著者
山田 賢 及川 大地 友永 省三 古瀬 充宏
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.1-12, 2011-04-09 (Released:2011-05-27)
参考文献数
33

グルコース由来のエネルギー合成経路において、チアミン (ビタミンB1) は重要な働きを有する。チアミン欠乏は、認知機能障害などの中枢神経障害を引き起こすが、これは脳内におけるエネルギー合成障害が主要因であると推測されている。しかしながら、その詳細な作用機構は未解明なままである。本研究では、この中枢神経障害発症の作用機構の解明を試みた。マウスにチアミン欠乏飼料を給餌し、更にグルコースを腹腔内に投与した。その後、マウスの慣れ学習および短期記憶への影響を観察し、脳内のモノアミンおよびアミノ酸含量を測定した。 行動試験の結果、チアミン欠乏によって慣れ学習が阻害され、過剰なグルコースの投与によって短期記憶障害が引き起こされた。しかしながら各学習阻害は、もう一方の処理による影響は受けなかった。また、チアミン欠乏は海馬内におけるL-リジン含量を変化させ、過剰なグルコースの投与は大脳皮質内のドーパミンおよびノルアドレナリン含量に影響を与えた。以上の結果から、チアミン欠乏による中枢神経系の障害は、エネルギー代謝障害のみに起因するものではなく、他のメカニズムも関与する可能性が示された。
著者
山田 賢 日下部 茂
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告システムソフトウェアと オペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.24, pp.1-6, 2010-07-27

我々は、メモリアドレス空間を共有するスレッド間の参照の局所性に着目し、そのようなスレッドのマルチコアプロセッサ上での時分割及び空間分割実行を集約的に制御できる、コア間時間集約スケジューラを提案している。提案スケジューラはマルチコアプロセッサの各プロセッサコア間で共有するキャッシュといったメモリの階層を活用し、プログラムの実行性能を向上させることを目的としている。本稿では、MapRdeuce 型プログラミングモデルのオープンソース実装である Hadoop のアプリケーションを、マルチコアプロセッサシステムで実行する際のノード内マルチスレッド処理における提案スケジューラの効果について評価する。TaskTracker が起動する map/reduce タスクの集約実行を制御することで実行性能の向上が観測できた。We have proposed Inter-Core Time Aggregation Scheduler which tries to utilize the locality of references between sibling threads, which share the same memory address space, on commodity multi-core processors. Our thread scheduler controls both time and space multiplexing of the sibling threads to utilize the cache shared by multiple processing Cores on a multi-core processor in enhancing the performance of multithread programs. In this paper, we evaluate the effect of our scheduler in executing Hadoop application on a commodity multi-core processor. We observed performance improvement by controlling the execution of map/reduce tasks under a TaskTracker.
著者
大森 達矢 樽井 武彦 守永 広征 松田 岳人 八木橋 厳 山田 賢治 松田 剛明 山口 芳裕
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.703-707, 2015-12-28 (Released:2015-12-28)
参考文献数
18

背景:ガイドライン2010(以下,G2010と略す)施行以降,胸骨圧迫の重要性が強調されており,強い胸骨圧迫による合併症の増加や,治療成績に与える影響も懸念される。方法:平成24年に当施設に搬送された院外心停止患者のうち外傷例を除く210例を対象とし,G2010による東京消防庁救急活動基準変更の前後(105例ずつ)で,胸骨圧迫の合併症,自己心拍再開率を比較した。結果:肋骨骨折は105例(50%),気胸は26例(13%)で,救急活動基準変更の前後で有意差はなく,心拍再開率にも差はなかった(前後期とも19%)。合併症は75歳以上で有意に多く発生したが,心拍再開率には影響がなかった。また,気胸が発症した症例では心拍再開率が12%と低い傾向があった。結論:ガイドラインの変更に伴い合併症の増加が心配されたが,本研究はそれを否定するものであった。治療成績向上のためには,効果的かつ合併症を最小限に抑えるような胸骨圧迫が重要である。
著者
山田 賢治 松山 康成
雑誌
日本教育心理学会第62回総会
巻号頁・発行日
2020-09-16

