著者
岡田 隆 石津 嘉昭
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.156-164, 1986-09-20 (Released:2011-06-28)
参考文献数
38
被引用文献数
2
著者
高橋 浩一郎 土田 健一 木村 智 居相 直彦 森山 繁樹 岡信 大和 中島 光男 岡田 隆宏 松宮 功 池田 康成
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.26, no.53, pp.29-32, 2002-07-26
参考文献数
4
被引用文献数
2

地上デジタル放送の移動体向けサービスの対象のひとつに電車がある.今回,JR総武線の電車内で,3種類の試作受信アンテナを用いて受信実験を行い,走行する電車内での地上デジタル放送の直接受信の正受信時関市を測定した.ヘリカルおよびロッドアンテナは直接受信が可能であったが,ループアンテナは利得が小さく受信が困難であった.また,駅などでは人工雑音の急峻なピークが見られ,正受信時間半を劣化させていた.
著者
原田 静香 杉本 正子 秋山 正子 岡田 隆夫 櫻井 しのぶ
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂醫事雑誌 (ISSN:21879737)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.480-489, 2013 (Released:2014-05-29)
参考文献数
42

目的:入院中の患者の退院調整において,訪問看護師が病院に出向き,直接退院調整に関与した場合としなかった場合で,在宅移行期に起きた家族介護者の状況の違いについて比較し,検討した.対象:都内急性期病院を退院した65歳以上の在宅療養者を主に介護する家族12名.方法:対象者のうち,入院中に訪問看護師が病院に出向いて行う退院調整を受けて退院した場合を「関与あり群」6名,入院中には訪問看護師の関与がなく病院で通常の退院調整を受けた場合を「関与なし群」6名とした.調査は事例ごとに自記式質問紙および,半構造化インタビューを行った.聞き取った回答は研究者が検討し分類した.退院調整から在宅移行時の経験や思いについては質的帰納的に分析した.結果:①関与なし群では,家族介護者の主観的な健康度が低く,介護負担感が高い傾向があった.②退院調整へ関与した専門職人数は,関与あり群が平均4.3名,関与なし群で平均2.8名であった.関与あり群は,病院と在宅ケア事業者の双方向の関与があったが,関与なし群は在宅ケア事業者の支援が少なかった.③保健・医療・福祉サービスの導入状況では,関与あり群は入院中にサービスの導入が計画され,退院後に追加導入はなかった.一方,関与なし群は退院後に介護力不足が顕在化し,サービスを追加導入していた.④在宅移行時の経験として,関与あり群は訪問看護師の支援に安心感を持ち,介護方法の指導を受け,介護を何とかやっていけると回答した.関与なし群は在宅移行時の不安感と,介護への戸惑いを感じていた.結論:訪問看護師が退院調整に関与した場合,①家族介護者は健康状態の悪化や介護負担の増大を回避できると示唆された.②退院調整に多職種が関与し,地域連携の促進が可能である.③入院中に的確な保健・医療・福祉サービスが導入できることが示唆された.④家族介護者は在宅移行期より安心感をもち,生活状況に合わせた支援が補完され,介護へ適応するための支援が行われていた.訪問看護師の関与のなかった場合は,介護負担が大きく在宅移行期の不安感や介護への戸惑いがみられた.
著者
岡田 隆 池田 未里 小菅 亨 松本 揚 石井 孝法 野田 哲由
出版者
了德寺大学
雑誌
了德寺大学研究紀要 = The Bulletin of Ryotokuji University (ISSN:18819796)
巻号頁・発行日
no.9, pp.33-41, 2015

