著者
島田 和子
出版者
山口県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

抹茶は、5月に製造された新茶(碾茶)を半年以上低温下で熟成保存させ、それを茶臼で微細紛にしたものである。保存しない新茶(碾茶)を用いて製造した抹茶は、抹茶特有の香り、こく味などの風味に欠け、泡立ち性も劣ることが製茶業者では知られている。この研究は、「抹茶特有の風味が生じるためには、なぜ碾茶を熟成保存する必要があるのか」について明らかにすることを主目的とし、以下の結果が得られた。抹茶の官能評価では、碾茶を含気包装で6ヶ月間保存して調製した抹茶は、保存しない碾茶から調製した抹茶より、うま味・甘味があり、渋味・苦味が抑えられ、まろやか感があると判断された。また、窒素充填包装保存よりも含気包装保存の方が、抹茶らしい風味があると判断された。渋味・苦味成分であるカテキン類の抹茶溶出液中の量は、保存期間が長くなるにつれて僅かに減少した。苦味成分のカフェイン、うま味・甘味成分の遊離アミノ酸、甘味成分の遊離糖の各溶出量は保存期間中ほぼ一定であった。抹茶の泡立ち性は含気保存6ヶ月の抹茶が最も泡立ち性が良く、次いで窒素充填保存6ヶ月の抹茶、保存0ヶ月の抹茶の順であった。以上の結果より、碾茶を保存した抹茶の方が抹茶らしい風味であって、総合的においしいと評価が得られたのは、泡立ち性の向上がその一因であると推察した。碾茶を5℃、6ヶ月間保存しても、抹茶中の総ビタミンC及びアスコルビン酸の残存率は80%以上で高かった。クロロフィル及びクロロフィル誘導体含量、クロロフィラーゼ活性も変化がなかた。以上のことから、抹茶の風味生成のための碾茶保存条件では、茶葉の品質は劣化しないことが確認された。また、カテキン類、カフェイン、ペクチンは茶葉採取時期による抹茶の風味の違いに大きく寄与していないことが認められた。
著者
加藤 駿 石崎 良祐 三橋 亮太 清水 智恵 島田 順 普後 一
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
蚕糸・昆虫バイオテック (ISSN:18810551)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.1_039-1_042, 2014 (Released:2014-05-26)
参考文献数
7

2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故で,福島県内は放射性物質の甚大な汚染をうけた。桑園とクヌギ畑の土壌,桑やクヌギ葉,幼虫,蛹,繭等の放射性物質濃度の測定,作業環境の空間放射線量等の具体的なデータを収集し,養蚕業や天蚕業に及ぼす放射性物質の影響について考察した。調査地の空間放射線量測定の結果,飼育室内の空間放射線量は,圃場に比較して特段高い値ではなかった。2012年5月と9月測定時の桑園およびクヌギ畑土壌中の放射性Cs濃度は,Cs-134,Cs-137ともに1000Bq/kg以上の値を示していた。しかし,9月時点の桑葉とクヌギ葉の放射性Cs濃度は,いずれも厚生労働省の定める一般食品中の基準値(100Bq/kg)を下回っていた。カイコ幼虫,蛹と繭についてはCs-134,Cs-137ともに検出限界値以下であった。天蚕の繭からはCs-134が20.7Bq/kg,Cs-137は36.3Bq/kg検出された。これらの結果から,福島県での養蚕業あるいは天蚕業への放射性物質の直接的な影響はないと考察した。
著者
佐藤 秀美 畑江 恵子 島田 淳子
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.904-909, 1996-08-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
6
被引用文献数
1

食パンを赤外線ヒータで加熱した時の内部の水分分布が経時的にどのように変化するかを,特にクラムに着目し,調べるとともに,この水分分布の変化に及ぼすヒータの放射波長特性の違いの影響を検討した.その結果,以下のことが明らかになった.(1) 上下2層に分けて測定したクラムの水分含量はともに,加熱直後に一旦低下し最低値をとった後,加熱前の水分含量よりも高くなった.この加熱過程において,上層の方が下層よりも水分含量は早く,しかも大きく変化した.(2) ヒータの放射波長特性は食パン内部の水分分布に影響を及ぼした.長波長領域の赤外線を放射するヒータで加熱した場合ほど,食パンの部位により,水分含量は大きく異なった.
著者
高橋 春菜 守屋 雅隆 徳山 貴斗 島田 宏 水柿 義直
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.401, pp.13-18, 2014-01-23

