著者
山本 政儀
出版者
Japan Health Physics Society
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.249-257, 1989 (Released:2010-02-25)
参考文献数
11

The accident at the Chernobyl reactor site starting at 26th April 1986 caused a widespread distribution of radionuclides. In all countries radiation measurements and analyses of samples have been made to show the features to consider in a dosimetric evalution, but transuranium elements have been less investigated.In Europe, the determination of several transuranium elements, such as neptunium (Np-239), plutonium (Pu-238, 239, 240, 241), americium (Am-241) and curium (Cm-242) was possible. The total depositions (mBq/m2) at Monaca, Rise (Denmark) and Neuherberg (Munich) were estimated to be 10, 20 and 51, respectively. These levels are only 0.01-0.05% of the previous deposition from nuclear weapons tests. The activity ratios Pu-238/Pu-239, 240 (0.4-0.5) and Pu-241/Pu-239, 240 (80-90) from Chernobyl fallout were much higher than those from nuclear weapons tests. Here, a more detailed feature of transuranium elements released into environment from the Chernobyl reactor is presented comparing with that from nuclear weapons fallout, including the measurements of transuranium elements of the Chernobyl debris in Japan.
著者
山本 奈美 諸岡 浩子 長石 啓子 高木 弘子 渡邉 照美 福田 公子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.6, 2006

<br>【目的】<br> 平成11年3月に告示された現行学習指導要領では、職業に関する専門教育としての家庭科は、生活関連産業の各分野で必要とされる資質や能力の育成を重視するという趣旨が明確にされた。これまでに、生活関連産業の高度化、サービス化、消費者ニーズの多様化等を踏まえて内容の改善が図られつつあり、さらに職業に関する専門学科としての家庭科を明確に位置づけるためには、日本版デュアルシステム導入の可能性を提言しておく必要がある。家庭に関する専門学科の中では、調理師養成課程をもつ専門学科は生徒数の減少が小さく、中国地方5県を調査した結果からも明確なキャリアパスに基づいて専門教育と職業を直結させた特色ある取組をしている様子がうかがわれた。そこで、今後の家庭に関する専門学科の発展の方向性を探るために、岡山県内のA高校調理科を事例として、カリキュラムと授業実践にかかわる実態やそこで学ぶ生徒の意識を調査し、日本版デュアルシステム導入の可能性について検討した。<BR>【方法】<br> 調査対象校は、岡山県内の私立A高校の調理科である。平成17年10月から12月にかけて、資料収集及び授業観察、アンケート調査を行った。さらにその詳細を把握するために、調理科担当教員及び外部講師、校外実習受け入れ先の担当者から聞き取り調査を行った。授業観察は、1~3年の調理実習をそれぞれ観察し、指導者の発言に着目して分析を行った。生徒に対するアンケート調査は、調理科1~3年生の150名から回答を得た。質問項目は、調理科への志望理由、調理科での学習内容に対する意識、卒業後の進路希望とした。<BR>【結果】<br> 調理科の教育課程は調理師養成施設の設置基準に基づいているため、調理師として要求される技術や能力が最低限保障されているものと考えられた。それに加えて、A高校の調理科は約20年の実績の中で教育内容の改善を重ねるとともに、マイスター・スクールなど学校独自の特色ある取組によって他校との差別化をはかり、生徒にとって魅力ある教育内容が準備されていた。調理実習の授業では外部講師を積極的に活用し、調理科教員による基本的な指導のうえに、外部講師によってより専門的な指導が行われていた。また、外部講師の活用は単なる技術指導だけでなく、生徒の職業意識の向上にも役立っていた。アンケート調査からは、多くの生徒は高校入学時にすでに職業を見据えた進路選択をしていることが分かった。また、調理科での教育内容に対する生徒の役立ち感は高く、調理技術の向上や調理科で学んだ経験が生徒の自信につながっていた。1年次の春休みから3回に分けて行っている校外実習は、生徒が調理師としての仕事を直接的に体験する機会であるとともに、受け入れ先のホテルとしても労働力の確保、雇用の面からメリットがあると受け取られていた。<BR> 日本版デュアルシステム導入の検討にあたり高等学校における調理師養成制度をみると、学校側は調理技術の習得など基礎的部分の指導を担当し、ホテル側は校外実習の場を提供することにより一定レベルの技能を身に付けた人材を確保しやすくなるなど、「日本版デュアルシステム」的な理念や仕組みに通じるものがすでに成立していると考えられた。これをさらに充実・発展させるために、また第1報も踏まえた他の家庭に関する専門学科での日本版デュアルシステムの導入に向けた今後の課題として、1.学校と企業の間でコーディネート機能を果たす組織の必要性、2.教員の資質能力及び人事管理と研修の在り方、3.企業実習の方法・形態及び評価の在り方、4.学校と企業の役割分担を踏まえた教育課程の編成、5.生活関連産業で求められる資質や職業能力について検討し、その担い手を育成する家庭に関する専門学科の社会的認知や肯定的なイメージ形成をどうはかっていくか、などが挙げられる。
著者
山本 遼介 泉 岳樹
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