背景ボディビル競技では体脂肪を最大限減少させ(除脂肪),除脂肪体重の多くを占める骨格筋が最も多い状態を作る(筋肥大)事が重要である.しかしその方法については不明な点が多い.目的ボディビルダーにおける試合までの長期調整(減量)期間における体重,身体組成の経時的変化を明らかにし,除脂肪,筋肥大の最適な方法を確立する事を目的とした.方法男子大学生ボディビルダー5名を対象とした.6ヶ月間1回/月,体重を測定し,インピーダンス法で体脂肪率,除脂肪体重,体脂肪量,体水分量を推定した.結果除脂肪体重以外の全ての項目は有意に減少した.体脂肪量の減少率は36.3±7.6%(-4.2±1.3kg)であり,除脂肪体重の2.7±1.2%(-1.8±1.0kg)と比較して有意に高かった.結論骨格筋を肥大させる目的を持ったボディビルダーの調整方法であれば除脂肪体重の減少を抑える事ができ,また体脂肪量の減少率が大きいため身体組成を著しく改善する事がわかった.レジスタンストレーニングには体重減少中の除脂肪体重損失を抑制する可能性ある事が示唆された.
著者
岡田 隆文 松原 啓太 松島 崇浩 込山 修 濱野(長谷川) 恵子 諸角 美由紀 千葉 菜穂子 生方 公子 砂川 慶介 岩田 敏
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.42-47, 2010-01-20 (Released:2017-08-16)
参考文献数
20
被引用文献数
4 4

2004 年7 月1 日から2005 年12 月31 日の間に,独立行政法人国立病院機構東京医療センター小児科を受診し,肺炎と診断された720 症例を対象とした.それらの症例から採取された上咽頭拭い液から,real time PCR 法でrespiratory syncytial virus(RSV)は75 例(10.4%),human metapneumovirus(hMPV)は19例(2.6%)検出された.RSV は11 月から1 月にかけて,hMPV は3 月から6 月にかけて多く検出された.平均年齢および標準偏差はRSV が1.3±1.4 歳,hMPV が3.0±3.1 歳で,両ウイルスの平均罹患年齢に有意差を認めた(p<0.05).臨床所見上,RSV 陽性例では鼻汁と喘鳴を来たす症例,hMPV 陽性例では高体温と喘鳴が遷延する症例が多く,両ウイルス間で有意差を認めた.発熱,咳嗽,嘔吐と下痢,有熱期間,初診時のCRP 値では,両ウイルス間に有意差を認めなかった.合併症の発生率はRSV 陽性例で49.3%,hMPV 陽性例で42.1%であった.RSV では急性中耳炎(32.0%),hMPV では熱性痙攣(15.8%)が多い傾向であった.以上の成績は,RSV あるいはhMPV に起因する小児市中肺炎例の鑑別診断上,有益な情報となり得ると考えられる.
著者
小菅 亨 岡田 隆 増田 敦子 石井 孝法 山田 利彦 金丸 雄介 菅波 盛雄
出版者
了德寺大学
雑誌
了德寺大学研究紀要 = The Bulletin of Ryotokuji University (ISSN:18819796)
巻号頁・発行日
no.9, pp.183-191, 2015

柔道の競技力強化の現場で行われている「ロープトレーニング」とは上肢と体幹を主に用いて局所筋持久力と全身持久力の向上を目的に行われるものである.この方法が柔道競技において普及しているのは柔道には上肢と体幹を多く用いるという競技特性があるためである.本研究ではロープトレーニングの生理学的反応を明らかにし,ロープトレーニングのトレーニング効果に関する知見を得ることを目的とした.大学男子柔道部員10名を対象とし,ロープトレーニングをTabata protocolに模倣したロープトレーニングで行わせた.測定項目は酸素摂取量,血中乳酸濃度,心拍数とした.また,自転車ペダリング運動によって測定される仮定最大値(VO2max ,Lamax, HRmax)との相対値を算出した.結果はVO2max に対してロープトレーニング中のpeakVO2は有意に低く,Lamax に対し,ロープトレーニング中のpeakLaは有意に高かった.peakHRはロープトレーニング中ほぼHRmaxに近い値で推移し,有意差はなかった.上記によりロープトレーニングは解糖系に最大の負荷をかけるが,酸化機構には最大の半分程度の負荷しかけることができないということになる.これは,上肢などの局所筋における解糖系に大きな負荷がかかることで酸化機構への負荷が十分に高まる前にオールアウトしたことが原因であると考えられる.今後は,ロープトレーニングで負荷をかけることができなかった酸化機構に最大負荷をかけることができるプロトコルを探索していくことが課題の1つである.
著者
砂田 結希乃 多賀 允俊 比嘉 大輔 岡田 隆史 堀内 智子 杉森 端三 西尾 浩次
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.417-423, 2014-07-10 (Released:2015-07-10)
参考文献数
18
被引用文献数
1 5