現在の直流電圧標準において,零バイアス電流軸を横切るシャピロ・ステップ(ゼロ・クロッシング・シャピロ・ステップ)は既に利用されており,電圧標準だけではなく高精度D/A変換器への応用も期待されている.我々は,ゼロ・クロッシング・シャピロ・ステップの生成方法として非対称2接合SQUIDを用いた方法を研究してきた.非対称2接合SQUIDによって得られる非対称な臨界電流-印加磁場特性を利用した方法である.そこで本報告では,非対称2接合SQUIDの代わりに,長いジョセフソン接合を用いて非対称な臨界電流-印加磁場特性を実現させ,それによってゼロ・クロッシング・シャピロ・ステップを生成する.産総研Nb STP2プロセスにより試作したNb接合と,バイクリスタルSrTiO_3基板上に作製したYBa_2Cu_3O_<7-δ>粒界ジョセフソン接合を用いて動作検証を行い,シミュレーション結果との比較を行った.
著者
角田 隆 森 樊須 島田 公夫
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1-4, 1992-02-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
11
被引用文献数
5 6

ヤケヒョウヒダニDermatophagoides pteronyssinus (TROUESSART)の耐寒性について調べた。雌成虫の過冷却点(SCP)の平均は摂食中で-22.7±1.25 (mean±S.D.)°Cだった。光学顕微鏡の冷却チャンバー内でSCP以下にダニを冷却したとき,体内に氷晶が形成されるのが観察された。氷晶形成後に再び室温に戻しても蘇生する個体はなかった。絶食によってSCPは低下したことから,消化管の内容物が氷晶核として作用していると考えられる。SCPより高い温度でも冷却期間を長くすると死亡率は高くなった。この場合の死亡要因は代謝系の異常か乾燥によると考えられる。
著者
佐藤 秀美 畑江 恵子 島田 淳子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.904-909, 1996-08-15
被引用文献数
2

食パンを赤外線ヒータで加熱した時の内部の水分分布が経時的にどのように変化するかを,特にクラムに着目し,調べるとともに,この水分分布の変化に及ぼすヒータの放射波長特性の違いの影響を検討した.その結果,以下のことが明らかになった.<BR>(1) 上下2層に分けて測定したクラムの水分含量はともに,加熱直後に一旦低下し最低値をとった後,加熱前の水分含量よりも高くなった.この加熱過程において,上層の方が下層よりも水分含量は早く,しかも大きく変化した.<BR>(2) ヒータの放射波長特性は食パン内部の水分分布に影響を及ぼした.長波長領域の赤外線を放射するヒータで加熱した場合ほど,食パンの部位により,水分含量は大きく異なった.
著者
長尾 慶子 畑江 敬子 島田 淳子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.373-377, 1989

衣を厚くしたコロッケの揚げ加熱中の破裂の機構に関して以下の結論を得た.<BR>1) 衣を2, 3, 4mmと厚くすると薄衣の1mm試料の場合にみられた表層部破裂は起こらず, コロッケ全体に縦 (長軸方向) に亀裂が入る全体破裂となった.<BR>2) 外皮の引張強さは, 経時的に増加した.2mm試料のほうが, 3および4mmの試料に比べて短時間で強度が大となった.破裂時の外皮の強度から推定した内部圧は, 2mm試料のほうがより厚い皮の試料に比べて有意に低かった.<BR>3) 厚衣の全体破裂は, コロッケ内容物体積が揚げ加熱中に温度上昇に伴い6.5~6.9%膨張することで, 約2~3N/cm2高まった内部圧を皮が抑えきれずに亀裂が起きて, 破裂するものであることが示唆された.
著者
島田 大輔 シマダ ダイスケ Shimada Daisuke
出版者
同志社大学一神教学際研究センター(CISMOR)
雑誌
一神教世界 = The world of monotheistic religions (ISSN:21850380)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.64-86, 2015-03-31