<b>1 </b><b>はじめに<br></b>東日本大震災の復興過程のアーカイブについては,NHKの「東日本大震災アーカイブス」の中での復興の軌跡や(独)防災科学技術研究所を事務局とする「東日本大震災・災害復興まるごとデジタルアーカイブス」(略称:311まるごとアーカイブス)をはじめとして,様々な取組がなされてきた.それらの中でも,Google社の日本法人が行っている「未来へのキオク プロジェクト」では,写真や動画の投稿プラットフォームとして既に6万1千件以上のデータがアーカイブされているだけでなく,ストリートビューという360度画像の閲覧サービスのデータを震災直後と震災後2年の2時点で取得し公開している(一部地域については震災前のデータ有).360度画像は,人の目線に近い視点から空間全体を記録しているので,臨場感があるだけでなく,町並みや景観の記録としての価値も高く,このデータを元に建物の3次元モデルを作成し町並みを復元する試みもなされている.<br>本研究では,このように利用価値の高い360度画像を取得できるMMSを用いて独自にデータ取得を行い,復興過程のアーカイブを試みる.その際,写真測量技術により複数の360度画像から画像内の地物の位置や高さなどを計測する機能の有効性についての検討を行う.<br><br><b>2 </b><b>研究手法<br></b><b></b>MMSによるデータ取得は,(株)トプコン製のIP-S2 Liteを用いた.このシステムでは,車両のキャリア上に6つのカメラ,GPS,IMUを備えたメインユニットを搭載し,車内に接続されたPCで動画撮影の制御とデータの保存を行う.このMMSはレーザースキャナを搭載していないが,撮影データの後処理により,動画内の地物の位置や高さを測定することができる.<br>対象地域は,被災地で最も早く防災集団移転事業が進んでいる宮城県岩沼市とした. <br>現地調査は,2012年8月4日~7日と2013年11月18日~19日に行い,津波の被害を受けた岩沼市沿岸部(仙台東部道路の東側)をMMSにより撮影した.<br>&nbsp;<br><b>3 </b><b>結果<br></b><b></b>2012年と2013年のデータを比較すると,以下の変化を見ることができた.(1)防災集団移転地において造成工事が本格化し,用水路の整備や地面のかさ上げ等が開始された.(2)「震災遺構」にもなり得た相の釜地区の水防倉庫が解体された.(3)「千年希望の丘」の造成工事が開始された.(4)海岸部にあった瓦礫等が撤去され,防潮堤の工事が本格化した.また,画像内の計測機能については,特徴点が抽出できるところでは概ね1m以内の精度で測定できることが分かった. <br>今後は,現地調査を継続的に行うとともに,変化の大きい場所について,位置や高さの測定など定量的な解析を行う予定である.
著者
中尾 俊一 森田 十誉子 安井 利一 田中 園治 小野沢 裕彦 田中 入 大高 義文 菅沼 信夫 徳光 史彦 山本 瑞哉
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.643-653, 1991
被引用文献数
6 4

The purpose of this study was to investigate the clinical effect of dentifrice R containing 0.05% tranexamic acid and 0.05% dipotassium glycyrrhizinate on the improvement of periodontal disease compared with dentifrice T containing 0.05% tranexamic acid.<BR>Subjects were 148 adults who had no serious oral or systemic diseases. They were divided into two groups equally and performed toothbrushing twice a day for four weeks with dentifrice R or T.<BR>The PMA index, redness, swelling, and plaque score were selected as indices for clinical evaluation of periodontal condition.<BR>The results obtained were as follows.<BR>1) Dentifrice R was significantly superior to dentifrice T in the improvement of PMA index (p<0.01), redness (p<0.01) and swelling (p<0.05). There was no significant difference in the improvement of plaque score between dentifrices R and T.<BR>2) The mean improvement rates of dentifrice R and dentifrice T were 37.0% and 26.3% in PMA index, 40.7% and 25.2% in redness, and 36.7% and 29.9% in swelling, respectively.<BR>3) No particular side effects were observed during this clinical study.
著者
和田 崇 山本 健太
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