Several guidelines recommend that antimicrobial prophylaxis in surgery should be administered for a duration of less than 48 hours. However, in our facility oral antimicrobial prophylaxes were used after intravenous agents for orthopedic surgery and the duration of the administration was over 48 hours. Consequently, an orthopedic ward pharmacist recommended discontinuing oral antimicrobial agents. To support this intervention, we conducted a retrospective cohort study on patients who received total hip arthroplasty, total knee arthroplasty or micro fenestration to evaluate changes in the rate of surgical site infection (SSI) and the effects on medical expenses.A total of 344 patients were enrolled as group one (before the intervention) and 343 patients as group two (after the intervention). Of these, 98 and 114 patients from each group respectively were analyzed. One patient (1.02%) was diagnosed with SSI in group one, and one patient (0.88%) was diagnosed with SSI in group two. The incidence of infection in the latter group was not inferior to that of the former group (difference -0.14%; 95% confidence interval-2.33 to 2.05%; P < 0.05). The rate of the administration of oral antimicrobial agents changed from 65.3% (64/98) to 2.6% (3/114) and was significantly lower in the latter group (P < 0.001). Furthermore, medical expenses were reduced from 134,401 yen to 12,046 yen. In conclusion, it is not recommended to administer prophylaxes for long periods, and the ward pharmacist contributed to appropriate administration of antimicrobial prophylaxis. This study reconfirmed the importance of having pharmacists in wards.
著者
大島 彰 岡田 隆雄 玉井 一 松林 直 高橋 進 楊 思根 美根 和典 中川 哲也
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.59-65, 1990-01-08
被引用文献数
3

Acute gastric dilatation (AGD) is one of the life-threatening complications which needs accurate diagnosis and appropriate treatment as soon as possible, although it occurs rarely in anorexia nervosa. We have unexpectedly experienced a case of AGD in anorexia nervosa caused by superior mesenteric artery (SMA) syndrome during the early stage of the treatment. An 18-year-old senior highschool girl was admitted to our hospital because of anorexia nervosa without any episodes of bulimia or vomiting. About one year before admission, considering herself overweight she had started dieting and had reduced her weight from 60kg to 33.8kg. After admission, she started taking, 1,000kcal of food by herself in addition to 200kcal of elementary diet by the tube feeding. On the 2nd hospital day, a plain chest X-ray picture showed the left-sided pleural fluid because of the pulmonary tuberculosis. The chest drainage tube was inserted on the 6th hospital day, and she was forced to lie on the bed. On the 8th hospital day, she suddenly felt nauseous and vomited. A plain abdominal X-ray picture showed the sign of AGD. A barium X-ray study on the 11th hospital day proved that the AGD was caused by SMA syndrome, showing vertical cut off sign at the 3rd portion of the duodenum obstructed by the SMA and oral side duodenal loop and the stomach were dilated. She was treated conservatively, and barium meal examination, on the 46th hospital day, proved that the signs of SMA syndrome had disappeared. After the completion of our step-by-step treatment program on the basis of cognitive behavior therapy with anti-tuberculosis drugs, she was discharged at the weight of 46.7kg, and she has been in good condition since then.
著者
青木 信彦 岡田 隆晴
出版者
The Japanese Congress of Neurological Surgeons
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.249-255, 2014

著者らは低侵襲で高齢者に優しい治療として経皮的硬膜下穿刺を開発し報告してきた. その究極的な応用として, 血腫の完全な除去を目的に, 生理食塩水での洗浄によるのではなく, 酸素による置換を考案し, 多数の症例を治療してきた. ここではその具体的な手技について解説するとともに, ポイントとなるコツについても言及した.
著者
岡田 隆三 小寺 志保 富岡 昭浩 倉田 成人 濱本 卓司 猿渡 俊介
雑誌
第78回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, no.1, pp.229-230, 2016-03-10