本稿は、戦前期日本における回教政策に関して、大日本回教協会を中心に実証・分析を加えたものである。従来の研究では、一次史料の収集・比較分析は不十分であり、必ずしも実態が明らかではなかった。第一に、あまり分析されてこなかった四王天延孝会長期も含めて、回教協会の組織運営・諸活動の実態を通史的に明らかにした。第二に、日本政府からの補助金・事業指示の分析をもとにして、大日本回教協会を、外務省の回教政策を実行するために設立された、外務省の外郭団体だと明らかにした。第三に、陸軍の回教政策とは異なった観点に立つ、外務省の回教政策の内実を明らかにした。外務省の回教政策とはすなわち、中東を中心に全イスラーム世界を対象とし、手法として文化工作を最重視することであった。極東占領地内に回教政策を局限した陸軍との間にはある種の棲み分けがなされていた。ただし、戦局の悪化、回教協会に対する大東亜省の影響力増の結果、以上の図式は崩されることになった。This article focuses on the Islamic policy in prewar Japan. First, it traces the activities and organizational management of the Dai Nippon Kaikyo Kyokai (DNKK), from beginning to end. Secondly, by analyzing the business instructions and subsidies for the DNKK from the Japanese government, it becomes clear that the DNKK was established in order to execute the Islamic policy of the Ministry of Foreign Affairs (MFA). Thirdly, it makes clear the Islamic policy of the MFA, which takes a different point of view from the Army. The Islamic policy of the MFA targeted the entire Islamic world centering on the Middle East, and gave paramount weight to cultural activities. At first, segregation of the Islamic policy had been made between the MFA and the Army, because the Army confined its Islamic policy only in the occupied territories in the Far East. However, such segregation was collapsed later, as a result of the deterioration of the war situation and increased influence of the Ministry of Greater East Asia for the DNKK.

1 0 0 0 OA 島田記憶術

著者
島田伊兵衛 述
出版者
島田伊兵衛
巻号頁・発行日
1895
著者
小粥 雅貴 若松 栄史 森永 英二 荒井 栄司 島田 茂樹 眞鍋 賢
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.80, no.814, pp.TRANS0141-TRANS0141, 2014 (Released:2014-06-25)
参考文献数
12
被引用文献数
1

In this paper, a prediction method of the maximum principal strain of a core/shielding wire contained in a coaxial cable, which is related to the life-cycle of the wire, is proposed. If the central axis of a wire is assumed to be twisted around a virtual cylindrical surface when a coaxial cable is straight and a virtual toroidal surface when the cable is bent, the shape of the wire can be described by the first and the second fundamental form of their surfaces in the differential geometry. The potential energy of the wire, which is bent, twisted, expanded, and/or contracted, is also formulated based on the differential geometry. Friction of the wire against the virtual surface is modeled as a virtual spring in the circumferential direction of the surface and its elastic energy is included in the total potential energy of the wire. Then, the stable shape of the wire can be computed by minimizing its total potential energy under geometric constraints. After that, the maximum principal strain is estimated from the shape of the wire. As a result of simulation, it was founded that a core wire is broken by bending fatigue before the shielding wire is if they have the same radius and rigidity.
著者
森安 竜大 若松 栄史 森永 英二 荒井 栄司 島田 茂樹 眞鍋 賢
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.30, no.8, pp.813-821, 2012 (Released:2012-11-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1

A modeling method to represent bending/torsional deformation of an electric wire is proposed based on the differential geometry. A twisted wire called a robot cable is used in a prismatic/rotational joint of an industrial robot to transmit signals or electric power. It is composed of a twisted bunch of several strands of many copper wires. The copper wire may be cracked by repeated bending/torsional deformation associated with the movement of a joint and such crack leads to wiring disconnection. To predict the life-cycle of the wires and to prevent such wiring disconnection, it is required to estimate deformation of not only the strands but also the copper wires when the wire is bent/twisted. In this paper, the deformed shape of a wire, which corresponds to a twisted bunch of n strands, is described by 3+2n independent variables and can be derived by minimizing the potential energy of each strand under various constraints. As the relationship between copper wires and their strand is similar with that between strands and their twisted bunch, the deformed shape of each copper wire can be also derived with the same method.