近年,児童生徒の問題行動に対して学校規模ポジティブ行動支援(School-Wide Positive Behavior Support; 以下,SWPBS)が取り組まれつつある(庭山, 2020; Sugai & Horner, 2006)。日本においても小中学校や高等学校において実践が取り組まれているが,SWPBSが学校適応に及ぼす効果については,小学校では明らかにされつつあるものの,中学校では未だ効果が検証された例は見られない。そこで本研究では,公立中学校の1〜3年生の通常学級に在籍する生徒(計9学級,275名)と教職員を対象に中学校でのSWPBSに取り組み,学校適応 (Q-U) に及ぼす影響を検討した。実践は,具体的には1学期にあいさつ運動(全校生徒対象),2学期に,教師の言語称賛増加を目的とした研究授業(3年生対象)と,生徒の言語称賛増加を目的とした研究授業(1年生対象)を実施した。その結果,学校適応(Q-U)における友人との関係および学習意欲,教師との関係,配慮スキル,学級との関係,かかわりスキルにおいて有意な差が認められた。
著者
松室 美紀 三輪 和久 寺井 仁 山田 賢人
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.229-239, 2016 (Released:2016-08-25)
参考文献数
27
被引用文献数
2

According to dual process theory, there are two systems in the mind: an intuitive and automatic System 1 and a logical and effortful System 2. While many previous studies about number estimation have focused on simple heuristics and automatic processes, the deliberative System 2 process has not been sufficiently studied. This study focused on the System 2 process for large number estimation. First, we described an estimation process based on participants’ verbal reports. The task, corresponding to the problem-solving process, consisted of creating subgoals, retrieving values, and applying operations. Second, we investigated the influence of such deliberative process by System 2 on intuitive estimation by System 1, using anchoring effects. The results of the experiment showed that the System 2 process could mitigate anchoring effects.
著者
田中 英城 加地 良雄 山田 賢治
出版者
香川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

種々の動物の手足の形成過程では、まず四肢の形成予定域に突起(肢芽)が形成され、肢芽の基部が細胞死によってくびれが生じ、手関節に相当する部ができる。さらに、発生が進むと手足の形成予定域には指の原器が形成され、グローブ状の形となる。その後、各指間の間充織がアポトーシスによる細胞死に陥り、指間間充織が除去され、各指が分離する。両生類では指間間充織に細胞死が起こらないために水かきを持つ手足が形成されるが、鳥類やほ乳類などでは指間間充織に細胞死が起こるため、水かきを持たない手足が形成される。鶏胚肢芽では7日鶏胚で指間間充織に細胞死が出現し、1日以内にほとんどの指間間充織が死んでしまう。そして、この部における細胞死への運命は61/3日から62/3日鶏胚で決定されると考えられているが、細胞死を誘導するメカニズムは明らかにされていない。一方、人の手の先天奇形は合指症や多指症など表現形が様々である。そのうち合指症は指間部の間充織が連続しており、外科手術を必要とする。その原因はいまだはっきりと解明されていないが、発生の段階でアボトーシスが正常に起こっていない可能性が考えられる。最近、BMP-2、BMP-4が指間間充織のアポトーシスのシグナルとなっている可能性が報告されている。本研究では、手の先天奇形の一つである合指症の原因を解明する目的で、鶏胚肢芽組織の細胞の分化とアポトーシスにおよぼすBMP-2の作用を解析する計画をすすめてきた。しかし、技術的な諸問題をクリアできず、研究目的を果たすことができなかった。
著者
中西 正尚 山田 賢 中原 弘美 田村 康夫
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.669-679, 2005-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
14
被引用文献数
2

本研究は,授乳方法と口腔機能発達との関連を検討する目的で,2歳児から5歳児の1357名(平均年齢3歳7か月)の保護者を対象にアンケートによる調査を行いその結果を分析,検討した.出生後3か月までの授乳方法から母乳哺育群(Br群),混合乳哺育群(Mix群),人工乳哺育群(Bo群)の3群に分類すると,Br群が399名(29.4%),Mix群が811名(59.8%)で,Bo群が147名(10.8%)であった.離乳に関して,離乳食開始時期,離乳食終了時期,断乳時期ともに授乳方法問に差は認められなかった.現在の食べ方について,18項目中,咀嚼の上手下手,前歯で噛みきる食べ物,食べ物の吐き出し,食べこぼし,食生活のリズム,食事の自立の6項目において群間の有意差が認められ,いずれもBr群が良好な発達を示していた.その他の関連項目で,吸指癖,おしゃぶり,言語発達の遅れ,性格面に有意差が認められた.以上より,アンケートではBr群が全体的に良好な咀嚼発達を示し,Bo群の食行動に一部問題がみられたことから,授乳方法はその後の咀嚼の発達に少なからず影響を及ぼしていることが示唆された.
著者
山田 賢次 福井 祐一
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.S31-S32, 2018-07-10 (Released:2018-08-10)
参考文献数
7