軍艦島は,長崎県にある無人島であり,現在も経年劣化による建物の複雑な崩壊現象が発生している.筆者らは,軍艦島において崩壊中の建物の映像や音声,加速度といったデータを収集することで,建築構造解析に貢献することを目指して軍艦島モニタリングプロジェクトを進めている.本稿では,軍艦島モニタリングのためのセンサネットワークインフラシステムを検討する.軍艦島には電力も通信網も存在しないため,センサネットワークインフラシステムは,基地局まで確実にデータを送信できること,スループットが高いこと,消費電力をできるだけ小さくすることの3点を同時に満たす必要がある.本稿では,マルチチャネルを用いたデータ集約型ネットワークインフラを提案する.初期的実装として,無線通信モジュールを搭載したマイコンボードを用いてシステムを作成した.
著者
奥村 幸彦 増野 淳 南田 智昭 須山 聡 岡田 隆
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン (ISSN:21860661)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.186-199, 2020 (Released:2020-12-01)
参考文献数
14

第5 世代移動通信システム(5G)の特長を生かした医療分野の新しいソリューション実現に向け,NTTドコモが推進してきた5G を医師対医師の遠隔診療に活用する事例の検討及びその実証試験の実施結果を紹介する.2017 〜 2019 年度に総務省の5G 総合実証試験として医療機関を含むパートナーとともに推進した実証試験は,地域医療・救急医療の充実に向け,5G の超高速通信を生かして複数の医療機器から出力される高精細診断映像とテレビ会議の映像をリアルタイムに同時伝送する試験用のシステムを構築し,それらを用いて複数の診療科を対象とした試験・評価を通して5G を活用する遠隔診療システムの有効性を確認した.地域医療分野における実証試験では,和歌山県において,山間部診療所での遠隔診療,遠隔訪問診療,遠隔教育,遠隔移動診療の各事例について,また,救急医療分野における実証試験では,群馬県前橋市において,救急搬送の高度化ソリューションとして,3 または4 拠点間で救急搬送情報を共有する形式の遠隔診療について,それぞれ実験用5G 無線通信装置を用いた試験を行い,各試験に参画した医療従事者及び関係者から多角的な評価結果を得た.
著者
荒山 宏樹 岡田 隆 矢崎 高明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0830, 2008 (Released:2008-05-13)

