0 OA 塩と味覚

著者
山本 隆
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.115-120, 2005 (Released:2013-02-19)
参考文献数
16
被引用文献数
2

Sodium ion in salt (NaCl) excite taste cells in the taste buds by penetrating a specific ion channel called ENaC. The neural information is sent to the brain via the taste nerves and is processed to elicit salty taste. Animals prefer salt solutions at the isotonic concentration (0.15mol/l) and reject at the hypertonic concentrations. Females like salty taste more than males do. Under the salt appetite condition, animals show high sensitivity to weak salt solutions and low sensitivity to strong ones to facilitate ingestion of Sodium ion by changing the hedonic value. Brain mechanisms of palatability are described in terms of brain substances: palatability is enhanced by benzodiazepine derivatives and β-endorphin, the motivation to ingest is performed by dopamine and the ingestive behavior is executed by orexin.
著者
山本 隆人 毛井 敦 松崎 哲治
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.98, 2011 (Released:2012-03-28)

【はじめに】 排泄行為は在宅生活を支援する上で最も回数が多く、重要な行為である。しかし、動作面ばかりに着目されがちであり、症状への対処が優先されることが多い。対処方法では、根本的な問題解決にはならないばかりか、返って問題が複雑化することがある。排泄へのアプローチは、行為のどの部分に問題が生じているか、そしてそれが生活全体にどのような影響を与えているかをアセスメントし、問題点を明確にしてアプローチすることが重要である。そこで、『排泄サポートチーム』を発足させ、独自のアセスメントシートを作成し、チームでの取り組みを通して現状の課題と今後の展望について検討したため報告する。【当センターでの排泄行為支援における課題】 当センターでの排泄行為支援における課題として、アセスメント方法が各職種により統一されておらず、着目点にずれが生じている。また、職種間で話し合いをもつ機会が少なく、排泄行為の課題点や目標が共有しにくくなっている。【取り組み内容】 患者の課題を多角的にアプローチしていくために、Dr、Ns、CW、PT、OT、放射線技師の構成とした。また、多職種が同じ視点でアセスメントを行うためのツールとして、独自のアセスメントシートを作成した。シートの特徴は、運動機能・認知機能・膀胱機能の3つの評価項目があり、『行為』として捉える視点を重要視した。カンファレンスでは、排泄行為の問題点と原因を明確にすることに努めて、知識不足を補うため勉強会も平行して実施した。【考察】 現在、チーム発足から数ヶ月経過したが、シートを活用した適切なアセスメントが行え始めている。アセスメントでは、運動機能、認知機能、膀胱機能のどの部分に課題があり、排泄行為が阻害されているのかを明確にし、多職種でどのようにアプローチしていくのかを共有することが必要である。そして、在宅生活を見据えた上で、患者や家族の身体的・精神的な支援につなげ、QOL向上を図ることが重要である。また、サポートチームではPT・OTが多く参加している。従来セラピストは、専門性から動作面ばかりに目がいきがちであるが、退院後の生活を考慮すると膀胱機能に目を向け、排泄動作ではなく排泄行為としてとらえていくことが必要で、これからのセラピストには、こういう視点が今後求められる。【おわりに】 今後は、アセスメントシートの検討を重ね、排泄行為として捉えていく視点を定着させ、より多くの患者の自宅復帰を支援していきたいと考える。