神楽は本来,農村地域の集落・神社にねざした神事である。中世以降,各地の集落で発生または伝播し,継承されてきた広島の神楽(里神楽)は,近年,地元の商工業者や,広島市内の出郷団体や集客をねらう事業者,さらには行政によって神社・集落の外に引き出され,都市住民や観光者によって宗教・場所から切り離されたコンテンツ,いわば&ldquo;街神楽&rdquo;として消費されるようになった。神楽が演じられる場所は,神座(=結界)から農村,都市へと広がり,さらにDVDなどの映像コンテンツとして流通するようになったことで,神楽が消費される場所はメディア上にも広がった。それに伴い,神座・農村で演じられることに意味のあった神楽は,神座や農村から切り離されてどこでも演じられ,見ることができるものへと変質した。すなわち,宗教空間・村落空間に埋め込まれるかたちで存在してきた神楽は,埋め込みの状態から引き出され(脱・埋め込み化),あらゆる場所でさまざまなかたちで消費されるようになった。神楽団の多くはその流れに対応せざるを得ない状況にあるが,中にはそれに対応できない神楽団や,伝統継承と観光対応のはざまでジレンマを感じる神楽団も少なくない。<br> こうした状況下,報告者が今後の神楽振興のあり方として提案するのが,神楽の「再・埋め込み化」である。具体的には,宗教空間・村落空間から引き出され,都市空間・メディア空間で消費されてきた神楽を宗教空間・村落空間に取り戻し,都市住民や観光者もそこで演じられる奉納神楽を体験し,理解する取組みを展開することを提案する。この取組みは,広島神楽の真正性と多様性を体験し,理解するという,オルタナティブな観光・交流活動に位置づけられるものであり,農村文化を断片的・選択的に消費するのでなく,地域の文脈に沿って体験・理解することが可能となり,そのことが農村文化あるいは農村社会を持続的なものにすることが期待できる。 報告者らはこの取組みの成立可能性を検証するため,広島都市圏の若者・女性らが広島県西部の農村地域を訪ね,秋祭りで奉納される神楽を鑑賞するとともに,神楽団員等住民との交流,周辺観光施設の探訪等をプログラムとする奉納神楽ツアーを企画し,2014年10~11月に4回試行した。<br> 奉納神楽ツアーの参加者からは,多様な神楽を鑑賞できたことに加え,祭り準備の手伝いや直会への参加を通じて神楽団員等住民と交流できたこと,各集落や農村地域への関心が高まったことが評価された。一方,長時間にわたる神楽の鑑賞,地域コミュニティへのとけ込みにくさ,宿泊施設やトイレのアメニティ等について改善が要望された。<br> 試行結果を受けて,報告者は広島県西部の農村地域を訪ね,奉納神楽と当該地域を体験,理解するツアーの企画の方向性について,以下のとおり提案する。 想定されるツアー参加者は,(a)見学型ツアーに物足りなさを感じている者,(b)共同・協働作業に喜びを感じる者,(c)ローカルな祭り(神楽)を好きな者,(d)日本の農村に関心をもち交流や体験を望む外国人,である。ツアー形態については,①短時間の神楽鑑賞と周辺施設観光を楽しむイベントⅠ型(主に中高齢者層向け),②神楽鑑賞に加え,祭り準備の手伝いや直会への参加,周辺施設観光を楽しむイベントⅡ型(主に若年層向け),③秋祭りでの神楽鑑賞,準備手伝い,直会参加に加え,通年で農漁業等を通じた交流を行う集落応援型(主に若年・ファミリー層向け),の3つを提案する。なお,これらのツアーを実施するに当たっては,ア)各集落における観光客受入に対する住民合意の形成,イ)祭り準備の手伝い等における訪問者の役割の明確化,ウ)訪問者が神楽を理解し,地域コミュニティにとけ込むのをサポートするアテンド(ガイド)の配置,が必要になると考えられる。 ただし,今回の試行ツアーについては,参加者が示した支払容認額と実際に支払った経費を考慮すると,旅行代理店等が独自に造成・催行する旅行商品(ビジネス)として成立させることは困難だと考えられる。そのため,具体化に当たっては,経済性を勘案した旅行商品を造成するよりも,取組みの社会性を重視し,訪問者受入に関する住民合意を形成した集落と自治体,農村地域に関心をもつ者が&ldquo;神楽&rdquo;を通して継続的に交流し,相互理解と集落支援を図ることが現実的だといえる。
著者
高橋 義明 平川 篤 山本 直人 田中 美礼 浦 亜沙美 猪狩 和明 吉原 俊平 大塚 浩平
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.73, no.10, pp.585-589, 2020-10-20 (Released:2020-11-20)
参考文献数
7