【目的】骨格筋には筋膜などの結合組織を介して筋同士が連結し,かつ筋線維走向の方向が一致しているものがある.こうした骨格筋の解剖学的特徴を利用し,筋膜などを介した骨格筋同士の相互作用を期待したエクササイズが注目を集めている.しかし実際の筋活動へ与える影響についての報告はない.そこで本研究では,体幹筋力強化トレーニングとして用いられるTrunk Curlを利用して,前鋸筋の活動が外腹斜筋の活動に及ぼす影響を検討することを目的とした.【方法】対象は健常成人男性5名(年齢26.6±3.9歳,身長173.6±4.4cm,体重67.6±6.8kg)とした.測定動作は,背臥位,股膝90度屈曲位で台上に両下腿を置き,1)肘伸展0度,肩90度屈曲位で,最大努力で肩甲帯前方突出を行いながら上体を起こす(Trunk Curl with Protraction,以下TCP),2)肘伸展0度,肩90度屈曲位で,肩甲帯前方突出をせずに上体を起こす(sham),3)胸部前面で腕を組み上体を起こす(Normal Trunk Curl,以下NTC),の3種類とした.この3種類の動作で,最大努力で体幹を最大限屈曲させ,5秒間保持させた.これを各5回行った.測定機器には表面筋電図(日本光電 マルチテレメーターシステム WEB-5500)を用い、電極間距離1.5cmとした.被験筋は前鋸筋,外腹斜筋,腹直筋とした.得られた筋電図から積分値を算出して最大値を記録し,各動作の平均値を算出した.徒手筋力検査にて各筋の最大随意収縮(Maximum Voluntary Contraction,以下MVC)の積分値を算出し,これらを各平均値で除した相対値(%MVC)によって評価した.統計的検定には反復測定分散分析を用い,多重比較検定としてScheffe testを用いた.有意水準は5%未満とした.【結果】前鋸筋の%MVCはTCP:60.9±26.7,sham:34.9±20.2,NTC:37.2±21.1であった.外腹斜筋はTCP:84.4±6.2,sham:74.8±5.4,NTC:74.4±8.0であった.前鋸筋と外腹斜筋の%MVCはsham,NTCと比較してTCPで有意に高値を示した(P<.05).腹直筋では有意な差は得られなかった(TCP:66.4±15.3,sham:60.1±9.7,NTC:59.4±5.8).【考察】本研究では,Trunk Curl時に前鋸筋を強く収縮させることで,腹直筋活動の上昇を伴わずに外腹斜筋活動が上昇することを確認した.このことから,前鋸筋の活動は外腹斜筋の活動を高める因子であることが示唆された.さらに,付着部を共有し,かつ筋線維走向の方向が一致する筋の相互作用を期待したエクササイズの有効性も示唆された.前鋸筋と外腹斜筋は,胸郭に対して力学的に拮抗する位置関係にあることから,前鋸筋の収縮による胸郭の動きが,胸郭のstabilityや外腹斜筋の筋節長に影響し,このような現象が観察されたものと推察した.【まとめ】前鋸筋の活動は外腹斜筋の活動を高めることが示唆された.付着部を共有し,かつ筋線維走向の方向が一致する筋の相互作用を期待したエクササイズの有効性が示唆された.
著者
岡田 隆志
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.609-619, 2020-09-15 (Released:2020-10-10)
参考文献数
21

目的 都道府県の保健所(以下,県型保健所)における精神保健福祉業務は,住民からの相談等に加え,措置入院にかかる通報対応から退院後支援,地域包括ケアシステム構築に資する活動など,多岐にわたる内容が求められている。一方,職員数は全国的に減少が続いており,必要人員の確保は容易ではなくなっている。国の通知では,業務体制について単に人員確保だけでなく,単一の課等を設けることや多職種のチーム体制を敷くこと,専任職員を配置するなどの工夫を凝らすことを各都道府県に提案しているが,実際に都道府県がどのように職員を配置しているかを把握する全国調査は直近では見当たらない。そこで,本研究では既存資料と新たに実施された調査データを活用して,都道府県ごとの専従職員の配置状況を体系的に分類し,それぞれの精神保健福祉業務の実施状況の傾向を分析することを目的とする。方法 本研究では2つの仮説「2018年度の県型保健所専従職員の配置状況は2002年度と比べて変化している」と「精神保健福祉業務の実施状況は専従職員の配置状況の違いによって差異が生じる」を立て,その検証を試みた。対象データは,2018年における県型保健所精神保健福祉業務職員の配置状況を扱った調査と,2002年の配置状況を扱った調査,それぞれの先行調査データの一部を取り扱った。 分析方法は都道府県名と専従専門職員数の平均値の2変数でコレスポンデンス分析を行い,そのうえで,都道府県ごとの専従職員配置の類似性を表すためにクラスター分析を行った。さらに,平成29(2017)年度地域保健・健康増進事業報告を用いて,類型ごとの精神保健福祉業務状況を比較するためにKruskal-Wallis検定および多重比較を行った。結果 県型保健所の専従職員配置状況は,2018年度の配置数の方が2002年より0.61人分上回っていた。都道府県ごとの配置状況の特徴は,2002年度では2類型(「保健師協働型」,「福祉職協働型」)に分けられ,2018年度ではさらに「保健師専従型」が加わり3類型になると解釈できた。精神保健福祉業務の実施状況の差を類型別に比較したところ,「福祉職協働型」は専従職員一人当たりの相談・訪問の延べ件数,市町村援助件数で他の類型と比較して有意に高かった。結論 県型保健所がより効果的に業務を遂行していくために,保健師と精神保健福祉士など複数の専門職を配置する体制にすることが必要と考えられる。