著者
山根 信二
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.197-204, 2016-01-01 (Released:2016-01-01)
参考文献数
64
被引用文献数
1

混乱するハッカー及びハッキングの理解を整理するために,本稿ではこれまでのハッカーのパブリックイメージがどのように形成されたのかをたどり,それらを史的展開の中に位置付ける.ハッカーの極端なパブリックイメージは時代ごとの不安が投影されていると考えることができる.これらはマスメディアによって作られただけでなく,計算機科学者や学会も役割を果たしてきた.更にハッカーに注目することで,これまでのコンピューティングの歴史を見直す新たな試みについて論じる.最後に今後の人材育成戦略についても取り上げる.
著者
山根 信二 小笹 裕昌
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. FACE, 情報通信倫理
巻号頁・発行日
vol.96, no.440, pp.9-16, 1996-12-21
被引用文献数
1

「ハッカー」とはシステムに精通した人物に対する称号であり, ハッカーはネットワーク社会への貢献者でもある. しばしばハッカーは蔑視の意味でしばしば誤って使われたが, やがてサイバーテロリストをハッカーと区別するために「クラッカー」と呼ぶようになり, RFCでもその呼称が提案されている. 本論ではハッキングをセキュリティ破りではなく, インターネットやフリーソフトウェアに体現される自由と協調の精神の観点から捉える. そしてハッカーを養成する運動の現状を分析し, ハッカーの裾野が広がる意義を考察する.
著者
山根 信二 村山 優子
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.1975-1982, 2001-08-15

1990年代の暗号技術規制論は,キーエスクローシステムを中心とする枠組みで論じられた.だが当時の議論はもはや有効ではない.今後の暗号技術の進路策定について議論する際には,1990年代の議論とは異なる枠組みが必要である.現在,議論のための枠組みの形成が急がれている新たな暗号技術問題として,暗号解析をめぐる係争があげられる.暗号技術の開発評価において暗号解析は重要な役割を担ってきたが,暗号解析の公表やその再配布については議論が分かれている.日本では,1999年から著作権の「技術的保護手段」の回避を行うプログラムを公表しようとする者は処罰されることになった.本論文では,この法制による暗号解析への影響を,2000年にアメリカで起こったDVDプロテクト破り訴訟を参考にしながら検証する.コピープロテクトに対する暗号解析の公表を法的に規制することは,コンピュータ専門家がかかえる技術的および法的リスクを増大させる.また,その影響はコピープロテクト技術のみにとどまらず,暗号技術の開発評価全般に及ぶ可能性がある.このような問題に対処するためには,暗号解析を含む暗号技術開発の進路策定を決める枠組みを刷新することが必要である.最後に,今後の専門家に要求される新たな役割についても検討を行う.
著者
山根 信二
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.29, pp.199-204, 2018-08-12

教育のゲーミフィケーションとしてのクエスト授業 (Quest–based Learning) について,北米の実施例をモデルとしてローカライズおよび支援システムの試実装と中間評価を行った.まずクエスト授業と支援システムについて整理し,次に北米のゲーム産業と大学教育との連携によるクエスト授業の事例について述べる.必要とされる機能を実現するために従来の LMS のモジュールを拡張することでクエスト授業を支援する学習管理システムを構築した.プロトタイプ評価として,北米の大学におけるゲーム開発・プログラミングの QBL 科目の日本版の教材を開発・試運用して評価を行なった.ゲームデザインの観点から,クエスト学習支援するマップ機能を新たに考案し開発を行った.最後に今後の課題について議論を行う.
著者
相場 徹 山根 信二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.47, pp.1-6, 2001-05-10

暗号の歴史は軍事や外交といった国家レベルの文脈において語られることが多い。しかし、そのような議論は、個人的なしベルでの暗号利用の歴史についての視点を欠落させてしまう。本発表では、インド古典のカーマスートラ、およびヤショーダラによる注釈文献を取り上げ、そこで述べているとされる暗号の内容および用途についての検討をおこなう。この検討の結果、ヤショーダラ注における暗号は軍事・外交といった国家レベルの用途ばかりを想定していたものではなかったことを示す。そして、前近代において民間レベルでの秘密通信が存在しえたことが、現代においてどのような意義を持つかについて論じる。
著者
山根 信二
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:21888930)
巻号頁・発行日
vol.2021-CE-159, no.30, pp.1-5, 2021-03-06