近年、技術が進歩して遺伝子解析等の手法が用いられる時代になってきたが、未だ、 猫における嗜好性に関する研究・報告は少なく、明らかにされていない。そこで今回、嗜好性において香りの成分で重要であるメイラード反応物質(フラノン、ピラジン等)、味覚の部分で重要であるアミノ酸、核酸系調味料・ピロリン酸について特許・文献検索から解析した。 これらの項目は複数企業で嗜好性向上項目として特許申請、論文発表をしているので、この手法を用いた解析は有用であることが示唆された。
著者
山田 賢一
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.2-13, 2018

韓国では2月9日から開かれるピョンチャン五輪を機に、高画質の地上4K放送の普及推進を図ろうと地上テレビ各局が取り組んでいる。韓国では現在、ケーブルテレビや衛星放送、IPTVなどの有料放送への加入比率が全世帯の90%以上に達し、広告収入の面でも地上テレビのシェアは下がる一方で、各局は地上4K放送を売り物に挽回を図ろうとしている。地上4K放送の普及にあたっては、カバーエリアの拡大や受信機の普及に加え、有料放送への再送信をどうするのかと言った課題が存在するが、直接受信の世帯が5%程度しかない現状では、ピョンチャン五輪を4Kの高画質で視聴するには、有料放送への再送信が欠かせない。しかし地上テレビ局側が4K化の投資を回収するため、再送信料の大幅な引き上げを目論んでいるのに対し、有料放送側は難色を示し、現状は地上テレビ局側が再送信を拒否している。一方、地上テレビ局の衰退の原因として、特にKBSとMBCにおける「政治介入」の問題を指摘する声もある。KBSは理事会のメンバー11人のうち7人が政府・与党の推薦枠で、政府の意向に反する報道がしにくいとされる。MBCも事情は似ていて、「地上テレビ局は公平な報道をしていない」との意識が韓国国民の間に広まっている。韓国は、世界で最も早く4K放送の実用化に取り組んできた国であり、地上4K放送についても、世界の先端を走ることで関連産業の活性化につなげようとしている。ただ、その中核となる地上テレビ局が明確なビジネスモデルを提示できなければ、その将来は必ずしも楽観できるものにはならないだろう。
著者
山田 賢治 羽鳥 雄介 萩原 秀磨 溝谷 圭悟 高須 雅義 山崎 信行
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. SLDM, [システムLSI設計技術] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.31, pp.1-6, 2015-02-27

近年の組込みリアルタイムシステムでは高い演算能力だけでなく,低消費電力が求められる.これらの要求を満たすために設計されたリアルタイム処理用プロセッサとして Responsive Multithreaded Processor (RMT Processor) がある.RMT Processor は Simultaneous Multithreaded プロセッサであるためスループットが高く,スレッドの資源利用に対する優先度設定や Instructions Per Clock cycle (IPC) 制御機構といったリアルタイム処理をサポートする機能を持つ.また,System in Package に集積されたデバイスにより Real-Time Static Voltage and Frequency Scaling (RT-SVFS) を実現しており,消費電力削減の要求を満たすことができる.しかし RMT Processor では負荷が偏ると高負荷の論理プロセッサがボトルネックになり,効率的に RT-SVFS を行うことができない.そこで本研究では RT-SVFS による消費電力削減の効果をより引き出すために,IPC 制御を用いて可能な限り均一な負荷分散を行う手法を提案する.評価の結果,既存手法と比べて提案手法がより多くの消費電力を削減可能であることを示した.
著者
山田 賢 山根 春香 及川 大地 友永 省三 古瀬 充宏
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.11, no.Supplement, pp.19-20, 2008-07-11 (Released:2012-09-24)
参考文献数
1

飼料由来のチアミンを欠乏させたマウスに,過剰なグルコースを腹腔内投与することで,マウスの学習行動にどのような影響が出るかを検証した。オープンフィールド試験において,立ち上がり回数をパラメーターとすると,チアミン欠乏により学習成績は低下した。しかし,移動距離についてはチアミン欠乏マウスにグルコースを投与することで24時問後に移動距離は減少し学習成績が改善されるという結果になった。また屠殺後,大脳皮質と海馬を摘出し,神経伝達物質であるモノアミン類およびそれらの代謝産物を測定した。今回の学習成績と神経伝達物質の間に相関はなかった。また,立ち上がり回数と移動距離は異なる反応を示したことから,栄養の影響は行動の種類によって違い,二つの行動は別々のメカニズムで制御されている可能性が示唆された。