近医にて汎血球減少を指摘された1歳2カ月齢,未去勢雄のトイ・プードルが紹介受診し,骨髄検査を含む各臨床検査により,特発性再生不良性貧血と診断した.プレドニゾロンとシクロスポリンによる免疫抑制療法と顆粒球コロニー刺激因子とエリスロポエチンによるサイトカイン療法を実施したところ,第32病日に寛解に導入することができた.その後,良好に推移し,第89病日にはプレドニゾロンを休薬し,第395病日現在,シクロスポリン単独投与により寛解を維持されている.
著者
山本 敦 古山 宣洋
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.84-99, 2020-09-30 (Released:2020-10-07)
参考文献数
29

演奏表現は,楽曲の解釈や表現意図に沿って,楽譜に示されていない細かな音のゆらぎを付与することで達成されるが,その指導において,このゆらぎの構造は学習者によって概念的・聴覚的に把握されるだけでなく,学習者の知覚–運動の調整を通して,実際の演奏として達成されなければならない.本稿では,音楽大学の学生と教授であるプロの演奏家による1対1のピアノレッスンを録画したデータを対象に,指導の相互行為におけるマルチモーダルな資源が組織化される過程を分析することで,演奏表現が学生と教師によって協働的に構築,産出されていることを明らかにした.教示においてゆらぎの構造は,発話や演奏,歌,ジェスチャなどの組み合わせによって知覚的に構造化され,音楽概念と結びつけられて呈示されていた.その結びつけの構造が維持されたまま,学生,教師双方によってジェスチャ–楽曲の組み合わせが実際の演奏の中で反復・同期されることで,理解の例証,調整の求め,確認の与えといった相互行為上の機能を果たしていた.さらに,このマルチモーダルな呈示の同期を通して,学生の演奏運動それ自体が同時的かつ即興的に調整を受けることで,演奏表現は協働的に達成されていた.これらの結果は,専門的な実践における知覚の相互行為的な調整および音楽教育の観点から考察された.
著者
田中 肖吾 石原 寛治 倉島 夕紀子 大野 耕一 山本 隆嗣
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.99-103, 2013-01-31 (Released:2013-04-17)
参考文献数
41

患者は86歳,女性。以前から左鼠径ヘルニアを自覚していたが放置していた。また認知症があり食べ物を飲み込む習慣があった。平成23年10月発熱を主訴に来院。触診上,腹部全体に圧痛および筋性防御を伴っていた。左鼠径ヘルニアは疼痛もなく用手還納は可能であった。血液検査上著明な炎症所見の亢進を認めた。腹部CT像上,わずかな遊離ガスおよび左鼠径ヘルニアを認めたが,穿孔部位は同定できなかった。また異物の描出も認めなかった。汎発性腹膜炎の診断で緊急開腹したところ,Douglas窩膿瘍の中に爪楊枝を認め,左鼠径部に陥入していた小腸に穿孔部位を認めたために小腸部分切除を施行した。術後経過は良好で,術後6日後に鼠径ヘルニア修復術を施行した。その後家人より受診2日前に作った串揚げにつかった爪楊枝と串が数本無くなっていたとの報告をうけ,術後8日後にCTを撮影したところ,盲腸に線状の高吸収域を認めたため遺残異物と診断した。線状高吸収域は術後13日後には横行結腸に移動していた。術後15日後に大腸内視鏡を施行したところ横行結腸に串を認め,摘出した。経過良好で術後22日後に退院となった。異物誤飲に対しては詳細な病歴聴取と術後症状がなくても遺残がないかCT検査を行うことが重要と思われた。