デジタルゲームは学問の対象となり,世界各地の先進校がゲームの知識体系を研究し学ぶ学位プログラムを推進してきた.この国際動向の中で日本はゲーム産業と高等教育機関との産学連携教育プログラムが立ち遅れてきたが,2020 年にゲーム・CG を学ぶ初の専門職大学がスタートした.本研究では,日本国内では稀少な体系的なゲームの学位プログラムをスタートした東京国際工科専門職大学のデジタルエンタテインメント学科における初年次教育の取り組みから,特に専門用語(ジャーゴン)の問題について報告する.日本のゲーム産業では歴史的経緯から企業ごとに異なる社内開発用語を使ってきた.そこで本研究は,専門職大学での教育実践を通じて,複数のバックグラウンドを持つ企業出身者の観点をもとに企業間の違いを検討し,各企業文化が対応可能な高度なゲーム教育プログラムのための用語集の作成に着手した.さらに,海外で定着した大学教科書を日本語での高等教育現場へ導入したことで,グローバルな開発用語との相互運用性をふまえた用語集の取り組みが必要となった.
著者
山根 信二
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.185-190, 2009

デジタルゲームの歴史研究において、技術革新を可能にした社会的技術的な環境への注目は重要である。この領域は研究者よりもジャーナリストがいち早く調査していた領域でもあるが、さらに今日では大学におけるゲーム研究にも歴史研究が取り入れられている。しかし研究目的に耐えるデジタ ルゲームの保存については十分な蓄積がなく、今後の課題となっている。そこで新たな担い手によるゲームの保存の戦略をとりあげ、現在の段階を位置づける。
著者
山根 信二
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.185-190, 2009 (Released:2019-10-01)

デジタルゲームの歴史研究において、技術革新を可能にした社会的技術的な環境への注目は重要である。この領域は研究者よりもジャーナリストがいち早く調査していた領域でもあるが、さらに今日では大学におけるゲーム研究にも歴史研究が取り入れられている。しかし研究目的に耐えるデジタ ルゲームの保存については十分な蓄積がなく、今後の課題となっている。そこで新たな担い手によるゲームの保存の戦略をとりあげ、現在の段階を位置づける。
著者
山根 信二 村山 優子
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.45(2003-CSEC-021), pp.77-82, 2003-05-15

2003年度に電子政府を実現するe-Japan計画に沿って,現在官公庁から地方自治体におよぶ全国的な取り組みが進められている.その過程で安全性証明のみならずリスク評価が重要な課題となっている. 本報告では,政府調達システムに固有のリスク評価事例として特にスマートカート(多目的ICカード)に注目する.スマートカード導入において,仕様策定,国際技術標準の導入,端末のセキュリティといった個別の課題を取り上げ,最後に比較事例としてアメリカ,ドイツ,イギリスの関連動向についてもとりあげる.
著者
山根 信二
雑誌
研究報告 コンピュータと教育(CE)
巻号頁・発行日
vol.2011-CE-108, no.5, pp.1-6, 2011-01-29

近年,世界各国で高等教育機関におけるゲーム開発の導入が進んでいる.本発表では日本国内での導入の一事例として,IGDA が ACM の協力の下で全世界で開催する Global Game Jam について報告し,学びにおける各要素の分析および今後のローカライズと評価に向けた検討点を述べる.
著者
山根 信二 馬場 章
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SWIM, ソフトウェアインタプライズモデリング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.343, pp.7-12, 2004-10-09

本研究では,近年のコンピュータ史研究の動向に基づき,従来の技術史や産業史では扱われなかったビジネスモデル形成の史的展開に注目する.特に,初のアプリケーションソフトウェア販売企業であるPersonal Software社(のちのVisiCorp社)に注目し,そのビジネスモデル確立過程においてビジネススクールの手法,コンピュータゲーム市場,そしてホビイスト集団が果たした役割を検証する.そしてソフトウェア企業がビジネスモデルを確立する際の社会的技術的条件を明らかにするとともに,パーソナルコンピュータ産業において新たな産業構造への転換が起こった要因を解明する新たな視点を示す.
著者
山根 信二
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:21888930)
巻号頁・発行日
vol.2021-CE-158, no.6, pp.1-6, 2021-02-06

世界保健機構 (WHO) は ICD-11 (「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」第 11 回改訂版) において,新たに gaming disorder (ゲーミング障害, ゲーム障害) の分類基準を収載した.この国際統計分類の発効を前にして,大きな波及効果が起きている.海外では新たな論争が起き,国内でも,香川県議会の「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」は全国的な注目を集めるとともにゲームの効用をめぐる社会的な分断が明らかになった.本発表では,まずゲーミング障害をめぐる分断の背景を明らかにする.次にゲーム開発を地域の教育目的に活用する立場から,香川県条例のパブリックコメント期間中に開催されたゲーム開発イベント「Global Game Jam 2020 Setouchi in Kagawa」における準備と,そこで得られた学びについて報告する.
著者
山根 信二
雑誌
情報処理学会研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.52(1998-EIP-001), pp.89-95, 1998-05-28

ACM (Association for Computing Machinery)の1998年度会議は5月10-12日にワシントンで開かれる.今回のタイトルは"ACM POLICY'98: Shaping Policy in the Information Age"と銘打たれ,これまで社会的発言を行なってきたACMメンバーが来るべき社会について語るべく顔を揃える。この大会の性格を知るためには,アメリカの文脈におけるコンピュータ科学者の倫理的政治的問題意識の変遷をたどる必要がある.加えて,その最新動向を報告する.
著者
新 清士 金子 晃介 松井 悠 三上 浩司 長久 勝 中林 寿文 小野 憲史 山根 信二
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE)
巻号頁・発行日
vol.2012-CE-114, no.18, pp.1-6, 2012-03-09

ゲーム開発を教育に取り入れる近年の試みにおいて,本発表では「ゲームジャム」型の協働ゲーム開発に注目する.これまで分散会場を結んだゲームジャム型の協働ゲーム開発は主に国際組織や政府機関によって主導されてきたが,発表者は地域の社会的な文脈に根ざした草の根の同時多発型協働ゲーム開発イベントを実施した.本発表ではこの2011年8月に実施された「福島GameJam in南相馬」の試みについて報告を行い,「ゲームジャム」の可能性について考察する.
著者
山根 信二
雑誌
情報教育シンポジウム2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.165-170, 2015-08-10

本発表では,従来の情報科学のカリキュラムに体系的なゲーム研究・ゲーム学を取り入れた事例を 報告する.情報科学の学生を対象としたゲームデザイン科目を開設する場合,国内では参考になる事例が 少ないため,海外のカリキュラムフレームワークを参考にし,大学レベルの日本語教科書がなかったため ゲームデザインの英語教科書を用いた.そして情報科学の重要なトピックを含むゲームデザイン教科書を 採用することで,情報科学の重要な領域をゲームデザインを通じて学ぶことができた.さらにオンライン ディスカッションを導入して学外の専門家の参加を得ることができた. ゲームデザインを通じてコンピュータサイエンスを学ぶことで,従来の学習内容を見直す場合もある.た とえば専門家の社会的責任については,バグなどの従来の知見だけでなくユーザエクスペリエンスをつく りだす専門家倫理や社会的責任の困難さについて実践的に扱うことができた.要素技術だけではなく体系 的な学習としてのゲーム開発者教育プログラムの開発はコンピュータサイエンス・情報科学に有益な視点 を獲得することができる.
著者
山根 信二
雑誌
情報教育シンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.2, pp.73-80, 2014-08-17

近年,世界各国で高等教育機関におけるゲーム開発の導入が進み,学位プログラムの実装が進んでいる.この背景には各分野からの学際的な取り組みが存在するが,本論文ではその中でもコンピュータサイエンスとゲーム開発の関連に注目する.特に米国の大学におけるゲーム研究開発のビジョンと動向をまとめ,1990 年代から2010 年代までのおよそ20 年間でたちあがった新たな学問分野についてそのビジョンやモデルを整理する.最後に日本を含めた地域への展開において求められる課題を示す.
著者
山根 信二 村山 優子
雑誌
情報処理学会研究報告知能と複雑系(ICS)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.71(2002-ICS-129), pp.11-13, 2002-07-25

かつて学会で倫理綱領が策定された際に,専門家の自制によってインターネット時代の無秩序をコントロールするという期待が寄せられた.しかしながらその後のインターネット利用の進展は専門家の枠組みを大きく越えており,倫理綱領が機能してきたとは言い難い.その一方で,近年発生する大規模なシステム障害では組織に対して「NO」と言える専門家が必要であり,そのためにIT技術者独自の職業倫理の徹底が唱えられてもいる.この両者はどちらも情報倫理として唱えられているが,実際には異なる要請のもとに生まれ,時には相反する機能を持っている.本発表では情報倫理の二つの機能を個別に論じた後,アメリカでの取り組みとの異同および今後の情報倫理の展開とそのための成立条件について論じる。
著者
山根 信二 村山 優子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.1975-1982, 2001-08-15

1990年代の暗号技術規制論は,キーエスクローシステムを中心とする枠組みで論じられた.だが当時の議論はもはや有効ではない.今後の暗号技術の進路策定について議論する際には,1990年代の議論とは異なる枠組みが必要である.現在,議論のための枠組みの形成が急がれている新たな暗号技術問題として,暗号解析をめぐる係争があげられる.暗号技術の開発評価において暗号解析は重要な役割を担ってきたが,暗号解析の公表やその再配布については議論が分かれている.日本では,1999年から著作権の「技術的保護手段」の回避を行うプログラムを公表しようとする者は処罰されることになった.本論文では,この法制による暗号解析への影響を,2000年にアメリカで起こったDVDプロテクト破り訴訟を参考にしながら検証する.コピープロテクトに対する暗号解析の公表を法的に規制することは,コンピュータ専門家がかかえる技術的および法的リスクを増大させる.また,その影響はコピープロテクト技術のみにとどまらず,暗号技術の開発評価全般に及ぶ可能性がある.このような問題に対処するためには,暗号解析を含む暗号技術開発の進路策定を決める枠組みを刷新することが必要である.最後に,今後の専門家に要求される新たな役割についても検討を行う.The regulation of cryptography in 1990s had been formed under the ``framework of key escrow system,''such as the limitation of thekey-length or the lawful access field.While the 1990s' framework is not effective anymore,a new framework of regulation is evolving worldwide.After 1999, the copyright act in Japan prohibits ``the circumvention of atechnological copyright protection measure.''This act can make some work including the reverse engineering and cryptoanalysis illegal.The same problem has examined in the U.S. on the DeCSS DVD decoder lawsuit in 2000. The outlawing of the circumvention of the copyright protectiontechnology is not limited only the cryptanalysis, and will effect to the further social problem. The new role of computer professionals arerequired to deal with this new kind of risks. Finally this paper examines the computer professional's activities for the comming alternative framework as well.
著者
大谷 卓史 芳賀 高洋 池畑 陽介 佐藤 匡 高木 秀明 山根 信二
雑誌
情報教育シンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.2, pp.179-184, 2014-08-17

一般的に,児童・生徒のインターネットや情報機器の利用を制限・監視することで,児童・生徒のインターネット利用リスクを低くできると信じられている.しかしながら,情報社会におけるコミュニケーションや社会参加がインターネットや情報機器によって媒介されるとすれば,ただ禁止・監視するだけでは児童・生徒の情報社会における自律的判断の成長を妨げ,情報社会への適応を阻害する可能性が高い.むしろ保護者・教師と児童・生徒がインターネットや情報機器の利用について日常的に話し合うことで,児童・生徒のインターネット利用リスクを低くするとともに,児童・生徒の道徳的自律を支援できるとの情報倫理学者 Mathiesen(2013)の知見がある.また,そもそも大人がインターネット利用によってトラブルを引き起こす例も多い.本稿著者は,平成 26 年度において,地域社会の保護者・社会人に対してスマホや SNS の情報リテラシーおよび情報倫理の地域社会教育を実施するモデルとなる教材・講習会の設計と試行的実施をめざし,実行可能性調査を含め,研究を進めている.本稿はその研究の目的・背景と計画を説明するものである.